龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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偉い速く仕上がってしまったな・・・・そしてUA八万突破!ヤフー!


File 18: いきなりのTrial!

「グラファイトの推察通り、オール・フォー・ワンは『個性』を奪い、己が物とする事が出来るが、それだけではない。奪った『個性』をまた誰かに与える事も出来るのだ。」

 

「何だと・・・?!」

 

今度はグラファイトが愕然とした。つまり『個性』のストックがある限り、兵隊が死ぬ前に『個性』を回収すれば軍団を半永久的に作れるという事になる。クロノスの能力も十分規格外だが、これでは最早勝負にすらならない。その圧倒的な力の差をオールマイトはたった一つの個性で返り討ちにしたのだ。

 

「君や私が生まれる遥か昔、超常黎明期、社会がまだ変化に対応し切れていない頃、人間と言う規格が『個性』によって呆気無く崩れ去った。法は意味を失い、文明が歩みを止めた。正しく荒廃した混沌の時代に揉まれる人々を纏め上げたのがオール・フォー・ワン。『個性』を奪い、圧倒的な力でその勢力を広げていった。計画的に人を動かし、思うままに悪行を積んでいった彼は瞬く間に悪の支配者として日本に君臨した。正に数多の『個性』を持ったジェームズ・モリアーティーと呼べよう。」

 

出久には最早寄せて返す波の音すら耳に入らない。立っていたグラファイトも座り込んで話の続きを促す。

 

「彼は『個性』を与える事で他者を信頼させるか、屈服させた。ただ与えられた人の中にはその負荷に耐えられず廃人になる者も少なくなかった。だが稀に与えられた『個性』が本来備わっている『個性』と混ざり合う事によって新しい『個性』を誕生させるケースもあった。彼には、『無個性』の弟がいてね。体も小さく病弱だったが正義感だけは人一倍あった。兄の所業に心を痛め、抗い続ける男だった。そんな弟に力をストックする『個性』を無理矢理与えた。優しさ故か屈服させる為か、今では分からないが。」

 

「つまり、その弟が・・・・?」

 

「ああ。彼にも一応『個性』はあった。自他共に気付きはしなかったがね。『個性』を与えるだけの『個性』。それ単体では何の意味も成さない筈だったが、それが力をストックする『個性』と融合し、かくしてワン・フォー・オールが誕生した。皮肉なものだよ、正義はいつも悪より生まれ出ずる。」

 

「超常黎明期と言えば随分前だ。まだ生きているとは‥‥いや、老化を止める『個性』があれば、可能か。」

 

「ああ。奴は、それ故生き続ける半永久的な『悪の象徴』。覆しようのない戦力差と当時の社会情勢と言う不利な状況により敗北を喫した弟は、後世に託す事にした。今は敵わずとも、少しずつ力を培い、自分が死んだ後の遠い未来で兄を倒してくれる力になるだろうと信じて。ワン・フォー・オールは保持者の意思でしか受け渡す事は出来ない。つまり奪われる事が無い、オール・フォー・ワンに対抗出来る唯一の『個性』なのだよ。」

 

「ならばそいつはもう・・・・」

 

「私が倒した。五年前に。」

 

「間違いなく死んだのか?死亡もしくは消滅した所を目撃したのか?遺体は処理されたのか?」

 

「いや、見ていない。ヒーローが人を殺してはいけない。踏み止まりはしたものの、彼ばかりはその一線を越えなければならないと何度も思った。こればかりはいくら君に扱き下ろされても譲れないよ、グラファイト。」

 

『MUTATION! LET'S CHANGE! LOTS CHANGE! BIG CHANGE! WHATCHA NAME!? THE BUGSTER!』

 

出久が止める前に、グラファイトの黄金の右腕がオールマイトの顔面を、鼻先を捉えた。彼の反応は一瞬遅れ、トゥルーフォームのまま数メートル後ろに砂地にひっくり返った状態で吹っ飛ばされた。

 

