およそ半年分の遅れを取り戻すため、今年中にあともう一話書くつもりでいます(注:間に合うとは言っていない)
「轟君、ナイスアシスト!」
「あんなのはたまたまだ。破れかぶれでやったら発射させちまってた。けど、お前のノートのおかげで逆転できた。ありがとな。」
「助けられっぱなしというのが少々腑に落ちませんが・・・・・・・」と、八百万は呟き、轟も頷いて同意の意を示す。
「その時は二人が僕を助けてよ。ね?」
「分かりましたわ。ええ、必ず!」
「ああ、絶対助ける。だから、お前も勝って来い。使いたかったら
「今回は大丈夫。役に立って良かった。」
演習試験場に、コスチューム姿の彼がいた。全てを敵と見定める剣呑な気配は無い。誰であろうと噛みつく牙も根元から再三へし折った。はたして戦えるのか?
「言っておくけど、僕に負けたからってオールマイトの胸を借りるつもりで戦ったら、許さないよ?」
ないと思いたいが、出久はとりあえず釘を刺しておく。
「わーっとるわ・・・・・」反抗する気力すら感じられない空返事は相変わらずだ。
「で?どうする?撤退戦?遅延戦?徹底抗戦?」
一応意見があるなら聞くだけ聞いておくが、相手があのオールマイトである以上、十中八九意味をなさないだろう。勝つ算段も逃げる算段も立てたところで潰される。あの巨体で新幹線がカタツムリに思えるほどのスピードを出せるのだ。どう足掻こうと戦闘は避けられない。奇襲の類もあの速度では捉え切れないから不可能。
「・・・・・てめーで勝手にやれや。」
チームワーク前提の試験。だのに思考の放棄。彼の唯一の持ち味と言えた、勝とうと言う強さの気配を背中に感じられない。いよいよ危険だ。グラファイトも言っていた。
――闘争心に亀裂が入った人間が戦いの場ですることは、敗北ありきの玉砕。駆け引きも駆け引きですらない
もしそんな事をするようならば絶交は確定だ。
「じゃあ、こうしよう。籠手を片方僕に渡して。それぞれ一発ずつ最大火力を放つ。オールマイトが怯んだ隙を突いて、お互い同時に全速力でゲートを目指す。以上。」
返事は無いが、僅かに頷くような動きが目の端に映り、手榴弾の形をした籠手を無造作に投げ渡される。
「ところで、病院で言った質問の答え、出た?」返事は黙秘。つまりはノーだ。まあそう簡単に見つけられたらそれはそれで疑う余地がありまくりだが。
開始の案内とブザーが鳴る。演習試験場は繁華街のど真ん中。脱出ゲートは進行方向にキロ単位で離れている。
「出て――」
刹那、衝撃。
肉眼では確認出来ないほどの距離から、地を抉る威力の風圧が特大サイズの砲弾となって飛んできた。当然、二人もその餌食となって木の葉のように舞って落ちる。
「町への被害など、糞食らえだ!」
直後、威圧。ビル群並みの高さまで狼煙の如き土埃の中から現れた。
満面の笑みを湛えた、オールマイトが。
我こそ地上最強の生物なりと言わしめんその佇まいは、まさしくヴィランの親玉と呼べる貫禄だった。活動時間の制限があり、憔悴による著しい衰えがあるとはいえ、『平和の象徴』となる為にその身を捧げて築き上げた力は伊達ではない。その威力は推して知るべし。直撃を食らえば踏み潰されたトマトが可愛く見える末路を辿るだろう。
「試験だ、などと考えていると痛い目見るぞ?私は
『MIGHTY DEFENDER Z!』
『PERFECT PUZZLE!』
右手にマイティ―ディフェンダーZ、左手にパーフェクトパズルのガシャットを持ち、起動。辺り一面にブロックと色取り取りのエナジーアイテムが散らばった。
「ですよね。」
ガシャットは出久の手を離れて宙を舞い、バグヴァイザーZのスロットに収まった。
『ガシャット!What’s the next stage? What’s the next stage?』
「培養。」
『Mighty Jump! Mighty Block! Mighty Defender! Z! A-gacha! Get the glory in the chain! Perfect Puzzle!』
