龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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結局「主人公側の考えが正しい!」な流れになっているやら「こう描いた方が読者ウケが良い」といった作者の作為的な意図が展開やキャラの考え方などの面で強くなっていると言う意見が多いのう。まあ原作でのもやもやが拙作で解消されているという意見もありで賛否両論なのですが。

悪い意味で緑谷が原作とは異なる方に変わりつつあるって言われても、二次創作だから変化が無きゃ原作丸パクリになって面白くないどころか法律の問題に発展しますし。


File 30: Old-Fashionなガチバトル

「これで最後の種目か・・・・」

 

「うん、でもなんであろうとガシャットはもう使えないね。相澤先生のルールもあるし。」

 

腕を組んでグラファイトは忌々しそうに鼻を鳴らす。体育祭開幕の数日前に相澤からメッセージが届いていた。グラファイトの力を発揮する為に提出したアイテム使用許可申請書は受諾され、申請は通りはしたものの、交換条件があった。他の教師達との協議の結果、バグヴァイザーZを使うのは構わないが、ガシャットは体育祭の競技が何であれ基本形態に必要なマイティ―ディフェンダーZは競技一つにつき一度、合計二度、その他は一度使えばそれ以降の使用を禁ずる、との事だ。

 

最初こそ出久は渋っていたが、曲がりなりにも参加出来るのだからいいではないかとグラファイトは条件を呑み、出久もその意思を組んで条件を呑む旨を伝えた。

 

「せめてこのもう一つが使えたらなあ・・・・」

 

未だラベルがガシャット同様に真っ黒い、芦戸のデータから作ったガシャットを見つめる。一体何が足りないのだろうか?

 

「しかし、待っていろと頼んでおきながら本人が来ないとはどういう了見だ、轟焦凍は。俺もいい加減腹が減っている。」

 

「悪ぃな、待たせて。話はすぐに済む。」

 

出久が轟に持った第一印象は、冷たい人間だった。爆豪を『動』とするならば彼は正反対の『静』と言うべきか。目つきもおよそ高校生のそれとは思えない。

 

「俺はお前に気圧された。見えなかったかもしれないが、一千万を獲った後俺は、一瞬左を使いそうになった。自分の誓約を破っちまったんだ。飯田も上鳴も八百万も常闇も感じてなかった。あの目くらましで、俺だけが気圧された。オールマイトがUSJ襲撃の時に踏み込んで放っていた遠くからでも感じられるあのプレッシャーと質が同じだった。はっきり答えろ。お前、オールマイトの隠し子か何かか?」

 

質問を理解した直後、グラファイトが腹を抱えて笑い出した。数秒置いて出久も必死で笑いをこらえようと口を抑えた。

 

「真面目な面構えで何を聞くかと思えば・・・・・!フハハハハ!出久がオールマイトの息子か、だと!?ハハハハハ!ふぅ・・・・・中々冗談が上手いな、お前は。」

 

「隠し子って・・・・・・!!ないないない、ありえない。全然違う。そんなんじゃないし。」

 

しかし目をかけられているという事に気付かれている以上、轟の頭の中ではその可能性も決してゼロではなかったのだろう。

 

「つまり、それとはまた別の繋がりという事か。けどまあ、最初に言った様に詮索するつもりはねえよ。俺の親父がエンデヴァーだってことは知ってるよな。万年ナンバー2のヒーローだ。お前がもしナンバー1ヒーローの何かを持ってるなら、俺は猶更お前に勝たなきゃいけねえ。」

 

二人は何も言わず、轟の話を黙って聞いた。

 

「親父は病的なまでに上昇志向が強い男でな。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せた。それ故生ける伝説オールマイトの存在を疎ましく思っていた。自分では超えられない。そこで次の策に出た。」

 

「なるほど、それで納得がいった。貴様は個性婚によって生まれたのか。まさかまだそのような前時代的な蛮行に及ぶ奴がいるとはな。それで、氷結の能力を持つ女の親族を金で買収でもして、オールマイトを超えるヒーローを創ろうとしている。凡そそんなところだろう。」

 

「ああ。」

 

「つまり、君が左を使わず勝たなきゃいけない理由って言うのは、エンデヴァーを・・・・・自分の父親を完全否定する為、なの?」

 

「そうだ。俺は奴の承認欲求を満たす為の道具じゃねえ。だから俺は、糞親父から受け継がされた左は死んでも使わねえ。右だけで、勝つ。」

 

目の周りの火傷痕を抑える轟の手は震えていた。怒りと悲しみが毛穴から噴き出てくる。

 

