原作:ポケットモンスター
タグ:R-15 オリ主 残酷な描写 アンチ・ヘイト コイキング 悪役 サメハダー キバニア キングラー パルシェン ギャラドス 作者の知識はBWまで 擬人化 オリジナル特性 オリジナル技 妄想過多
コイキング。
ポケットモンスターをプレイした事のある人ならば、一度は聞いた事のある名前だろう。
曰く、『ちからも スピードも ほとんどダメ。 せかいで いちばん よわくてなさけない ポケモンだ。』
曰く、『おおむかしは まだ もうすこし つよかったらしい。 しかし いまはかなしい くらいに よわいのだ。』
しかし。
――もし、ポケモン世界が実際に存在して。
――もし、長年生きれば一跳びで山をも越えると言われるコイキングが戦闘
――もし、その戦闘技術が六百族と呼ばれる方々とも渡り合うほどの物だったら?
その世界で、一体コイキングはどのように生きるのだろうか……。
バ烏@(°∀。)ノウェでございます。
メインの方の小説が行き詰ってしまったので、息抜きに書いてみました。
……息抜きって量じゃないですけど。
なんとなくネタが思い浮かびましたしね。
そうだ! 新年特別編ということにしておきましょう。(唐突)
ではでは、新年特別編、『コイキングだって弱くないっ!!』、どうぞ!
メインの方も来週には出します
コイキング。
ポケットモンスターをプレイした事のある人ならば、一度は聞いた事のある名前だろう。
曰く、『ちからも スピードも ほとんどダメ。 せかいで いちばん よわくて なさけない ポケモンだ。』
曰く、『おおむかしは まだ もうすこし つよかったらしい。 しかし いまは かなしい くらいに よわいのだ。』
まず、種族値がすばやさを除いてお話しにもならない。
すばやさは進化前としては破格の数値を誇るが、覚える技は“はねる” “たいあたり” “じたばた” “とびはねる”、以上。
多少有用な“とびはねる”は、すばやさ以外の種族値が低いせいでわざわざコイキングを抜粋してまで使う意味は断じてない。
ゲーム内ですら驚くほどのネタキャラ扱い。
まあ、方々の猛プッシュは凄いが、だからと言って強いと言う事は無い。
このように、実際に主力としてこのポケモンを使うトレーナーはいない……はずだ。
しかし。
――もし、ポケモン世界が実際に存在して。
――もし、長年生きれば一跳びで山をも越えると言われるコイキングが戦闘
――もし、その戦闘技術が六百族と呼ばれる方々とも渡り合うほどの物だったら?
その世界で、一体コイキングはどのように生きるのだろうか……。
* ◇ *
ここは水中の
苔むした岩やそこに群生する水生植物、それに隠れる小魚たちとその小魚を狙う肉食魚。岩の上には貝類などが這う。
まさに水生生物の楽園がそこにあった。
その中でもとりわけ幅を利かせているのがポケモンたちだ。
普通の魚は持たない超常的な力をも操るポケモンたちには、肉食魚ですら道を譲るばかりであった。…………ただ一種を除いて。
「オラオラァ! こんな所でチンタラ食ってんじゃねえよ!」
そう叫ぶのはサメハダーと呼ばれるポケモン。
その言葉に、赤い魚影――コイキングたちはそそくさとその場から離れていく。
「カッカッカッ。この場所が貴様ら程度に取られていると思うと不愉快じゃのう。さあ、死にたくないのならこの場から失せよ」
キングラーと呼ばれるポケモンに怯えながらコイキングたちは逃げ出す。
“つららばり”
――ゴウッ
そんな風に唸りを上げてとんできたハリに、数匹のコイキングがまとめて貫かれ絶命する。
「おう、ワリィワリィ。目障りなザコが視界に入っちまったせいでつい撃っちまったよ」
心にも無い謝罪を述べるパルシェンというポケモンに、文句も言わずに泳ぎ去るコイキングたち。
* ◇ *
自分達の
「なあ」
「ん?」
「オレたち、いつまでこんな生活すればいいのかな」
「仕方ねぇよ、オレたちはコイキングなんだから」
その言葉から察せる感情は諦念。
どんよりとした雰囲気が群れの中に流れる。
バカにされ、苛められ、虐げられ。
産まれた時からそんな扱いに甘んじてきた彼らも、思うところが無いという事は決してなかった。
