龍戦士、緑谷出久   作:i-pod男

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で、でけた・・・・・場面が一々変わるから書くのがめんどくさい・・・・・・けど何とか出来ました。前編、後編の二部構成とさせていただきます。

若干出来栄えに不満があるので後々ちょこちょこ修正するかもしれませんが、そこはご容赦のほどを。




File 63: 覆されしfuture (前編)

——まずい。まずい、まずい、まずい!

 

仮面の奥で出久――仮面ライダーインデクスは歯噛みする。戦況を完全に把握できているわけではない。これは勘だ。だが、長年いじめと言う名の悪意に晒され、グラファイトに鍛え上げられた生存本能は普段使いの理詰めの頭脳と違い、ここぞという時に警鐘をけたたましく鳴らす。

 

――完全に逃げるタイミングを見失ってしまった!

 

襲撃してきたヴィラン達の内数名は間違いなく無力化及び捕縛してある。だが如何せん、数も個々の能力も不明だ。そして今己は、己の攻撃が全く通らないバグスターに張り付かれている。エナジーアイテムを使えば僅差で逃げ切る事も可能だろうが、それも相手がラヴリカR一人だけが相手だった時の話だ。

 

彼女の他に背中から工具が先端に取り付けられた六本の副腕を持つ青緑の脳無が紳士服とステッキを持ったマジシャン然としたシルクハットをかぶった男と、剃刀のような鋭い巻き尺を鞭の様に振るう男も合流し、一気に四対一と言う数的不利が、脱出を許さない。仮に逃げ切れたとしても他のまだ避難が完了していない生徒達の方へ矛先を向けるかもしれない。

 

「トガちゃん、こいつ誰?俺知ってる!」

 

「出久君です!私とお揃いで変身してます!」

 

頭の上半分が灰色のマスクとラバースーツで全身を覆った男が支離滅裂に自問自答をし、ラヴリカRが手を叩きながら答える。

 

「なるほど、体育祭で見たアレ・・・・・・とはまた形状が違うみたいだが、まあ何にせよやる事は変わらない。荼毘、ターゲットを発見した。脳無に指示を飛ばせ」

 

数秒後、副腕の工具が唸りを上げ始め、脳無がインデクスに襲い掛かった。

 

「お、っと!」

 

頭上から振り下ろされるチェーンソーをバックラーで受け止め、更に高速回転するドリルを空いた手で突き刺さる前に止める。スーツに防護されているとは言えドライバーへの物理的干渉は極力避けるべきだ。

 

『CHARGE MAX!』

 

ギャリギャリと火花を散らす程に金属同士が激しくこすれ合う。設置中にバックラーの内側にあるゲージがみるみるうちに溜まり、カメラが焚くフラッシュの如き閃光が瞬く。怯んだ脳無を押しのけ、ワン・フォー・オールを発動、未だに握り締めたドリルのついた副腕を力任せに引き千切った。波状攻撃を仕掛けようと迫るラヴリカRにそれを投げつけ、距離を取りつつガシャットを引き抜き、バックラーのスロットに装填。

 

『ガッシューン!ガッシャット!キメワザ!』

 

「そー、れっ!」

 

光を放つガシャコンバックラーをフリスビーの様に投げたインデクスは、更に後退する。

 

『MISS!』

 

目まぐるしく光るエフェクトを発しながら地面すれすれに飛び、ラヴリカRの左足に当たり――そのまま跳ね返った。腕を失い、血を流しながらも前進する、脳無の腰背面目掛けて。それに合わせてインデクスが脳無の顎に蹴りを入れ、大きく背を仰け反らせた。

 

『個性』を複数詰め込んだとは言え二本足で立つ特徴は普通の人間とは変わらない。背骨は衝撃を殺す為に常にS字型に曲がっているが、今はほぼI字型、つまり衝撃の逃げ場はほぼゼロ。バックラーは腰椎と背骨を破壊し、再び跳ね返る。

 

「ほぇ?」

 

ダメージどころか激突の衝撃も感じないラヴリカRは間抜けな声を上げた。そして上昇しながら再び己の顔に向かって跳ね返ってきたバックラーに思わず頭を下げて回避してしまう。飛んだ先は、エナジーアイテムを内包した、チョコブロック。

 

『高速化!』

 

エナジーアイテムに触れたバックラーの速度は更に上がり、ヴィランに、地面に、周りの木々に、そして時にはインデクス自身が繰り出す拳と蹴りで最早常人では目で捉え切れない程の速度にまで加速した円盤に翻弄された。

 

バックラーのゲージが空になり、インデクスの手元に飛来する。

 

『MIGHTY CRITICAL COUNTER!逆転の一発!』

 

余剰エネルギーで飛び散る火花と爆発に紛れ、インデクスは高速で後退した。途中でバックラーが破壊して露出させた『透明化』のエナジーアイテムでも姿をくらまし、クラスの皆がいる施設を目指して走り始めた。

