龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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ゆっくりと伸びる低評価に若干へこんでいく・・・・・しかし!
逃げない負けない泣かない!果て無き執筆スピリッツ!

・麗日がすぐ反省するのはおかしいとのコメントがあったのでもうちょっと自分の信念に忠実にしておきました。


File 29:いざ出陣、Cavalry War!

本戦第一回戦の競技を選定するルーレットがスクリーンで目まぐるしく回る。

 

止まった種目は、予選通過を果たした四十二人での騎馬戦。

 

「個人競技じゃないのか‥‥?」

 

騎馬戦の基本的なルールは知っている。出久は自分の周りにいるクラスメイトを、サポート科を見回した。個人競技でない以上、人選が大事だ。これはそう苦労はしない筈だ。なにせ障害物競走で一位を制したのだ。勝ち馬としてのアピールは十分した。欲しがらない筈が無い。唯一の懸念は人選だ。

 

「チームは一つにつき最低二人、最大四人で騎馬を組んでもらうわ。ルールは普通の騎馬戦とほとんど変わらないけど唯一違うところがあるのは、予選の結果に従い各自にポイントが振り分けられる事!与えられるポイントは下から五ポイントずつ増えて行くわ。そして一位の選手に与えられる持ち点は、一千万!」

 

脳内で組み立て初めていた戦略が、ミッドナイトのその一言で波に浚われる砂の城の如く崩れ去った。

 

守るより攻めてポイントを奪う方が遥かに理にかなっているし、やりやすい。そして一位の圧倒的なまでの高得点は、下位の者であればあるほど奪うモチベーションが高くなる。なんせ何位であろうと、出久の持ち点を奪っただけで後は逃げ切ればいいのだ。

 

これで自分と組んでくれる人間の選択肢はかなり限られてくる。推薦枠組の二人と入試次席の爆豪、飯田はアウトだ。クラスメイトとはそこそこ打ち解けているが、まだはっきり友人と呼べる程交流は深まっていない。

 

久しぶりに、体が震え始めた。恐怖からでもあり、武者震いでもある。自然と口元が緩み、笑みとなっているのだ。説明を聞きながら出久は高速で戦略を練り直し始めた。

 

「制限時間は十五分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイントを表示した鉢巻を必ず首から上に着用して奪い合います。獲った鉢巻きも同様の位置にね。それとこれが一番重要なポイント。騎馬が崩れても、鉢巻きを取られてもアウトにはならない!当然『個性』の使用は認めるけど、あくまでこれは騎馬戦。悪質な崩し目的の攻撃はレッドカード、一発退場よ!以上!チーム作り、開始!」

 

スクリーンにチームを決める時間の十五分が表示され、カウントダウンが始まる。出久がまず狙いを定めたのは、クラスメイトの常闇踏影だった。ノートにまとめた彼の『個性』は、人体の可動領域を無視して側面、頭上とあらゆる死角に瞬時に対応可能な物だ。

 

「常闇君、僕と組んで欲しい。」

 

「・・・・・受諾した。よろしく頼む。」

 

「ありがとう。」

 

再確認はしない。集中的に狙われると言う警告も。向こうは承知の上でやっている、覚悟を疑うのは選手として失礼と言う物だ。後二人。

 

「私と組みましょう!一位の人!」

 

「え?」

 

後ろから声をかけられ、出久は振り向いた。ピンクの髪の毛にゴーグル、そしてごてごてとサポートアイテムを身に付けた女子が手を振っていた。

 

「君は、もしかしてサポート科・・・?」

 

「はい!発目明と申します!あなたの事は知りませんが、立場利用させてください!」

 

あけすけだ。建前などあった物じゃない。しかし納得できる。サポート科の成功への道は、自分が作り上げたサポートアイテムの機能性を見せつけ、企業やヒーロー事務所に売り込む事なのだ。

 

「貴方と組めば、必然的に注目度ナンバーワンになるじゃないですか!つまり私のドッ可愛いベイビー達が大企業の目に留まるわけですよ!ベイビーはた~くさん用意してきていますので、お気に召すものがあれば是非使ってください!」

 

巨大なケースを広げると、所狭しとサポートグッズが並んでいる。

 

『サポートアイテムの選定は、俺がする。俺が言う物を取れ。』

 