「せめて、地上のヒトにでも釣り上げられればなぁ」
「釣り針の一つでも浮いてりゃ、すぐにでも食いつくのにな」
彼らの口からは次々と愚痴が漏れる。
致し方ないことだろう。そうでもしなければ彼らはおかしくなってしまう。
実際、彼らの
だから、彼らの気が緩んでいたのもまた、仕方ない事なのだろう。
何がどうであろうと、彼らは口を滑らせた。
「釣られりゃ、俺らだって
「お、おいっ!」
あ……、とそのコイキングの口から声が漏れる。
しかし、出てしまった物は出てしまった物である。
そして、彼らの主は、自分より劣っているコイキングが自分と並ばんとする事を許さない。
それが例え言葉の中だけの物だったとしても、気に入らないから許さない。
「んっんー? 今何か言わなかったかー?」
「ひっ」
どのコイキングからか、引きつった音が漏れる。
「なあ。このオレ様が聞いてやってるんだからどいつか答えろよ、なあ?」
「ギャ、ギャラドス……様」
彼らへと影をかけたのはギャラドスというポケモン。
コイキングが大成したポケモンであり、鍛えに鍛えられたその身体は野生で生きていく内には手に入れられないほどの力を持つ。
まごうこと無き彼らの主であり、彼らを恐怖によって従える暴君でもあった。
ギャラドスが体の内に沸々と滾らせるは、怒り。
ギャラドスは、激昂する。
「テメエらみたいなゴミ共が、夢を見てんじゃねェェ!!」
“かみくだく”
無残にも、失言した一匹を含めて何匹かが身体の上半分を噛み砕かれ、水面へと昇っていく。
その様子を見ていたほかのコイキングたちは、震えながら頭を垂れる。
「わ、私共は滅相も……。ギャラドス様にお仕えできることだけが至上の悦びに御座います……」
「ふん。お前らが視界に入ることも不愉快だ。さっさと失せろ、ゴミ共が」
鼻を鳴らし、吐き捨てるようにギャラドスはどこかへと泳いでいく。
コイキングたちもまた、自分たちの塒へ戻っていく。
「もう嫌だよ、こんな生活」
つぶやいたのは、どのコイキングだったのだろうか。
理不尽だと思うだろうか。不条理だと感じるだろうか。
しかし、これが力を持たざる者たちの生き方である。
彼らもいいとは思わない。しかし彼らには打開する方法も思いつかない。
彼らは待つ。救世主の存在を。
彼らは待つ。物語の如き奇跡を。
彼らは待つ。自分たちが縛から解かれる其の時を。
* ◇ *
「~♪」
一人の少女が鼻歌を歌いながら泳いでいた。
その下をよぎる黒い影。
「あ? ンだあ? あの、ヒトの女、ザコ共の匂いがすんなぁ?」
「マジっすか、サメハダーのアニキ?」
それは、サメハダーとキバニアの群れだった。
「コイキングでも持ってるんすかねぇ?」
「ハハハッ。そんなザコ使うアホがいんのかよ。……にしても、ちと腹が空いてきたな。なあ?」
「え? さっき食ってきたばっか……ぁ、いや、そうっすねぇ」
下卑た笑みを浮かべながら群れは少女に近づく。
やろうとしている事は至極単純。戯れに少女を襲おうとしているだけだ。
――しかし。彼らは気づいていなかった。
ただのヒトは水中で音を響かせるなどという事は出来ないという事に。
ここは、陸地からは遠く離れた遠洋だという事に。
その時点で、違和感を感じるべきだった事に。
群れは少女まであと一泳ぎというところまで近づいていた。
そして
“かみくだく”
“かみつく”
魔の手が、少女に迫る。
「ん……? ふぇっ!?」
それらに少女が気づくが、時既に遅し。
牙は少女の身体を破壊する。
――はずだった、本来なら。
“とびはねる”
直後、ガチン、という音が少女の後ろで響く。
「あー、びっくりしたぁー。……また、私たちをナメてるやつらかぁ……」
そうつぶやいた少女の目に浮かぶのは、静かな怒り。
「いつまでも私たちをっ! ナメないでっ!」
“たいあたり”
“
とびはねるによって跳び上がり、その超高高度から繰り出される全力の拳は、サメハダーの頭を直撃。
それによって発生させた衝撃波は、キバニアたちをも気を失わせてしまった。
「ふう。って、サメハダーって『さめはだ』だった……。手いたぁい……」
水面に浮かぶサメハダーたちを尻目に少女はまた泳ぎだす。
「……ん? この匂い、同族の……」
* ◇ *
