とある科学の《絶対零度》   作:魔王の後継者

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13 御桜 蒼の休日②

 

 

 

『━━━ゴキブリ、それは最強の生物』

 

「「(超)何でですか!」」

 

 

映画のナレーションに蒼と最愛は同時に突っ込んだ。

 

 

映画【宇宙ゴキブリVS地球ゴキブリ】。

初っ端からのネタのブチ込みに二人そろって反応する。

普段ならば他人に迷惑がかかるのでできないことではあるが、流石C級と言うべきか二人のほかに人はいない。

世界観は28世紀。

26世紀後半に人類が滅んでからその後表舞台にじわじわと現れ始めたのはゴキブリだった。

ゴキブリたちは少しずつ知性を身に着け始め、文明を成していった。

冒頭はゴキブリたちの文明が平和に日々を過ごしているところから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

● ○ ● ○ ● ○ ● ○ 

 

 

 

 

 

 

 

「超予想外の展開でした……」

 

「そうですね……まさか地球ゴキブリにあんな秘密があったなんて……」

 

 

映画鑑賞の後、蒼と最愛は喫茶店に来ていた。

映画【宇宙ゴキブリVS地球ゴキブリ】は予想外に予想外の展開を重ね、名前からは想像もできない大作だった。

おそらく名前で敬遠され続けていたのだろう。

きちんと注目さえされていれば、大成功とまではいかないかもしれないが、成功はしただろうなというのが蒼の素直な感想だった。

 

 

「最高だったのは戦闘シーンの作画です。超圧巻のクオリティーでした」

 

「作画のクオリティーが高いとは絹旗さんに聞きましたけど確かにあのシーンの作画は気合の入り方は他とは段違いでしたね」

 

 

映画が予想以上に面白かったがために、二人ともテンションが高い。

 

 

「……随分長居してしまいましたし、そろそろここを出ましょうか」

 

 

蒼が時計を見て提案する。

もう二時間もいる。そろそろ潮時だろう。

 

それを聞いて絹旗も時計を確認する。

 

 

「そうですね。超長居してしまいました」

 

 

そういって立ち上がった時に蒼がサッと伝票を取る。

 

 

「? 私、自分の分は払いますよ?」

 

 

絹旗が蒼に言うが、蒼はその言葉に首を振って答える。

 

 

「これくらい、俺が出しますよ。それほど多いわけでもないですし、遠慮なさらないでください」

 

 

絹旗は、一瞬きょとんとした表情を浮かべた後直ぐに小さく吹き出した。

ほとんど表情を変化させていなかった絹旗の浮かべた笑顔に蒼は一瞬ドキッとしたが表情に出さない。

 

 

「超分かりました。ここはお言葉に甘えておきます」

 

 

頷いてそのまま代金を払って店を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○ ● ○ 

 

 

 

 

 

 

 

━━━店員さんに可愛い彼女さんですね、と言われたが……苦笑いしかできなかった。

何と言うか……聞こえなかったよな?聞こえてたら迷惑だったよな……さっきからこっち向いてくれないし……やっぱり聞こえてたのかな……。

 

なんて事を蒼が考える中、絹旗の頭の中は焦り一色だった。

顔が真っ赤に染まっているため蒼を直視できなくなっている。

 

(ななななななな、なんですかさっきのは!?わわわわわ、私がかかかか、彼女!?ありえません、超ありえません!わわわわわ、私に彼氏なんて!いい、いる訳が……)

 

と、絹旗は考えながら隣をちらちらと窺う。

 

 

画して、隣を歩きながらちらちらと隣を窺い合う男女の奇妙な図が完成したのである。

 

チラチラと、お互いに窺いあう二人はそのまま並んで歩き続ける。

だんだんと気まずい空気が形成されていき互いにドンドン話しかけ難くなる。

埒が明かないと思い、蒼が意を決して話しかけようとしたその時。

 

その空気を壊す、空気を読めないやつらがいた。

 

 

「ねえ君、可愛いねえ俺たちと一緒に遊ばない?」

 

 

その声は、蒼を無視して絹旗のみにかけられた。

チャラチャラとした格好の男が三人。全員が一様ににやにやとした表情を浮かべている。

絹旗は男たちの態度にムッとした。そして次の瞬間迷惑そうな表情を浮かべる。

男たちのこちらをなめきった態度は二人の神経を思い切り逆なでしていた。

特に完全に無視された蒼の苛立ちは一層強かった。

 

 

「ねえ、君~。黙ってないでさぁ~俺たちと一緒に遊ぼうよ~」

 

 

男たちの一人が絹旗の肩に手をかけようとする。

 

 

「む……」

 

 

