昔、といっても100年ほど前に人類は海からやってきたUMAみたいな奴らと戦争をしていたらしい。
UMAみたいな奴らはめちゃくちゃ強いというか変なバリア?みたいな物を張っていて人類側の攻撃は全く通用しなかった。
そんな時に現れたのが我らがヒーロー艦娘だ。
彼女達は人類に極希に現れる【提督】適性を持つものに特別な感情を抱き、その提督の為にそれはもうバッタンバッタン敵を倒しあっという間に戦争を終結させてしまった。
戦争終結後、一人の艦娘は提督に愛を告白しその後の人生を添い遂げたそうだ。
……問題は残された艦娘達だ。人類とは身体の構造が根本から違うのであろう艦娘は当時の姿のまま100年経った今も生きている。そして100年間溜めこんでいる……性欲を。
戦争が終わり、提督が必要となくなった世界で提督しか愛せない艦娘達はその性欲を100年間発散できていないらしい。
だから俺達【提督】適性を持つ者の間では一つ暗黙の了解がある。『艦娘を見たら逃げろ。でないとめちゃくちゃにされるぞ』と。
◇ ◆ ◇
俺はパンツを一着しか持っていない。
いや、待ってくれ行かないでくれ、話を聞いて欲しい。
俺が下着を一着しか持っていないのには理由がある。何も好き好んでの事ではない。
俺のパンツは盗まれたのだ。それも一着や二着ではない、俺が一度穿いたパンツは必ず盗まれ、100を越えるパンツが盗まれたところで俺は失ったパンツの枚数を数えるのを止めた。
もちろん最初は犯人を捕まえてやろうと有給を取得し丸一日家を見張っていたこともあったが失敗に終わった。犯人は俺が家にいる間は絶対に盗みに入らないのだ、まるで俺の行動を完全に把握しているかの様な不気味さだった。
警察に事情を説明したが何故か俺の話を聞いたポリスメンは苦笑いを浮かべそれは災難だったねの一言で済ませ相手にはしてくれなかった。腐ってやがる。
そんな理由で俺はこうして毎日の仕事帰りにコンビニに立ち寄りパンツを購入するのだ。決して青と白のストライプの制服をきた店員さんにセクハラをしたい訳ではない。毎回同じ店員さんの立つレジで購入してはいるがそれは偶然というものだ。
◇◇◇
21時00分コンビニでいつもの様にパンツを購入し帰路につく。良かった……今日は在庫があった……。運悪くパンツを確保出来なかった次の日は今日と同じパンツを穿くかノーパンで出社するかの二択を迫られるのでシャレにならない。特に明日は阿賀野とかいう
嫌だなぁ……会いたくねえよ……。けどあいつに奪われたスマホには取引先や知人の連絡先、何より俺の汗と涙の結晶であるソシャゲのデータが入っている為諦めることはできない。くそぉ……引き継ぎコードの発行を怠ったがために、ってしまった今日はまだログインしてないじゃねえか。折角2年間欠かさずログインしてきたってのにその努力が無になるのか……。いや、方法はあるにはあるが……仕方ない、ちょうど電話ボックスもあることだし手段を選んでいる時じゃない。
電話ボックスに入り中にある公衆電話に十円玉を3枚投入してボタンを押す。電話をかける相手は
Prrr『ハイ!提督さんの携帯です!現在主人は留守にしていますので妻の阿賀野が対応致します!』
出るの速ぇよ、つーか色々ツッコミどころが多すぎる。
「誰が妻だ、誰が」
『んーー?この感じもしかして提督さん!?ヤダっもしかして明日まで待てなくて電話かけてきたんですか?もちろん阿賀野はいつでもOKです!今どこにいますか?阿賀野はどこに行けば
「ソシャゲのログインしとけ」ガシャン
用件だけ伝えて速攻電話を切った。やっぱ艦娘はヤバイ。何で1コールも終わらないうちに電話に応答してんだ明らかにオレのスマホ弄ってただろ、それに妻ってなんだ主人ってなんだ。まさかあいつの俺のスマホを使って変なことしてんじゃないだろうな……
