とある科学の《絶対零度》   作:魔王の後継者

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2014 2/16 17:37
最後に追記しました。


11 幻想猛獣【AIMバースト】

 

幻想猛獣(AIMバースト)が暴れだして数分。

警備員(アンチスキル)はほぼ壊滅状態だった。

黄泉川や鉄装は他の警備員(アンチスキル)の面々が倒れている中、意味がないと分かっていつつも銃撃を続けていた。否、続けざるを得なかった。何故なら、この付近にはアレが在るからだ。

退避するわけにもいかず、街を守るため発砲し続ける。

しかし、ここで化け物に銃弾を撃ち込み続けていた黄泉川が、触手の一撃で壁際まで吹っ飛ばされる。

 

 

「あっ、隊長!?」

 

 

さらに畳みかけるように問題が発生する。

 

 

「えっ、嘘!?……た、弾切れ!?……嫌ッ、来ないで!」

 

 

カチカチと銃から弾切れを意味する音が響く。

恐怖で足が竦み動けない鉄装に向かってノロノロと触手が近づく。

触手が鉄装に触れる、まさにその直前。

目の前にあった触手が電流によって焼き払われた。

その一瞬後に蒼が飛び込み、鉄装を救出する。

 

 

「あ、ありがと……って、あ、貴方たち誰?一般人がこんなところで何してるの!」

 

 

鉄装は礼を言いかけたところで相手が一般人であることに気づく。

 

 

「ったく。どいつもこいつも一般人、一般人って……」

 

「……まあ、俺たちは風紀委員(ジャッジメント)でない以上一般人であることは事実ですし……。まあそんななこと言っててもしょうがないんですけど……」

 

 

美琴の洩らした不満の声に蒼が呆れた声でツッコむ。

 

 

「とにかく!ここは危険よ!すぐに避難しなさい!」

 

「いや、逃げるのは…………ッ!」

 

 

再び迫ってきた触手を回避。

その直後に美琴が電撃で破壊する。

 

 

「逃げるのはそっち! アイツはこっちが攻撃しなければ寄って来ないんだから」

 

「それでも、撤退するわけにはいかないじゃん」

 

 

脇腹を抑えながら、黄泉川が遠くの施設を指さす。

指の示す先の巨大な施設を見る。

 

 

「アレがなんだかわかるか……?」

 

「いえ……なんですアレは?重要施設だから退避してないんでしょうけど……」

 

「アレは原子力実験炉じゃん」

 

「え……?マジ?」

 

「!?」

 

 

黄泉川の発言を聞き驚愕に目をむく。

何故警備員(アンチスキル)が身を挺して化け物の進行を止めようとしているのか、はっきりと理解する。

そんなものが近くにあれば確かにあんな化け物を残して逃げるわけにはいかないだろう。

 

そこで鉄装が階段を上る一人の少女の存在に気づく。

 

 

「何やってんの、あの子!」

 

「あれは木山の人質になっていた……。くっ!この混乱で逃げ遅れてるじゃん」

 

 

黄泉川の言葉に美琴が首を横に振って言う。 

 

 

「違う。初春さんはもう人質でも逃げ遅れてるんでもない……。頼みがあるのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初春を警備員(アンチスキル)に任せて蒼と美琴が幻想猛獣(AIMバースト)と対峙する。

むやみに暴れまわる幻想猛獣(AIMバースト)に美琴電撃を当てて注意を引く。

その一撃で胴体に風穴があくがすぐに再生する。

 

 

「アンタの相手は私たちよ!」

 

「……まあそういうことです」

 

 

やる気満々の美琴と冷静で無表情の蒼の対照的な二人。

攻撃を受けた幻想猛獣(AIMバースト)が反応してこちらを向く。

 

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』

 

 

幻想猛獣(AIMバースト)が鳴くと同時に頭部から光線が打ち出される。

 

 

「くっ!」

 

 

それを停止した空気の壁で防ぐ。

蒼の能力は戦闘に向いている。停止の力は防御面に応用が利きやすく、形状を固定することもできるため、武器としても使える。それに相手が生物であれば、体を凍らせることで対象を殺すことも可能だ。

だがしかし、それは相手が通常の生物であればの話。

相手は一万人の力場の塊。通常の生物の常識は通用しない。

幻想猛獣(AIMバースト)が発した攻撃が全方位に向けて拡散し、放たれようとする。

 

━━━させるか!

