これが今年最後の投稿となります。
中々時間が取れず更新が遅れてしまいすみません………
では、本編をどうぞ!
side葛城
葛城「うーん。あんまりいい物資がないなぁ。」
北側担当の俺は、独り言をぶつぶつといいながら作業を続けていた。
本当は誰かと一緒にやりたかったのだが、残念ながら戦える俺は自然と1人班。当然胡桃もだ。
俺は必然的かつ一時的にボッチへと復帰していた。しかしこの感覚は懐かしい。この頭を通さず勝手に独り言が頭から流れていく感覚は実に久々に味わった。…………そして悲しい気持ちになった。
葛城「友達………俺に友達っていたっけ?」
熟考した結果、どうも昔の記憶──特に世界がこんなふうになるまでがどうにもあやふやだ。
薄ぼんやりとは思い出せるんだが、どうも靄がかかったように感じてしまう。
まぁそもそも友達がいたかは怪しいんですがね。
とはいえ別に単独行動自体は別に嫌いではない。むしろ好きな部類に入るといっても過言じゃないだろう。
こんな世界になる前はよく1人でゲーセンとか本屋とか行っていたものだった。多分。その辺は覚えてる。
そしてカップルとかを見る度に舌打ちを心の中でしたあと、帰ってから若干死にたくなったのはよく覚えている。
うーん。なんだか考えてるだけで悲しくなってきたな。
葛城「よし。粗方こんなもんかね。」
独り言やぼうっとした考えも行動の妨げにはならず、手際よく(自称)見つけた物資をリュックへと放り込む。缶詰やペットボトル入りの水、レトルト食品や賞味期限がまだある食品を主に放り込み、背負って立つ。ずっしりと重いリュックは明日への希望だと思えばむしろ軽いくらいだった。
………そう考えるとなんだか軽い気がしてきたな。もうちょっと入れられるか?
結局さっきまでの1.5倍くらいの量を無理やり詰め込み、今度こそ外へ出る。
ちなみに増やした分の中には洋服があったりする。いくら俺が普段着を気にしないタイプだとはいえ、今は女子との共同生活。視線だって気になるし、ちょっとくらいカッコつけたいのだ。
それにいい加減季節の変わり目だから寝間着が欲しいしね。
そんなくだらないことを思いながら歩くこと数分。
とりあえず広い大通りに出た。
さて、と。
葛城「隠れてないで出てきてくれないかね?誰かは知らんけど。」
さっきから後ろを着いてくる変態(仮定)に声をかける。このまま車まで連れていくわけにはいかないので、この辺でご退場願おうか。
声をあげると、そいつは案外素直に顔を見せた。
葛城「…………誰だ?お前。」
顔を見せた、とは言ったものの、その表現は少し外れていたかもしれない。
現れた謎の生物(?)は凡そ顔と呼べるようなパーツは身体のどこにも存在せず、それどころか全身の輪郭すら危うかった。
端的に言うと───────幽霊?
葛城「『幽霊』ってわけじゃぁ無さそうだな。お前。」
幽霊に見えるその影は言葉を発することなく、手にナニカを具現化させる。
それは2つの穴が空いたバックルに横から取っ手のようなハンドルがついた物体───後に、『ビルドドライバー』という名前だと知った。を取り出し、腰であろう部位へあてがう。飛び出してきたベルトが一周し、俺もよく知る「仮面ライダーのベルト」っぽくなった。
葛城「なっ!?仮面ライダーだと!?」
俺の知らない仮面ライダー。
この世界には永夢さんたちみたいなエグゼイドとかしかいないと思ってたのに………!
そんな俺の驚きを知ってか知らずか、真っ黒な2本のボトルを取り出し、ベルトへと刺した。
『タンク!タンク!ガタガタゴッドンズッダンズダン!ガタガタゴッドンズッダンズダン!』
亡霊「………………………変身」
『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』
亡霊の前後にプレス機のような物体が出現し、見た目の通り亡霊をプレスする。チーンという少々間抜けな音とともにプレス機が開いた時には、もうあやふやな亡霊もどきは存在していなかった。
そこにあったのは、破壊の兵器。
感情を殺し、破壊の限りを尽くす暴虐の黒き戦車である仮面ライダーがそこには立っていた。
亡霊「ふぅ……。ようやくまともに動けるな。」
葛城「…………誰だ。あんた。見た限りじゃ味方、ってわけでもなさそうだが。」
亡霊「俺は『メタルビルド』だ。お前たちの世界には元々存在しないがな。」
葛城「メタルビルド?すまんが俺の知り合いじゃなさそうだな。」
亡霊「だろうな。安心しろ。俺の、いや。『俺達の』目的はお前だけだ。お前の仲間には手を出さないさ。」
それを聞いて内心ホッとするが、狙いが俺というのが腑に落ちない。まさかこいつホモか?