感じた匂いを辿ってきた少女が目にしたのは、氷のハリに串刺しにされたコイキングたちと、上半身のみが無くなった数匹のコイキング。
「惨い……。何でこんな事を……。あ、この下、まだいる?」
――とぷん
その場を、匂いを頼りに潜って行く少女。
“つららばり”
唸りをあげて飛んでくるソレを少女は首を傾けるだけで避ける。
「おお。お見事、お見事」
「あなた、パルシェンね」
「ん? ……ほお。お前、コイキングか。人化けとは珍しいな」
そう言うパルシェンの言葉には耳を貸さず、少女は質問を投げかける。
「この子達を殺したのは、あなた?」
「あ? ……あー。うーん。まあ、たぶん、そうなんじゃねえのか? その氷柱も俺のっぽいし」
「なんでこんな事を」
「別に理由は無ぇんだろうなぁ。暇を持て余してた時にたまたま視界に入ったからよ。射的感覚さ。随分簡単でつまんなかったけどな」
彼の顔に罪悪感というものは一切浮かんでいない。
彼に限らず、この海のポケモンたちがコイキングに思っている感情。
いてもいなくてもどうでもいいやつら、である。
ただ暇だから気分転換に殺す。
小腹が空いたから不味くはあるが腹の足しにする。
いなくなるならいなくなればいい。別に困るものでもない。
結局そんなもんである。
あるのは道具としての感慨程度。
しかし、コイキングである少女に、同族たちのそんな扱いは許せるものではなかった。
故に、怒り立つ。
同族の命を目的も無く奪う彼らに、自分達の底力を見せつけてやるといきり立つ。
「そんなのッ! 許せないッ!」
「やる気か? 所詮コイキングのくせによォ!」
“つららばり”
先程のような遊びのものではなく、相手の命を奪うための、野生で生き残るための攻撃。
彼女は所詮はコイキングである。耐久力というものは心もとない。
当たれば致命になりうるそれを、紙一重で躱しながらパルシェンに近づく。
技が切れたところでパルシェンに急接近。
危険を感じたパルシェンが取った行動は
“シェルブレード”
「残念! 死になぁ!」
「無駄無駄」
少女は迫り来る凶刃を掴むと身体を反らし、後ろに放り投げる。
“ともえなげ”
「は……?」
「損害は、手のひらの皮が擦り剥けたくらいかな。残念ね。さて、と」
全力を込めて振りかぶる。
“メガトンパンチ”
「何なんだよ、お前はぁ! く、そがァァ!」
鈍い音が響き、パンチはパルシェンに直撃する。
――惜しむらくは、それが本体にではなかったことだ。
“まもる”
絶対的な壁は、少女の渾身の一撃を止めた。
「ハハハ! 残念だったな! さて、お前はどうやってそんな力を手に入れたのかたか知らんがヤバイな。このまま隠れさせてもらうぜ」
“からにこもる”
言うが早いか、パルシェンは自身の堅牢な殻へと閉じこもってしまった。
パルシェンの殻というものは、ダイヤモンドをも凌ぐ強度を持つと言われている。
それを破壊してパルシェンの中身に攻撃を当てると言うのは、一コイキングには無理であった。
一コイキングならば、であるが。
“ビルドアップ”
“グロウパンチ”
『
“インファイト”
パルシェンの殻を次々と襲う拳の連打。
パルシェンは考える。
いくらやってもこのボディに傷をつける事なんて無理だ、早く諦めるんだな、と。
ところで。
ダイヤモンドという物は案外砕ける、という話を聞いたことはあるだろうか。
詳しい話は割愛するが、靭性というものが関係していて、ハンマー等で叩く事で割ることは出来るのだそう。
靭性というのはとどのつまり物質の粘度だ。
つまり、硬くはあっても粘りが弱ければ割れる。
そして彼女の使った『はってん』という
これは、『はってん』させる前の技の特性を『はってん』後の技に引き継ぐという代物だ。
さて、彼女が『はってん』させたのは“グロウパンチ”という、使う度に攻撃を上げるという物。
それで連打をするとどうなるか。
――パリン
このとおり、どんどん強くなっていくパンチはついにパルシェンの殻を貫いた。
「……はぁ!?」
自慢の殻を破壊とされてしまい呆然とするパルシェンを少女はむんずと掴み上げ。
「は、はははは……」
にっこりと微笑み。
“メガトンパンチ”
* ◇ *