「僕も、ある意味同じだよ。」

 

「あ?」

 

「僕はね、中学の時までずっと自分が『無個性』だと思っていた。それでずっといじめられてたんだ、爆豪君に。その他大勢の人に。この戦いで、僕は彼を真正面から捻じ伏せて、格下じゃないという事をはっきりと分からせる。ヒーローらしからぬ行動だって言われちゃったけど、ヒーローも人間だ。けじめをつけさせないと僕の気が済まない。」

 

一変して出久の目つきが、纏う空気が鋭くなった。

 

「でもだからこそ、言っておく。ふざけるなと。僕は全力で叩き潰しに行く。持てる力の全てを使って。半分しか使わないつもりでいる半端者に宣戦布告されたと分かった以上、僕は侮辱としかとれない。僕だけじゃない、自分の全てをぶつけてここまで勝ち上がって来た人達皆の顔に泥を塗る行為だ!」

 

「同じだと?お前こそふざけた事言ってんじゃねえぞ!オールマイトに、そのグラファイトって奴に、今まで散々助けられてここまで来たお前が知った様に上から語ってんじゃねえ!」

 

癇に障った轟の表情もどんどん険しく、語気も荒くなっていく。だがすぐにここで言い争っても無駄だと悟り、兎に角左は使わないと言い捨てて去って行った。

 

「全く、父親の上昇志向という名の病がうつって父親を完全否定するという形に変異するとは。世の中は皮肉だな。しかし、お前もあそこまでの啖呵を切れるまでに肝が据わって来ているとは中々進歩したではないか出久よ。」

 

「昔の自分を嫌でも思い出しちゃうんだよ。」

 

誰かの尺度で勝手に測られ、語られる理不尽さに対する怒りは、轟と同様十年以上の経験がある。

 

「グラファイト、僕はどうすればいいの?」

 

「何をだ?」

 

「彼の言う通り、僕は色んな人に助けられてここに来た!個性婚で生まれた訳でもない。親に煮え湯を浴びせられた事も無い。親に暴力を振るわれた事が無い僕なんかが彼の事を分かる筈が無いんだ!分からない・・・・・相手の事が分からないのに、どうやって助ければいいんだ!?」

 

自分の目の前に、手が届くところに、救わなければならない人がいる。方法は幾つか浮かぶが、どれも直感的にこれでは根本的な解決にはならないと分かる。どれも最適解ではない。何だ?何をすればいい?何をどうすれば?そもそも爆豪を試合など関係無くエゴの為に叩きのめそうとしている自分なんかが救っても良いのか?

 

答えようとしたグラファイトはこめかみを抑えて呻いた。まずい。出久のストレスレベルが跳ね上がっている。

 

「まず・・・・・落ち着かんか愚か者!」

 

「はぐぁっ!?」

 

デコピンの衝撃で頭が大きく跳ね上がった。

 

「いらぬストレスをかけるな、全く。轟を救う最適解なら、騎馬戦の時に我々が一瞬だけだが既にやっている。」

 

「え?」

 

「奴に、左を使わざるを得ない状況へ追い込むのだ。」

 

出久は訳が分からなった。轟に左の炎熱を使わせる事が彼の救済にどう繋がると言うのだ?

 

「エンデヴァーは奴の父親。何をしようがその事実は変わらないし、逃げる事は出来ない。しかし、奴はそれから逃げようとしている。ならばやる事は逃げる事をやめさせる。これ一択だ。あの炎はエンデヴァーの物ではないと身を以て知らなければ、奴は永久にあのままだ。」

 

逃げる事をやめさせる。

 

ようやく理解が追いついた出久は目を見開いた。形は多少違うが、グラファイトが中学で出久にさせた事と根本的に同じだ。

 

「エンデヴァーの血から生まれた炎である事に変わりは無いけど、コントロールしているのは轟君・・・・・」

 

「そうだ。分かったら行くぞ。いい加減腹が減った。お前のストレスレベル上昇で余計にな。」

 

「ご、ごめん・・・・・・」

 

「こういう込み入った事情がある問題の解決は、シンプルなアプローチが望ましい。とりあえず、最初は肉体言語で会話すればいい。それと、もし言葉を交わすつもりならば何を言うかはあまり深く考える必要は無い。」

 

二人は急ぎ足で食事の為にその場を去った。

 

 

 

 

 

「さて、食事は取った。軽い瞑想もした。柔軟体操も完了。」

 