「分かった。発目さん、よろしく。これで三人。あと一人は・・・・」

 

発目、常闇両名と共に探す。既にチームはそこそこ出来上がっている。爆豪の騎馬は芦戸、瀬呂、そして先頭に切島。峰田は障子、蛙吹の三人組。轟は八百万、上鳴、そして飯田と、他にも凶悪な組み合わせの連中ばかりだ。

 

「麗日さん、僕達と組んで欲しいんだ。」

 

あの日別れた後、改めて思い返してもやはり出久の考え方ややろうとしている事に納得が行かなかった。自分が長期間にわたるいじめらしいいじめを受けた事が無いからそう言えるだけなのかもしれない。自分は友人とは言え、幼馴染二人の問題には何の関係も無いし、その本質を知らない。

 

話を聞いたとはいえ本質を理解していない癖に知った風に上から語る自分は間違っているのだろうか?

 

自分が理想とするヒーロー像を押し付けている偽善者なのだろうか?

 

黙って何も言わずに成り行きを見守るだけに留まった方がいいのか?

 

今この場で質問の答えは出ないが、後回しだ。自分だって勝つ為にここに来ている。更に勝ち上がる手段があるならば、迷う訳には行かない。出久が差し出した手を、麗日は数瞬の躊躇いを見せはしたが取った。

 

「・・・・・うん。分かった、よろしく。」

 

 

後でしっかりと謝らなければならない。彼と組むのも、自分の為でもあるが、彼の為の罪滅ぼしでもあるのだ。

 

「何はともあれ、これで四人。」

 

持ち点は、一千万飛んで三百二十五ポイント。対するチームは十一組。

 

『さあ!上げてけ、鬨の声!血で血を洗う戦いが狼煙を上げるぜ!十二チームの残虐バトルロイヤル、START UP! THREE! TWO! ONE!! 』

 

「スタート!」

 

開始の合図とともに、五つのチームが向かってきた。これは、今や一千万の争奪戦。

 

「いきなり襲来とはな・・・・・追われし者の運命か。選択しろ、緑谷。」

 

「逃げの一手。発目さん、麗日さん!顔避けて!」

 

握ったスイッチを押し、出久の背中のバックパックが火を噴き、包囲網の内側から上空へと押し上げて突破に成功した。

 

「逃がすか!」

 

耳郎のイヤホンジャックが伸びて来るが、常闇の『個性』であるダークシャドウが巨大な両腕でそれを薙ぎ払った。

 

「よし。ダークシャドウ、俺達の死角を常に見張れ。」

 

『アイヨ!』

 

「流石常闇君、中距離からの全方位防御は敵なしだ!凄いよ!」

 

「選んだのはお前だ。」

 

「着地するよ!」

 

麗日の合図で彼女は発目とブーツを起動し、落下の衝撃をホバリングによってゼロにした。現在の重量は、麗日、全員の服、そして装備のみ。サポートアイテムへの負担もほぼゼロだ。

 

「どうですか、私のベイビー達は!?可愛いでしょ!?可愛いは作れるんですよ!!」

 

大興奮で尋ねる発目に出久は大きく頷いた。気が昂っている所為か、口調も多少変わっている。

 

「機能性も速度もばっちり!凄いよ、ベイビー!発目さん大天才!発明の母!麗日さんもゼログラビティありがとう!」

 

「でしょお~!?」

 

「まだまだいけるからね!」

 

「オッケー、このまま前進!」

 

止まっていてはいけない。複数の相手がいる時は、絶対棒立ちになってはいけない。複数の『個性』を持ったチームは言うなれば脳無と変わらない。違うところがあるとすれば脳無程凶悪ではないという事と、『個性』を持った人間がそれぞれ独立して考える人間である事だ。それだけ思考の差と戦術のバリエーションに幅が出るが、連携が綿密であればある程、間違いを犯せる余裕が無くなる。

 

「あれ!?う、動けへん!?」

 

麗日の足裏にもぎもぎがくっ付いて地面に縫い付けていた。

 

「峰田君か・・・・!」

 

障子が頭を低くして迫る。体格を生かし、複製腕の被膜で背中を覆っている。その隙間からもぎもぎに加えて蛙吹の舌も伸びてくる。正に移動砲台だ。騎馬崩しが出来ない以上、中にいる二人への攻撃は勿論、鉢巻き奪取もほぼ不可能だ。

