とある科学の《絶対零度》   作:魔王の後継者

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09 多才能力【マルチスキル】

不良との戦闘の三日後、俺は風紀委員177支部に来ていた。

 

因みにあの後黒子や初春にこってりと絞られた俺は、バレないようにこれからは闘おうと心に決めたのであるがまあその話はおいておこう。

 

今日は何故此処にいるのかというと、今までに集めたレベルアッパーの情報を交換するためだ。先ほど情報交換が終わり、初春が木山先生のもとに集めた情報を伝えに行ったところだ。初春は「早く昏睡状態になってしまっている人たちを助けたいんです!」と張り切って出て行った。何かやらかさなければいいのだが…………

 

 

「……それでは、私たちも行きましょうか、お姉様」

 

「ええ」

 

 

そう言って黒子と美琴が立ち上がる。

 

 

「どこに行かれるんですか?」

 

 

そう聞くと、黒子が答える。

 

 

「初春は今木山先生のところへ行っていますし、和さんは他の風紀委員支部にヘルプに出ています。みなさん頑張っていらっしゃるのに私だけじっとしているわけにはいきませんの。ので、私たちも出来ることをしようと思って今から病院へ行って新たに何か分かったことがないか聞きに行くところですの」

 

 

で、御坂がそれについて行く、と言ったわけですか。

ふむ。それなら俺がついて行っても問題ないよな……?

 

すっと美琴と黒子の方へと向き直り、言う。

 

 

「それ、俺も同行させてもらって良いですか?」

 

 

頷く白井を見て、思う。

……それにしても白井、服の下はボロボロだろうに頑張るなあ。

 

 

 

 

 

 

白井は俺が不良と闘った日、別の不良と闘ったそうです。 和談

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今、病院に来ていた。何やら患者たちについて分かったことがあるらしい。

俺たちはカエル顔の医師に連れられて部屋に入り、パソコンを見ながら話を聞いている。

 

 

「『幻想御手(レベルアッパー)』の患者たちの脳波に共通するパターンが見つかったんだよ?」

 

 

そう言いながらパソコンのディスプレイに脳波のパターンを医師が表示する。

ふむ………………。

 

 

「人間の脳波は活動によって波が揺らぐんだね? それを無理に正せば……」

 

「人体の活動に大きな影響が出るでしょうね」

 

 

医師の言葉に続けられるであろう言葉を述べる。

 

 

「蒼の仮説にかなり近いわね……」

 

「誰が何のつもりでそんなことを……」

 

 

それら言葉に医師は頷き、言葉を続ける。

 

 

「僕は職業柄、色々と新しいセキュリティーを構築していてね? その中の一つに人間の脳波をキーにするロックがあるんだね? それに登録されているある人物の脳波が、植物状態の患者のものと同じなんだね?」

 

 

そう言って医師がその人物の顔写真が表示される。

そこに映っている人物は、みんなが知っている人だった。

 

癖のある髪、目の下にあるクマ。その女性の名は………………

 

 

 

「「「……木山、春生!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目ですわ!木山春生のところに行った初春と連絡が取れませんの」

 

 

病院で白井はそう言った。

あの後警備員(アンチスキル)に連絡し、今は風紀委員177支部に木山の足取りを追うために戻ってきている。

 

……初春も何らかの方法で真実にたどり着き、木山にそれがバレて捕まったって考えるのが犯人が木山である以上自然かな。それにしたって、連絡が取れないのは心配だな……

 

 

「警備員から通信です。AIM解析研究所に到着したようですが、木山も初春も消息不明だそうです」

 

 

って言うことは初春は木山と一緒にいる可能性が高いって事か……

あ、そういえば。

 

 

「白井、警備員に研究所の機材にさわらないように言って欲しいんですけど……恐らく、情報の機密保持のために所定の手順たどらないとデータ消えるようにされてると思うので……」

 

 

俺がそう言うと、黒子が渋い顔をして蒼の方を見る。

 

 

「蒼さん、もう遅いですの……」

 

「Oh…………」

 

 

マジか……

レベルアッパーの解除方法がそこにしか無かったらどうするつもりなんだ?木山がすべてを完全に記憶してるとは限らないだろうに…………

 

 

うなだれていると御坂が立ち上がるのが見える。

そしてこう言い放つ。

 

 

「私も出るわ」

 

 

じっとしてるのは性に合わないし、と呟き黒子に言葉を続ける。

 

 

「黒子は警備員からの情報を回してちょうだい」

 

 

ふむ。いいのか?

