昔、といっても100年ほど前に人類は海からやってきたUMAみたいな奴らと戦争をしていたらしい。
UMAみたいな奴らはめちゃくちゃ強いというか変なバリア?みたいな物を張っていて人類側の攻撃は全く通用しなかった。
そんな時に現れたのが我らがヒーロー艦娘だ。
彼女達は人類に極希に現れる【提督】適性を持つものに特別な感情を抱き、その提督の為にそれはもうバッタンバッタン敵を倒しあっという間に戦争を終結させてしまった。
戦争終結後、一人の艦娘は提督に愛を告白しその後の人生を添い遂げたそうだ。
……問題は残された艦娘達だ。人類とは身体の構造が根本から違うのであろう艦娘は当時の姿のまま100年経った今も生きている。そして100年間溜めこんでいる……性欲を。
戦争が終わり、提督が必要となくなった世界で提督しか愛せない艦娘達はその性欲を100年間発散できていないらしい。
だから俺達【提督】適性を持つ者の間では一つ暗黙の了解がある。『艦娘を見たら逃げろ。でないとめちゃくちゃにされるぞ』と。
◇ ◆ ◇
ガタンゴトンガタンゴトンと揺れる電車に乗り会社に向かういつもの月曜朝7時。
満員電車の為さっきから誰かの手の甲らしき物が俺の尻に当たっているのがなんとも気色悪い。だがまあ仕方ない。これだけ混んでいるのだから。
運が良かったな同士おっさんよ。もし俺がJKだったらここがお前の人生の終着駅だったぞ。
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やべぇ……やべぇよ……このおっさん完全に俺の尻揉んでる……最早揉みしだいてる……。
【悲報:おっさんほmだった】
しかし23歳男の俺が『この人痴漢です!』等と言える訳もない、そっちのが恥ずかしいわ。
これはもう仕方ない、自分で注意して止めさせるしかない。そう思い俺は後ろを振り返った。
「おい、お前いい加減に……」
俺は尻を触っていた奴の顔を確認して直ぐに前を向き直した。心臓がバクバクと早鐘、冷や汗が頬を伝う。やべぇよ……やべぇよ……
勝手に勘違いしていたが尻を触っていたのはおっさんではなく女の子だった。気づいて見れば背中に柔らかい物が当たっている気もする。それだけなら俺も捨てたもんじゃねえなと寧ろ喜んでいたかもしれないが問題はそいつがタダの人間ではなかったという点だ。そう痴漢魔の正体は艦娘だった。
英雄艦娘大全で見たことがある。白を基調としたセーラー服を何故かノースリーブヘソ出しルックにした痴女みたいな艦娘……阿賀野型だ。たしか今のは……
「阿賀野ですよ、提督」
「ヒッ」
耳元で囁くと同時に息を吹きかけられ全身に鳥肌が立つ。
俺のケツが艦娘に捕まってしまった。今捕まっているのは尻だけだがもしかしたら誘拐されて100年分の性欲をぶつけられてしまうかもしれない。壊れちゃうううう。
どうする……!どうする俺!俺が考えている間も阿賀野は尻を揉み続ける。さわさわと全体を撫で回すように触っているかと思えば急に鷲掴んだり割れ目に指を立てたりと俺のケツで好き放題やってくれている。正直気持ちいい。だがここでこの快楽に流されて仕舞えば一巻のおしまい。きっと俺は永遠にこいつの如何わしい玩具にされてしまうだろう。
「提督、意見具申します。阿賀野眠くなってきちゃいました……次の駅で降りて一緒にお昼寝しません?」
ここで反応してはダメだ、俺が提督だと認めたらアウトだ。交通事故にあった時は相手に謝ると自分の非を認める事になるから絶対にダメだってじっちゃんが言ってた。多分それと一緒だ。
「……もしかして気づいてないふりしようとしてます?ダメですよ、私達には仕えるべき人が直感的に分かるんですから」
さいですか・・・てか尻揉まれながら気づいてないふりとか無理ありますよね。
「ね?お昼寝行きましょ?ね?」
「いえまだ朝ですしこれから仕事がありますんで……」
「ふーんそんな事言うんですか。私ずっと貴方に会えるの待ってたんですよ?」
「んな事言われても……」
「まっいいですけど」
そう言って尻を触る阿賀野の手は更にいやらしくなる。さっきまで尻しか攻めてこなかったのに今度は大腿などにも触れてくる。
「次の駅までに提督からイキたいって言うようにしちゃいますから」
くそ!こいつ何て事考えつきやがる!このままこいつに乗せられてお昼寝(朝)してしまえば確実にパパにされちまう……!耐えろ……耐えるんだ俺!今は機を窺いひたすらにエネルギーを貯めるんだ。あっやば、勃ってきた。
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『桜木町~』
とてつもなく永い3分間を過ごしようやく次の駅についた。
「どうします提督?お昼寝行きますよね?」
「……コクり」
俺は黙って頷いた。
ガシャーーーー。
電車の自動扉が開き俺と阿賀野は人の流れに押し流される。俺は阿賀野よりも扉の近くに立っていたので一瞬だけ早く扉からでた。しかし未だ阿賀野の手は俺の尻を離すことはない。
今しかない!!ぶぅぅぅぅぅ!
俺は痴漢されている間にために溜めた屁で尻を掴む阿賀野の手を吹き飛ばし一目散に走り出す。
「あっ!ちょっと!」
振り返れば阿賀野はサラリーマン達の背中の壁に阻まれて俺を追って来られないようだ。行けるっ!逃げられる!俺は後ろを振り返ることもせずひたすらに会社まで走った。
◇ ◆ ◇
「マジでやばかった。怖かった」
会社の自分のデスクに座りようやく人心地つく。駅から全力疾走した為に全身が汗まみれだ。しかし、本当に逃げきれて良かった、あのまま逃げられずどこかに連れて行かれたらと思うとゾッとする。
しかし痴漢てマジで怖いんだな。女性が何も言えず無抵抗になってしまうのも分かる気がする。
「あいつにも注意するよう言っとくか……」
俺は今日の恐怖経験を活かして従姉妹に注意をしておこうとポケットのスマートフォンを取り出そうとした。しかしそこにあるはずのスマートフォンはなく代わりに得体のしれないものが出てきた。
「あれ?なんだこれ?」
スマートフォンの代わりにポケットから出てきたのは一枚の紙切れ。何やら可愛いらしい丸文字でメッセージが書かれている。
『スマホを返して欲しかったら明日も同じ電車に乗ってくださいね』
「……まじかよ」
どうやら俺はもう一度阿賀野に会わなくてはならないらしい。