ダークグリーンの右腕にはガシャコンバックラー、左腕には手榴弾型の籠手と多少ちぐはぐした印象はあるが、それ以外の全身が金に縁取られた青色のボディーを持った龍戦士が光とともに現れた。
「パーフェクトアーマードグラファイト・レベル52。オールマイト・・・・・・行きます!」
「その意気やよし!真心込めてかかって来い!」
重い。痛い。初めてマッハチェイサーバーストを使った時の比ではない。全身に電極を撃ち込まれて断続的に電流を流されるような激痛に喉の奥で呻く。使える事は使えるが、保って精々数分。繰り出す拳を掴まれ、更に顔面を掴まれた。ぬいぐるみの様に振り回され、地面目掛けて背中から叩き付けられる。すかさずバックラーで地面を殴りつけ、衝撃を逃がして受け身を取ったが、がら空きのボディーにもう一方の拳が迫る。
『液状化!』
間一髪、エナジーアイテムでゲル状に変化して拘束から抜け出し、拳がアスファルトにクレーターを入れた。背後を取り、籠手の発射体勢に入る。
「ゲートに向かって!」
『発光!』
しかしあくまで体勢に入っただけだ。同時に新たなエナジーアイテムを呼び寄せ、凄まじい光度で全身から光を放った。当然その身一つで戦うオールマイトにはそれに対抗出来る装備を持ち合わせていない。ガードを固めつつ腕で目を覆う。
『マッスル化!』
「歯ぁ食いしばれよ、ヴィラン!!」
オールマイトの胴体ほどにまで肥大化した籠手のピンを抜きつつ跳躍。再び閃光と共に解き放たれる特大級の爆発は、ゲート目掛けて放物線を描きながらパーフェクトアーマードグラファイトを後ろ向きに吹き飛ばした。
一先ず大きく距離を離し、ゲートに肉薄することに成功はした。下では爆豪が少し後ろを己の起こす爆発の余波で飛んでいる。
「いっつつ・・・・・!」
肩を抑える。多少やりすぎたかもしれない。最初はどんな能力かと思ったが、グラファイトの言っていた意味が身に沁みて分かった。
――パーフェクトパズルは・・・・・俺の生涯の友と呼べる男が使っていた力の一つだ。マッハチェイサーバーストや俺のドラゴナイトハンターZ単体より遥かに強い。エナジーアイテムを自在に使って戦闘を有利に運ぶ。元々頭で戦うお前には誂えたようなものだろうが、十分注意して使え。このガシャットのレベルは、50。今まで使っていたものとははっきり言って桁が違う。バグスターウィルスによる抗体は十分出来ているだろうが、これの連続使用は極力避けろ。俺が制御していない時に使えばどうなるか、俺でもわからん。
高位のガシャットを使うために蓋をしていたダメージと虚脱感が先程の一撃で一気に噴き出してきた。気を緩めればこのまま気絶、などという事もあり得なくはない。
怖い。分からないと言うのは、弱いと言うのはこれほどまでに恐ろしいのか。出久の質問の答えなど出ていない。答えなど出ているはずもない。今まで考えた事すらなかったのだ。自分が決めた様に生きる。何を言おうとやろうと、それが通った。誰もが黙った。
何故か?答えは単純、強い『個性』に恵まれたから。そして周りの人間もヒーローになることは天命、運命、なるべくして生まれて来たと信じて疑わなかったからだ。
だからそれを信じる皆を信じた。一番凄いのは、強いのは、偉いのは、自分なのだと。
だが実際は運が良かっただけ。『個性』という名の宝くじにたまたま当たったからだ。
もし自分が戦闘で大して役に立たない『個性』をもって産まれていたら?もしくはそんな能力など花から持っていない『無個性』として産まれていたら?でくのぼうと後ろ指をさされていたのは自分だったのかもしれない。
ヒーローになるのは誰の為?決まっている、自分の為だ。
ヒーローになるのは何の為?決まっている。勝つ為だ。
どれだけ考えてもこれは変わらない。これだけは。
ならば、ヒーローになるのは誰に勝つ為?分からない。
今まで死に物狂いで食らいついていた相手の姿ははっきりと見えていた。緑谷出久と彼の『個性』を名乗るランプの魔人や守護霊が如き存在、グラファイト。だが今はその明確なビジョンが無い。
それが、たまらなく恐ろしい。進むべき道が見えない。正解が、最適解が、分からない。自分は何と戦っていた?何と戦おうとしている?誰と?倒すべき敵は何だ?誰だ?
