龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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最近思ったんですけど、ガシャットの音声って考えつくのが案外難しいですね。レベルがまだ一桁に留まるガシャットならまだ何とかなるんですけど。

特にオリジナルのダブルX系やクロノス、マキシマムにハイパー無敵のあれ、音声どころか最早短めの歌だし。試行錯誤しておりますが韻の踏み方や言い回しが自分の中で納得できてないのであります。

後はクリティカルフィニッシュ以外の必殺技に使う言葉のチョイスをどうしよう?

まあ登場するのはまだ先なのでそのうち思いつく筈!(超適当)

気長にお待ちくださいまし。では本編どうぞ。

6/15: コピペミスがあったので大至急修正しました。ご指摘いただいた皆様ありがとうございます。


File 31: Show me a move! 強さの種類

プレゼント・マイクの号令は既に出た。しかしどちらも動かなかった。出久は拳を固めてはいるが変身すらしていない。

 

「参った、ね。これは心の強さを問われる戦い。強い将来を思うなら、形振り構ってなんかいられない。あの猿はプライドがどうとか言ってたけど、チャンスをどぶに捨てるなんて馬鹿だと思わないか?」

 

「さあね。」

 

答えた刹那、出久の拳は緩み、だらりと下がった。目も虚ろになり、まるで夢遊病者のように軽く猫背になっている。

 

「俺の、勝ちだ。」

 

『あれ?!おいおいどうした~~~~!!大事な初戦だ、盛り上げてくれよ!』

 

しかし出久はそれでも動かない。呼吸以外は石像の様に固まったままだ。

 

『緑谷、開始早々からの完全停止!ビクともしねえぞ!「個性」か?!心操の「個性」なのか!?全然目立ってなかったけど、彼ひょっとしてやべえ奴だったのか!?ヒーロー科緑谷出久、まさかの攻略!成るか下克上!?』

 

『だからあの入試は合理的じゃねえって言ってんだ。二人のデータを個人戦の為にまとめて貰ったが、心操はヒーロー科、普通科の両方の試験を受けてる。ヒーロー科は落ちる事を想定していたんだろうな。あいつの「個性」は強力だが、実技試験は仮想ヴィランとの戦闘。戦闘能力に作用するものじゃない。ポイント稼ぐなんざどだい無理な話だ。』

 

「お前はいいよなぁ、緑谷出久。振り向いてそのまま場外まで走れ。全力疾走だ。」

 

ぎこちない動きのまま、言われた通りに出久は後ろを向き、フィールド内と場外を隔てる白線目掛けて一直線に走り出した。十歩、二十歩とペースが上がり、場外負けまでの距離が縮まっていく。

 

「知っているか?夢ってのは呪いと同じだ。呪いを解く方法はたった一つ。夢をかなえる事だ。途中で挫折した奴は一生呪われたまま、らしい。こんな『個性』でも、俺はその呪いにかかっちまった。お前なんかに俺の気持ちは分からねえ。だからそれを解く為に、俺の為に・・・・負けてくれ。」

 

だが、白線を越えるまで僅か二歩。その手前で出久の足は完全に止まっていた。後ろの足が地を蹴ったまま片足立ちになっているのだ。まるで前に出すまいと抵抗するかのように。

 

出久は必死でもがいていた。頭の中にかかった靄を払おうと、靄から脱しようと死に物狂いで抵抗していた。尾白から控室で警告はされていた。物理的ショックによって洗脳が解けた事も。しかし出久は敢えて洗脳される道を選んだ。

 

相手の『個性』を受け切ったうえで勝利するなどと言う挑戦を自分で設定していた自分が恨めしい。しかし結果的に半分は成功した。足は止まったのだ。足だけは。次は口だ。僅かに口を動かし、噛む。強く、強く、顎の力を更に強めると、口の中が生暖かくなった。しかしこれでは足りない。衝撃、衝撃、衝撃、衝撃・・・・!

 

刹那、脳内で一陣の突風が吹き荒び、靄が晴れた。そして出久の目に八つの影が目に映る。全員が自分を見ている。

 

何だあれは?誰だ、あれらは?

