さて、今回は葛城を治療する回です。次回予告とタイトルが違うのに気づいた人は………察してください。
では、本編第28話をどうぞ!
学園生活部 部室
ガチャりとドアを開け、部室へと入る。
黎斗「ふぅ………やっと着いたか。」
悠里「黎斗さん、大丈夫ですか?」
黎斗「なぁに。少し疲れたくらいだ。問題は無い。」
由紀「あっ、皆!大丈夫だった!?ちゃんと無事!?」
先程まで気絶していた由紀も意識を取り戻して駆け寄ってくる。
その顔色は真っ青で、状況を理解した瞬間一気に不安に駆られたことが容易に想像出来た。
黎斗「大丈夫。ちゃんと治してみせるさ。」
そんな由紀を見て、ニッコリと人を安心させる笑顔をする黎斗。
彼に医者の資格は無くとも、その心はCRと同じ。
前までは自分を神と自称するエキセントリックで傍迷惑な存在でしかなかったのは、過去の話。
今では彼もまた、人々の心と身体を救う仮面ライダーにして、ドクターであった。
由紀「よかった………!」
それを聞いた由紀は幾分か顔色を取り戻し、ほっと息を吐く。
黎斗「では、葛城君を一旦置かせてもらおう。」
黎斗は葛城を机の上に下ろして寝かせ、白のハンカチで葛城の顔を拭く。泥と雨で汚れていた顔は幾分かマシになった。だが、マシになったが故にはっきりと見えてしまう。
悠里「これは………」
胡桃「………改めて見ると、やっぱり酷いな」
美紀「……えぇ。」
由紀「うぅ………」
肌は真っ白を通り越して蒼白。まるで死人のような肌色の上に、傷によって出た血が場違いな彩りを提供し、精神を削る。地下でやられた部分である爪痕は肉を裂いており、まだ血が滲んでいる。噛み付かれた腕はくっきりと跡が残っており、出血こそ止まっているものの、大惨事であった。
黎斗「………まずいな。早急にオペを始めよう。少し離れていてくれ。」
戦場と病院に身を置き、沢山の傷を見てきた黎斗がそう判断する。
一旦全員を下がらせ、自分が最前線に立つ。
黎斗(未知のバグスターウイルスの対処だ。本当は宝生永夢とパラドが居てくれた方がいいのだが………贅沢は言ってられないな。)
いざとなったら校舎の損壊を無視し、『ゴッドマキシマムマイティXガシャット』を使うことも視野に入れながらゲーマドライバーを腰に巻く。
『マイティアクションX』と『デンジャラスゾンビ』を差し込むだけ差し込み、いつでも変身できるような状態にしておく。
その状態で片手に『バグヴァイザー』を持ち、それについさっき作ったばかりのワクチンガシャット──『パンデミックドクターX』を挿入。
黎斗「では治療───開始!」
意を決し、バグヴァイザーのスイッチを押し込む。
銃口から吐き出された小さな粒子が葛城の身体を包み込み、体内へ入っていく。
だが、目立った反応は見られない。
よもや失敗か?
そう思った黎斗はゲームスコープを覗き、症状を確かめる。
黎斗(いや………確かにウイルスはほぼ除去しているし、残ったものも非活性化状態だ。だが、これが『完治している状態』だというのか!?)
ゲーム病自体は完治に近い状態にまでなり、その上再発症も殆どないと言う、ゲーム医療においては完璧とも言えるこの状態。
しかし、何故か葛城は回復しない。
黎斗(くっ………なぜだ………なぜだなぜだなぜだァアアア!!)