 

 

「お姉様っ!? 初春も風紀委員のはしくれですの。いざとなれば自分の力で…………」

 

 

そして自信なさげに続ける。

 

 

「多分何とか……運が良ければ……その…………」

 

 

おいおい、そこは信じてあげようよ。…………心配なのは同感だが。

というかまあ、木山が警備員に対して何の保険もかけてないとは思えないし、何が起こるか分からないからな……。

 

 

「よし、じゃあ御坂、行きましょうか」

 

 

言い合いをしていた二人が同時に蒼の方に向き直る。

 

 

「なに言ってるの!?」

 

「蒼さんまで何を言い出すんですの!?」

 

 

なぬ。矛先が二つともこちらに向いた。

それと御坂。君にそう言われる筋合いはないぞ。

 

 

「別に、大した理由なんてないですけど……初春は友達ですし、御坂も白井も友達です。その友達の御坂が初春を助けるために出るのに俺が出ない理由はないですし、怪我人の白井にむりさせるわけにはいかないですし、ね」

 

 

黒子はばつの悪そうな顔をして視線を逸らし、御坂は言葉に詰まって固まる。

 

 

「それに、いやな予感もするので」

 

 

その言葉を聞いて黒子と美琴も表情を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タクシーに美琴と乗り込み、警備員が木山と接触しているという場所へ向かう。

時間とともに緊張感から焦りが増し、背中から汗が流れる。

 

そして数分後、地響きとともにドォン!という轟音が響く。

 

 

「な、何だぁ?」

 

「「ッ…………」」

 

 

何かあったのは間違いない。そう思い、更に焦る。

いったい何があったんだ……?

 

 

「早くあそこまで……!」

 

 

美琴が運転手をそう言って急かすがさすがに無茶だと断られる。

 

 

「だーーッもういいわ、此処でおろして!」

 

 

っおい!?御坂先行くなよ!?

ああもうっ!

 

 

「おじさん!お釣りは良いです!」

 

 

料金を払い、釣銭を受け取る暇も惜しんで美琴を追いかける。

 

 

「御坂!」

 

 

電話をしながら走る美琴の横につき、美琴に声をかける。

ちょっと待って、と美琴に言われ、美琴の電話が終わるのを待つ。

途中で〈能力者〉やら〈複数の能力〉やら気になる言葉が聞こえる。

アレ?能力者って学生しかいないんじゃなかったっけ……?

能力も一人一つのはずでは…………

 

少しして話しに切りがついたのか美琴が蒼に話しかける。

 

 

「時間がないからかいつまんで話すわね」

 

 

それは助かる。とにかく時間がないからな。

 

 

「木山春生が警備員と交戦してるらしいわ。…………しかも複数の能力を使って」

 

 

聞き間違いじゃあなかったか。

複数の能力、ね。いくつ能力を持ってるか分からないし不安材料が増えただけだな。まあ、レベル5の御坂もいるんだし、そうそう負けないとは思うが…………

 

それにしても複数の能力か……

幻想御手(レベルアッパー)』の副産物かなんかなんだろうな……。レベルアッパー使用者の脳を繋げて創られた巨大なネットワーク。他人の脳波を押しつけられた能力者の能力が一時的に向上したのだ、その本人である木山春生がそれらを使えない道理はない。

そもそも一万人近い能力者がレベルアッパーを使用したと聞く。

その一万の脳を統べる木山が、一般的な能力者の枠に当てはまるとは考えにくい、か。

 

それらを考えながら、非常階段から高速道路に駆け上がるとそこには地に伏せる警備員とそれらを見下ろす木山の姿があった。

横には横転した警備員の車や、その残骸が転がっている。

すると、端に寄せてあった赤い車の中に人影が見える。

急いで近寄ると、その人影は初春だった。……気絶してるな……。

 

 

「安心して良い。戦闘の余波を受けて気絶しているだけだ」

 

 

振り向くと、声の主は木山だった。

 

 

「教えてくれてどうもです」

 

 

木山はこちらを一別すると、次の言葉を紡ぐ。

 

「高位能力者が二人、その上一人はレベル5か。しかし、御坂美琴……学園都市に七人しかいないレベル5の君でも、私のような敵と戦った事はあるまい」

 

 

そして木山はこちらを向き、言い放つ。

 

 

「君に一万の脳を統べる私を止められるかな?」

 

 

……あれ?さらっと除外された?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

念動能力(テレキネシス)発火能力(パイロキネシス)風力操作(エアロハンド)、とりあえず理解できただけでも3つ、間違いなく複数の能力を使っている。

つまり………………

 

 

「驚いたわ。本当に能力が使えるのね。 しかも……『多重能力者(デュアルスキル)』!!」

 

 

ということになる。

木山はそれを聞いて少し眉を動かす。

 

 

「その呼称は適切ではないな。私の能力は理論上不可能とされるアレとは方式が違う」

 

 

そう言って指先を動かす。

すると、水溜まりから亀裂が走り、蒼と美琴の間に大きく水の壁が立つ。

…………水流操作(ハイドロハンド)か!?