 

「ごめん、発目さん!」

 

『チュドド・ドーン!』

 

再びバックパックの起動スイッチを押して上空に逃げたが、代償として麗日のホバーブーツの一つが千切れてしまった。

 

「ああああああ!ベイビーが千切れた~~!!」

 

これで一旦離れられたが、上空すらもホームグラウンドの男が一人いる。黒煙を引きながら飛んでくる人間爆撃機、爆豪勝己が。

 

『おいおいおいおいおい!あいつ騎馬から離れてんぞ、良いのか!?』

 

「テクニカルなのでオッケーよ!地面についてたら駄目だけど!」

 

「常闇君、ガード!」

 

「承知!」

 

『オオっと!』

 

ダークシャドウがその身を挺して爆豪の爆破を受け切った。

 

「グラファイト、黒龍モード行くよ!」

 

『ようやく本領発揮か。』

 

『LEVEL UP! MIGHTY JUMP! MIGHTY BLOCK! MIGHTY DEFENDER! Z!アガッチャ!ド・ド・ドドド黒龍拳!DRA! DRA! DRAGOKNIGHT HUNTER! GRAPHITE!』

 

「レベル5、アーマードダークグラファイト!」 

 

「姿変えた所でやるこたぁ変わらねえんだよ!」

 

更に爆発を重ねてぶつけて行くが、ガシャコンバックラーの前では爆破は通らず、意味を成さない。旋回しながら背後から再び仕掛けるが、ダークシャドウが再び行く手を阻む。すかさず爆破でどかせると、出久がいる位置に向かって手を伸ばした。

 

『出久、投げろ!』

 

「うおおおお!!」

 

風を切って投げ飛ばされたガシャコンバックラーが爆豪の手を弾き、姿勢を大きく崩させた。

 

「DOUBLE DELAWARE SMASH!! かーらーのー、DETROIT SMASH!」

 

そしてブーメランのようにバックラーが旋回して戻ってくる前に両手のデコピンで空気を弾いて爆豪を怯ませ、その隙に拳で生み出した風圧で移動し、別の地点へ着地した。流し目で爆豪が瀬呂のテープで回収されるのが見えた。あれがある限り地面に落ちるという事はあり得ない。

 

「発目さん、ブーツ壊しちゃってごめん。」

 

「大丈夫です!ベイビーはここからいくらでも成長できますから!」

 

「ごめん、片足制御じゃ難しくて・・・・!」

 

不可能ではないが、やはり転んだり着地からのランニングスタートがワンテンポ遅れるリスクは犯せない。麗日のブーツが片方お釈迦になった以上、もう上空には飛べない。出来るとしても精々後一回出来るか出来ないかだ。

 

「気にする事は無いよ。まだ手はある。」

 

スコア表示を見ると、自分を含む上位の三チーム以外は持ち点がゼロになっていた。その内のチームに爆豪の名前がある。奪ったのは、物間チーム。見るともう四本近くは鉢巻きを首にかけている。得点が見えない様にご丁寧に裏返しだ。

 

「え?嘘・・・!」

 

しかしこれで多少は楽になる。完全にブチ切れた爆豪は、出久の前に他の連中の鉢巻きを根こそぎ奪う計画に変更したようだ。しかし、そんな時に立ち塞がったのが轟チームの騎馬だった。

 

残り時間は七分三十秒を切った。

 

『出久、替われ。後半は俺にも楽しませろ。』

 

「オッケー。よろしく、グラファイト。」

 

主導権をグラファイトに譲り、グラファイトは首を回した。頭に巻いた鉢巻きを指さす。

 

「欲しいのだろう?これが。全力で取りに来い。」

 

正面はやはりと言うべきか、機動力に特化した飯田だ。彼以外にも、他のチームがポイントを取り戻そうと、トップに躍り出ようと再び包囲戦に持ち込んできた。

 

「常闇、指揮権は譲って貰った。今まで通り防御に徹しろ。」

 

轟チームには飯田、轟以外に厄介なメンバーが二人いる。広範囲への無差別攻撃が出来る上鳴、そして味方を巻き込まないアイテムを創れる八百万が。

 