焦る黎斗。額からは汗が滲み、全身に震えが生じる。
しかし、背後にいる学園生活部の面々のことを思い出し、冷静になる。
黎斗(ふぅ……落ち着け。落ち着くんだ。まずは葛城君の意識を確認しよう。)
葛城の瞼を捲り、普段永夢達がやっているようにペンライトで照らし、意識を確認する。
結果、意識自体は回復していることが分かった。
黎斗(意識はあるのか。では何故…………)
そして、かつての自分──プロトガシャットからポッピーによって復活させられた時の様子を思い出す。
あの時の黎斗は意識だけはあったがただ最期の言葉を繰り返すだけであった。
そして、この状況は非常にその時の状況に似ていた。
黎斗「少しいいだろうか。恐らく、このままでは葛城君は治らない。」
由紀「えっ………」
美紀「そんな………」
突然黎斗の口から出てきた悲観的な言葉に、由紀達は絶望に顔を染める。
悠里「なんとか……なんとかならないんですか!?」
胡桃「なんとかなるよな!?なるって言ってくれよ!!」
黎斗「あぁ。なんとかしてみせる。そのためにはちょっと必要なものがある。」
胡桃「なんだ!?」
黎斗「葛城君の意識その物だよ。今の彼の中には彼自身を形作っている意識がないんだ。」
由紀「でも、意識ってどこにあるの?」
黎斗「………わからない。」
悔しそうに唇を噛み、絞り出すように告げる。
黎斗「普通の人間の意識なら、この状況では殺したバグスターのプロトガシャットに保存される。だが、この状況では恐らく………」
悠里「この状況を作ったガシャットに保存される………と?」
黎斗「………恐らくは。」
シン────っとした静寂が周囲を包む。
悠里「…………嫌よ。嫌よ嫌よ嫌よ!!」
そして、それに耐えられなくなったのか悠里の心の均衡が崩れる。
悠里「嫌よ………!もう………もう目の前で人を失うなんて…………私は………………!」
そして、再び沈黙が現れる。
だが、この沈黙はただの沈黙ではなく、福音を伴った喜びの沈黙だった。
由紀「……………えっ、よっくん?」
美紀「先輩、何を言ってるんですか?葛城君は今意識を……いや、もしかして!?」
胡桃「聞こえるのか?義彦の声が!」
由紀「うん。すっごいちっちゃいけど………確かに聞こえる!」
由紀の鋭い聴覚は、確かに葛城の声を捉えた。
それは、単なる聞き間違いだと普通なら思うかもしれない。だが、由紀の耳はそういったことは絶対に聞き逃がさないのだ。
由紀「多分この辺から…………あっ、これっ!」
そういうと由紀は葛城のポケットを探り、葛城が最初に生み出した、つまり葛城にとってのプロトガシャットである『アンスキルドシールダーガシャット』を取り出す。
由紀「これだよこれ!これから声が聞こえる!」
黎斗「……成程。プロトガシャットという概念は『最初に作られたガシャット』というわけか。お手柄だぞ丈槍由紀ィ!」
由紀「えっへん!私もよっくんの先輩だからね!」
黎斗「ふっ、いい先輩を持ったものだな。葛城君は。よし、あとはこれをこうして…………」
黎斗はアンスキルドシールダーガシャットを受け取り、葛城の腰にゲーマドライバーを巻いて差し込む。
そして正面のレバーを引き、ガシャットを起動させた。
が、しかし─────
黎斗「なぜだ……なぜ蘇らない!」
葛城は、回復しなかった。
黎斗「何故だァ!理論上では絶対に回復するはずだ!」
遂に冷静さを保てなくなり、頭を掻きむしり、身体を仰け反らせる。
だが、発狂したように騒ぐ黎斗の肩にポンッ、と手が4つ置かれる。
悠里「ありがとうございます。黎斗さん。」
由紀「でも、ここからは」
美紀「私達に」
胡桃「やらせてくれないか?」
そして、こんな提案をしてきた。
ゲーム医療においては完全に素人であるこの4人。治療道具はおろか、知識すらも持っていない。普通の医療であれば誰であっても止めるであろうこの頼みは、無茶というよりは客観的に見れば無謀とも言えるものであった。
だが………
「「「「お願いします!!!!」」」」
腰を直角近くにまで折り曲げ、真摯に頼み込む態度を見た黎斗は冷静さを取り戻し、そのうえでこう告げる。
黎斗「………いいだろう。君達の可能性に賭けよう。」
そう言って身を引き、後ろで腕を組む。
そして、1つのアドバイスをした。
黎斗「バグスターウイルスには恐らくだが、『願いを叶える』という性質がある。君達の願いを強く思いながらやってみるといいだろう。」
悠里「わかりました。」
悠里がそういったあと、4人は葛城へと近づく。
葛城が寝かされている机を囲むようにして立ち、全員でゲーマドライバーのレバーへと手を掛ける。
そして1人1人、自分の思いを口に出した。
悠里「私は………怖いの。仲間を失うことが。もう2度とお別れなんてしたくない!だから………戻ってきて欲しいの!」
由紀「私も同じだよ。もう誰も居なくなって欲しくない!よっくんの居ない学園生活部なんて………そんなの嫌だ!だから、戻ってきてよ!」
美紀「最初に、言いましたよね。『星が見たい』って。今の私にとっては、葛城君が星みたいなものなんです。私はまだ、星を見ていたいんです。だから………戻ってきて!」
