リリカルらっきょ Es ist Hilfe für Sie.―貴方に救いを―   作:うるしき

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にぃ

 

 

意味が分からない。

 

 

オレの手を引き、前を歩く彼女の後ろ姿を見て、溜め息をひとつ。

 

考えることは放棄したけれど、

余りにも突然過ぎる展開の多さに

少なからず混乱していることは

間違いない。

 

 

「なぁ、オマエは何がしたくて、オレをどうしたいんだ?」

 

 

オレの発した言葉が彼女の鼓膜を震わせたのか、ピタリと歩みを止める。

 

 

「さっきもいったよね?このままじゃかぜひいちゃうって。だからいえにつれていくの」

 

「―――は?」

 

 

ますます意味が分からない。

そうすることによってコイツは

何かしら得をするのだろうか。

 

 

振り向き様に放たれた言葉は、オレには理解出来ないものだった。

 

だから、どこか呆然とコイツに問い掛けていた。

 

 

「そんなこと、オマエには関係がないだろ。オレが風邪を引こうがなんだろうが」

 

「かんけいがないとか、そんなことないよ。わたしは、こまっているひとがいたらたすけてあげなさいって、おしえてもらったから。だから」

 

「それこそオレにとってはいい迷惑だ…。誰も構ってくれなんて言ってないし、見捨ててれば良かったんだよ」

 

「こまってるひとをみすてるなんてわたしにはできない!」

 

 

 

だけどそこで初めて、コイツは感情的な表情を見せた。

 

さっきまでは何処か無理をして、辛そうにしていたのに。

 

そこまでして、オレを助けることに意味があるのだろうか。

 

それとも、そうすることがコイツにとって

“大切”な事なのか。

 

 

「…そんなことしたら、なのはは《いい子》じゃなくなるもん…」

 

 

「ん?なんだよ、それ?」

 

「なのはは《いい子》にしてなきゃいけないの…。”《いい子》じゃなくなれば、誰も優しくなんかしてくれないもん…」

 

 

いい子。

 

その定義は何だろうか。

大人しく言うことを聞くこと?

それとも、誰彼構わず優しさを

振り撒く事だろうか。

 

人によって千差万別だろうけど、オレには

そんな感情は理解出来ない。

 

だけど、今にも泣きそうになっている

コイツは、誰かに似ているように思えた。

 

強迫観念―――。

 

方向性は違えども、普通であったコクトーと

いい子であろうとするコイツが、

オレには重なって見えて仕方ない。

 

 

―――幸せな未来。

 

オレには、オレ達にとってコクトーは

夢だった。

 

どんなに足掻こうとも、決して手にいれる

事の出来ない遥か天上の憧れ。

 

だからこそ、コクトーに会えたオレは

初めて《殺人》以外の感情を知ることが出来た。

 

殺し続けるしか知らなかったオレの、

初めての感情。

 

 

―コクトーの夢に式も、一緒に歩んでいる―

 

 

それはなんて、幸せな事なんだろうか。

 

今このとき、二人は――オレの夢は

生き続けているんだろう。

 

それだけで満足していたのに。

 

なのになんでだろう、コクトーに何処か似た

コイツのことが知りたいと思えたのは。

 

 

一期一会。

 

オレには一時の出逢いで得るものなんて

ないと思っていたけど、もしかしたら

オレも殺人以外の感情が手には入るのかも

しれない。

 

オレだって、好きで殺し続けていた訳じゃない。

 

出来るなら、コクトーを通して見た憧れを

自分自身で体験してみたい。

 

 

目の前のコイツ。

その在り方はとても歪だ。

 

何かしらの理由があれ、ここまで

歪にねじれ曲がっていくのだろうか。

 

ホント、オレらしくない…。

 

 

でも、知らないことを知るのは酷く

面白そうだ。

 

 

「なぁ…オマエ名前は?」

 

「…なのは。たかまちなのは」

 

コイツ―――高町の歩む先を見てみたい。

今度こそ、オレ自身の眼で。

 

 

「高町、ね。オレは両儀織。あぁ、名字は止めてくれよ。嫌いなんだ」

 

「し、き…? しきおにいちゃん?」

 

「お兄ちゃん、ね。まぁ、好きに呼んでくれ」

 

「うん、しきおにいちゃん。なら、なのはもなのはってよんで」

 

「確かにオレだけ名字じゃ、不公平だよな。分かったよなのは」

 

「うんっ!!」

 

 

花が咲くような笑顔ってのは、こういうことなんだろうな。

さっきまでは、この世の終わりって顔してたのに。

 

 

「…本当、理解出来ない感情だけど、それが酷く楽しい」

 

 

空はこんなにも曇っているのに、

オレの心は凄く晴れ渡っているようだった。

 

 

世界は涙に溢れているけれど、

それでも何処かに小さな太陽がある。

 

どうしようもない現実。

途方にくれるしかない現状。

 

差し出される救いの手。

乗り越えられる困難。

 

疑問が尽きない今だけど、

それでもオレにも小さな太陽ってのは

あるんだなと思った。

 

生きる意味―――。

 

それはまだ分からないけど、

いつかオレにも出来るだろうか。

 

人間らしい生き方が。

 

ただの殺人鬼としてじゃない。

 

二人が歩む平凡で、楽しい未来。

 

そんな未来を夢想して、

これからの事がオレの楽しみになった。

 

無気力なのはもうお仕舞いだ。

元々、オレらしくもなかった。

 

いつものように、殺したり、殺されたい気持ちで楽しく生きていこう。

 

オレの唯一の此れだけは

オレを形作ったものだから。

 

 

「先(ミライ)が明るいってのも、オレらしくない話だけどな」

 

 

けらけらと笑う。

なのはが何処か呆然としているけど、

オレには笑いを堪えることが出来なかった。

 

ほら、また新しい事が見れた。

 

誰かは知らないけれど、少しだけ

ほんの少しだけれど、

 

 

 

―ありがとう―

 

 

 

感謝してやるよ。

 

 

 

 

「………どうしたの?」

 

 

そこで、呆然としていたなのはが復活したのか、多少困惑を含んだ顔で訪ねてきた。

 

 

「別になんでもないよ」

 

「で、でも…、さっきまで笑ってなかったのに」

 

「まぁ、いきなり落ち込んでたヤツが笑いだしたら可笑しいよな。なに、少しだけ、いいことってのがあったんだ」

 

「それって―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なのは!!」

 

 

 

 

一瞬。

 

そう、たった一瞬で目の前のなのはは居なくなって、気付けば少し離れた先にいる男に抱えられていた。

 

 

「―――はは、愉しいなぁ」

 

 

本当、愛されてるくらい、

熱烈な気持ち《殺気》だよな。

 

 

いきなり現れたオレより年上の男。

恐らくなのはの身内だろう。

 

じゃなければ、あんなにも殺したい気持ちを

オレにぶつけてきたりしないだろうし。

 

 

「………貴様、何者だ」

 

何者、ね。

そんなもの決まっている。

 

 

「ただの―――殺人鬼だよ」

 

 

 

 

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