 

彼を中心に一陣の強い風がぶわりと会場を襲った。途端に体の自由が戻り、左手が激痛に見舞われる。ちらりと見たが、人差し指と中指が赤紫色になっていた。間違いない。折れている。

 

だがやったのは、自分ではない。願ったのは自分だが、あの時は足を止めるだけで精一杯だった。ならば誰が?あの知らない八人の影か?誰であれ、彼らの存在を認識したあの一瞬だけ頭の靄が完全に消えた。

 

八つの影。八人。

 

もしやと出久は思った。自分は九人目。ならば、あれは歴代ワン・フォー・オールの継承者達の影、残留思念とでも呼べるものなのか?トゥルーフォームのオールマイトらしき影もその場にいた。辻褄は合うが、今はこの際どうでもいい。考えていても仕方ない。痛みを呑み込んで心操の方を振り向くと、勝機得たりと笑みを浮かべる。

 

『も、戻ったぁ~~~~!!緑谷出久、ふっかーーーーーーつ!場外負けまで残す所二歩!起死回生の逆転!洗脳を打ち破りやがった!ひやひやさせてんじゃねえよ全く!!』

 

今は、考えるのをやめる。

 

「何をした…?!何をしやがった!」

 

初見殺しの洗脳が破られ、心操は明らかに動揺していた。その一瞬を突き、拳が届く間合いへと詰め寄る。捻りを利かせた右ジャブ二発が顔面を捉え、仰け反らせる。左足を前に出して彼の後頭部を掴んだが振り払われ、折れた指に拳を振り下ろす。

 

「づっ!?こ、んのぉ!」

 

折れているがそれがどうしたと出久のリバーブローが心操の脇腹に減り込む。

 

「くぉ・・・・!?て、めぇ!!」

 

続いて二発、三発とボディーに食らわせる。

 

連打を止めようと掴みかかるが当たる前に出久は軽やかなステップで下がり、その場で跳ねる。アウトボクシングの基本戦法、ヒットアンドアウェイだ。

 

『緑谷、軽やかなステップで掴み技を回避!心操はリバーブローで顔色悪そうだ、大丈夫か!?』

 

脇腹を押さえながらも心操は出久を見据える。歯を食い縛って痛みに耐えながらも踏ん張っている。まだ、目が生きている。俄仕込みと一目見て分かる手技をブロックして場外付近へと追い詰めて行く。

 

再び心操が拳を繰り出した。頭を僅かに傾け、出久は右拳をそれに合わせた。二人の腕が交錯し、十字架を描く。右のクロスカウンターで顎を揺らされた心操はその場で膝をついた。脳を揺らされ、踏ん張りが利かずともなんとか立ち上がろうとしたが、尻餅をついた瞬間、手が場外エリアに触れた。

 

「心操君、場外!緑谷君、二回戦進出!」

 

『大・逆・転!!僅か四発!拳四発で、一気に形勢逆転のTKO!初戦にしちゃあちと物足りなかったが、両雄の健闘を称えてeverybody clap your hands!!』

 

倒れた心操を助け起こすと、彼の手をしっかりと掴んだ。

 

「ありがとう、心操君。」

 

惜しみない拍手が沸き上がる中、出久は尋ねずにはいられなかった。

 

「何で君はヒーローに?」

 

「・・・・・憧れちまったモンは仕方ないだろが。」

 

「待って。」

 

「んだよ、これ以上俺に何を言おうって―――」

 

「君はヒーローになれる!絶対に。人の救い方に決まった形は無い。自分が出来る方法、得意な方法は絶対にある。それをこれから見つければいい!君はヴィランだって傷付けずに捕まえられる『個性』を持ってるじゃないか!雄英じゃ僕が知ってる中で誰よりも優しい『個性』の持ち主だと、僕は思う!」

 

誰も傷付けず、誰も傷つかず、言葉の力だけで事態を収束に向かわせる。器物損壊、死傷者、共にゼロ。正に平和を体現する素晴らしい能力だ。その気持ちに嘘偽りは無い。

 

「・・・・結果によっちゃヒーロー科編入も検討して貰える。覚えとけ、今回は駄目だったとしても、俺はあきらめない。ヒーロー科入って、資格取得して、絶対お前らより立派にヒーローやってやるから覚悟しろ!」

 

後ろを向いたままの言葉に、出久は何も言わずに親指を立てた右手を突き出した。それは古代ローマで満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草だった。

 

同じ普通科の仲間からの称賛やプロヒーロー達の心操を欲しがる声を受け、両雄はそれぞれの方向からステージを去った。

 

『これで二人目だな。』

 

一回戦中沈黙を守って来たグラファイトがようやく口を開いた。

 