パシン、と乾いた音が響いた。

絹旗が男の手を払いのけようとした瞬間、蒼がその手を払いのけたのだ。

男たちのにやけた表情が一瞬引っ込むもすぐに戻る。

表情が戻った理由はすぐに知れた。

 

 

「あ~君、男物の服着てるから男かと思ったけど実は女の子?よく見ると君もかわぃ……おぐぉ!?#$%&%$#&%$」

 

 

しかし、その言葉は蒼の逆鱗に触れた。

 

男の言葉にならない悲痛な悲鳴が漏れる。

蒼の蹴りが男の股間に炸裂していた。勢いは強く、狙いは的確。

周囲の男たちがとっさに股間を抑えるほどに痛々しい光景だった。

蒼の冷たい視線が周りの男たちに向けられる。

 

男たちはその視線で我に返る。

 

 

「はっ!てめえよくもコータ君を!!」

 

 

コータ君なる三馬鹿Aをやられた三馬鹿Bが激昂する。

しかし、

 

 

「うぎょぉっ#$%&’&%$#”#」

 

 

二人目の股間をつぶされた哀れなバカが誕生する。

 

股間をけられた三馬鹿A、Bが白目をむいて失神する。

それを見て三馬鹿Cは再びとっさに股間を抑える。

 

 

「戦闘中に余所見か?」

 

 

股間を抑えていた三馬鹿Cは為すすべなく頭を横から蹴り飛ばされた。

そして、糸の切れた操り人形のように地に伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ○ ● ○ ● ○ 

 

 

 

 

 

 

 

 

三馬鹿をものの見事にのしてしまった蒼は、絹旗とともにダッシュしていた。

完全にやりすぎた。間もなくあそこには警備員(アンチスキル)が到着するだろう。

 

 

「超やりすぎなんですよ!」

 

「それは認識してます!」

 

 

いろいろ理由が重なっておまけに逆鱗にまで触れられてしまったためブチ切れてしまい、蒼は完全にやりすぎてしまったのだ。一番の理由は他にあるのだが。

 

路地を抜けて二人とも一息つく。

 

蒼は肩で息をしていた絹旗が息を整えるのを待つ。

 

━━━、あ~完全にやりすぎた。久しぶりに完全にキレてしまった……。

 

絹旗を待っている間、後悔にさいなまれる。

やりすぎた自覚ははっきりと蒼にもあるのだ。

 

 

「まったく……超限度ってものがるでしょう……」

 

「いや、まったくもって……」

 

 

はぁ、と絹旗がため息をつく。

呆れている様な疲れた様なそんな溜息である。

 

あはは、と蒼は苦笑いを浮かべる。

 

 

「何であそこまで超怒ってたんですか?いくらなんでもあれは……」

 

 

男たちの痛々しい光景を思い出して絹旗も少し憂鬱になる。

女性である絹旗にはわからない痛みではあるが、アレは想像を絶する痛みなのであろうとは予想ができる。

 

そこで、蒼が口を開く。

 

 

「え~と……まあ、理由はいろいろあるんですけど……。う~んと、……まあ、女に間違えられたから?」

 

 

蒼の言葉に不服なところがあったのか絹旗は半眼になる。

ジトーっと冷たい視線で見られた蒼はうっ……と後ずさる。

 

 

「ホントにそれだけですか?私には超そうとは思えないんですけど」

 

 

━━━何か、見抜かれてる?何故に……

 

絹旗に見抜かれて少したじろぐ。

 

 

「ええっと……笑いませんか?」

 

「超理由によりますが……善処はします」

 

「んじゃあ、まあ……」

 

 

絹旗の言葉に、一拍を置いてから言う。

 

 

「絹旗さんが、迷惑そうにしていましたので……」

 

 

蒼が本当の理由を言う。

すると絹旗は一瞬間をあけて、

 

 

「ふふふっ、あははは!」

 

「笑わないって言ったのに……」

 

 

蒼の言葉に大爆笑している絹旗に蒼は不満の声を漏らす。

ほほを紅潮させて大笑いする絹旗には蒼のその声が聞こえていないようだが。

 

 

 

 

 

 

 

ほどなくして絹旗の大爆笑が収まる。

 

 

「あっはは、ふぅ。久しぶりに超爆笑しました」

 

 

目じりに溜まった涙をぬぐいながら絹旗が言う。

蒼は少々むくれた表情で沈黙を貫く。

 

 

「さすがに悪かったですよ。超笑いすぎました。ぷふっ」

 

 

最後に笑ったのを聞き逃さず、蒼はさらにむくれる。

こういうところに蒼の妙に子供っぽいところが表に出ている。

 

 

「全然悪いと思ってないでしょ絹旗さん」

 

「……超そんなことありませんよ」

 

「なんですか今の間は」

 

 