「ちょ、グラファイト――」

 

「黙っていろ、出久。これは奴の説明不足と詰めの甘さ故の罰だ。いいか、出久が死ぬような事があれば、俺は貴様を許さんぞ。オール・フォー・ワンに代わって反対の脇腹に風穴を開けてやる。肝臓ぐらいは抉り出すからそのつもりでいろ。貴様の言う事が本当ならば、奴が持つ『個性』の数は百や二百程度ではあるまい。必ずどこかで生き延びてお前を殺す機会を窺っている。悪の支配者とお前が呼ぶのであればお前が憔悴している事も、後継者を見つけた事も、恐らくは知っている。奴の軍団もまだ生きているだろうな。」

 

「くふっ・・・・・緑谷少年にはまだ早いと思って伏せていた。彼の人生はこれからだ。色々な物を見聞きし、楽しむ事も多い青春時代。たとえワン・フォー・オール継承者として認めたとはいえ、私がそれを奪う権利は無い。私は隠し事が確かに多い、それは認めよう。」

 

鼻から流れる血をポケットティッシュで止め、オールマイトは立ち上がった。

 

「だが、一度たりとも君達に嘘をついた事は無い。これは己の命を賭けて誓える。しかしグラファイト、君とてただ調べただけだ。あの場にいたわけでも、オール・フォー・ワンと相対したわけでもない。私が勝利した時、奴は間違い無く虫の息だった。目も鼻も原形を留めず潰れ、耳も無い。まともに立つどころか呼吸すらままならない状態だ。もし君があの場にいれば、間違い無く勝ったと思った筈だ。」

 

「俺をお前の尺度で測るな。ウィルスという物は残滓一滴、残骸一片から再び増殖する。ましてや社会の死病とも呼べるようなその男は、完全に死滅させなければ意味は無い。持ち駒もまだ存命中だろうしな。はっきりしている奴の目的は三つ。お前の抹殺、お前が選んだ後継者の抹殺、そして唯一奪う事が出来ないワン・フォー・オールの滅却。残り火諸共な。貴様の全盛期へ返り咲かせる計画もこれで間に合わなくなった。今のままではな。」

 

グラファイトはバグヴァイザーを外すと銃口を自分の腹に突き立てた。小さく呻きながらもオレンジ色の光が漏れ、バグヴァイザーに吸い込まれていく。同時に、グラファイトの姿がホログラムの様に透け始めて行く。ジジジッと全身にノイズが走り、即座に出久に感染した。

 

「グラファイト、大丈夫?!ていうか、何したの?」

 

『俺の肉体の四割前後をオールマイトの生体データに書き換えて現在培養してある物に加えた。多少無茶をしたが、これぐらいならお前の体内で自分の肉体を培養していれば問題無い。どこまで進行した?』

 

「えっと・・・・」

 

バグヴァイザーについた砂を払い落として画面を確認し、出久は目を丸くした。

 

「かなり進んでるよ・・・・一気に25%に上がってた。」

 

『また俺の肉体が100%に戻るまで時間を要するが、こうすれば足しにはなるだろう?出久、言っておくがこれは断じてオールマイトの為ではない。お前の死亡率を確実に下げる為だ。それにお前がヒーローを目指すならば、その自己犠牲の精神は同じくヒーローを志す者として見習わなければならない。』

 

「グラファイトがまた元気になるまで、どれぐらいかかるの?」

 

『そうだな・・・・どれだけ効果的に休息を取れるかにもよる。とりあえず精神的なストレスを発生させる行動はしばらく控えてくれ。お前に感染している状態だとそれが俺の回復に直に影響する。』

 

パラドのパーフェクトパズルの能力で『回復』のエナジーアイテムを使えばすぐにでも元通りなのだが、無い物強請りをしても詮無き事。自力で全快するのを待つしか無い。

 

「彼は、何と?」

 

「オールマイトの為じゃなく、自己犠牲の精神を学んで、僕を生かす為だと。ごめんなさい、グラファイトが殴っちゃって・・・思いっきり・・・・」

 