話をしたのは数秒だったが艦娘とかいう奴らのヤバさを再認識するには十分だった。
◇◇◇
「ただいまっと」
もちろん返事はない。この古びた1LDKのアパートには俺しか住んでいないのだから当然だ。
取り敢えず一日の汗を流す為にユニットバスにお湯を張り体の芯から温まったあと43度に設定した熱々のシャワーを頭から浴びた。さて明日はどうしたものか……このままおめおめと阿賀野の元へ行けば捕まってしまう可能性が高い。阿賀野一人なら何とかなるかもしれないが艦娘大全によれば奴には3人の妹がいたはずだ。もしもそいつらを呼ばれていたなら完全にゲームオーバーだ。
やっぱスマホ諦めるしかないのかなあ……。でもなぁ、時間もお金も沢山かけたしなぁ……。
風呂から上がり寝巻き代わりのジャージを着た。もちろん先程購入したトランクスを着用しているのでノーパンではない。
髪をタオルで拭きながらリビングのソファにダイブした途端に睡魔が俺を襲う。週の初めから阿賀野や下着泥の件と悩みの種が多すぎて疲れていたのだろう。このまま眠ってしまおう。そう思ったところで眠気を吹き飛ばす事態が発生した。
『んっ……んっ』
寝室の方から声が聞こえた。聞こえてしまった。それも何だか艶めかしい声と共に小さな水音が。俺は額を抑えながら天井を仰いだ。
くそぉ……ついに下着ドロと鉢合わせたってことか、いや、俺にだって心の準備ってのがあってこんな急にこられても困るんだが……。
しかしここで奴を捕まえればもうこれ以上パンツを購入する必要はなくなる。いくら安物といっても枚数が枚数だけに出費も馬鹿にならない。どうする?警察を呼ぶか?ダメだその間に逃げられるかもしれない、俺が今ここで決着をつけるしかない。
俺は覚悟を決め寝室の襖に手をかけ一気に開いた。
電気の消えた真っ暗な部屋の中で一瞬何かがゴキブリの様に這い回りタンスの裏に隠れたのが見えた。俺は電気をつけ戦闘体勢の構えを取りながら侵入者に語りかける。
「タンスの裏に隠れているのは分かっている。悪いようにはしないから出てこい」
・・・・・
返事はない。
「もう一度言う。これは命令だ」
ピクっと命令という言葉に反応したのか少し動いたような気配があった後、侵入者はゆっくりと、しかし堂々と姿を現した。
トランクスを被ってははいたがそれはもう威風堂々としたものだった。白い道着に青を基色とした袴、その格好に相応しく背筋をピン伸ばした姿は美しいとすら思えた。俺のパンツを被ってさえいなければ。
「いいか、頭の後ろで手を組んでゆっくりその場に正座しろ。変な気は起こすなよ」
俺の指示に従いその場に座る変質者。どうやら抵抗する気は本当にないらしい。
ゆっくりと近づき奴の被っているトランクスを引っ張る。鼻の辺りまで脱がしたところで侵入者が急に動き出し抵抗を始めた。
「これは譲れません」
「やかましい!俺のパンツだ!」
抵抗する侵入者の言葉を無視して勢い良くパンツを引き抜いた。パンツの中から現れたのはサイドテールという可愛らしい髪型ながらも能面の様に感情を窺う事のできない無愛想な顔。
俺は戦慄した。だって俺はこいつを知っている。危険回避の為に読んだ艦娘大全で何度も見たことがあったから。確かこいつは正規空母の――
「頭にきました」
誇り高き一航戦 正規空母加賀だった。
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【艦娘大全もくじ】
痴漢型軽巡 P1~
ストーカー型空母 P5~
強姦型駆逐艦 P10~
盗撮型重巡 P14
ショタコン型戦艦 P15~
束縛型潜水艦 P20~
??? P???
こっちは他連載作品の気分転換にちまちま書いてきます。