大秦寺さんのあの振り切れテンション好きやわ。
「キリがねえぞこれ!」
「左から三、右に四、正面は六!」
「ちょ、ヤオモモ!後ろ!後ろ後ろ!」
「まっかせて~!溶解度最大で、アシッド~チョ~ップ!」
時間の感覚などあったものではない。とにかく土で出来た魔獣を倒して前進、倒して前進を只管繰り返す。
残った距離はどれぐらいか。何十メートル前進したか。今何時何分か。それら全てに思考を割くだけの精神的余裕がない。出久を除く一年A組十九人全員での連携を維持するだけで手一杯なのだ。
土魔獣の形状に際はあれど、サイズは等身大、中型、大型に分かれており、まるで統率の取れた獣の群れの様に襲い来る。大型が楯となりつつ前進し、その馬鹿みたいなサイズに気を取られている間に中型が前衛として距離を詰め、等身大の土魔獣がその脇を固め、足元を守る。
おまけにこの土魔獣には血の通った獣と違い、急所が無い。頭や手足の一、二本が欠損してもすぐ足元の土を吸収して元通りになる。殴り、蹴り、投げ飛ばし、叩き潰し、吹き飛ばしても数が一時的に減るだけ。おまけに操る本人には一切ダメージフィードバックはない。そんな手合いを相手にしていれば自ずと己の役目が見えてくる。
空中遊撃隊を務めるのは、爆豪を筆頭に瀬呂、常闇、蛙吹、麗日の五人。
「死にさらせやクソモブ共が!!」
空中での機動力と攻撃力を持った爆豪は無限に湧き続ける有翼の魔獣を相手に文字通り鉄砲玉となった。爆風の勢いで飛び込みながら空中格闘を繰り広げて陣形を搔き乱し、確実に数を減らしていく。
「うっは~、荒れてんな、爆豪。まあ相変わらずだけどよ、ッと!」
瀬呂も肘のテープを伸ばして魔獣たちの翼や手足を絡め取り、時折振り返って後続がついてきているかを確認。前衛を爆豪に任せ、牽制と捕縛を優先し、全員がある程度固まるまで時間を稼ぐのだ。
「梅雨ちゃん、常闇、麗日!落ちてく奴、よろしく!」
「承った。ダークシャドウ、殲滅せよ!」
「任せて頂戴、ケ~~ロ~~~!」
「投げて~、解除!」
残りは撃ち漏らしの機動力を削いでとどめを刺しつつ、高台に登れた者から次に出現する新手を確認しつつ各員に伝達していく。
地上遊撃隊は飯田、轟、尾白、峰田の四人。
轟は空中遊撃隊の手が回り切らなかった方面をカバーした。山火事を鑑みて体に降りた霜を溶かし、体温を維持する以外での炎の使用を一切封印し、範囲攻撃による土魔獣の足止めとアブソリュートカリバーで迎撃。動きが止まったところで三人が更なる波状攻撃で一掃する。
「ちっきしょおぉおぉぉぉぉ~~~~!!!お前らの所為でズボンびっちょびちょじゃねえかクソッタレエ!!!」
轟が霜を溶かす時に生じる隙は、我慢していた尿意に負けた峰田が倍返しの八つ当たりもぎもぎ特攻、尾白の尻尾の滅多打ち、そして飯田の脚力でカバーする。
「くぬぅぉおおおおお!!!!動け!動けエンジン!エンストなど起こしている場合ではないのだぞ!動いてくれ!!」
エンストから回復して間を置かず即座にシフトアップ、そして更に度重なるレシプロバースト発動によって飯田のふくらはぎは早くも熱を帯び始め、排気口からも黒煙がプスプスと断続的に吹き出していた。心なしか、エンストから復活するまでのタイムラグも数秒伸びてしまっている。
「飯田、これで冷やしとけ」
霜を蒸発させた蒸気を纏った轟が右手でふくらはぎと排気口に氷の膜を張り、アブソリュートカリバーを地面に突き刺した。
「轟君、何を・・・・・・!?