 

「やられたな、予想以上に抵抗してくる」

 

「むう、Mr.コンプレス、何であの楯を圧縮しなかったんですか?」

 

変身を解除し、ふくれっ面でマジシャン風の男――Mr.コンプレスは苦笑しながら肩を竦めて見せる。

 

「はははっ、無茶を言うな、おじさんの『個性』にも射程距離があるんだよ。そもそもあんなスピードで動く物を閉じ込めるのは流石に無理だ、十年ぐらい前の動体視力なら目で追うぐらいは何とかなったかもだが、あんな物下手したら発動中に腕が飛ばされてしまう」

 

「じゃあじゃあ、トゥワイスの分身で肉の楯!」

 

だがその案もラバースーツのトゥワイスに「ごめん無理、分身は能力までコピーできても脆いからありゃぶち抜かれちまう!俺なら何の問題も無い、丈夫なのが取り柄だ!」と、あえなく却下された。

 

「でもどうします?出久君、捕まえられなくなっちゃいました。チウチウしたかったのに・・・・・・」

 

コンプレスはため息をつき、ポケットを手に押し込んだ。折角のショーが台無しになってしまった。エンターテイナーを自称する身としては、手品を使わず事を進めるのはポリシーに反する。だが、仕事をしに来ている以上、そちらを優先しなければポリシーも糞もあったものではない。仕事のやり方を選べるのは贅沢という物だ。全くもって、非常に、誠に不本意だが、捕まえられないなら捕まってくれるようにお膳立てをすればいい。そして手っ取り早い方法はあるにはある。超常黎明期以前から使われて来た有効であるからこそ今でも使われる手段だ。

 

「おじさんは兵書読みってわけじゃあないが、昔の偉い人も言ってたじゃないか。『鳴かぬなら、鳴かせて見せようホトトギス』、ってね」

 

『人質』と言う名の、伝家の宝刀が。

 

 

 

「イレイザー、こっちは全員揃ったぞ!後は何人だ!?」

 

「俺のクラスからは四人だ」

 

現在、回収した生徒達を一箇所に集め、ピクシーボブの『個性』で作り上げた土の要塞の中にいる。その天辺からイレイザーヘッドは双眼鏡で様子を窺っていた。

 

本人達の所為でないとはいえ、迅速に戻ってきてくれないのがもどかしい。特にA組どころか一年生きっての問題児にしてヴィラン連合のターゲットである緑谷出久がまだ戻ってきていない。最後に携帯の画面を見た時は複数のヴィランと対峙しており、少ししてから撤退していた。彼の能力を考えればもう戻ってきてもおかしくない筈だというのに。

 

彼以外に未だに戻ってきていないのが耳郎、葉隠、そして青山の三人。だれしも肝試しのペアを決めるくじ引きの中では比較的先に出発した生徒達だ。信号が動かないという事は発生したガスが毒性であることを知らずにやられてしまった可能性が高い。ガスはナイトアイと鉄哲の協力で鎮圧して晴らす事に成功したが、効果はまだ残っているのだろう。その証拠に一向に動き始める気配が無い。

 

現在残っているプロヒーローの中では最速のグラントリノと随一の戦闘能力を持つグラファイトがそれぞれ残った四人の回収に向かっている。

 

その間に過る考えは、『どうやって場所が漏れたか』と言う事。だが分からない。ヴィラン連合の魔手がどれほど深く根付いているかが分からず、何より物的証拠が無い以上、内通者の有無は勿論のこと、正体も決め打ちは出来ない。そんな可能性を示しても余計に状況が混乱し、生徒達の中でも疑心暗鬼が募るだけになる。

 

「すまん、下手を打っちまった!」

 

グラントリノがガスマスクをつけた耳郎、葉隠の二人の首根っこを掴んだまま着地した。

 

「何があった?」

 

「俺が向かった方にいた三人のうち、気を失っとるこの二人は連れ戻せたが、最後の一人が捕まっちまった。蒼い炎が遮ってきてな」

 

『あー、あー、聞こえているか?ヒーロー諸君』

 

マグネ、スピナーから押収した通信機から声が入る。若い男の声だ。

 

『俺は、ヴィラン連合の荼毘という者だ。開闢行動隊の何人かが世話になったようだな。もう既に分かっていると思うが、お前達の生徒の一人は預かっている。ハッタリだと思っているかもしれない奴には、証拠を見せよう』

 

突如黒い靄が黄色い目と共に現れる。黒霧のワープゲートだ。

 

虎、マンダレイがそれぞれ拘束したマグネとスピナーが靄の中に消えて行き、代わりにやせこけた無造作な黒髪の男が別のワープゲートから現れた。黒いコートから覗く腕や顔は焼け爛れた皮膚を太い継ぎ目で繋ぎ合わせた不気味ないで立ちで、全身から仄かに青色の炎を燻らせている。そしてその右手の指先は恐怖で失禁でもしそうなほどに顔をひきつらせた青山優雅の首に絡められたままだ。