潜ってきた少女が止まったのは、一つの洞窟の前。
「たぶん、この辺。どこかに同族が……」
「なぁ~んだ、お前はぁ~? ここがオレ様のナワバリと分かっているのかぁ?」
少女の頭上から影が差し、現れたのはここ一帯の主、ギャラドスだった。
目の奥には、自分の縄張りに入ってきた異物を排除しようという意思がありありと見て取れる。
しかし、なにか気になったのかギャラドスが匂いを嗅ぐ。
「……お前。コイキングか? でそのザコ風情がたった一匹で何用だ?」
――プッツン
少女の琴線に触れるその言葉を聞き、少女の中で何かが切れる。
「あなた、今なんて言った?」
「はぁ?」
「私たちがザコって、言ったわよね?」
「だからどうした? 種族も、どの個体も無能ばっかりでクソの役にも立たない奴らだろう? さながら水中の蝿ってところかぁ。はっはっは」
心底楽しそうに高笑いするギャラドス。
少女の心の奥は、マグマのように煮えたぎっている。
しかし、表は取り繕い顔に嘲笑を浮かべる。
「それじゃ、今からその蝿に負けるあなたはウジ虫かしらねぇ?」
このギャラドスのプライドは非常に高い。
圧倒的格下にそんな事を言われては、例え挑発と理性は理解していても、感情は抑えきれなかった。
「調子に乗ってんじゃねえぞぉ!?」
“かみくだく”
「遅いわね」
“こうそくいどう”
『はってん』
“かげぶんしん”
高速移動によって速度が極限まで高められた少女の身体は残像すら伴いながらギャラドスへと攻撃する。
ギャラドスも応戦するのだが、残像を消す程度にとどまる。
それだけでどちらが優勢かは明白だった。
「姑息なんだよ、ゴミクズがぁぁー!!」
自分の攻撃はまったく当たらず、相手の攻撃は小さいながらも着実にダメージを重ねてくる。
蝿風情にいいように弄ばれている。
プライドの塊のギャラドスは、そんな状況に怒り狂う。
「ウザったりぃんだよ! 死に晒ぇー!!」
“かみなり”
自然では覚える事のないその技を、いとも容易く解き放つ。
そして、突如として現れたのは雷雲。
――ガッ
ピカッ、ゴロゴロというような生易しい音ではなく、頭上で何かが爆発したかのような音はどんどん大きくなる。
雷はもう少しで少女めがけて発射されるだろう。
だというのに少女に慌てた様子は無い。
「はあ……。バカね。本っ当に馬鹿」
“こうそくいどう”
『はってん』
“たいあたり”
“かいりき”
高速でギャラドスに近づき、怪力をもってガッシリと掴む。
ミシミシとギャラドスの身体から嫌な音が鳴り、ギャラドスは苦悶の声を漏らす。
そして、
“とびはねる”
怪力による全身の筋力以上の力を使い、二百三十五㎏ものギャラドスとともに空中へと躍り出る。
しかし、ギャラドスはその判断を下した少女を嗤う。
「ぐぁっ……。は、はん! 間抜けが! 回避させないためかもしれねぇが、テメェまで感電して終わりだよ!!」
「あら、そんな事ないわよ?」
その技は、コイキングの代名詞とも言える技。
この技単体においては何一つとして効果を発揮しない、無能の中の無能の技。
しかし、この現実においてはある一つの効果が発揮される。
ただのジャンプよりも速く、とびはねるよりも早く。
すなわち、
その技は、こう呼ばれる。
“はねる”
発射された雷に直撃する直前、ギャラドスの背で
とほぼ同時に。
「ぐがぁぁぁー!?」
雷光弾け、ギャラドスが絶叫する。
実機風に表現するならば、四倍もの威力のかみなりだ。
所詮生物が呼び出したものだから死んではいないだろうが……。しばらくは目を覚ます事も無いだろう。
「身勝手で我儘な暴君は自滅……。お似合いの結果ね。――ぐうっ……。痛っ……」
ギャラドスへと直撃した雷は、周囲の海水へと伝播。
拡散した電流は、少女にも確実にダメージを与えていた。
もともと耐久力の無い種族である。
さらに、十分弱められたものとは言え、雷というものは最高で一億V、五十万Aにまで達する。
少女にとっては少なくないダメージだった。
しかし、彼女の目的はギャラドスと闘う事ではない。
痛む身体を庇いながら、少女は目的のモノらを探す。
そのモノらはすぐに見つかった。
「居た」
ソレらはすぐに見つかった。否、自ら出てきたと言う方が正しいか。