亡霊「今回は挨拶程度にしておいてやる………よッ!」
そんな失礼な思考をしていたら、相手がいきなり殴りかかってきた。
慌ててしゃがんで頭を下にさげ、敵の拳を回避する。
そのまま足をバネのように跳ねあげ、後ろへと下がった。
葛城「あっぶねぇ!まだ俺なんもしてねえだろうが!」
そういいながら俺もゲーマドライバーを腰に装着。
ガシャットケースは戦闘用の武器としてりーさんに渡しているので、現在俺の持っているガシャットである「アンスキルドシールダー」と「マイティアクションX」を取り出す。
『マイティアクションX!アンスキルドシールダー!』
『ガシャット!!』
電源ボタンを押し、両ガシャットを起動。
ゲーマドライバーに差し込み、前面部を開く。
葛城「変身!」
『ガッチャ〜ン!レベルアップ!!』
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティ〜アクショ〜ンX!!アガッチャ!アンスキルドシールダー!』
葛城「さてと。まずはお前をとっちめてからゆっくり話を聞くとするか!」
変身を終えた葛城は空いていた距離をダッシュで詰め、まずは拳を叩き込む。わかっていたと言わんばかりに無言で拳の軌道を逸らしたメタルビルドはカウンター気味に膝蹴りを放ち、再び距離を取った。
「ったく。そう簡単にアドは取らせてくれないか。」
「当たり前だろう。」
そういいながら脚にキャタピラのような影を纏い、地面を滑るようにして接近してくる。そのままの勢いで殴り込んできたので、腕にある盾で防御。こちらも滑らせるようにして攻撃を上手く受け流し、葛城が相手の胸に勢いの乗った拳を叩き込む。
殴られたメタルビルドは勢いを殺さず、むしろ乗るようにして後ろへと下がった。
これでまた、両者の距離は振り出しへ戻った。
「なぁ、教えてくれよ。お前は『この事件』を起こした黒幕側だろ?」
「そうだ。」
殴り、殴られ。蹴り、蹴られ。
まるで鏡写しのような攻防を繰り広げる両者の間には油断はない。だが、最小限、言葉を交わしていた。
「お前たちの目的はなんだ。なんでこんなことをした!」
「それを言ったところでどうにかなるのか?」
だが、それは言葉を交わすと言うよりはただの葛城の激情を載せた音でしかなく。
そんな激情に駆られた葛城は油断をしてないとはいえ、隙があった。
そんな一瞬の隙にビルドドライバーのハンドルが回転。軽快な音楽を鳴らしながら死を運ぶ。
『Ready go!』
「しまっ………!」
鳴り響くビルドドライバーの陽気な音声。
それは必殺技の準備が整った合図に他ならない。
───今から必殺技で防御できるか?
そう思い、ガシャットを引き抜こうとする葛城だったが─────間に合わない。
「はぁっ!」
真っ直ぐに伸びたメタルビルドの足は戦車のキャタピラの幻影を纏い、一直線に葛城の胸元へと突き進む。
それはまるで、無力な兎に対する戦車の砲撃のようにも見えた。
声にならない声を肺から押し出され、吹き飛ばされる葛城。建物1個を貫通して破壊しながら飛んでいき、道路を挟んで反対側の家の塀にぶつかってようやく止まった。
「ふん。こんなもんか。」
メタルビルドがその名に反するほどの身軽さでひとっ飛びに跳躍し、反対側へと飛び移る。
そこには変身を解除され、無惨にも傷だらけで転がっている葛城の姿がある。少なくともメタルビルドは、そう思っていた。
「…………成程な。『あのお方』が言ってたのはそういう事か。」
視線の先には、全身から薄く青色の光を纏い、傷こそあれど大きなダメージを受けた様子のない葛城が居た。よく見れば、直撃したはずの腹の部分まで腕のシールドが伸びており、ダメージを吸収していたことも一目瞭然だった。
そして何よりも、それと同時に胸部にある経験値のゲージのようなものが減少していた。
だが、流石に衝撃までは吸収しきれなかったらしく、背中を強く打ち付けた葛城は苦しげに呼吸を繰り返す。しかし、今葛城にはそれよりもっと重要なことがあった。
「『あの御方』って………誰だ…………!」
ヒューヒューとか細げな呼吸をしながらも、しっかりした声でそう叫ぶ。
それを見たメタルビルドは少し驚いたような様子だ。
どうやら、思わず呟いた独り言が聞こえてるとは思っていなかったらしい。
だが、問題ないと判断したのかふっと笑い、答える。