 

 

「~~~~ッ!凍れ!!」

 

 

その一瞬、幻想猛獣(AIMバースト)の動きが完全に停止する。

そして次の瞬間、動こうとした幻想猛獣(AIMバースト)が凍り付く。

 

 

「やったの?」

 

「……いや、やっぱり無理みたいです」

 

 

数秒の後に幻想猛獣(AIMバースト)の体が崩壊するも、完全には崩れず、すぐに体が再生し始める。

凍り付いても死なない。まさしく化け物だ。

 

体の半分以上が崩壊したにもかかわらず十秒足らずで再生が完了し、復活する。

 

 

「打つ手が無いんですけど……ここを通すわけにはいかないんですよね……」

 

「あたりまえよ!」

 

 

再び伸びてきた触手を美琴が電撃で吹き飛ばす。

しかしそれも今までと同様にすぐに再生する。

 

━━━早くしてくださいよ、初春。俺も御坂もこれが相手ではそう長くはもたないかもしれないですから。

 

 

次々と迫ってくる触手を美琴が電撃で防ぎ、能力で飛んでくる攻撃を蒼が防ぐ。

 

そこで、蒼が気付く。

 

 

「……この音は……?」

 

 

五感に働きかけるような音。それが辺り一帯に響き渡る。

 

 

「ッ!」

 

 

美琴が電撃を放ち迫る触手をまたも破壊する。

すると、どうだろう。先程まで攻撃を受けてすぐに再生していた幻想猛獣(AIMバースト)がその再生をやめた。

 

 

「初春さん、やったんだ……!じゃあ、悪いけど、これでゲームオーバーよ!」

 

 

電撃で美琴が幻想猛獣《AIMバースト》を焼き尽くす。

同時にその巨体が地に伏す。

 

再生していない。ならば今の一撃で終わったか……?と思いふう、と息をつく。

 

 

「やった?」

 

 

「気を抜くな!まだ終わっていない!ネットワークの破壊には成功しても、あれはAIM拡散力場が生んだ1万人の思念の塊だ。普通の生物の常識は通用しない!」

 

「話が違うじゃない! だったら、どうしろって!?」

 

 痛む体を引きずりながらもやって来た木山の言葉に方法を求める御坂の声に、

 

「核が、力場を固定させている核のようなものが、どこかにあるはずだ! それを破壊すれば……」

 

 

『ntst欲kgd』

 

 

木山の言葉をさえぎって幻想猛獣(AIMバースト)から人語ではない、嫉妬や羨望、苦しみや絶望が入り混じった悲鳴のような何かが聞こえる。

 

 

『kg苦s』 『n墳kd』 『dknr嘆yjtnj』 『w羨』 『ki遭bgnq』 『g助sm』 

 

 

その声は幻想御手(レベルアッパー)を使った者たちの声。

先程は自業自得と断じた者たちの悲痛な叫び。それは学園都市に来て日が浅く、且つ高位の能力者である蒼には理解できるはずもなかった才能という壁に苦しんできた学生たちの悲鳴。

 

それらを聞いて蒼も覚悟を決める。

 

 

「さがって、巻き込まれるわよ」

 

 

美琴が木山に警告する。

 

 

「構うものか! 私にはアレを生み出した責任が……」

 

「あんたが良くても、あんたの教え子はどうすんの!? 回復した時、あの子たちが見たいのは、あんたの顔じゃないの? こんなやり方しないなら、私も協力する」

 

 

美琴の言うことに蒼も同調する。

 

 

「そうですよ。何ができるかはわかりませんが俺も協力しますよ」

 

 

驚きで目を見開いてこちらを見る木山。

それを一瞥して美琴が言う。

 

 

「あとね、アイツに巻き込まれるんじゃない。私が巻き込んじゃうって、言ってんのよ!」

 

「む……」

 

 

大規模の電撃を美琴が放つ。

幻想猛獣(AIMバースト)は瞬時に木山が行っていたように誘電力場を形成し、美琴の電撃を防ぐ。

しかしそれは数秒で効果を失った。誘電力場を形成する物質を蒼がすべて停止させたのだ。

 

 

「蒼も逃げていいのよ?巻き込まれるわよ」

 

「……問題ないですよ。大丈夫です。それに電撃には割と慣れてます」

 

 

えっそれはどういう意味……と美琴が蒼の言葉に反応するがそれを無視して幻想猛獣(AIMバースト)を見据える。蒼の様子を見て美琴も向き直る。

そして美琴が幻想猛獣(AIMバースト)、否。幻想御手(レベルアッパー)使用者に語り掛ける。

 

 

「……ごめんね。苦しんでるのに気付いてあげられなくて。でもさ、だったらもう一度頑張ってみよ」

 

「その通りですよ。最近学園都市にやってきてぽっと出で高位能力者になった俺が言っていいことじゃあないかもしれませんがあえて言わせてもらいますよ。理想が、能力者になりたいって夢があるなら、こんなところで苦しんでいる暇があったらさっさと起きてもう一度努力しろ!!」

 

 

━━━能力者になりたくてこの街に来て、能力者になれなくて、才能という壁にぶつかって、やりきれなくなるという思いもわかる。そこに幻想御手(レベルアッパー)なんてものが現れたら使ってしまうのも理解できないわけじゃない。でも、それでも、諦めるな!歩き続けてたら先はある。でもそこで止まったらもう先はない。起き上がる手伝いはしてやる。だからもう一度、立ち上がって、歩き出せ!!!