「え?何が?」

 

『一人目はお前自身。二人目は、心操。これでお前は二人の人間の心を救った事になる。奴に至っては一度の顔合わせで二度救っている。』

 

「えっと・・・・どゆこと?」

 

『まず奴の「個性」に関する卑屈さから救い、更にヒーローの道を進む希望を救った。人間の言い方で言うならば、一粒で二度おいしい、と言う奴だ。ヒーローになる可能性は勿論、警察でトップネゴシエーターになる可能性もある。』

 

「ネゴシエーター?あれって映画だけの話じゃ・・・・?」

 

『人質立てこもり事件説得交渉専科は警察大学校にある交渉人育成の為のプログラムだ。警察が法的に「個性」を限定使用する許可を取る方法を見つければ、奴の世界は大きく変わるぞ。』

 

「なるほど・・・・・」

 

『しかし、まさか自力で洗脳を破るとはな。騎馬戦同様、場外まで二歩とは少しばかり肝が冷えた。何があった?何をした?』

 

「分からない。でも、見えたのは歴代ワン・フォー・オールの継承者達の影みたいな何かだった。それで、暴発して・・・・って、あれ?」

 

見ると指の腫れも痛みも綺麗さっぱり消えていた。

 

『もう治しておいた。他の試合を見に行くぞ。』

 

クラスメイトが座っている観客席まで飛び上がり、適当な席に腰掛けた。

 

「はー・・・・疲れた・・・・」

 

「デク君、おめでとーーーーーー!!!」

 

「ほんと良く勝ったよ、緑谷ぁ!場外行きそうになった時心配したよ!」

 

「うむ、逆転勝ちとは実に君らしい。しかし君は尾白君から彼の『個性』の事を聞いていたのだろう?それなのに何故?試合後も何か言っていたようだが・・・」

 

「彼にとっては気付け、かな?次の試合って、確か・・・」

 

「轟だよ。相手は瀬呂だ。」

 

「轟君か・・・・」

 

対策は彼との試合になってから考えればいい。グラファイトにはそう言われた物の、考えずにはいられなかった。どちらも『個性』と言う物のせいで辛い人生を送って来た。しかし中身は『無個性』だから、そして強力な『個性』だからと、性質は正反対だ。殊更理解など出来る筈もないと思う。

 

「皆、後ろの席に下がった方が良いよ。」

 

「え?何で?」

 

「いいから。轟君・・・・・昼休み前から結構というか、かなり機嫌が悪そうだったから。」

 

冷静そうに見える人間ほど、激情に駆られた時の爆発力が半端なく恐ろしい。自分自身が初めて本気でグラファイトを殴った時に思い知った。

 

しかし轟は違う。憎い父親に手向かえど訓練中に何度も一蹴されているのが目に浮かぶ。そして何よりその男がこの場にいると言うだけで怒りは更に煽られている。エンデヴァーが来ている事はほぼ間違いない。接触も当然しているだろう。

 

ならば尚の事父を否定し、氷結の能力だけで勝とうと言う意思表示をこれでもかと、最大火力でかましてくる可能性はほぼ百パーセント間違いない。そしてその最大火力の範囲が未知数である以上、出来るだけフィールドから距離は取った方が安全だ。

 

『優秀!優秀なのだが拭いきれないその地味さ!ヒーロー科、瀬呂範太!VERSUS!! 予選は二度も二位で通過と強すぎるぜ、YOU! 推薦入学者の実力は伊達じゃないってか!?同じくヒーロー科、轟焦凍!それでは最終種目第二試合、READY? START!!』

 

やはりと言うべきか、先に仕掛けたのは瀬呂だった。轟の上半身、下半身にテープを射出して動きを止め、そのままハンマー投げの様に振り回して場外に押し出して勝つ戦法に出た。『個性』の相性も含めて、先手必勝の奇襲は狙いとしては決して間違いではない。

 

だが、今回ばかりは相手が悪すぎた。

 

場外まで一メートルを切った所で、氷が地面を覆い、スタジアムの屋根を軽々と超える高さの大氷塊が瀬呂の体を完全に封じた。攻撃力、そしてそのあまりの規模に、あれほど白熱していたスタジアムの歓声がミュートボタンを押したように掻き消えた。

 

氷塊があわや破壊しかねない距離の席に座っている者達は恐れ戦く者、気絶する者、馬鹿みたいにあんぐりと口を開けたまま氷塊を凝視する者と、リアクションは様々だった。

 