「了解した。」

 

「無差別放電、130万ボルト!」

 

再びダークシャドウが身を挺して高電圧の電撃からチームを守り抜いた。防げなかったチームは全身麻痺に加えて思考停止、おまけに棒立ちと来ている。轟は畳みかける様に八百万が創り出した鉄棒を通して地面を凍らせ、他のチームの足を障害物競走と同様に地面に縫い付けた。群がる四チームを一蹴した。更に横槍を入れられないよう氷壁を作り出し、自チームと出久達を隔離した。

 

「一騎打ちに持ち込んで来たか。中々策士ではないか、轟よ。」

 

「感心してる場合ちゃうよ!もう後が無いやん!」

 

だが問題は無いとばかりにアーマードダークグラファイトは腕を組み、頭上を見た。自分を見ずに上を見る姿を訝り、轟達も上を見た。フィールドに大きな影が落ちる。

 

『お?!おおおおおおおお!?なんじゃありゃああああああ!変身した緑谷の腕にある楯が!超ドデカくなっちゃってるぞおいいいいいいいい!』

 

巨大化したガシャコンバックラーが、両チームの間に向かって落ちてきているのだ。落下までもう時間が無い。

 

「宣戦布告をした男が二人共相手の陣営にいる。これは、手札を晒させる博打だ。さあ、どう出る?」

 

仕掛ければ手札が割れる。仕掛けなければ氷が砕けた隙間から逃げられる。

 

「緑谷の奴・・・・!」

 

ダークシャドウで距離を取らせ、反時計回りにじりじりと回り込む緑谷チームの騎手は掛かって来いとばかりに手招きを続ける。

 

「時間は三分を切った。僕が出る。」

 

「飯田さん?」

 

「ここで逃がしたらこの手はもう二度と通じない!今しか無いんだ!しっかり捕まっていてくれ!獲れよ、轟君!」

 

ふくらはぎのエギゾーストパイプから噴き出す炎がプラズマカッターの様な青白い光へと変わっていく。

 

「さあ、来い!!」

 

「トルクオーバー、レシプロバースト!!!」

 

刹那の合間に距離を詰め、轟の指先はしっかりと鉢巻きを捉えた。出久の鉢巻きを見事奪い取ったのだ。直後に、地響きと共に巨大化したガシャコンバックラーが激突し、土煙を巻き上げる。姿は見えないが、音で緑谷チームが距離を取ったのを確認した。

 

だが、首回りが軽い。

 

「あの野郎・・・・・!?」

 

「飯田。今のは・・・・・肝が冷えたぞ。素晴らしい必殺技だ。痛み分けと言った所だな。」

 

アーマードダークグラファイトの両手には、轟が首にかけていた鉢巻きが全てあった。根こそぎ奪われたのだ。戦果は1175点。一位ではないにせよ、差は鉢巻き一つ分。

 

『あーーーーーーっと!!!またまた大番狂わせだ、やってくれたのは轟チームのエンジン、飯田天哉!何だあの技!?あるなら先に使えYOOOOOOOO!見事一千万奪取!しかし緑谷チームもただじゃあやられねえ!轟の鉢巻きごっそり持ってったぜ!』

 

「氷は砕けた。発目、もうそろそろ効果が切れる。ワイヤーアンカーで楯を回収しろ。」

 

「了解です!」

 

射出されたワイヤーアンカーが楯を絡め取り、巻き取っていく。

 

「氷は砕け、突破口は出来た。どうする?」

 

スコア画面を見ると、轟、爆轟チームがツートップで自陣は三位。鉄哲チームは五十点差で四位となっている。

 

「痛み分けとなってしまったが、現在は三位。一千万は丁度目の前にある。取り返すのは筋と言う物だろう?左側に回り込んで進め。」

 

「おっしゃあー!行くよ!」

 

地面に向かってビームガンを乱射して目くらましを作り、上空のブロックを再び破壊する。中のエナジーアイテムが落ちて来た。

 

「そうそう何度も使わせませんわ!」

 

『発光!』

 

腕から伸びるコンクリートの柱で弾こうとしたが、触れた瞬間にその柱が目もくらむ眩い閃光を放ち始めた。

 

「来るぞ!」

 

