龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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本っ当に長らくお待たせして申し訳ありませんでした。引っ越しやらフルタイムの仕事やら心療科のカウンセリングやら抗鬱剤投薬の調整やらを優先していて書く時間も書く気力も起きず、ほったらかしにしていました。

ですがエタらせはせん!エタらせはせんぞ!

最終話まで、俺は俺の光を走り切る(ネクサス並感)!!

定期的な更新は不定期なスケジュールに振り回されて多少難しくなりますが、ある程度書く元気も出て来たので続きを書かせていただきます。大変ご迷惑をおかけいたしました。もう忘れてしまっている方も多々いらっしゃると思いますが、まだ読んでいる方がいればこれからも拙作をよろしくお願いいたします。orz




File 57: 目指せ、Level Up

筋繊維は酷使すれば壊れ、修復されると太く、より強靭になる。学術的に身体機能の一部であると証明された以上、『個性』も同じである。

 

『個性』の限界値はそのままヒーローとしての活動限界値にも結び付く以上、ヒーローの卵にとっては義務であり、使命なのだ。

 

A組の面々は午前六時時の朝食前から既に『個性』伸ばしの特訓に励んでいた。

 

ドラム缶で沸かした熱湯に両手を浸け、汗腺を広げては爆破を繰り返す火力増強に悪態を叫びながらも従事する爆豪勝己。

 

凍結と炎を交互に発動し、浸かっている水の温度を一定に保ちつつ、規模と威力を徐々に上げて体を温度差に慣らす轟焦凍。

 

テープを絶えず出し続ける事で容量と強度、射出速度向上を図る瀬呂範太。

 

互いの『個性』の強度を高める為に硬化した切島鋭児郎を尻尾で殴り続ける尾白猿夫。

 

大容量のバッテリーと通電することで高い電力に耐えられるように銅線が剝き出しにしたケーブルを握りしめて悲鳴を上げる上鳴電気。

 

超長距離を走り続け、エンジンの強度、ギアシフトの効率化、並びに肺活量とスタミナを養う飯田天哉。

 

暗所では力を増し、暴走する黒影(ダークシャドウ)を洞窟で抑え込む常闇踏影。

 

発動型は『個性』の許容上限の底上げ、異形型、その他複合型は『個性』に由来する器官の更なる鍛錬。全員がおよそ人間にできる顔つきとは思えない程の凄まじい形相で『個性』伸ばしに励んでいた。

 

「何だこの地獄絵図・・・・・・!?」

 

ブラドキング率いる一年B組の面々は、開いた口が塞がらなかった。痛み、疲労、倦怠感、羞恥、その他のありとあらゆる不快感に真っ向から飛び込むA組の目には、光など無い。只々その日を生き延びようと一歩一歩足を前に進める事だけに命と執念を燃やすその姿は――まさに、鬼のそれである。

 

「でも、ヒーロー科のクラス二つで四十人ですよ?プロヒーロー八人でなんとかなるんですか?」

 

疑問を口にしたのはB組クラス委員長の拳藤だ。

 

「その為のあちきら四位一体!」

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「猫の手、手助け、やってくる!」

 

「どこからともなくぅ、やってくる・・・・・」

 

「キュートにキャットにスティンガー!ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ(フルver.)!」

 

ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのラグドールの『個性』であるサーチで最大百人まで対象の居場所、『個性』、弱点などの情報を把握、ピクシーボブの『土流』で各々の鍛錬に必要なエリアを形成、マンダレイの『テレパス』で複数人同時にアドバイスを出し、殴る蹴るの暴行でそれらを実践で使えるレベルまで虎が練り上げる。幅広い用途の『個性』を持つ四人だからこそ可能な鍛錬法だ。

 

「では、単純な増強型の者はついて来い。我―ズブートキャンプはもう始まっているぞ」

 

虎が視線を向けた先には、深く腰を落とした態勢のまま延々と砂の詰まった大きな壺を指先で保持したまま緩やかな速度で持ち上げては下ろしを繰り返す緑谷出久の姿があった。全身を緑色の電流が駆け巡り、発光している。汗はかけども力んでいる様子は微塵も無く、まるで座禅でも組んでいるような涼しい表情を保っていた。

 

三戦(サンチン)・・・・・・?いや、それを含めた站樁《たんとう》の修練か」

 