「あの御方はあの御方だ。この事件を引き起こした黒幕でもあり、今我らを統べているお方でもある。つまるところ…………『この世界の神』にも等しい。いや、『この世界』って表現も可笑しいか。」
くつくつと仮面の下で歪んだ笑みを浮かべながら答えるメタルビルドからは歓喜が感じられる。
その様子はまるで、自分の信じる神の教えを告げる宣教師。狂気に染まった無機質な複眼は、真っ直ぐに葛城を射抜いた。
「お前にはあまり積極的に動いてもらっちゃ困るんだよ。特に、『お前の命に関わる様なこと』はね。」
「どういう意味だ!」
「そのままの意味だよ。『サバイバー』、葛城。君は死ぬことは無いだろうが…………死にそうな目にあってもらっても困るんだよ。精々安全な部屋に篭って震えてな。」
そういいながら、トントンと自分の胸部──葛城のゲージはある部分に相当するを叩きながらビルドドライバーのハンドル部分を回す。ゆっくりゆっくりと死を運ぶ軽快な音楽が再び耳に届く。
そして───『Ready go!』
その砲弾は放たれた。
「へぇ、そうか。そいつがキーパーソンって訳か。成程。だいたいわかった。」
『Final Attack Ride!ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
だが、死の砲弾は届くことはなく、跡形もなく破壊されて姿を消した。
文字通り、『破壊者』の手によって。
「き、貴様は………!『ディケイド』!」
「よう、確かメタルビルド、だったか。まあそんなことはどうでもいい。」
世界の破壊者、ディケイド。
数多の世界を巡る放浪者にして仮面ライダーである彼は今、マゼンタのベルトと鎧を纏って登場した。
「おい、そこの葛城とやら。仲間のことまで飛ばしてやるからとっととここから逃げろ!」
「は、いやそれはありがたいんだが……ってかアンタ誰なんだ?」
立ち上がってディケイドへと近づく葛城。
しかし、近づかれた本人であるディケイドは葛城をくるりと反転させ、そのまま突き飛ばした。
葛城「おい何すんだ………ってなんだこりゃ!?」
葛城の目の前に灰色のオーロラが出現し、通り過ぎる。そしてオーロラが通り過ぎた後には、何も残っていなかった。
「悪いな。後で事情は説明してやるよ。『お土産』、落とすんじゃねえぞ。」
オーロラの消え去った空間へと呟き、メタルビルドへと向き直るディケイド。
緑の複眼が真っ黒な複眼と向かい合い、火花が散る。
「さて。お前たちには色々と聞きたいことがあるが…………まずは一旦ボコボコにしてやるか!」
一方その頃。
葛城を除く学園生活部のメンバーは車に合流し、葛城の帰りを待っていた。
別段葛城が遅い訳ではないのだが、この区域には思っていたよりも資材となりそうな物が少なく、想定していた時間よりも短い時間で探索をし終わっていたのだ。
由紀「よっくんまだかな〜」
胡桃「アイツのことだ。多分きっちり時間いっぱい探索してんじゃないか?」
由紀「確かにそうかも!よっくんそういうとこ真面目だもんね〜」
足をぷらぷらさせながら待つ由紀の姿は、どこか落ち着きがない。しきりに窓の外を気にしていたり、外から聞こえるちょっとした音にも気を取られたりと、普段の彼女からすると考えられないような状態だった。
しかし、それは彼女だけではない。車の中で待っている他の3人も、どこか忙しなかった。全員、この状況に覚えがあったからだろう。
あの雨の日。帰りの遅い葛城が1度死んでしまったあの日。その事件出できた傷は治ることはあっても、心から消えることは無い。だから、この待っている時間は少し不安になってしまったのだ。
由紀「そういえばさ!みんなはよっくんのことどう思ってるの?」
その雰囲気を壊したのはやはり、ムードメーカーである由紀だった。
明るく振舞ってくれていることに感謝しながらも、その流れに全員が乗った。
悠里「そうねぇ。頼りがいはあるわよね。」
胡桃「色々危なっかしいけどな。頼りになるのは確かだ。」
美紀「それに、優しいと思いますよ。2人でデパートにいた時も、色々と気遣ってくれましたし。…………変態でしたけど。」
胡桃「ははっ。アイツは前っからそうだったんだな。知らなかったぜ。」
悠里「やっぱり一緒に生活してるからこそ、見えるものがあるわよね。」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。