コントのような会話が続く。

二人は趣味のほかにも意外なところに共通点があり話題の種が多かった。

三馬鹿たちが絡んでくる前の気まずい空気がなかったかの様にきれいに続く会話は、二人にとってとても楽しい時間に感じられた。

 

しかし、会話の終わりは突然に訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!絹旗ー!」

 

 

この金髪少女の登場によって。

 

 

「あ、フレンダ」

 

 

フレンダと呼ばれた少女は絹旗の知り合いのようだ。

そして、本日二回目。この街美少女が多いなとまたも蒼は思う。

 

 

「どうしたんですかフレンダ」

 

「いや~ちょっと見かけたから声をかけたってわけよ」

 

 

絹旗ははぁ、と軽くため息をついてから蒼の方を見る。

 

 

「あ、こちらは御桜 蒼さんです。割といい人です」(キレた時の目つきは超怖かったです。麦野並み、レベル5級の怖さでした)

 

「別に、お世辞はいらないですよ?どうも、御桜 蒼です」

 

「私はフレンダよ」

 

 

軽くお互い挨拶を交わす。

割と人当たりのよさそうな人だな、と蒼が思った直後。

フレンダさんは特大の爆弾を落としてくれた。

 

 

「で、結局二人は付き合ってるのかって聞きたいわけよ」

 

 

先程自然消滅した特大の爆弾を彼女は、いとも簡単に放り込んでくれた。

 

時が、凍り付いた。

冷たい空気が流れ込む。

 

そして、一気に熱が上がった。

 

 

「「ななななな、何を言ってるんですか!?」」

 

 

二人して顔を真っ赤にしてフレンダに迫る。

蒼が右肩を、絹旗が左肩をつかみ前後に激しく揺らす。

 

 

「ななな何だって言うわけよ!ちょっと聞いただけってわけよ!」

 

「まあ……」

 

「それなら……」

 

 

落ち着きを二人とも取戻し、フレンダを開放する。

フレンダは解放された瞬間、開口した。

 

 

「で、結局二人は付き合ってるのかって聞いてるわけよ」

 

 

再び爆弾投下するために。

 

 

「「だから、何でそうなるんですか!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

● ○ ● ○ ● ○ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。

空は茜色に染まり、すっかり夕暮れである。

フレンダは途中で逃走し、それを追いかけているうちに話はすっかり有耶無耶になっていた。

互いに少しずつ意識したままではあるが。

 

 

「今日はなかなか楽しかったです」

 

「それは良かったです」

 

 

絹旗の言葉にそうが丁寧に返す。

絹旗の発言にはまだ照れがあるが、蒼はいたって冷静に表面上はふるまっている。

 

 

「ま、まあ?今日はなかなか楽しかったですから?私が超暇だったら?また一緒に休日を過ごしてあげても構いませんよ?」

 

「ふふっ、何で疑問形なんですか。……ええ、ぜひお願いしますよ。絹旗さん」

 

「……ぃぁぃ」

 

「え?」

 

 

ボソリ、と絹旗が言ったことを蒼が聞き返す。

一瞬間をあけた絹旗は、蒼の顔を見据えて、再び言う。

 

 

「最愛で超いいって言ったんですよ!」

 

「え?」

 

 

絹旗の言葉に驚いた蒼が間の抜けた声を出す。

そして数秒の間をおいて蒼は復活し、再びきちんと返事を返す。

 

 

「ええっと……分かりました。…………最愛。っと、俺のことも蒼で良いですよ?」

 

「えっ!……超分かりました。…………蒼」

 

 

傍から見たら見たら、完全にむずがゆくなる光景である。

二人の間にぴったり10センチほどの間があって非常にもどかしい状況である。

そこで、絹旗が思い出したように言う。

 

 

「あ、……そ、蒼。まだ連絡先を超交換していませんでした……」

 

「そういえば、そうですね。交換しましょうか」

 

 

絹旗が携帯電話を出し、続いて蒼も取り出す。

二人は赤外線通信を使用してちゃちゃっと交換する。

そして交換し終えた後、互いに向き直る。

 

 

「では、今日は超サヨナラです。……蒼」

 

「ええ、また連絡しますよ。では、また」

 

 

別れの挨拶を交わして、別れる。

 

 

 

こうして、絹旗最愛との出会いから始まった、ある意味騒がしく、忙しい一日が幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




にゃんぱす~


魔王の後継者です。
すいません。更新が少し遅くなりました。
オリジナル話は書くのに少々時間がかかってしまうんです。
書いてる時にいろいろ迷うので。まあ、書いてるとき楽しいんですけどね。
次はできるだけ早く更新したいと思います。
4月9日の誕生日までには何とか……。うん、更新します。

では、また。

感想などあったらよろしくお願いします!

次から姉妹【シスターズ】編スタートです!


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