「あ、あんた。ギャラドス様を倒したのか?」
そんなコイキングの言葉とともに、穴倉から何十匹ものコイキングが出てくる。
コイキングたちは少女を取り囲むと、次々に騒ぎ立てる。
だが、少女はヒトという種の、十人の声を同時に聞こえると言う聖人君子に非ず。
「ちょ、ちょっと待って。誰か一人にして頂戴?」
「ほれ、お前たち。ワシに道を開けんかい」
多少しわがれたような声が響くと、コイキングたちの合間を縫って金色のコイキングが泳いできた。
「あら珍しい。色違いね?」
「それはこちらの台詞じゃよ、お嬢さん。人化けとは百余年生きてきて初めて見るのぅ」
「え、長老、そんなに歳
思わず呟いたコイキングを、金色のコイキング――長老の尾びれが叩く。
「いってぇ!」
「余計なことは言わんでいいわ。――さて、お嬢さん。今日は何用かな?」
「ああ、そうだ。……これを持って来たの」
そう言って少女が取り出したのはコイキングたちの遺骸。
「っ! ……今日殺されたヤツらだよ、長老」
「そうか。……残念じゃったな。こやつらはしっかり供養しておこう」
そう言ったきり、長老は黙る。
少女は、その長老の様子に疑問を隠せなかった。
「なんでこんな事をされてるのに何も言わないの……?」
「……」
「ねえ!」
「言ったら今度は自身が殺されるからじゃよ、お嬢さん」
口をはさんだのは長老。
その目と声色は、何よりも冷たい。
「お嬢さんには理解出来んのかもしれんが、ワシらは弱い。力は無く、体は脆く、超常的な力も使えん。そんなワシらが生き残るには、強者の庇護下で細々と暮らすしかないんじゃよ」
情けない言葉だが、この場にそれを否定できる者は誰一人としていなかった。少女も含めて。
少女は弱者だった。根底は、彼らと同じコイキングだった。
ただ、彼女は運命という奇跡に選ばれた。
ヒトに釣り上げられ、運命は転機した。
釣り上げたトレーナーはただの戯れだったのかもしれない。
しかし、彼女はそのトレーナーによって育てられ、鍛え抜かれ――そして捨てられた。
捨てたときのそのトレーナーは嗤っていた。
成長するだけしきり、最早ギャラドスにも成れず。
だったらこの体のまま強くなってやろう。
そうやって死に物狂いで鍛えていたら、いつの間にかヒトの形を手に入れていた。
後はもう簡単。
母なる海へと戻ってきた。
強力な技を扱うポケモンとも闘った。
屈強な体を持つポケモンとも闘った。
時にはヒトの持つポケモンとも闘った。
そうやって、死ぬ気で戦って、戦って、戦って。
もちろん、負けることもあった。
体も心もボロボロになったことなんて数え切れない。
だが彼女は負けない。何に負けても自分にだけは負けない。
ガムシャラに、孤独に、強くあろうとした。
パルシェンは言った。――お前は、強者だと。
長老は言った。――そんなお前に、弱者の気持ちは解らぬと。
少女が強者? ――冗談だろう。
少女には弱者の気持ちは解らない? ――そんな筈は無いだろう。
――だって彼女は、どこまで
最弱の、『せかいで いちばん よわくて なさけない ポケモン』なのだから。
「そんなの、詭弁じゃない」
「なに?」
「弱さに甘えて、自分たちを可哀相に仕立て上げて、結局何もしてない。いや、しようとしてない。そんなんじゃ、いつまでたっても負け犬よ!」
喋る。
「自分たちが弱い? 強者の庇護下に入らないと生きていけない? ふざけてんじゃないわよ!」
叫ぶ。
「アンタたち自身が自分を信じてあげないでどうすんのよ!」
吼える。
一呼吸し。
「だから」
情けない同族なんて、無くしてしまおう。
差別される世界を、見返してやろう。
「私が、アンタたちのその負け犬根性。根元から調教し直してやる」
不敵に笑う。
紛れも無い強者の自信。しかしそれは、一コイキングの最高到達点としての強者。
自分の同族でも、必ずそうなれるという、確固たる自信。
帰ってきたのは、海をも震わす、大歓声だった。
* ◇ *
ここは水中の
苔むした岩やそこに群生する水生植物、それに隠れる小魚たちとその小魚を狙う肉食魚。岩の上には貝類などが這う。
まさに水生生物の楽園がそこにあった。
その中でもとりわけ幅を利かせているのがポケモンたちだ。
