ゴッドマキシマムゲーマーのレベルを指数表記で表した数字です。つまり、1 x 10^9です
そして更新のペース配分ですが、無難に7~14日に一度で行こうと思います。
少々迂闊だった、と言うのがウォルフラムの正直な感想だった。雇い主から気を付けるようには言われていたが後々になってからしか姿を見せなかったせいで完全に虚を突かれた。だが、今はまあいい。手駒の大半は失ってしまったが、本来の目的である個性増幅装置とそれを量産する手段も手に入った。
そして今、空に逃げる自分達を止める奴は誰もいない。
「警備システムが完全に再起動する前にずらかるぞ。急げ!」
「了解!」
しかしヘリに残った部下二人が乗り込んでエンジンを点火したその刹那、潰れて爆発した。
「親友を、返してもらうぞ。ヴィランよ!」
脱出を目前にして恐らく一番の難関が、現れた。二メートルを優に超える巨躯、彫りの深い雄々しい面差し、そして夜の闇をも煌々と照らし出さんばかりの満面の笑み。
「チッ、あの餓鬼どもに時間を取られ過ぎたか」
だが何も問題はない。いくら最強のヒーローと言えども、手札はこちらの方が充実している。何より、装置のテスト稼働と値段を吊り上げるデモンストレーションの相手にはうってつけだ。
振り下ろされる握り拳を『個性』で作り出した鉄壁で遮り、四方八方からの柱を繰り出して殴殺を開始する。タワーと言う人工の建造物と言う武器は『個性』で自在に扱える。対するオールマイトはその身一つ。地の利によって齎される圧倒的物量がある限り、自分は無敵だ。
「往生際の悪いヴィランだなお前はッ!」飛んでくる鉄塊をかいくぐり、再び肉薄した。「CAROLINA SMAAAAAAASH!!!」
「往生際が悪い?どっちがだよ?」
肉厚な鉄壁が再び攻撃を阻み、オールマイトの動きを止めた。更に壁にめり込んだ両手をギプスの様に嵌めさせ、釘付けにする。そしてさらに五本の鉄塊が側面から迫った。
「トシッ!!」まざまざと見せつけられるのは自分の
レセプションパーティーの貴賓。
緑谷出久と、彼の仲間達。
サム・エイブラハム。
オールマイト。
そして、メリッサ。
「もう、やめてくれ。私の事はいい!」
サムを庇った時に食らった銃弾が心臓を、いや、個性増幅装置などという物を作り出した自分の脳を貫いてくれていたらどれだけ楽だったろう。そうすれば、二度とこんな悲劇が起きる事は無い。
幸いウォルフラムはオールマイトに集中して自分の事を地面に置いている。見たところ手掌で直に触れなければ金属操作は出来ない。その証拠に片膝をついて地面に触れた体制を維持し続けている。ケースは手に握られたままだが、あれさえ引き離してしまえば勝機はある筈だ。
屑鉄で縛られた両手足に力を入れ、何とか立ち上がった。両足を揃えたまま跳ねると言う無様な格好だが、それでも距離は詰められる。十分に近づいたところで自分の全体重をケースのハンドルを握った手に全体重でのしかかった。
「こうも馬鹿ばかりとは、ヒーローが早死にするのも当然だな」
その目論見は儚くも潰えたかに思えた。のしかかったその腕に金属操作の『個性』の持ち主では出し得ない膂力でそのまま振り払われてしまった。しかしデビッドは間違いなく聞いたのだ。振り回されたケースのハンドルがその膂力に耐えきれずに砕ける音を。
匍匐前進でケースのもとへ辿り着き、しっかり抱え込んだ。そしてそのままタワーの端を目指して転がっていく。
「デイブッ、よせ!!」
「やるじゃねえか。装置諸共の自決とは、感動的だな。だが、させねえぞ」
「ぐぁあ!?」
突如左足に激痛が走る。地面が虎バサミの形に変化して脛をがっちりと挟み込んでいるのだ。ならば、とデビッドはその体制から残り少ない体力を費やし、ケースを開いて中に手を入れた。壊すだけの力も体力も無い。ならばせめて――
「おっと、危ねえ危ねえ」
踏み抜き防止の鉄板を仕込んだブーツの爪先が腹を捉えた。出血量も相まって、デビッドの意識が数秒ブラックアウトした。
「小手調べは十分。性能テストと行こうか」