「や・・・やりすぎだろぉ・・・・・!?」

 

「瀬呂君・・・・動けふ?」

 

綺麗に右半身だけが氷漬けにされたミッドナイトが若干不明瞭な声で尋ねる。流石はヒーローと言うべきか、タフだ。

 

「動ける訳無いでしょ、これ・・・・!いってぇ・・・・」

 

「瀬呂君、こうろう不能!ほほろきふん二回へんひんひゅつ!」

 

呂律が回らずとも主審の役目をミッドナイトはしっかり果たした。見上げた根性である。

 

「ど、ドンマイ・・・!」

 

「ドーンマーイ!」

 

敗北した瀬呂に同情のドンマイコールが数秒後に会場の沈黙を破る。

 

「すまねえ、やり過ぎた・・・・」

 

体に降りた霜と氷を砕いて氷に囚われた瀬呂に左手で触れ、溶かしていく。体に降りた霜と氷もそれで解け、蒸発し始めた。

 

「・・・・あんなんどうやって勝つのよ‥‥しょっぱなから見せつけてくれるわね、轟の奴。」

 

出久の言う通り最後列の席に移って氷が迫るのを間近で見ずに済んだ芦戸が、沈んだ声で呟く。

 

「それを何とかするのがこの種目の醍醐味ではないのか?」

 

同じく後ろに下がっていた常闇が深呼吸を続けながら答える。

 

「そうなんだろうけどさあ・・・・」

 

「まだ当たるかどうかは分からないよ。一回戦の試合がまだ全て終わった訳じゃないし。次の試合は・・・・・上鳴君とB組の、確か・・・・」

 

「塩崎茨だ。」

 

グラファイトが答える。

 

「そうそう。その人。」

 

「デク君、どっちが勝つと思う?」

 

「あ、それは俺も気になるな!緑谷って分析しながら力で捻じ伏せるっつー器用なことできるから案外当たるんじゃねえか?」

 

麗日の質問に切島が後ろを向いて背もたれから身を乗り出した。

 

「ならば、ちょっとしたゲームの取り決めをしようではないか。丁度ステージが乾くまでの猶予がある。まず、どちらが勝つかプレイヤーは予想を言い、外れた者は当てた者に、自販機の飲み物を一つ奢る。当然参加は自由だ。」

 

「グラファイト君!遊びとは言えそれでは賭け試合になるではないか!犯罪だぞ!?」

 

手刀の様に何度も腕を振り下ろして委員長モード全開の飯田がストップをかける。

 

「落ち着け、何もリアルマネーで賭け事をしようというのではない。内輪でマッチ棒をチップに見立ててポーカーをやるような物だ。勝負強さと観察眼を鍛える為のゲームと思えばいい。」

 

「面白ぇ、乗ったぜ!」

 

「あ、じゃあウチも。」

 

「タダのドリンク?やるやる~!」

 

「俺もやるぞ!」

 

「二つに一つ・・・・勝機は十分だ。」

 

「切島、耳郎、芦戸、砂藤、常闇の五人で、出久も入れて六人か。丁度いい。」

 

それぞれが勝利予想を述べ、出久、砂藤、耳郎が塩崎の勝利に、芦戸、常闇、切島の三人が上鳴の勝利に賭けた。

 

結果的に、上鳴は一瞬で敗北した。一言で言えば敗因は『油断』である。一瞬でケリを付けようと言う意気込みで騎馬戦の最中に見せた無差別放電を食らわせたが、茨が棘のある蔓の様な髪の毛を切り離して防ぎ切り、脳味噌がショートした所で地中を掘り進ませた蔓で捕縛して勝利した。試合時間は三十五秒と轟の圧勝に次ぐ最短時間だ。

 

「おっしゃー、ドリンクゲットォ!」

 

「ごちそーさーん。」

 

「な、なんかごめんね・・・・」

 

「ちっきしょー、負けたぁ~!」

 

「あちゃー、外れちゃったか。」

 

「・・・・不覚っ・・・!」

 




次回、Extra File: グラファイト's Weekend

感想でグラファイトのプライベートな一日を見てみたいと言うのがありましたので、早速試してみようと思います。続けるかどうかは分かりません。あくまで実験です。

以降の決勝戦はこれの後になります。対戦カードも原作と同じものでキープしておきます。

それでは、Ciao~!
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