「やめてよし!打って来い!」

 

「20%・・・・・TEXAS SMASH!」ボクシング教本に使える理想的な右ストレートは虎の鼻先三寸まで迫ったが、大きく背中を逸らした虎は難なく避ける。しかしそれだけでは止まらず、スウェーバックの勢いで背中を更に逸らし、頭と上半身を己の股座をくぐらせてカウンターの猫アッパーを食らわせた。

 

自分よりも二回りは体格が大きい現役プロヒーローの掬い上げる拳の一撃で両足が地上から離れつつも出久は受け切り、ブロックに使った腕をプラプラと振った。赤く腫れており、今日中には間違いなく大きな痣を残すだろう。

 

「まだまだキレッキレじゃないか。筋繊維が破壊し尽くされていない証拠だ。腕立て伏せ用意!」

 

明らかに堅気の人間ではない凶悪な表情と、猫モチーフの可愛いコスチュームのギャップが醸し出す異様な威圧感に気圧された増強型『個性』持ちのB組生徒も、その場で腕立て伏せの準備を始める。

 

「Plus Ultraだろ?しろよ、ウルトラ」

 

「Yes sir!」

 

「声が小さい!」

 

「YES SIR!!」

 

 

 

「んぎぎぎ・・・・・・・!!」

 

痛い。幼少の頃に転んで掌を擦りむき、かさぶたすら碌に出来ていない状態で誤って湯船に浸けてしまった感触を更に数倍高めたようで、指先の感覚が既に無い。

 

それでも芦戸三奈は、『個性』の発動をやめない。

 

『個性』発動の都度肉体に害が及ぶのを防ぐために遺伝子が変化し、体内での酸の生成時に相殺するアルカリ性の化学物質が分泌され続けた結果、丁度化学実験で使ったリトマス試験紙の様に肌が全身ピンク色になったのだろうと言う見立てを医者から母と共に聞かされている。

 

だが、それはあくまで日常生活中、そして溶解度と量を標準レベルに調整した酸を放出した場合だ。上限を底上げしなければ最大放出量や溶解度、更にはそれらに耐えうる皮膚が作れない。両手に押し付けた岩壁は生乾きのセメントに手を押し込んだように手形の窪みが出来ており、足元にも垂れ落ちた酸ですり鉢状の穴が出来上がっていた。

 

掌での限界が来れば拳、二の腕の外側、側面、更には肘、膝、足裏など、活動中最も使う頻度が高いであろう部位から重点的に『個性』を追い込む。

 

早朝からの訓練はおよそ二時間。残り一時間半をようやく切ったところで、ふと考えてしまう。

 

「緑谷、大丈夫かな・・・・・・?」

 

ふと名実共にクラスのエース的存在が頭を過った。一年生の中では心身共に誰よりも強く、誰よりも己に厳しく、誰よりも『個性』運用の研究に余念が無く、自分が信じる正義の(ロード)を突き進む、完璧無敵の強者である彼の事が。

 

何時からか、彼の表情、特に笑顔が日に日に作り物になっている事に気付き始めてしまったのだ。良くも悪くも、普通とは違うと認識される肌や目の色彩が原因でいじめを受けていた頃に作り笑いの経験が幼少期にある。だからこそ、明るく振舞う所作がいかに見え透いた物であるか、分かるのだ。

 

多少大袈裟に口角を持ち上げ、表情をじっくり見られる前に顔を相手の視界から外す。

 

問題を無視し、憑りつかれた様に別の何かに打ち込んで気を紛らわせる。

 

今まで楽しい、遣り甲斐があると思っていた筈の活動から感じる筈の達成感が不意に無味乾燥になる。

 

社交の場や友人同士の集まりの渦中にいても禁じ得ない、孤独感と疎外感。

 

根拠こそ推測の域を出ない。だが、芦戸三奈は直感的に緑谷出久は助けを求めていると、確信した。

 

それを顕著に感じたのは、林間合宿の数日前、各人が必要とする物資の調達するためにショッピングモールに繰り出した時の事だ。必要な物を買いつつ、その他の調度品をウィンドウショッピングして会話と買い食いを楽しむ。学生の身分である者にとってはごく普通の、場合によっては思い出にもなるイベントだ。

 