 

 

「言うなれば、多才能力(マルチスキル)だ」

 

「呼び方なんてどうでも良いわよ。こっちがやることに変わりはないんだから」

 

 

攻撃を回避しながら美琴が言う。

 

……それはそうだな

 

そう思いながら木山が放った発火能力と風力操作の合わせ技で放たれた攻撃を、停止した空気の壁で受け止める。

とっさに空気を停止して壁を作れるくらいには能力に慣れてきている。うわー、便利ー。

 

そしてすれ違いざまに美琴が電撃を飛ばすが、木山の能力で電撃を地面に逃がされる。

そして、次に発動した能力で地面が崩される。

 

 

「くっ!」

 

「!!」

 

 

うわー!?地面がー!?

…………あれ?落下してない?何じゃこりゃ。

……うーん。これは物体の位置を停止させてるのか。壁を創る要領で足場を創っていると。……思ったより便利だな停止能力。

 

複数の能力。それにしてもやっかいだなー。

すとっと音を立てて着地する。

 

 

「便利ねその能力」

 

「うん。意外とな」

 

 

軽口を叩いている間にも木山から攻撃が飛来してくるが全て停止した空気の壁に阻まれる。この停止の壁は分子の配置が崩れないのだ。それは決して変形することのない理想的な物体、即ち【剛体】だ。

 

 

「……厄介な能力だ。御坂美琴よりもそちらの方が厄介な能力だな……」

 

 

その言葉にカチンときたのか美琴が突っかかる。

 

 

「……電撃を攻略したくらいで勝ったと思うなっ!!」

 

 

美琴が電撃を飛ばすが木山から発せられた能力によって難なくはじかれる。

 

 

「…………アリ?」

 

 

そしてそのまま美琴が張り付いている柱に指を向けると先ほどの能力が発せられ、柱に大穴があく。すると鉄板が外れ、美琴が落下する。

 

 

「もう止めにしないか?」

 

 

突如木山がそう言う。

 

 

「私はある事柄について調べたいだけなんだ。それが終われば全員解放する」

 

 

ふむ。確実に解放されるのなら学生たちに危険が及ばないのであれば悪くない取引だな……。

 

 

「誰も犠牲にはしない……」

 

 

「ふざけんじゃないわよっ!!」

 

 

木山の言い分に美琴が食いかかる。

 

 

「誰も犠牲にはしない?アンタの身勝手な目的にあれだけの人間を巻き込んでおいて、人の心をもてあそんで……

こんな事しないと成り立たない研究なんてろくなもんじゃない!! そんなもの見過ごせるわけないでしょうがっ!!!」

 

「……いや、そうは思わない」

 

 

美琴の反論に蒼が口を挟む。

 

 

「この学園都市において重要なのはそれの善悪じゃない。学園都市、ひいては統括理事会にとって利であるか害であるかです。木山先生の研究が良くないものだから正当な方法をとれなかったとは限らない」

 

 

木山はほう、と頷き、

 

 

「レベル5とはいえ所詮は世間知らずのお嬢様だな。そちらの少年の方がよっぽど理解している」

 

 

木山は続けて語り続ける。

 

 

「大体学園都市において学生たちに行われている『能力開発』。あれが安全で人道的なものだとでも思っているのか? 学園都市は能力に関する重大な“何か”を隠している。学園都市の学生たちはそれを知らずに日々脳を開発されているんだ」

 

 

……能力に関する秘密?

確かに能力開発は言い換えてしまえば学生たちを利用した人体実験だ。確かに完全に安全だと言い切ることは出来ないだろう。能力に関する秘密か……気になるな……。

 

 

「なかなかおもしろそうな話ね……。アンタを捕まえた後でゆっくり調べさせてもらうわっ!!」

 

 

美琴の操る砂鉄が木山に向かって迫るが当たったと思ったが横の廃材に刺さっている。

…………あの不良の能力か……

 

木山が手を振り上げると美琴と蒼の上に空き缶がばら撒かれる。

そして次の瞬間空き缶が勢い良く収縮していく。虚空爆破(グラビトン)ッ!?

 

御坂の分は御坂で何とかするだろう。問題は俺のほうだな!!

一歩下がり自身の上に撒かれた空き缶を視界に入れる。

 

―――凍てつけッ!!

 

 

「グッ!」

 

 

まだなれていないため頭痛が走るが上を見ると空き缶がすべて凍っている。

絶対零度。一度しか使っていないが成功した。

土壇場だったけど成功して良かった。

 

美琴の方を見るときちんと電撃で破壊して爆破を防いでいた。

 

 

―――良かった、と思ったのも束の間美琴の後ろで爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――御坂ぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さん、新年開けましておめでとうございます。
新年とともにこちらの作品を投稿させていただきました。
今年もよろしければ私の作品をご覧になっていただければ光栄の至りです。


感想あればよろしくお願いします。

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