「尾白、峰田、そいつら縦に並べろ」
轟の目つきと左手の先に集約していく高熱と光を見て察したのか、二人に否やは無かった。
「お、おう!」
「分かった!」
もぎもぎと尻尾で足元を崩された魔獣の数、およそ十体。
「一槍・炎螺!」
限界まで息を吸い込んで吐き出し、解放。息を吐き切ったところで炎を消し、同時に右半身で冷却。
両隊の役目は、一秒でも速く、一ミリでも前へ進む道を切り開くこと。負担など糞くらえとばかりに一切の出し惜しみを廃し、怒号に気合の声が爆発音や地響きに交じって木霊した。
司令隊は耳郎、障子、八百万の三人から為る。前者二人は発達した五感を駆使して敵の動きを察知し、八百万に伝達するのが主な役目だ。
「距離三百!右側面から更に六!」
「上空左翼から三、右翼から七!」
八百万はそれらの情報を総合して最適な配置や陣形の組み換えをいち早く割り出して各隊に伝える。
「耳郎さん伏せて下さいまし!」
「へ?うぉあっと!?」
いつの間にか背後に現れた中型サイズの土魔獣が耳郎に襲い掛かろうとしたところで胸から上が綺麗に吹き飛んだ。
「ご無事ですか?」
「あ、うん・・・・・・てか武器のチョイスえげつなっ!」
創造で作り出したグレネードランチャー・ダネルMGLとH&K MP7を装備し、後方からの火力支援と二人の援護も兼任している八百万は汗を無造作に手で拭い、耳郎を助け起こした。
「今の状況では、最高の誉め言葉ですわ」
防衛隊は切島、砂藤、上鳴、葉隠、口田、芦戸、そして青山の七人が務めている。役目はその名の通り司令隊の防衛だ。遊撃隊を第一防衛ラインとするならば、防衛隊は言うなれば最終防衛ラインである。故にチームで最も人数が多く、パワー、防御力、攻撃範囲、射程距離、機動力など個々の能力を掛け合わせて何倍にもポテンシャルを膨らませられる総合的なバランスを重視した編成となったのだ。
個ではなく群での移動であるため、ある程度足並みを揃えなければならない。が、しかし、着実に前進はしている。ノートによる客観的分析に目を通したおかげで強くなれている。そしてその実感がある。級友のありがたみを噛み締めると同時に、自分が成長していると言う自覚と、彼よりも早く辿り着こうと言う暗黙の意気込みがより一層皆のやる気に拍車をかけた。
「お~お~、皆すっごい頑張ってるね。あ、ここで右か」
険しい崖路を駆け上がりつつ反響する爆発音を耳にしながら出久は、所々で立ち上る幾筋もの煙を見て満足そうに何度も頷いた。
「まあ、あれだけお膳立てをしてやったのだ。これぐらいは当然だろう。でなければノート十九冊分の代金を全員から徴収しているところだぞ」
「グラファイト、それただのカツアゲ」半分は冗談なのだろうが一応たしなめつつ、出久はリュックの中からゲーマドライバーと今まで使ってきたガシャットを取り出した。「I・アイランドではバグルドライバーの方を使ったけど、合宿中はこっちの・・・・・・ゲーマドライバーの試験運用をしたいんだけど、いいよね?」
しかめっ面のままグラファイトは頷いた。「気は進まんが致し方ない」
使える物は使わなければ意味が無いし、副作用があれば早めに慣れておく必要がある。蓄積した三年分の抗体もあるし、特に問題は無いだろう。いざとなれば自分が出久の体の主導権を奪ってガシャットを抜き取ればいい。念の為にバグルドライバーで変身し、準備を整えた。
「では、実験開始だ。いつでもいいぞ」
「ん。じゃあ、行くよ?」
ゲーマドライバーを腹に充てるとバックルからベルト部分が伸長し、自動的に採寸にあった長さで巻き付いた。
「ねえ、グラファイト。この左腰のこれって何?」
「ああ。余分なガシャットを収納するホルダーと、必殺技のスロットだ。ガシャット挿入後、スイッチを二度押せば発動する。ちなみにガシャットを入れなければ、ステージセレクト、変遷によって別の空間に敵諸共に強制転送できる」
「え、そうなの!?」
つまりもしヴィランによる大規模戦闘が勃発した場合、ヴィランを纏めて自分と同じ空間に閉じ込める事が出来ると言う事だ。
「ああ。詳しい仕掛けは知らんから聞くな。ガシャットを起動しろ」
「ああ、うん」
『MIGHTY DEFENDER Z!』
起動スイッチを押し、ガシャットの端末部分が一瞬緑色の光を放つと、そこら中に地上と空中にいくつもの煉瓦模様のチョコブロックが現れた。
「ふむ、ここまではエグゼイドと同じか。では、お前から見て右側のスロットにガシャットを入れろ」
「右側ね。ほいっと」
『ガッシャット!』
「うわっ!?」自分を中心に展開した回転するキャラクターアイコンの円陣に驚き、思わず右手で払った。しかし、それが偶然アイコンの一つに掠ってしまう。