普通の魚は持たない超常的な力をも操るポケモンたちには、肉食魚ですら道を譲るばかりであった。
「オラオラァ! また来てんのかカスどもがァ! さっさと失せろォ!」
そう叫ぶのは、サメハダーというポケモン。その鼻頭は、なぜか拉げてしまっている。
その言葉を、赤い魚影――コイキングたちは無視する。
“かみくだく”
その様子に怒ったサメハダーは、コイキングたちに攻撃を放つ。
しかしコイキングたちはそれに目もくれずに回避。
そして
『だいぎょぐん』
“おおうずしお”
何十匹、何百匹と集まったコイキングたちがサメハダーを取り囲むと、同じ方向に回りはじめる。
そのコイキングたちが生み出す回転は、周囲の水を取り込み、巨大な渦潮を形成した。
取り込まれた水は次々と中心へと集まり、サメハダーの動きを完全に封じる。
サメハダーの体は渦潮の高速回転に徐々についていけなくなり、節々が悲鳴を上げ始める。
さらに凶暴なのは、その渦潮はコイキングたちが創り出しているということだ。
勢い余ったコイキングがサメハダーの体に突っ込む。
力は無くても速さはある。
その威力は馬鹿には出来ないものになっていた。
サメハダーは一切の抵抗も許されずに瀕死に追い込まれてしまった。
「終~了~!」
誰からとも無く声を上げると、その渦潮はどんどん弱まり、すぐに無くなってしまった。
その様子を見ていた生物たちは、こそこそと逃げ出していく。
これが彼らの――少女の戦い方。
一対一で勝てないならば戦わなければいい。
攻撃を食らえば死ぬのなら、当たらなければいい。
簡単に相手を倒せないならば、行動を封殺し、ひたすら攻撃し続ければいい。
そんな考えとともに生み出されたのがこの戦い方。
弱者は弱者なりの戦い方をすることが出来る。
そうやって彼らは、速度を磨き、勘を磨き、戦う技術を磨いてきた。
もう、彼らに絡むポケモンはいなかった。
そして彼らは、生まれて初めてお腹一杯食事をした。
* ◇ *
腹を満たしたコイキングたちは、自分たちの巣へと帰っていた。
その群れを見つけたキングラーと呼ばれるポケモンはそそくさと身を隠す。
彼らの帰り道にある岩場。
そこにある薄紫色の、穴が開いた殻には、いるべき宿主はもういない。
「なあ」
「ん?」
「オレたち、いつまでこの生活が出来るかな」
「さあな」
それきり会話は無い。
まだ分からないことを言っても仕方ない。
その群れの上にかかる黒い影。
ギャラドスだ。
「貴様ら、随分といいご身分になったなぁ?」
「ひっ。ギャ、ギャラドス様、なぜ此処に……」
引きつった声を漏らすコイキング。
彼らにとっては最大のトラウマ。
ギャラドスの言葉は抗えない制約にも等しかった。
数ヶ月前、たった一匹のコイキングに一方的に嬲られ、遠くに捨てられたその思考は復讐の念で満たされていた。
「あのアマはどこだ?」
「……」
「答えろよ、なあ!?」
“かみくだく”
そこに
迫りくる死を前に、正面にいたコイキングは動かない。
いや、動けない。
元とはいえ、自分たちを従えていた暴君だ。
恐怖で体は固まっていた。
“ハイドロポンプ”
そのギャラドスを水流が打ち付ける。
「しゃきっとせんか、貴様ら!」
「長老!?」
「こういうのは柄ではないのじゃがな。あの小娘にここまで仕上げさせられたんじゃ。下克上くらいしてみせい!」
一喝。
それだけで群れの中の震えが納まる。
彼らの中にはこの数ヶ月で知らず知らずの内に自信が芽生えていた。
「……やってやるよ、長老。いくぞお前ら!」
「「おお!」」
* ◇ *
「なあ?」
「なに?」
「アイツら残して出発してきちまってよかったのかよ」
「大丈夫よ、コイキングなんだから」
「コイキングだからねぇ……」
「それよりあなた、殻作り直さないの?」
「お前が割ったんだろうが。……作り直したらお前に運んでもらえなくなるだろ」
「重いもの、殻」
「そもそもなんでオレを連れてきたんだ?」
「旅の道中は喋り相手が欲しいでしょ? あなた、手頃だったし」
「ああ、そうかい」
「そんなに怒んないでよ。その内帰すからさ」
「……気にしなくても良い。別に嫌じゃねぇし」
「え、なに? 最後の方聞こえなかった」
「なんでもねぇよっ!」