「いや、構わないさ。あれは殴られても仕方が無い。私からありがとうと伝えてくれないか?彼には世話になりっぱなしだ。さて、お互い明日から初日だ。今日はもうお互い帰って寝よう。」

 

「はい。おやすみなさい。雄英で、また。」

 

しかし、オールマイトの口から語られたワン・フォー・オールの誕生秘話はあまりにも重過ぎた。結局出久は日付が変わる直前までベッドから天井を見上げ続ける破目になった。

 

 

 

 

眠りこそ浅かったが、普段から健康管理を怠らずにいた出久は眠気を感じず、早朝に軽く汗を流してから届いた制服に袖を通した。

 

「行ってきます、母さん。」

 

「行ってらっしゃい。出久、今の出久・・・・超カッコいいよ!」

 

やはり自分の一人息子がかの雄英に入学出来た感動が未だに拭えないのか、引子の目は涙で光っている。

 

「ありがと、母さん。」

 

ロードワーク用に新調した音楽プレイヤーにイヤホンを差し込み、軽いジョギングの速度で雄英へと向かう。

 

「グラファイト、一晩でどこまで回復したかは分からないけど、その・・・・大丈夫?」

 

『問題は無い。お前から分離しての自立行動が制限されるだけだ。この調子で行けば半月と経たずに元通りだ。』

 

「半月か・・・・分かった、僕も頑張る。ありがとう、オールマイトを助けてくれて。」

 

グラファイトは小さく鼻を鳴らして返事をしなかったが、出久は特に気にしなかった。慣れたのだ。辛辣で率直で熱くなる時は饒舌になるものの、グラファイトは基本的には素っ気無い。

 

そうこうしている内に雄英の正門を通り抜け、教室を探しに回った。頼りになる地図も何もなく、廊下には初日という事で誰もいない。自分の足で地道に探すしかなかった。時間に余裕はあるものの、出久は少しだけ焦っていた。倍率三百の難関校は伊達ではなく、その分キャンパスも広く、建物も入り組んでいる。

 

初日から遅刻など、シャレにならない。

 

しかし案内表などを運良く見つけ、一年A組の教室に繋がる扉を見つけた。そびえたつその扉は三メートル前後ある。

 

「バリアフリーなのかな・・・・?」

 

『お前は入試主席だ。堂々としていろ。俺と組手をやっている時と同じだ、開き直ってしまえば臆する事は無い。』

 

三度深呼吸をして扉に手をかけて開く。

 

「机に足をかけるな!」

 

「あぁん?」

 

教室に一歩足を踏み入れた瞬間に出久の目に入ったのは、強面のツートップ。幼馴染の爆豪と、プレゼント・マイクに試験に関する質問をした眼鏡をかけた受験番号7111の受験生だった。

 

「雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

「思わねえよ!てめえどこ中だ?端役が!」

 

「俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。」

 

「聡明ぃ~?糞エリートじゃねえか、ぶっ殺し甲斐がありそうだな!」

 

相変わらずのヒーローらしからぬどころか三下のチンピラ同然の物言いにグラファイトは小さく鼻を鳴らした。相変わらず進歩の無い男だ。

 

「ぶっ殺し甲斐?!君、ひどいな。本当にヒーロー志望か?」

 

「けっ。」

 

『そうだもっと言ってやれ。』

 

頼むからやめてくれ。初日の朝からそのようなストレスでせっかく太くなった神経をわざわざ擦り減らしたくない。グラファイトも精神的ストレスには避けろと言われたばかりだと言うのに焚き付け、煽っている。彼の言葉がクラスに聞こえていないのがせめてもの救いだ。

 

「あーーー!緑谷じゃーーん!一緒に入学出来たねー!これからよろしく!」

 

足早に寄って来たピンク肌の芦戸が出久の手を掴んでぶんぶんと

 