『LET’S GAME! MECCHA GAME! MUCCHA GAME! WHATCHA NAME!?』
回転が止まってアイコンが消え、出久は更に一際眩い緑色の光に包まれた。
『 I’M A KAMEN RIDER!』
そこに立っているのは、見紛う事なき仮面ライダーの姿だ。緑色の頭部とその向きが逆なこと以外はブーツや胸のライダーゲージを含め、ゲンムやエグゼイドによく似ている。
「ねえ、グラファイト・・・・・・・僕、もしかしてすっごいずんぐり体系になってない?背丈が伸びたのは嬉しいけどちょっと動きにくい。しかもうまくしゃがめないし。というか、これ着ぐるみに入った人みたいに倒れたら起き上がれないんじゃ?」
「まあ、それが第一形態だからな。だが四頭身の見た目に騙されるな、それでもフリーランナー以上の敏捷な動きができるぞ」
試しにその場で垂直跳びをしてみると近くにある樹木の梢付近まで容易に手が届く距離まで上がった。一瞬だが要綱を反射する一筋の何かが見えた。おそらくは瀬呂のテープ攻撃だろう。
「わ、ホントだ。凄い!」
「何か異常はあるか?些細な事でもすぐに言え」
「今は特に問題ないよ。最初のあのパネルが一杯出て来た時にはびっくりしたけど」
「よし。ならば次は第二形態だ。ドライバーのレバーを開け」
「レバー・・・・・・これか」
『ガッチャーン!LEVEL UP! Mighty Jump! Mighty Block! Mighty Defender! Z!』
レベル1の四頭身ボディーのパーツが弾け飛び、着地したところで、仮面ライダーはぐるぐると両肩を前後に回した。
「よしよし、この方が遥かに動きやすい。身長も・・・・・・伸びてる!これが百八十センチ辺りの景色か・・・・・・」
「これがレベル2。多少は能力値も見栄えもマシになるが、基本それだけだ。後は専用の武器がある」
「武器?」
「バグヴァイザーを使って変身していた時に、盾が出て来ただろう?そして轟に渡しているあの剣、あの類のモノだ。使うガシャットによって変わるし、武器にもそれぞれ単一だが能力がある。主に属性変更、形態変更の二つで別れるが、まあ使ってみなければ分からんな。これは合宿の為に取っておく」
「分かった。じゃあ、次は別のガシャットとの併用かな?」
「ああ。二つ同時に使う場合、当然戦闘能力は一気に跳ね上がるが、物によっては暴走の危険性がある。それと、特に注意が必要なのがこの二つだ」
そう言いつつ、グラファイトは赤と青のガシャットを一本ずつ取り出して見せた。
「ノックアウトファイター3と、パーフェクトパズル?これ、轟君のデータから作った奴だよね?」
「ああ。そして、俺の友であるパラドが使っていた物でもある。ちなみに――レベルは50だ」
「ごじゅ・・・・・・!?」
「ああ。文字通り、桁が違う。当然、副作用や負担も他のガシャットより遥かに大きくなる。使い続ければやがては順応するだろうが、それはまだ先の話だ。実戦での使用は極力控えろ。特に俺が近くにいない場合はな」
「分かった。じゃあ、次はこのガシャットの試運転を始めよう」
『ソラシド REVOLUTION!』
太陽が地平線に三割ほど沈みかけた頃、出久を除く一年A組十九名は魔獣の森を突破し、山の麓に辿り着いた。身も心も『個性』も限界まで酷使させられた少年少女達は、最早漫然と足を一歩ずつ前に進められるか否か、後一度『個性』を発動出来るかどうかの瀬戸際まで消耗しているのだ。
スタミナ自慢の爆豪でさえ両腕が上がらず、歩く度に上半身に走る鈍痛で終始表情を歪めたままだった。
轟も最初こそ持ち上げていたアブソリュートカリバーを引きずりながら歩いていた。両手の皮は豆が出来た傍から破れ、破れては新たな豆を作り戦い続けた為、シャツの袖を破って包帯を巻いていたが、今や真っ赤に染まっていた。
飯田も遂に脚に限界が来たのか、右足を引きずって歩いていた。脛には氷のシンガードを幾度も轟につけて貰った所為か、膝から足首にかけて凍傷になって皮膚が赤く変色し、痺れていて感覚が無い。
「何が三時間ですか!?」
切島が座り込むのを皮切りに、十九名のうち凡そ半数の緊張の糸が切れ、その場に座り込んだり蹲ったりした。
「あ、ごめーん。それ私らがやったらって意味だったの」
「実力差自慢かよ・・・・・・・やらしいな」
「あれ・・・・・・てか、緑谷は?あいつの事だから先に来てるんじゃ・・・・・?」
「いやいや、一応できるだけ後方確認はしてたけど何も見えなかったからそれは多分無いと思うけど・・・・・・」