胡桃「アタシはお前とこんな別れをしたくない!それに、まだまだずっと一緒にいたいんだ!だから……戻ってきてくれ!」
4人が強い思い──「また葛城に会いたい」という思いをのせ、レバーを強く握る。
すると、ガシャットを中心にしてゲーマドライバーが光を放ち始めた。そしてその光は葛城の身体全身を包み込み、わずかにだが暖かい熱を発する。
胡桃「いくぜ?みんな。」
悠里「えぇ!」
美紀「はい!」
由紀「うん!」
「「「「せーーーーーーの!」」」」
合図と共に一斉にレバーを引く。
『ガッチャーーーーーーン!レベルアップ!!!』
『立ち上がれ弱者!立ち向かえ守護者!今こそ我は蘇り!』
それと同時にいつもと少し違う変身音が流れる。
変身音が続くほど光は強く、そして熱くなって周囲を包む。そして一瞬強烈な光を放ち、全員の目を焼く。
思わず目を閉じた5人が再び目を開けると─────────
葛城「……………みんな、本当に済まなかった。そして────本当にありがとう。」
目を開け、自分の足でしっかりと地面に立っている葛城がいた。
「「「「葛城(義彦)ーーーーーー!!!」」」」
感極まって思わず飛びつく4人。
胡桃「お前!心配したんだからな!」
由紀「よかったよぉおおおお!戻ってきたよぉぉお!」
美紀「本当によかったです!」
悠里「信じてたわよ!戻ってきてくれるって!」
葛城「ちょ、お前ら!急にされると………うぉっと!」
思わず体勢を崩し、そのまま倒れ込む5人。
だがその顔には笑顔が溢れており、例外なく全員が再会を喜んでいることが見て取れた。
黎斗「おめでとう、学園生活部の諸君。よくぞ奇跡を成し遂げてくれた。そして葛城君。再び会えて嬉しいよ。」
惜しみない賞賛の拍手を送りながら再会を喜ぶ黎斗。
葛城「はい!わざわざありがとうございました。迷惑かけちゃってすいません………」
黎斗「なぁに。私はあまりやっていないとも。なにもかも彼女達がやってくれたんだ。礼も謝罪も彼女達にしたまえ。」
葛城「はい。それは勿論です!」
黎斗「よろしい。では、そろそろ私は帰るとしようか。後は部員水入らずで上手くやりたまえ。」
そういうと颯爽とエクストリームガシャットへ乗り込み、窓から去っていった。
葛城「………改めてみんな。迷惑かけちゃって本当にごめんなさい!」
葛城は心からの謝罪する。
葛城「胡桃のことも思いっきり蹴っちゃったし、美紀だって追い回して怯えさせた。りーさんにもわざわざ危険な外に行かせちゃったし、由紀ちゃんは凄い怖がらせちゃったし。それに───」
悠里「ストップよ。葛城君。」
悠里は指を葛城の唇に当て、続きを言わせない。
悠里「元々、危ないことを胡桃と葛城君にばかり任せてた私達にも責任はあるわ。」
胡桃「それに、義彦がやられたのだって、アタシを庇ってだ。むしろ謝んなきゃいけないのはアタシの方だよ。」
美紀「それに、私達はもう気にしてませんし。」
由紀「そうそう!戻ってきてくれただけで十分だよ!」
葛城「みんな………!」
例え何があっても再会を喜ぶ学園生活部の温かさに心を打たれ、涙を流す葛城。彼の胸には身体中を流れる血の他にも暖かいものが流れていた。
悠里「それに、言うべき言葉が違うでしょ?」
由紀「そうそう!学園生活部は私たちの家だからね!」
美紀「家に帰ってきたら!」
胡桃「言うことは1つ!だぞ?」
葛城は涙を拭い、精一杯の大声で帰宅を告げる。
葛城「あぁ。みんな────ただいま!」
「「「「おかえりなさい!!!」」」」
こうして、葛城は再び学園生活部へと戻ることが出来た。涙で顔を濡らす葛城の周りには、いつだって学園生活部がある。例え、それがどこであっても────
葛城「………というか、そろそろどいてくれ……俺が潰れる……………」
由紀「あっ、ごめん!ずっとそのままだった!」
悠里「まぁまぁ。たまにはいいじゃないの。」
胡桃「いや、ちょっと恥ずかしんだけど!?」
美紀「ちょ、動けないです!ふぁ、ふぁすへてふださい!」
悠里「ちょ、美紀さん!?私の胸のところで大声出さないでぇ!」
胡桃「りーさん!あんまり動かないで!くすぐったい!くすぐったい!」
由紀「お、胡桃ちゃんこちょこちょ効くの!?よーし!」
胡桃「ちょ、由紀!やめろ……やめろぉおおお!!」
葛城(…………誰か助けてくれ。俺が一番ヤバイ。)
彼らの日常は、まだまだ続く。
というわけで第28話、いかがでしたでしょうか?
ここからは暫く本編という名の日常編が続きます。
学校行事をしたり、みんなと仲を深めたり。ときには喧嘩したり、バトルが起きたり?そして葛城との恋愛関係は発展するのか………?
色々波乱万丈ながっこうぐらし!をする彼らの様子を書いてい気ますので、今後ともよろしくお願いします。
では、次回の投稿まで!
見てみたいエピソード
-
普通に本編を進める
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閑話を挟む
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葛城と学園生活部女性陣との恋愛エピソード