追加でボトルに残っているプロテインと生卵を混ぜたドリンクを飲み干し、再び会場に向かう。相変わらずの熱気は最終種目に入るという事もあり序盤よりも上がっている節がある。

 

最終種目の前に行われるのは、予選落ちの選手も全員参加できるレクリエーション。既に本場アメリカから来ているチアガール達が見事な連携の振り付けを始めていた。そしてA組の女子全員も同じチアガールのコスチュームとポンポンを両手に持っている。

 

「騙しましたわね、上鳴さん、峰田さん!!」

 

「八百万さん、『個性』であれを作ってたんだ・・・・・全員似合ってるけどさ・・・・」

 

握手を交わす上鳴と峰田に罵声を浴びせる八百万を見て、グラファイトは底冷えするような薄ら笑いを浮かべて二人の方へ歩いて行く。

 

「貴様ら、いい加減にしろよ?女の尻を追いかけるのは勝手だが、今回はやり過ぎだ。」

 

「ほぶぉ?!」

 

「どへぅ?!」

 

どっしりと構えたグラファイトの拳から繰り出された的確なボディーブローで二人は地に這いつくばった。

 

「まあまあ、最終種目までまだ時間あるし、張り詰めてても仕方ないよ。いざ!やったろう!!」

 

唯一乗り気だったのは『個性』故に存在感が薄い葉隠だった。あまり活躍できず、尚且つしていても気付いてもらえなかった鬱憤を晴らすかのようにポンポンを振り上げる。

 

『レクリエーションが終わればお前らお待ちかねの最終種目!四チーム総勢十六名から成る、トーナメント形式のガチバトルだ!』

 

「それじゃ、組み合わせを決めるくじ引きやるわよ!組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。トーナメント進出者は参加の如何は個人の自由。息抜きしたい人、温存したい人もいるだろうし。」

 

しかしくじを引く前に、尾白が手を上げた。

 

「あの・・・・俺、辞退します。」

 

「え?!」

 

「尾白君、何で・・・・!?」

 

「折角プロに見てもらえる場なのに。」

 

「終盤ギリギリまでしか騎馬戦の記憶が無いんだ。多分、彼の『個性』だ。一年に一度しか無いチャンスを棒に振るなんて馬鹿げていると思うだろう。でもこれは、僕のプライドの問題なんだ。皆が全力を尽くしてここまで勝ち上がってきたステージに、どさくさに紛れてここまで来た僕が肩を並べて立つ資格は無い。」

 

「B組の庄田二連撃です。僕も同様の理由から棄権します。実力云々以前に、何もしていない者が上がるなんて、この体育祭の趣旨に反するのではないでしょうか?」

 

「そういう青臭い話はさぁ…‥好み!二人の棄権を認めます!」

 

好みで決める主審。自由なのは良い事だが、いくらなんでも限度を振り切っている。

 

「となると、二名の繰り上りは騎馬戦五位の拳藤チームから必要なんだけど・・・・・」

 

しかし拳藤は騎馬戦のチームメイトと話し合い、最後まで上位をキープし続けた鉄哲チームから二人選出するべきだと言う意見を出し、それが受諾された。B組から進出するのは鉄哲、そして塩崎茨の二人だ。

 

それぞれの対戦相手が決まった所で、レクリエーションが始まる。

 

「腹ごなしの運動がまだだったな。どうせなら、体をほぐしながら公の場に出て舞台度胸をつける訓練もしようではないか。」

 

「・・・・・何をする気?」

 

恐る恐る尋ねた出久の目に映る、グラファイトの悪い笑みは嫌な予感しかしなかった。

 

「たった今閃いたのだ。この起動不能のガシャットを起動させる方法と、それをこのレクリエーションに役立てる方法を。ついてこい。」

 

グラファイトに先導されるままに向かった先には、既にチアガールのコスチュームから学校指定のジャージに着替えた耳郎響香がいた。

 

そこで気付いた。芦戸の特技はダンス。耳郎の特技は、楽器の演奏。

 

「そう言う事か・・・・」

 

「そう言う事だ。俺も何故今まで気づかなかったのかと己に腹が立っている。耳郎響香、一つ頼みがある。レクリエーションを更に盛り上げる為だ。」

 

「え、ウチに何させる気?」

 

目から猜疑心がありありと見える。峰田の策にまんまと乗せられてしまって警戒心が高まっているのだ。

 

「腕を出すだけでいい。すぐに済む。」

 

出された腕に未だラベルが現れないガシャットを挿入したバグヴァイザーZの銃口を彼女の二の腕に押し付けた。ガシャットのラベル部分に色が宿り始めた。

 