しかし、そんな疑問に答えるかのように、ブォン、ブォン、とエンジンの空吹かしがどこからか木霊した。
「エンジン音・・・・・・こんな森の中で?」耳郎は首を傾げた。こんな森の中を高速で走破できるとしたら、オフロードバイクぐらいしかない。
「八百万じゃあるまいし、身一つで森に入ってった緑谷がバイクなんて持ってるわけ――」
『MACH! CRITICAL CHASER!』
しかし、峰田の否定を遮るように、皆が通ってきた獣道とはまた別の方角から人型サイズの物体が木々をなぎ倒しながら皆の前で止まろうと足の側面で地面を捉えた――が、止まり切れず派手にバランスを崩し、数メートル豪快に転がりながらようやく止まった。
『ガッシュ―ン!』
「いったたた・・・・・・流石に馬力がすごいな。あ、皆も到着してたんだ!お疲れ~!」
息切れはしているものの、皆ほど疲労の色は濃くない出久は大の字に伸びたまま頭だけを起こし、手を上げてパタパタ振って見せた。
『まったく、試運転だと言うのにいきなりレベル6のキメワザを使うとは。まあ、ある程度使いこなせてはいるか』
しかし、内心グラファイトは驚いていた。レベル1や2ならまだしも、エグゼイドですら所見では扱いきれなかったレベル5すら使いこなしているのだ。疲れてこそいるが、特に悪影響があるようには見えない。
「でもまあ、ノーライセンスの一年生にしちゃ随分良く動けてたね。躊躇いの無さは経験故、かな?特に、そこの三人と別ルート行ってた君!」ピクシーボブが両手で出久、爆豪、轟、飯田の四人を指し示した。「三年後が楽しみ!唾つけとこぉ―――!!!」
「・・・・・マンダレイ、あの人いつもあんな感じでしたっけ?」
言葉通り本当に唾を四人に向けて吐きかける様子を見て、相澤は内心頭を抱えたくなった。
「焦ってるのよ。職業上仕方ないとはいえ、ほら、適齢期的なアレで色々とね」
「適齢期と言えば・・・・・・その帽子被ってる彼はどなたのお子さんですか?」
流石に寝そべって会話をするのは失礼だと思って状態を起こした出久は、マンダレイから少し離れた所で一年A組の方を侮蔑と嫌悪の入り混じった視線を隠す気も無くぶつけている少年へ目を向けた。
「ああ、違う違う。この子は出水洸汰。従弟の子なのよ。ほら、挨拶しなさい、一週間一緒に過ごすんだから」
ある程度体から土屋枝葉を払い終わった出久はまずは自分がと立ち上がり、片膝をついて目線を合わせると、手を差し出した。
洸汰と呼ばれた二本角帽子の少年が返したのは、鼻先を狙った拳だった。しかし出久の僅かなスウェイバックで眼前に迫る拳は伸び切り、鼻頭の数センチ手前で止まった。
「筋が良いね。腰もしっかり入ってるし、ちゃんと拳も握りこんでる。でも大きく後ろに引くのがまずかったね」
疲れていてもヒーロー科だ。テレホンパンチなど当てさせはしない。止まった拳をピン、と指で弾いたが、今度はちょうどいい高さにある股間目掛けて蹴りが飛んできた。しかし出久が反応する前に、横から手が伸びて蹴り上げる足をがしりと掴む手があった。
「おい、クソガキ。てめえ大概にしとけよ?」
手の主は、爆豪だった。出久もまさか彼が割って入るとは思わず、視線を彼の方に向けた。普段の見慣れたいかつい人相は見る影もなく、どこか悲痛な顔に見えた。
「ヒーローになりたい連中なんかとつるむ気はねえよ」
足を離された洸汰はそう吐き捨て、走り去った。
「茶番は終わったか?」時間を無駄にされて明らかに憤慨している相澤が場の空気を整えた。
「全員到着したなら、さっさとバスから荷物を下ろせ。緑谷は元気が余ってそうだから手伝ってやれ。部屋に運んだら食堂にて夕食。その後入浴、そして就寝だ。言っておくが、これはまだ軽いジャブだぞ。本当の戦いは、ここからだ」
拙作で開闢行動隊をどうするかはほぼ纏まりつつあります。そして出久が変身するライダーの名前も決まりました。
次回、File 56: 滲む Hatred,重なる Past
SEE YOU NEXT GAME.........
開闢行動隊の登場時、立ち位置はどこがいい?
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原作通りヴィラン
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ステ様信奉のヴィジランテ
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作者にお任せ
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未提示の別ルート