「ね~、なんて言ったの~?」
「あー、うるさいうるさい! ほら、暗くなってきたんだからさっさと寝床探せよ、
二匹は姦しく泳いでいく。
* ◇ *
コイキング。
ポケットモンスターをプレイした事のある人ならば、一度は聞いた事のある名前だろう。
曰く、『ちからも スピードも ほとんどダメ。 せかいで いちばん よわくて なさけない ポケモンだ。』
曰く、『おおむかしは まだ もうすこし つよかったらしい。 しかし いまは かなしい くらいに よわいのだ。』
まず、種族値がすばやさを除いてお話しにもならない。
すばやさは進化前としては破格の数値を誇るが、覚える技は“はねる” “たいあたり” “じたばた” “とびはねる”、以上。
多少有用な“とびはねる”は、すばやさ以外の種族値が低いせいでわざわざコイキングを抜粋してまで使う意味は断じてない。
ゲーム内ですら驚くほどのネタキャラ扱い。
まあ、方々の猛プッシュは凄いが、だからと言って強いと言う事は無い。
このように、実際に主力としてこのポケモンを使うトレーナーはいない……はずだ。
しかし。
――もし、ポケモン世界が実際に存在して。
――もし、長年生きれば一跳びで山をも越えると言われるコイキング
――もし、その戦闘技術が六百族と呼ばれる方々とも渡り合うほどの物だったら?
――その時は、コイキングたちだって弱くないっ!! と声高に宣言しようではないか。
いかがでしたでしょうか?
なんとなくこれまでに出たことのあるネタのような気がして地味に戦々恐々としています。
一万字も超え、疲労感はメインの方の七千文字とは比べものにならないですね。
ポケモン擬人化、書いてみたかったんですよね~。
かなり無茶苦茶な設定についてきてここまで読んできてくれた方々、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
◇ ◇ ◇
以下、いろいろな解説です。
※ネタバレ注意 先に本編をお読みください。
〈キャラ設定〉
「コイキングを、舐めないでっ!」
名前:コグ(コイキング) せいかく:ゆうかん とくせい:すいすい
技:「はねる」 「たいあたり」 「とびはねる」 「じたばた」
「〈格闘技全般〉」
本作の主人公。
生まれたときから何の変哲も無い普通のコイキング――とは言い難く、実は実機風に言うのなら6Vと称されるだけの能力を秘めているが、本人は勿論分かっていない。案外、長老がこの少女に言った言葉も間違っていないのかもしれない。
ヒトのトレーナーに釣り上げられ、徹底的に鍛え抜かれたポケモン。
おかげで最早成長することは出来ず、ギャラドスに進化する事は叶わない。
しかしその逆境にもめげず、死に物狂いで訓練したところ、ある朝人型になっていた。
その後はその体とトレーナーと生活していた頃の記憶を元に人間たちの生活に溶け込み、武術を習得、我流のものへと進化させた。
その生い立ち故に自分がコイキングである事に誇りを持っており、同類を馬鹿にされるとキレる。
――が、本作ではコイキングは圧倒的に弱者であるという位置付けのために、かなりコイキングは馬鹿にされる。そのため、あちこちで戦闘になってしまう。
さらに、行く先々でコイキングたちに魔改造を施してしまうため、訪れたところのポケモンたちには酷く恐れられる。
陸上で学んだ技を扱えるため、格闘技全般を扱えるが、「こおりのパンチ」等、特殊な力を使うものは使えない。また、使った回数が少ないと本来の威力を発揮できない。
現在は拾った(捕獲した)パルシェンとともに諸国漫遊中である。関係はどんどん良くなっているようだ。
名前の理由は「
「ありがとよ、コグの姉貴!」
名前:コイキング せいかく:色々 とくせい:すいすい or びびり
技:「はねる」 「たいあたり」 「じたばた」 (ただし個体によっては覚えていないものもある)
まとめて紹介するがコイキング。
ヒトによって逃がされたギャラドスの支配下に置かれていたところ、コグが訪れ特訓を受け、これまで馬鹿にされていたポケモンたちを見返した。
最終的にはギャラドスにも下克上を果たす。
今は何匹かが、他の弱いポケモンたちと一緒に「弱者の地位を向上させるの会」を
