グラファイトのかつての仲間達、バグスターがどのような姿をしていたのか、出久は一度聞いたことがある。過去の交友関係に興味をそそられた事に興が乗ったのか、グラファイトはイラスト編集のアプリで人間態、変身態のバグスターを描いて見せた事がある。
トガヒミコが使った『ときめきクライシス』のガシャットのバグスターであるラヴリカがどのような見てくれなのかも、勿論知っている。しかし、その姿は予想とは違っていた。変身者が女だからなのか、オリジナルのすらりとした造形よりも更に細く、より女性らしく丸みを帯びた姿になっている。右肩からはみ出る花束も小振りなブーケサイズにまで縮小されており、ピンクと白を基調とした配色も血の様な濃く、深い赤色が混ざっていた。さしずめ、ラヴリカ
「出久君も早く変身してください!早く早く!」
まるで誕生日プレゼントを手渡されるのを待ちきれない無邪気な子供の様にはしゃぐその姿は出久の背筋をうすら寒くさせるには十分すぎた。
「催促されるのは癪だけど、まあ言ってる場合じゃないか」
『Mighty Defender Z!』
チョコレート色のブロックが辺り一面にちりばめられ、ガシャットを握る出久の手に僅かにノイズが走り、目が一瞬だけ翡翠色に輝く。
「・・・・・変身」
『ガシャット!ガッチャーン!LEVEL UP!』
起動したガシャットを逆手に持ち替えドライバーに装填し、即座にレバーを展開した。
『Mighty Jump! Mighty Block! Mighty Defender! Z!』
出久を中心に幾つものパネルが現れ、正面に来た一つを突き飛ばすように手を突き出した。レベル1から即座にレベル2への変身を遂げた彼の姿は、もしグラファイトがその場にいれば思わず身構えてしまっていたことだろう。
基本的な姿形は細部を除けばエグゼイドやゲンムと変わらないが、配色パターンが檀正宗——仮面ライダークロノスのそれと酷似しているのだ。色こそクロノスより暗いメタリックグリーンだが、腰回りにも幾何学的な模様が入った裏地が赤いマントも翻っている。もしこれでバグルドライバーが装着されていたならば、一瞬クロノスに見間違われてもおかしくはない。
両手を顔の高さまで上げて指先を曲げ伸ばしし、調子を確かめた。今の所異常は無し。なら、遠慮なく行かせてもらおう。
「僕は――インデクス。仮面ライダーインデクスだ!!」
ラヴリカが繰り出す拳と蹴り、更には伸縮する棘のついた蔦を織り交ぜた攻撃は、速かった。近接格闘には一家言ある相澤ならば一時的に凌ぎ切れるかもしれないが、生徒の中で凌げる者は恐らくいない。変身しているからこそ、そしてグラファイトの長年の積み重ねた訓練もあればこそ出久も初めて使うドライバーで変身しても対応しきれているが、ガシャットの固有能力も計算に入れれば恐らく脳無並みかそれ以上に厄介な相手となるだろう。
『ガシャコンバックラー!』
バグヴァイザーを使った時と同じように円形の楯が左腕に現れ、受け幅が広くなったのを活かして攻撃を弾き、受け流し続ける。
「んもう!出久君も攻撃してください!私ばっかりじゃつまんないです!」
だが出久も馬鹿ではない。変身した状態もそうだが、変身者自体も間違いなく危険だと言う事を本能的に感じ取っていた。手の内が分からない相手との戦い程面倒な事は無いのだ。しかし遅滞戦闘を続けるにも限界がある。他のヴィランと合流されればそれだけ不確定要素が増えるのだ。
「じゃあ遠慮なくっ!」
ガシャコンバックラーを取り外し、ラヴリカR目掛けて投げつける。しかし彼女は避ける様子は無く、むしろ両手を広げて受け止めんとしていた。風を切って一直線に飛んでくる投擲武器は見事ラヴリカに命中した——かに思えた。
『MISS!』
「は?」
思わず間抜けな声が漏れてしまう。ミス?何が起きている?相手は避けもしなかった、クリーンヒットの筈だ。なのにゲームエリアが下した裁定は攻撃無効。
弾かれて戻るバックラーをキャッチし、更に勢いを込めて投げつける。バックラーは周りのチョコブロックに弾かれて角度を変え、今度はラヴリカRの側頭部を的確に捉える。
『MISS!』
しかし無情にも下される判定はまたしても
どうなっているんだ?ガシャットの不調ではない。ならばドライバーの不調か?だとするならば変身できた説明がつかない。
様々な可能性を出久の脳がトップギアで算出し始め、消去法で残った結論に辿り着く。
「『ときめきクライシス』の特性か!?」
「さっすがは私の出久君!大正解です!」
弱い。
それがグラファイトの感想だった。相手にならなくはないが、同じバグスターとして侮辱的と思えるほどに弱い。
ガットンはレベルが上がるほど馬力が上昇するのは勿論、攻撃の効きが薄くなる。加えて『激突ロボッツ』はロボット同士が殴り合うアクションゲーム。レベルが上がるにつれ相手の動き、能力を学習して戦闘の精度が上がり、より倒しにくくなる。