皆がそれぞれ必要な物、欲しい物で三々五々に別れて散った中で、出久一人はベンチに座ってノートのページと睨み合い、眉間に爆豪とほぼ互角とも言えるほど深い皺を刻んで、買い物そっちのけで考えに耽っていた。

 

最初に会った時は数分まともに目を合わせるだけでも過呼吸を起こして卒倒しそうな彼の百面相は実に面白かった。それが今や、普通科や経営科の生徒達には非公式とは言え一年のエースとちらほら囁かれている。

 

芦戸自身も実際その通りだと思っていた。彼は、紛れも無い強者である。

 

ある時はUSJ襲撃事件にて徹底抗戦の姿勢を崩さず、応援到着まで脳無を凌ぎ切った。

 

またある時は雄英体育祭にて完膚なきまでの優勝を掴み取り。

 

更にある時は、悪名高きヒーロー殺しの捕縛に一役買い、更に更にI・アイランドにてテロリスト集団打倒作戦で司令塔を担い、オールマイトの援護もあってヴィランを撃退し、島を人質ごと奪還。

 

ヒーロー候補とは言え若干十五歳の、それも一介の高校生の経験としては果てしなく濃密だ。場合によっては国内外のお偉方から感謝状の一つ二つは貰ってもおかしくない経歴である。実際、I・アイランドのドローンが統括管理官の直筆の署名が入った感謝状を校長室の窓際に届けに来たのだ。

 

はっきり言って、次元が違い過ぎる。

 

これほどの修羅場の経歴を持つ強者をどうやって救う?彼の様な戦闘能力など持ち合わせていないのは自分が一番よく分かっている。

 

だがそれでも活路を見出すのがヒーローだ。命を救うばかりがヒーローではない。心をも救って初めて意味がある。

 

 

 

「異常は無し、か」

 

奥の一間にて、専用の接続アダプターで繋がれたバグヴァイザーとゲーマドライバーのデータをパソコン二台の画面を通して調べるグラファイトは『異常なし』の検知結果が腑に落ちないとばかりに顔を顰めた。有り得ないのだ。あの檀黎斗が作った物に、何らかの仕掛けが無い筈が無い。しかしこれ以上調べようが無い。

 

出久にはそろそろ試運転をさせて欲しいとせがまれているが、ドライバーに異常が無いか調べるのが先だというやり取りを林間合宿前から既に都合四度しており、四度突っぱねている。

 

「心配かね?」

 

「・・・・・・ナイトアイか。心配とは?」

 

「緑谷出久がそのアイテムを使いこなせるかどうかさ。でなければそう熱心に異常が無いかチェックする事は無いだろう?」

 

「あいつは優秀な戦士に成長しつつある。が、これの扱い方をまだ分かっていない。中途半端に調整された物を試運転で渡したくないだけだ。無用なアクシデントは避けるに越したことはない」

 

「同感だな。だが、遅くとも三日目の正午には渡しておくことを勧める。念の為、今日彼の未来を視た。お世辞にもいい物とは言えない」

 

「連合が、やはり動くのか」

 

それは質問ではなく、確信だった。

 

「その通り。人数は不明だ。加えて中には一線級の『個性』持ちや名の知れた指名手配犯も混じっている。そして緑谷出久は――奴らに拉致される」

 

拉致、という言葉に思わずパソコンのキーボードを叩いていたグラファイトの手が止まる。

 

「拉致だと?負けるでも殺されるでもなく?まあ生きているだけ兆倍マシだが」

 

「ああ。理由は分からないが、生き汚い()()()が絡んでいる以上、碌な理由ではない。装具点検も結構だが、見守る度量を持つことも大事だ。同じく弟子を持つ者としての余計な一言だと思ってくれて構わん」

 




はい、と言う事で原作での拉致対象はかっちゃんではなく我らの主人公、という変更をしました。出久単体でのライダー変身ですが、林間合宿中に初登場させるつもりではいます。名前も既に決めてありますので。

開闢行動隊襲来まであと一話だけ挟みます。かっちゃんと洸汰君の掘り下げをもう少しばかり頑張りたいので。

次回、File 58: 過去にサヨナラ、Transformation

SEE YOU NEXT GAME...............

開闢行動隊の登場時、立ち位置はどこがいい?

  • 原作通りヴィラン
  • ステ様信奉のヴィジランテ
  • 作者にお任せ
  • 未提示の別ルート
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