今は「葛城義彦」という男性の話題でおしゃべりに花を咲かせている。その様子は微笑ましく、周りがこんな状況でなければお泊まり会や昼休みの教室で見られるような恋バナに花を咲かせる女子そのものだった。
胡桃「でもさ〜。アタシ1個疑問があるんだよな。」
美紀「葛城君の好きな人でも気になるんですか?」
胡桃「ば、ばばバカヤロウ!違う!そうじゃなくってだな…………」
ちょっと顔を赤くしながらも、胡桃は疑問に思ってたけど言えていなかったことを場の雰囲気で口にする。
それはまるで意中の人のことを秘密めいて話す、恋する乙女のようだった。
胡桃「誰かさ。前々から義彦のこと知ってた人って………いたりするのか?」
一瞬、シンとした空気が流れる。
そして、全員の胸の内に疑問が生まれた。
「そういえば葛城のこと前から知ってる人………いなくない?」と。
ここにいるメンバーは社交性に優れ、クラスや学年を問わず仲のいい人がいると言っても過言ではないという様な人が多い。
したがって、他クラスや他学年の教室やフロアーへと赴くことがあった。
つまり、「名前を知らなかった」ことはあっても、「顔さえ分からない」人なんて殆ど居ないはずだったのだ。もちろん知らない人だっていただろう。サボりが多い人や体が弱くて病欠しがちな人だっていただろうから。
だが、その条件を満たし、なおかつここにいる全員が顔も見た事がない人間がいる可能性は──0に等しい。
悠里「言われてみれば…………そうね。私は屋上まで出入りしてたから断言出来るけど、屋上でサボる人達の中にはいなかったはずよ。」
美紀「それに、彼がそう簡単に病気になったりサボったりするような人には見えませんし…………。」
由紀「私は保健室けっこう言ってたけど、よっくんを見た事1回もないよ?それに、めぐねぇのことも知らなかったみたいだし…………。」
由紀の言葉に、一同ははっとした。
めぐねぇは確かに学校内の一教師でしかない。でも、同じ学校に2年間在籍していて、なおかつ校内でも相談に乗ってくれたり、可愛かったりとで有名な先生のことを知らない。なんてことはあるのだろうか?
再び、シンとした空気が車内に降りる。
そして、最初とは違う疑問が胸の内に生まれていた。
「葛城義彦という人間は、一体何者なのか」
この疑問は全員の脳内にこびりついた。
重苦しい空気が充満する。全員が喉の乾きを覚えるほどには。
胡桃「そっか。やっぱみんな、わかんないか。」
そういってはにかむ胡桃。そして、こう続ける。
胡桃「ま、でもアイツがどんなやつだって大丈夫だろ。多分。」
胡桃の口から出たのは、「信頼する」という意味に等しい言葉。
楽観的、といえば聞こえはいいが、1つ屋根の下どころか壁や障子1つすら間に挟まない共同生活をしている人が何者かわからない。そんな状況で言うにしては少々危機管理能力に欠けていると言っても過言じゃなかった。
だが。
胡桃「何があってもアイツはアイツだし。それに、皆も分かってるんだろ?『アイツは裏切らない』って。」
だが、胡桃の言葉はどこか確信があって言ったように聞こえた。
美紀「まぁ、そうですね。変態ですけど。」
悠里「そうね。彼なら、多分大丈夫よ。ちょっと抜けてるけど。」
由紀「だよね!よっくんなら大丈夫!ちょっとおっちょこちょいだけどね。」
胡桃「な?だろ?」
悠里「なんで胡桃がちょっと誇らしげなのよ。」
胡桃「べっ、別誇らしげじゃねえよ!」
再び和やかな雰囲気がゆるりと流れる。
それは葛城の人徳故でもあったが、それ以上に彼が紡いだ絆や安心感が作ったものだった。
胡桃「あーあ。早く帰ってこないかな。義彦。」
それを言い終わるか否か。
そんな瞬間だった。
ゴンッ!!
何か───めっちゃ固いものが地面にぶつかったような音がした。
葛城「いってぇなんか刺さった!!ったく、なんだったんだよあのピンク野郎………。」
そこには変身を解除された状態で盛大にお尻をアスファルトにぶつけた葛城がいた。
というわけで世界の破壊者降臨。あとメタルビルド。
今回は多分誰も覚えてないであろう葛城のガシャット、「アンスキルドシールダー」の設定に触れています。
覚えてねえ!って人は「第1回アイテムのまとめ」を見てください。(露骨なステマ)
次回はディケイドこと門矢士によって、この世界の黒幕の話や世界がこうなった原因などが1部明かされます。
どうぞお見逃し無く!
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