カイデンは何と言ってもその二刀流の剣技と飛んでくる弾丸すら後ろを向いたままでも両断できる反応速度が持ち味。息もつかせぬその剣捌きはその一撃一撃全てが必殺の威力を誇っている。
だというのに、変身する物が違えばこうも著しく落差が出るのか。嘆かわしい。
「・・・・・・もういい」
グラファイトは振り下ろされるカイデンの大上段を腕の隙間を縫うアッパーでカウンターを決め、よろめかせた。
「大見得を切ってそのザマならば、貴様らでは所詮バグスターの力を御しきれんことが証明された。ガシャットを置いて立ち去るならばよし。去らぬならば貴様らの体内から直に抉り出してでも奪い取る」
「やれるもんならやってみやがれ!」
スピナーと名乗った男が変身したカイデンは再び突撃し、ガットンも左腕をグラファイトに向けて射出した。
「それが答えならば俺も遠慮はしない」
『Perfect Puzzle!What’s the next stage? What’s the next stage?』
「一思いにパワーで叩き潰す。貴様らと俺のレベル差を、思い知るがいい」
エナジーアイテムが辺りに散らばり、グラファイトはバグルドライバーを百八十度回転させるともう一方のスロットにガシャットを押し込んだ。
『ガシャット!BUGGLE UP! ド・ド・ドドド黒龍拳!DRA!DRA!DRAGOKNIGHT HUNTER! GRAPHITE! A-Gatcha! Get the glory in the chain! Perfect Puzzle!』
黒かったボディーが青に染まり、頭部は丸みを帯び始めた。両肩に新たに追加されたパーツ、マテリアライズショルダーが一瞬光を放ち、露わになったエナジーアイテムを手の一振りで引き寄せた。
『分身!』
一人が二人になり、二人は再びエナジーアイテムを引き寄せる。
『高速化!伸縮化!ジャンプ強化!PERFECT CRITICAL COMBO!』
『マッスル化!鋼鉄化!高速化!PERFECT CRITICAL COMBO!』
二つのキメワザを同時に食らった二体のバグスターは人間の姿に戻り、ガシャットが宙を舞う。
「今度は『個性』を使ってかかって来い。少しはマシになるだろう」
伸縮化のエナジーアイテムの効果が消えないうちにそれらを回収したが、ガシャットは先程の戦いのダメージによる不可に耐えきれなかったのか基盤が剝き出しになっており、煙と異臭を燻らせていた。
「B組は後一人だ、イレイザー!」
受け持っているクラスの頭数を再三再四数えたブラドキングはそう告げる。
「こっちは・・・・・後七人、いや・・・・・・」
森の中からB組の円場を担いだ麗日と蛙吹が全力で駆けてくる姿を見て相澤は訂正した。
「後五人。ナイトアイ、彼らの現在地は?」
「一人は依然ヴィランと交戦している。もう一人は少しばかり離れているが、恐らく隠れているのだろう。他の三人は交戦中の一人ともうすぐ合流を果たす。捕縛済みのヴィラン以外に三、いや四!?いきなり現れた!」
「連合の黒霧!」
「不在のプロヒーローはラグドールのみ。発信源がよそで途絶えたが、そっちには今虎が向かっている」
「なら残りの有精卵共は俺が連れ戻すとするか」
座っていたグラントリノがよっこいせと腰を上げる。
「イレイザー、お前の『個性』では奴らが変身したアレには対応しきれん事は検証済みだ。こっちで防衛を頼む。グラファイト、飛ぶぜ」
「応とも、行くぞ」
「待ってくれ!俺達にも行かせてくれ!ヴィランの数が少ないのなら猶更——」
「駄目だ」とイレイザーは切島の懇願をはねつける。普段は眠そうなその目には現場に立つプロヒーローの凄みがあり、有志として同伴しようという生徒達の気持ちを一瞬で沈下した。「奴らの判明している狙いの一人が少なくとも緑谷である以上、他の生徒も狙っている可能性が高い。狙われているお前達をみすみす危険に晒すなど非合理の極みだ。グラントリノ、グラファイト、行ってくれ」
二人は頷き、ナイトアイが示した方角に向かって一直線に飛んだ。
さて、ここまででかっちゃんを除くメンバーが未だ避難完了してませんが、ナイトアイが見た未来通りになるか、外すか・・・・・・どうしよう笑?どっちも面白そうな事になりそうなのに。
ちなみに出久が変身したライダーですが、名前はコンピュータープログラミングの用語辞典を開いて何かいい言葉ないかなーと探した結果、インデクスにしました。理由としては原作エグゼイドでは生涯の友と呼んでいたパラドの変身した姿がパラドクスなので、響きが似ている物にしました。名前にもデクって入ってますし。それに歩くヒーロー百科事典だから索引の英名を使うのもちょうどいいんじゃないかなーと。
次回、File 63: 覆されしfuture
SEE YOU NEXT GAME................