 

頑張ってそれでも駄目で挫折して幻想御手(レベルアッパー)に手を出してしまった者たちの気持ちは蒼にも理解できた。彼らにもう一度だけ頑張れというのは残酷なことかもしれない。けれどもそれは大事なことだ。それが分かっていれば良い。人間誰だって挫折することはある。大切なのはそこから起き上がること。そして再び歩み始めること。そしてそれができるものはとても強い者だ。

 

 

「アンタって意外と熱い奴だったのね」

 

「なんですか急に」

 

 

美琴が叩いた軽口に蒼が目を細める。

 

ピンッと美琴がコインを指ではじく。はじかれたコインが宙を舞い放物線を描く。

 

幻想猛獣(AIMバースト)が最後の足掻きか触手を一斉にこちらに向けて来る。

 

 

「いいかげん、鬱陶しい!」

 

 

しかし蒼が能力で触手のみすべて凍らせる。

 

それを見て木山は思う

(この力、薄々思っていたがおそらく間違いない。彼女だけでなく、彼も━━━━、)

 

次の瞬間美琴が打ち出した彼女の代名詞、超電磁砲(レールガン)幻想猛獣(AIMバースト)の内部を貫き、そのまま核を破壊した。

 

(━━━━超能力者(LEVEL5)だったのか━━━━。)

 

 

 

 

 

 

○ ● ○ ● ○ ● 

 

 

 

 

 

事件が終結してしばらく経ってからやってきた警備員(アンチスキル)の増援に遅せえよ、と思いながら体力が尽きて動けない美琴の分も事情を説明し終え、美琴を連れて、木山の前に行く。

 

 

「あの……その、どうするの? 子どもたちのこと」

 

 

美琴が木山に問う。

 

 

「もちろん、諦めるつもりはない、もう一度やり直すさ。刑務所だろうと、世界の果てだろうと、私の頭脳はここにあるのだから」

 

 

美琴がほっとした表情を浮かべるが一拍おいて告げられた次の言葉に表情が引きつる。

 

 

「ただし、今後も手段を選ぶつもりはない。気に入らなければその時は、また邪魔しに来たまえ」

 

 

ええー、と蒼も思いながら警備員(アンチスキル)の車に乗せられて連行されていく木山を見送った。

 

 

「やれやれ、懲りない先生だわ」

 

 

そう呟いた美琴にクスりと微笑み、

 

 

「そうですね」

 

 

と呟いた。

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

 

 

 

 

 

幻想御手(レベルアッパー)事件の翌日。

蒼は自分の頭の開発を行った研究室に来ていた。

理由は蒼の能力の再測定のためだ。

そこで若い研究者が蒼に話しかける。

 

 

「やあ、御桜君よく来たね。主任も奥で待っているよ」

 

「はい。奥に行けばいいんですね?」

 

「ああ、そこで主任からいくつか説明がある」

 

 

研究者のその発言を聞いて一度測定をしているのに説明?と疑問を持つも口にしない。

歩いていくと固い床がコツコツと音を鳴らす。

奥に行って待っていたのは蒼に能力についての注意事項を教えたあの男だった。

 

 

「主任。御桜君をお連れしました」

 

 

男はうむ、と頷き言う。

 

 

「やあ、御桜君。待っていたよ」

 

「……どうも」

 

 

主任と呼ばれたその男に会釈をする。

 

 

「さて、御桜君早速で悪いが能力測定を始めたいと思う。だがその前に君の能力だが……」

 

「大質量の物体も相当小さい対象でも停止させられることですか?」

 

「その通りだ。気づいていたのかい?」

 

 

主任研究者の言葉をさえぎり蒼が言った言葉に男は頷く。

 

 

「まあ、君の能力に一時的な制限をかけるために言った嘘だったのだがね。君は脳に与えられた壁を自分の意思で取り払ってしまったわけだが。だがもうその制限は必要ない。もう十分に能力も安定しているだろうしそれ以外の注意事項は以前と同じだ。再度説明の必要はあるかい?」

 

 

主任研究者の言葉にいえ、と否定の意を示す。

 

 

「では身体検査(システムスキャン)を始めよう」

 

 

 

 

 

 

○ ● ○ ● ○ ●

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 

身体測定(システムスキャン)が終わり、能力の測定結果がでた。……はずなのだが……

 

━━━まあなんというか……研究者のみなさん完全に沈黙していらっしゃる。何か問題でも発生したのか?