レシプロバーストの影響で『個性』が使えない飯田が目を覆いながら叫ぶ。

 

「八百万、絶縁・・・・いや、間に合わねえか。しかたねえ・・・・・耐えろ。上鳴!もう一発だ!」

 

辺り一面に雷が迸る。ダークシャドウに楯を投げ渡して防御させ、飛び上がった。バックパックは最初の雷撃で使い物にならなくなったが、ジャンプ力は無くても数十メートル程度は問題無く跳躍距離の範囲内だ。

 

「ブロックが残り少ないか・・・・・」

 

届く範囲にあるブロック全てにビームガンの銃撃を浴びせて破壊し、目当ての青いエナジーアイテムを鉢巻きに触れさせる。

 

『逆転!』

 

『TIME UUUUUUUUP!!!!!二回戦終了!!!!早速上位四チーム、行ってみようか!』

 

「三位、か・・・・惜しいな。目の前に一千万があったと言うのに・・・・」

 

「でもでも、トップスリーに食い込んだんやし・・・・」

 

「問題は無い。俺と出久がいる限り、我々の完全勝利は確定している。」

 

着地したグラファイトが自分の首を指さした。鉢巻きが一本しかない。裏返すと、見えるのは唯一八桁の数字を振った物だった。

 

『一位!最後の最後でどんでん返し!緑谷チーー—ム!』

 

「え・・・・?」

 

「ま、まさか・・・・・・!?」

 

『二位!轟チーム!!!』

 

「馬鹿な!?確かに一千万は僕達が・・・!」

 

「上に飛びあがった時、またブロックを破壊して鉢巻きに触れさせていた。大方、持っている物と取られた物を逆転させる効果があったんだろう。くそっ・・・・」

 

自分の首に巻き付いた四本の鉢巻きを悔しそうに引き千切って投げ捨て、握りしめるあまり掌から血が出始めた左拳を悔しそうに見つめて轟が唸った。

 

「あのグラファイトと言う方・・・・・自立した『個性』というだけでも厄介なのにあの能力の幅広さは反則級ですわね。まさか物体にまであのアイテムが作用するとは…‥」

 

『三位、爆豪チーム!』

 

「ぬぁあああああああああああーーーーーーーー!!!!」

 

芦戸、瀬呂、切島の三人は次の試合に進めるのだから悔しいが結果オーライと言っている

が、しゃがみこんだまま地面に向かって吠えるは、爆豪だった。

 

『四位、あれ!?心操チーム?!いつの間に逆転してたお前ら!?ともかく、以上の四チームが最終種目へ進出だぜ!YEEEEEEEAAAAAAAAAAAAHHHHHHH!!!!』

 

「ふぅ~・・・・全く。ひやひやさせてくれるな、グラファイトも緑谷少年も。」

 

第二種目が一段落した所でオールマイトはトイレに向かい、懐にある手紙を取り出した。相澤が出久からだと言って届けた手紙だ。体育祭の準備もあり、今の今まで開ける事が出来なかった。

 

黒幕は、オール・フォー・ワン。

 

グラファイトの筆跡でただ一行、そうとしか書かれていなかったが、それで悟ったオールマイトは、手紙を握り潰した。まさか本当に彼の言う通りになるとは。よもや生きていたとは。

 

しかし奴ならば納得がいく。死柄木弔に接触したのがいつかは分からないが、接触したことはまず間違いない。USJ襲撃計画の周到さと死柄木の性格のちぐはぐした感触の原因はそれなのだ。根津校長には及ばないが、常人の何倍も生きてきて蓄積した知能と経験、人脈、その他のリソースは十分脅威だ。

 

そしてグラファイトが鑑識に回した死柄木の血液。あのDNA鑑定も。嘘だと思いたいが、目を背けた所で事実は変わらない。

 

やはりあの男は・・・・オール・フォー・ワンは、吐き気を催す程に、骨の髄まで純然たる悪だ。

 

「申し訳、ありません・・・・・・お師匠・・・・・!!」

 

五年前の師匠の死に際と彼女の墓前で泣いたのが最後だった。

 




いやー、色々苦労しました、これは。ようやくトーナメント形式ガチバトルです!

File 30: Old-Fashionなガチバトル

SEE YOU NEXT GAME......

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