「戦闘中に考え事とは、随分余裕だね!爆豪少年。」
頭上から、声。ブワリと肌が泡立つ間もなく、拳が腰に突き刺さり、地面に叩き落とされた。その衝撃で自分の籠手が破壊されてしまう。
「君もだぞ、緑谷少年!」
地響きがすぐ近くで起こる。
「チームワークはまあギリギリ及第点といった所だな。最大火力で怯ませて距離を稼ぎ、脱出ゲートをくぐる。プランとしちゃあ悪くはない。だが、爆豪少年のアクションには大して
ああ、やはりか。
「さあ、くたばれ!ヒーロー共!」
そうだ。相手はハンデ付きとはいえ世界一高い壁。最速、最高、最強のヒーロー。負けてしまっても仕方ない。嘆息して、振り下ろされる拳が当たるのを待った。
『高速化!鋼鉄化!』
しかし、当たったのは何か金属のようなもの。自分ではない。朦朧とする意識の中、楯を腕にはめた鋼鉄の戦士が自分を庇っていた。
「答え・・・・・まだ聞いてないよ・・・・・・!君が目指すヒーロー、見つかったのか。」
「ねえ、よ・・・・・見つかってねえよ。」だがそれでもいい。今まで開き直ってなんぼの人生を送ってきた。ならば、とことん開き直ってやる。
「知ってた。」
「随分さっぱりした顔してるけどね、その割にはさ。」
「だから見つけんだよ。こっから。この戦いで。それが駄目なら次、それでも分からねえならそのまた次だ。俺は俺にしかなれねえ。けどだからこそ、俺になれんのは俺だけだ。」
怖い、それ即ち弱いと思っていた。挙句、柄にもない事をオールマイトに言われる始末だ。山の怖さを知らない登山家はいらない。山登りが好きだと言うこと知ったればこそ選んだ例えなのだろう。
分からないなら、それでいい。今は。
「だから・・・・・分かるまで俺は戦う。戦って、勝つ。」
「それじゃ以前と何も――」
「最後まで聞けや糞ナード。ヴィランに勝つたぁ言ってねえだろうが。んな糞ゴミクズ共なんざどうでもいいわ。俺が勝つのは、俺にだ。てめーでもオールマイトでもねえ。俺を超えられるのはただ一人、俺だ。」
諦めなければ答えは見つけられる。これが答えだとばかりに立ち上がる。
「分かった。とりあえずそれで今は納得してあげなくもない。」
鋼鉄化の効果が切れ、纏めて路線バスに叩きつけられた。ガラスを突き破り、座席も一部ひしゃげている。
「残り一キロ弱・・・・・時間は十分切った。はい、
『ジャンプ強化!伸縮化!』
それで遂に限界が来たのか、出久はたまらずガシャットを引き抜いて変身を解除した。
「あ“?てめ何でそれ抜いた?」
「負担半端ないんだよこれ……これ以上は多分気絶するか、動けなくなる。足引っ張るのは君一人で十分だから。」
元の人間の姿に戻り、ワン・フォー・オールを発動する。先ほどまでは使う余裕が無かったが、今はもうこれを使うだけの気力しか残っていない。
「後は俺がやる。」
「え?」
「俺がやるっつってンだよ。てめーはさっさとゲートくぐれや。」
足手まといならば、精々死に物狂いで
籠手が砕けたが、それはいい。あれは元々許容超過の爆破を
「くたばれや、オールマイトォォォォォ!!!!」
「ふん、そんな直線状の軌道など――」
しかし、突き出した爆豪の腕が伸びてオールマイトの頭を掴んだ。
「んなっ!?」
「
相手を固定した所で、腕の筋肉繊維どころか骨すら悲鳴を上げる限界ギリギリの最高・最大火力のゼロ距離爆破。爆豪は耳鳴りと遠のく意識の中で、体に何かが巻き付いて引っ張られるのを感じた。
期末試験編は後二話ぐらいで済ませます。そしてやっとパーフェクトパズルを出せた・・・・・・二度目の試験でノックアウトファイターを出します。ちょうど良い奴と戦わせるつもりなので。
それと、ステインと連合の関連性は完全に消してしまったので開闢行動隊のメンバーが大幅に変わります。
次回、File 53: Don’t say no! 勝利の為に
SEE YOU NEXT GAME......