組んだとか組んでないとか。
「弱者なりの戦い方、のう……」
名前:長老(コイキング) せいかく:れいせい とくせい:すいすい
技:「はねる」 「とびはねる」 「じたばた」 「ハイドロポンプ」
上記のコイキングたちをまとめている、色違いのコイキング。
自分の種を残すためならどんなに辛いことも受け入れる。
その思考のためギャラドスの下で奴隷同然に群れを扱われていたが、コグが来た事で考えを改め下克上作戦に乗った。
ある特殊な経緯から、通常では覚えない「ハイドロポンプ」を習得しており、群れのピンチをそれで何度も救ってきた。
陸上で生活していたことがあり、年齢は百を超えているようだ。
「あのコイキングども……。ふざけやがって!」
名前:サメハダー せいかく:やんちゃ とくせい:さめはだ
技:「かみくだく」 「こおりのきば」 「アクアジェット」 「ちょうはつ」
コイキングを馬鹿にしていた筆頭。
たまたまコグが泳いでたところを、少女と勘違いして攻撃しようとして返り討ちにあった。
コイキングたちの本領によって犠牲になった数少ないポケモン。
「ひっ、コイキング……。すいません、つい怖くて威圧しちゃったんです……」
名前:キングラー せいかく:おくびょう とくせい:かいりきバサミ
技:「クラブハンマー」 「たたきつける」 「ハサミギロチン」 「まもる」
コイキングたちが自分の餌場に入っていたため、威圧して追い払った。
コイキングたちに対しては特に思うことは無く、邪魔だったから追い払っただけである。実はコイキングたちに攻撃したことは無い。
最終的にはコイキングたちの本領を目の当たりにし、逃げるようになった。
「おい、コグ! お前、もう少し気をつけろよな……」
名前:パルシェン せいかく:しんちょう とくせい:シェルアーマー
技:「つららばり」 「シェルブレード」 「からにこもる」 「まもる」
暇を持て余していたところ、コイキングたちが視界に入ったために射的感覚で殺した。
その事がコグにばれ、粛清を食らった。
現在はコグに連れられ様々なところを巡っている。
コグの気持ちは定かではないが、パルシェンは好意を寄せている。ただし、本人はその事は認めようとしない。
基本的にはコグへの突っ込み役なのだが、二人の中では立場は低い。
コグに名前をつけるよう言ったのも彼。「おい」や「お前」では呼びづらいと言っているが、本心は……。
筆者が、書いていてこのキャラを気に入ったためカップリングにした。
「このオレ様が……コイキングなんぞにぃ……」
名前:ギャラドス せいかく:わんぱく とくせい:じしんかじょう
技:「かみくだく」 「かみなり」 「たきのぼり」 「りゅうのまい」
コイキングの群れを従えていた暴君。
地上のトレーナーによって育てられたが、トレーナーが個体値を理解した際に2Vだったため捨てられた。
とはいえ、人によって育てられたその能力は高く、実力はこのあたりの海でもトップクラスだった。
コグに一方的に嬲られ敗れた。その際に、コグがこれ以上コイキングたちに害を与えないようにと、意識を失っている間に捨ててきたのだが戻ってきた。
コイキングたちに八つ当たりしようとするも、長老率いるコイキングの群れに敗れ、追放された。
《オリジナル技等説明》
『はってん(発展)』
コグが自分を鍛えている間に習得した技術。
『はってん』させる前の技の特性を、『はってん』させた後の技に引き継ぐ。
例:『グロウパンチ』+『インファイト』
連打の回数に応じて威力が上がっていくインファイトを放つ。
『こうそくいどう』+『かげぶんしん』
その速度でもって通常よりも効果の高い「かげぶんしん」を扱える。
『こうそくいどう』+『たいあたり』
速い「たいあたり」。
『だいぎょぐん(大魚群)』
コイキングたちにのみ扱える。
これに関わったコイキングたちの「ぼうぎょ」と「すばやさ」を最大まで高め、専用の技を使えるようになる。
『おおうずしお(大渦潮)』
大魚群中にのみ使える。
相手が瀕死になるまで一切行動させずダメージを与え続ける。
その他、忘れている事、説明が欲しい事等ありましたらじゃんじゃんお聞きください。