 

そしてその瞬間、まるで示し合わせた様に変身を解除した出久が木々を突き破って現れる。

 

「っ、青山君!!」

 

「お、丁度良い所に。緑谷出久、取引だ。お前の身柄とコイツの身柄を交換したい。それとも・・・・・我が身可愛さに友を見捨てるか?」

 

更に左手が青山の側頭部に押し当てられる。

 

即座にイレイザーヘッドは『個性』を発動して荼毘と名乗った青年の『個性』を消そうとしたが、すぐに解除した。常時炎を燻らせているのは、自分対策だろう。『抹消』は『個性』を消せても相手の動きが止まるわけではない。出久が行動を起こす前に首の骨を折られてしまう。

 

「見捨てないよ」

 

「み、緑谷君っ・・・・・・」

 

「妙な真似はするな。ゆっくりこっちに向かって来い」

 

出久は両手を上げたまま荼毘に向かってゆっくり足を進めた。状況に反して足取りはまるで散歩でもするように軽い。

 

「青山君、心配しなくていい。大丈夫、僕はちょっとした小旅行に行くだけだから。ちゃんと戻るよ。皆にもそう伝えて。かっちゃんにも後はよろしくって君から伝えて」

 

「小旅行、か。健気だな、緑谷出久」

 

そして十メートルも無い距離を歩き終わり、荼毘の手を首に当てられた所で青山は解放された。だが動き出す前に注意される。

 

「おっと、慌てるなよ。お前が動くのは緑谷出久がワープゲートをくぐってからだ。その条件が達成されない限り、お前が動くことは許可しない」

 

頭が痛い。心臓が痛い。呼吸が浅く、速くなっていく。眩暈もしてきて膝ががくがくする。そんな過度なストレスによって失神寸前の青山に、出久は優しく笑いかけた。

 

「大丈夫。僕がいる」

 

刹那、出久の姿が搔き消えた。青山は自分が凄まじい突風に煽られて吹き飛ばされるのを感じた所で完全に意識を途絶えさせた。

 

そしてその直後、耳を劈く叫び声が辺りに木霊した。すぐ近くにいた荼毘は勿論、離れている相澤やブラドキング、プッシーキャッツの面々ですら耳を覆わなければならない程のデシベル量だ。

 

しかしそんな中、黒霧ただ一人が鼓膜に多大な負担を駆けられながらも冷静に行動した。出久の足元にワープゲートを落とし穴の様に展開しようと靄を発生させたのだ。

 

「させん」

 

『チュドド・ドーン!』

 

だが、茂みの中からの広範囲の光弾の弾幕でそれを中断して身をかわす事を強いられた。躓きながらも出久は高速でその場を離れようとしたが、その飛んでいく青山の頭上にもゲートが現れ、回転しながらナイフが落ちていく。

 

『DELAWARE SMASH!』

 

空気弾でそれを弾くも、今度は複数開いたゲートから青緑色の工具を先端に付けた腕が宙を舞う青山を切り刻もうと迫る。遠距離攻撃が届いたところで手遅れになる距離に開いている。

 

鮮血が迸った。

 

肩、脇腹、太ももに、チェーンソーの刃が食い込んでいる。致命傷こそ避けられてはいるが、出血量は無視できない程度には多い。内臓も間違いなく一部は抉られた。更に頭を大振りのハンマーで殴られ、意識を持って行かれてしまう。

 

目が閉じる際に青山が担任の捕縛布に包まれてしっかり保護された事に気付き、小さく笑った。

 

「余計な手間を増やしやがって・・・・・・・まあいい、黒霧、閉じろ」

 

耳から流れる血を上着で拭いながら毒づいた荼毘は、ふらつきながらもゲートの向こう側へと渡り、姿を消した。

 

 

 

その日、ヒーローを目指す者達として、雄英はヴィラン達に完全なる敗北を喫した。

 

ヴィランが去った十五分後に、消防と警察が到着した。生徒四十名の内、ヴィランのガスで意識不明になったのが十五名、重軽傷者七名、無傷で済んだのは二十七名。そして行方不明の生徒が一名。現場にはヴィランの意趣返しだろうか、それか気丈に振舞おうというその生徒の意地か、親指を立てた肘から下の二の腕だけが現場に残された。

 

プロヒーローはプッシーキャッツのラグドールが大量の血痕を残し行方不明となっていた。

 

ヴィランは三名が現行犯逮捕。他のヴィラン達は黒霧のワープゲートでどこかへ姿を消した。

 

楽しみにしていた林間合宿は、結果的に最悪の終わり方で幕を閉じた。

 




次回、File 64: 覆されしfuture (後編)

SEE YOU NEXT GAME...............
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