「ありがとう、耳郎さん!ほんっっとに!」

 

「え、あ、うん・・・・」

 

「すまんな。これはまあ、礼の品として納めて貰いたい。」

 

訳も分からないまま走り去った出久の後姿と悠々と歩き去るグラファイト、そして渡された小さな箱を交互に見ながら耳郎はその場に立ち尽くしていた。

 

「ってこれDEEP DOPEのメンバー全員の直筆サイン入ったギターピックじゃん!?!?ほ、本物!?」

 

「さてと。必要な物は揃った。後は舞台に立つ役者がいる。出久、芦戸を連れて来い。全てが自由な体育祭だ、飛び入り参加の出し物も自由だろう。

 

「え・・・・グラファイトまさか・・・?!」

 

「フハハハハ、ありがたく思え。人間逃げ場を失くして開き直ってしまえば羞恥心も糞も無い。存分にキレキレの動きを見せてやるといい。曲は、俺が選んでやる。行って来い、今すぐだ。」

 

有無を言わさぬ迫力で迫られ、出久は芦戸を探しに走り去った。

 

チアガールのパフォーマンス、玉転がし、借り物競争とレクリエーション競技が続いて行く。

 

『さぁ~て、さておいたレクリエーションはこれで――』

 

『ソラシドREVOLUTION!ガシャット!ソ・ソ・ソラシド レミファソ! BREAKING DANCING REVOLUTION!』

 

「花道オンステージだ。」

 

バグヴァイザーを地面に突き刺し、ゲームエリアとなった会場の四隅にスピーカーが現れ、音符がそこら中に散らばる。

 

『お?おおぉ?!なんじゃこりゃあああああああああ!?』

 

「ミュージック、スタート。」

 

音楽が始まると同時に二人はステージ中央に立った。

 

「どうするの?打合せとか何もしてないけど!」

 

「大丈夫!芦戸さんは好きに踊って。僕が合わせるから。」

 

「オッケー、行くよ!」

 

好きに踊れる。それだけで十分やる気になった芦戸は培って来たダンステクニックを存分に見せつけた。出久も数秒それを見ながら飛び込み、動きを合わせてステップを踏んでいく。

 

「緑谷、一緒にフィニッシュ!」

 

曲が終盤に差し掛かったところで指示が飛ぶ。

 

「うん!」

 

最初に学んだブレイクダンスのシックスステップ、シャッフル、バックスピン、フレア、スワイプと派手さが増していく。

 

ああ、楽しい。やはりダンスは楽しい。先ほどまでの悩みが、胸のもやもやが、嘘の様に吹き飛んでいく。気分が高揚する。ステップを踏む度に、視界が回転する度に、体が動くこの瞬間だけに全てを捧げて良かったと、全身に力が漲る。

 

やはり始めて正解だった。

 

曲が終わると同時にハイタッチを交わし、ステージから降りた。

 

『えー・・・ああ、よし、終わったな!飛び入りパフォーマンスたぁやってくれたなあ!いい感じに盛り上がった所で、ステージも完成だ!いよいよやってきました、ガチンコ勝負!ARE YOU READY!?』

 

「YEEEEEEAAAAAAAAAHHHHHHHHHHH!!!!!」

 

プレゼント・マイクの合いの手に開場を揺るがす歓声が挙がる。

 

『心技体、そして知恵!総動員して駆け上がれ!怪我上等!こちとら我らのリカバリーガールが待機してるから、道徳、倫理、一切捨て置け!ただし、勿論命にかかわるような怪我は糞だぜ、OUT!ヒーローはヴィランを捕まえる為に拳を振るうのだ!』

 

ルールは簡単。相手を場外に落とすか行動不能にする。後は参ったなどと降参の意を示させる事も勝利となる。

 

『まずは第一回戦!今までの種目に加えレクリエーションでも驚かせてくれた、ヒーロー科緑谷出久!VERSUS! ごめん、まだ何とも言えねえ!普通科、心操人使!』

 

肩を回しながらステージに上がり、心操と向かい合う。

 

『よりによってこいつが相手か。出久、俺はこの種目では、何も言わん。手を出すとしても爆豪や轟との戦いだ。変身するか否かもお前が判断しろ。』

 




話の流れ的にタイトル詐欺になっちまった、申し訳ありません。次回こそ、次回こそ勝ち抜きバトル書きますから!

次回、File 31: Show me a move! 強さの種類

SEE YOU NEXT GAME......

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