 

蒼の困惑を察してか研究者たちが口を開く。

 

 

「御桜君。この結果だが少し時間をもらえないか?」

 

「……?それは構いませんが……」

 

 

その後、数分話が続きこの日の研究所での用は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 

 

 

 

 

二日後蒼は研究所に呼び出された。

呼び出される際に学園都市上層部がどうとか発表がどうとか言われたけれどいまいち要領をえず、理解できなかった。詳しい説明は今日とのことだが。

 

そして今は研究所にいる。

先日からいた研究者たちに加え、先日はいなかったここの研究所以外のマークを付けた研究者がちらほら見え、彼が……などと蒼の話をしている者もちらほらと居る。

 

そこで、先日の主任研究者が蒼の前にやってきた。

 

 

「やあ、御桜君。急に呼びつけて悪かったね。君の能力についての結果だが先日話した通り学園都市上層部……統括理事会に報告させてもらった」

 

「?」

 

 

なぜ自分の能力についての話で統括理事会が?と思う。

自分の能力は事前の測定ではレベル4、確かにレベル4の能力者は少ないがわざわざ統括理事会が関与するほどではない。

そんな蒼の疑問に答えるかのように主任研究者は口を開く。

 

 

「まず結論から言わせてもらうが君の能力強度(LEVEL)超能力者(LEVEL5)、序列は第三位だ」

 

「はい?」

 

 

研究者の言葉に思わず聞き返してしまう。

それも当然だ。超能力者(LEVEL5)の第三位と言えば御坂美琴。

言わずと知れた常盤台のエース『超電磁砲(レールガン)』だ。

突然そんなことを言われても理解できようはずもない。

 

そんな蒼の様子には特に反応を示さず主任研究者は続ける。

 

 

「まず君の能力、……完全停止能力だが能力の範囲、規模、強さすべて申し分ない。序列についての理由だが君には説明はまだしていなかったが序列は能力研究の応用が生み出す利益が大まかな基準となっている。君の能力は応用が生み出す利益は間違いなく『超電磁砲(レールガン)』より下だ。だが君の能力の能力強度はかの学園都市最強の能力者、『一方通行(アクセラレータ)』に勝るとも劣らない。さすがに第二位である『未元物質(ダークマター)』には能力強度で勝っていても及ばないがね」

 

 

━━━……俺の能力がLEVEL5?いやいやいや、話がぶっ飛びすぎだろう。しかも強さは第一位並み?冗談が過ぎるだろう。……いや、冗談じゃないのはわかっている。ここまで研究者が集まって冗談など言わないだろう。

 

主任研究者が続ける。

 

 

「君はわが研究所初の超能力者(LEVEL5)だ。さしあたっての質問だが君のことを世間に公開しても構わないかね?」

 

「……ええ、構いません」

 

 

主任研究者の言葉に蒼は頷く。

 

 

「ありがとう。これで私からの話は終わりだ。何か質問はあるかね?」

 

「……いいえ、ありません」

 

 

主任研究者の言葉に首を振って否定する。

 

 

「では、もう帰ってくれて構わない。今日はわざわざご足労願い、感謝するよ。」

 

 

その言葉を聞いて踵を返しその場から立ち去る。

 

━━━、今日は少ない時間にいろいろ衝撃的なことを聞きすぎた。こういう日は早く帰って寝るに限るな。

 

そうしてこの日は寮への帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、新たなる超能力者(LEVEL5)の誕生というニュースが学園都市中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

 




皆さんこんにちは作者です。
幻想御手【レベルアッパー】編最終回でした。
今回の話もですが漫画を混ぜつつのアニメ準拠ですねこの作品は。
とりあえず次はキャラ紹介を投入して閑話を挟んで次のシリーズに行きたいと思います。
余談ですが乱雑解放【ポルターガイスト】編をカットした場合は改革未明【サイレントパーティー】編は絶対に入りません。かと言って乱雑解放【ポルターガイスト】編をやったからと言って必ず改革未明【サイレントパーティー】編をやるとは限りませんのであしからず。
ツイッターはパソコンで復旧しましたので意見はそちらにでも構いません。
では、誤字脱字、意見、感想ありましたらよろしくお願いします。
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