タワー全体に青い光が走った。直後、ヘリパッド、欄干、フロア、そしてその下に十重二十重に敷き詰められたコードやワイヤー全てがまるで重力の作用方向が逆転したように捲れ上がり、持ち上がり始めた。それらがウォルフラムを中心に巨大な生物のように絡み合い、積み重なっていく。そして昏倒したデビッドもその中に飲み込まれた。
「Holy shitだ、畜生め・・・・・・!」会場で捕らわれている時にマッスルフォームを維持し続けた所為で既に限界を迎えつつある。一日の活動時間を削らずに済む安全マージンはとうに超えてしまっていた。
「オールマイト、バトンタッチの時間です」
「緑谷少年・・・・・!」
「いや~、流石に徒歩で階段二百階分は辛かったですよ。もう足が痛いのなんのって。あ、レセプションパーティーに来る人達、全員無事ですよ。A組の皆も、メリッサさんも、サー・ナイトアイも」
疲労を色濃く残しながらも冗談を飛ばす出久の姿に、オールマイトは少しばかり笑ってしまった。
「そうか・・・・・・ありがとう。しかし、バトンタッチは出来ない相談だ。デイブが、あの中にいる。彼を救わなければならない。グラファイトの計画に支障をきたすことは百も承知だ。だが、それを分かっている上で曲げて頼みたい。どうか私にも戦わせて欲しい」
出久の双眼が赤く輝いた。そして出久の口からグラファイトの声が発せられた。
『まあ、義理堅いのはお前の美徳だ。良いだろう。ならば、早々に決着をつけようではないか』
『DRAGOKNIGHT HUNTER! Z!』
逆手に構えたガシャットが光り、ゲームエリアが展開される。それと同時に、空中に大量のエナジーアイテムが現れ始めた。
『出久、行くぞ』
「うん。培――」
『違う』
「え?何で!?いつもは――」
『ああ、だがこれはいつもとは違う。こう言うのだ。変身』
『ガシャット!BUGGLE UP! ド・ド・ドドド黒龍拳!DRA!DRA!DRAGOKNIGHT HUNTER! GRAPHITE!』
ガシャットをドライバーに挿入した直後、頭上に投影されたモニターのエフェクトから黒い雷が矢継ぎ早に降り注ぎ、出久の姿は一瞬見えなくなったが、その闇の中から黄金の炎を吹き出す仮面の戦士が一歩踏み出した。夜の闇に紛れる筈のモノクロな配色が一等星の様に輝いている。特に強く光っているのが、風も無いのにたなびく赤いマフラーだ。
「見知りおけ、ヴィラン。我が名は仮面ライダーグラファイト。幽谷より舞い戻った、禍時の龍戦士なり。アブソリュートカリバー、我が意に応えよ」
そう唱えて頭上に手を掲げると、風を切って一振りの剣が地平線の彼方から飛来し、彼の手に収まった。
「オールマイト、道は我らが作る。遅れるなよ」
『BLADE BURN! HEAT! FLAME! MAGMA! VOLCANIC DISCHARGE BLAZE!』
Bボタンを押すと赤からオレンジ、オレンジから黄色へと変化する超高熱の刃は飛んでくる巨大な鉄屑のブロックと柱を触れた所から跡形もなく消し去っていく。
「威力は申し分なしか。では、もう一押し」
バグルドライバーのAボタンを押し込んだ。
『GUN!』
グラファイトは空いた左手を前に突き出すと、腕に一対の銃身が現れた。そこから砲弾に等しい光の弾丸を枝分かれする無数の棘を備えた一際大きな柱に向けて撃ち放った。発砲の都度、龍の咆哮もかくやと闇夜に轟く。
『まだまだ』
『CLAW!』
膝と爪先の突起が巨大化し、猛禽類、否ドラゴンの鉤爪となった。捕らえようと迫る幾筋のワイヤーとケーブルがばらばらに切り裂かれていく。
「流石はデイブが作っただけの事はある・・・・・・なっ!」
オールマイトもグラファイトに負けじと取り零した障害を打ち砕きながら突き進む。喉の奥の濃厚な鉄の味が消えない。だがまだだ。無視しろ。ここで痛みに怯めばさっきまで受けた攻撃のダメージがぶり返す。まだ倒れるわけにはいかない。せめて、友を救うまでは。
「この・・・・・・死にぞこない共がぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」
しぶとく、しつこく、頑強な抵抗を続ける二人に業を煮やしたウォルフラムは両手を頭上に掲げ、宙に浮かぶ瓦礫や鉄塊、その他の操れる物全てを一点に集め始めた。それは見る見るうちに膨れ上がり、タワーその物に影を落とす隕石に勝るとも劣らない巨大な物が出来上がった。