「あ、ああああ芦戸さん!?」

 

「もー、メッセージ送ったんだから返事返してよー!」

 

「え?」

 

出久は慌てて携帯を確認すると、確かに合格通知が来た夜に出久の入試主席での合格を祝うメッセージが届いていた。

 

「あ、ホントだ!ごごごごめんなさい!他のメッセージがどんどん来て、その・・・・埋もれちゃってて、でも別にわざと無視したとかそういうのでもなくて・・・!」

 

『俺のアドバイスが全く響いていないな、お前。』

 

声だけでグラファイトがどれだけ呆れ果てている表情が目に浮かぶようだ。

 

「いいよ、もう。でもこれからはもうちょっと筆まめにね?」

 

「は、はいっ!」

 

「良かった、君もこのクラスだったのか!俺は私立聡明中学―――」

 

「聞いてたよ。僕、緑谷。飯田君、だよね?よろしく。」

 

「こちらこそ。説明中に合いの手に応えていた君を見くびっていた事を謝罪したい。申し訳なかった。あの実技試験の全貌に気付いていたとは、君を見誤っていたよ。」

 

実際は考えが及ぶ前にグラファイトが先にヒントをくれていたのでほぼカンニング同然なのだが、出久はあははと冷や汗を拭って謝罪を受け取った。高校生とは思えない程に発達した肉体は兎も角、顔は人畜無害を絵に描いたような面構えなのだ。犯罪を取り締まるヒーロー候補とはとてもではないが見えないだろう。

 

「あ、その緑色のもさもさ頭は!地味目の!」

 

「へ?」

 

茶髪で丸みのある顔の女子生徒が廊下に立っていた。

 

『出久、お前が試験中に助けた奴だ。ゼロポイントを破壊した時に。』

 

そう言えばそんな気もする。遠目だった為顔立ちははっきり覚えていないが、グラファイトがそう言うのならそうなのだろう。

 

「ああ、あの時の!」

 

「うん!覚えててくれたんだ、ありがとう!入試主席って凄いね!あのパンチ凄かったもん!」

 

詰め寄られ、出久の顔は一気に真っ赤になった。本当に小さくグラファイトが呻くのが聞こえたが、こればかりは場数を踏んで慣れて行くしかなかった。申し訳なく思いつつも、ある種の諦めに辿り着く。

 

「実はあれ結構痛かったんだよね‥‥『個性』使ったとは言え殴ったの鉄だし。もう大丈夫だけど。」

 

「今日って式とかガイダンスだけかな?先生ってどんな人なんだろうね?!」

 

「お友達ごっこしたいなら他所に行け。」

 

低く、気だるげな男の声が二人を黙らせた。

 

「ここはヒーロー科だ。」

 

声の主は廊下に立っている女子の後ろに寝そべっていた。黄色い寝袋に入っている無精髭の男の姿はまるで芋虫だ。ずっと寝袋に入った状態でここまで来たのだろうか?そもそも何故寝袋に入っている?彼の正体は?三人の頭の中を様々な質問が駆け抜ける。その状況で言える事はただ一つ。

 

何かいる。

 

「ハイ、静かになるまで八秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠けるね。」

 

男は器用に立ち上がって寝袋を脱ぐと、黒の上下と首の包帯の様なマフラーの様な、兎に角帯状の物が幾重にも巻き付いた異様な姿が露になる。

 

しかし彼の言葉から察するに、恐らく担任か何かなのだろう。つまりはプロヒーローだ。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。」

 

寝袋のどこに収納されていたのか、人数分のプラスチックで包装された学校指定のジャージを取り出した。

 

 

 

 

「今から『個性』把握テストをやる。」

 

グラウンドで担任を名乗った相澤は開口一番に言い渡した。

 




さぁてと・・・・・屋内戦闘訓練は原作のままのペアで行くかな・・・・それともハードル上げちゃおうかな?

次回、File 19:除籍をDodgeせよ!

SEE YOU NEXT GAME........
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