明らかに一人の人間ではどうにもできない。だがグラファイトはただ首を傾げ、再びドライバーのボタンに手を伸ばした。
『FANG!』
更にめぼしいエナジーアイテムに触れる。
『ジャンプ強化!』
迫りくるその塊に向かって一直線に突っ込んだ。グラファイトの仮面の口元が開き、オールマイトすらその熱風に顔を思わず背ける程の高熱を持つ黄金色の火を吹き出した。
『オールマイト、アレを殴れ』
「無茶苦茶言ってくれるな、君も!」
『我々が
すぐに意図を理解したのか、オールマイトは頷いた。
『仕上げだ』
『BLADE KEEN! ICE! FROST! BLIZZARD! GLACIAL DISCHARGE FREEZE!』
迫る鉄塊が間合いに入ったところでアブソリュートカリバーを突き出した。剣先が触れた所から霜が降り、やがて完全に氷に包まれた。
『BLADE!』
左手にアブソリュートカリバーを持ち替えると同時に、右腕から更に一本の刃が伸び、氷漬けになった鉄塊に亀裂を入れた。
「TEXAS SMAAAAAAAAAAAASH!!!!」
吹き上がる大量の水蒸気を裂いたオールマイトは固めた右拳をその亀裂の中心目掛けて突き出した。超高熱から即座に超低温に下がったそれの展延性はすぐに限界を迎え、轟音を上げながら乾いた粘土のように砕けていく。
それを突破されまいと強化された『個性』で形を維持しようとウォルフラムは全神経を集中させていたが、耳の裏に静電気の放電の様な痛みが走った。そして頭に装着していた顔に触れている装置のパーツが、ポロリと落ちた。
馬鹿な、とウォルフラムは叫んだ。試作品とは言え、装置は完成していた。サムはそう言っていた。しかし、一瞬だけデビッド・シールドがケースの中に手を入れる事を許したのを思い出す。
部品に細工をされた。デビッド・シールドがゼロから構築したものだ、ならば自分の一部のように構造もパーツも熟知している。それしか説明がつかない。
オールマイトの勢いが治まらない。穴の開いた袋から砂が漏れ出るように高まっていた力が抜けていく。
『最初に言ったが、俺は休息を邪魔されて頗る機嫌が悪い』
ぎょっとして上を向くと、左手に剣を持ち替え、新たに右腕からもう一本の刃をはやしている仮面の戦士の存在を忘れていた。もうあの規模の鉄塊を作るだけの時間がない。そして鉄の樹木の様に根差したその場にいる自分は逃げられない。避けられない。
『刎頸にも値する罪だが、初犯故に足蹴一発で手打ちとする。神に祈るなら今のうちだぞ』
二つ目のパーツが、火花を上げた。
『キメワザ!DRAGOKNIGHT CRITICAL PREDATION!』
最後にウォルフラムが感じたのは、申し訳程度の防御を貫き、腹を抉る巨大な拳と、首をもぎ取らんばかりの勢いがついた回し蹴りだった。
『会心の一発ゥ!!』
砂嵐のスクリーンを前に、男は笑った。手を叩いて笑った。最高の喜劇を見た、ボックス席の観客の様に。
「素晴らしい。素晴らしい力だよ、グラファイト。緑谷出久。いや――仮面ライダー」
少しは苦戦するかと思っていたが、己と互角の者が一人しかいなかった故の認識の甘さを思い知らされてしまう。老いるのも良い事ばかりではない。
「近々にリターンマッチを楽しみにしてくれたまえ。オールマイト共々、ね」
Pixivにあった仮面ライダーグラファイトの画像をイメージしていますが、プロトガシャットを使っていると言う事もあり、右胸のエクスコントローラー、左胸のライダーゲージ以外の配色は『覚悟のススメ』の主人公が使う強化外骨格『ゼロ』の様に黒に白、随所に差し色の銀です。マフラーはアクセントの為に一号・二号を意識した赤。
https://www.pixiv.net/artworks/64276994
今回は未登場でしたがファング、ガン、ブレイド、クローの個別使用以外にオールドラゴンもといフルドラゴンも使用可能な、攻撃と防御にステータスを振ったバランス型寄りのパワー型です。
次回、File 10: 泣いて、悔いて、Restart
SEE YOU NEXT GAME......