ツインズ・イッセー   作:超人類DX

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まあ、何というか……ね?




シスコンとブラコン

 戦車の特性は力強さにある。

 けれど、小猫とマコトの場合はそれを絶対に超越している……と、リアスは明らかに自分より強いだろう二人を見て、ちょっと自信が喪失しそうになっていたとか。

 

 

「何時からあんな力を……?」

 

「部長に拾って貰った時以降、迷惑にならない様にこっそりと修行してました。

まぁ、その……拾われる前は『弱かった』ので」

 

「そう……。全然知らなかったわ」

 

「ええ、まぁ……恥ずかしかったので秘密にしてましたし」

 

 

 そもそもリアスは知らなかった。

 保護するつもりで悪魔として迎え入れた小猫があれ程の力に達していたことを。

 何故と聞けば、小猫は一人でこっそり修行したからと言っているものの、ハッキリ言って生半可な修行をした所であれ程の領域には絶対に入れない。

 

 

「その小猫と拮抗出来るマコトは一体何者……?」

 

「最初から先輩は強かったですよ。

少なくとも『私が出会った時』から」

 

「……」

 

 

 そして同じくその領域に侵入しているイッセーの兄、マコトも、人間でありながら既に強い。

 小猫曰く『出会った時から』強かったと言っているが、そんな軽いノリで言われてもリアスは納得出来る筈も無く、思えば『保護をして戦車に転生させた』時以降、それまで小さく怯えていた様子を見せていたのが嘘だった様に性格が変わった小猫に、リアスは冷めたお茶を一気に飲み干しながら複雑な気分になるのであった。

 

 

「大丈夫ですよ。私と先輩は良くも悪くも恩や恨みは忘れないタイプですから……」

 

「それはどっちの意味かしら?」

 

「ふふ……勿論『恩』に決まってます」

 

 

 何せ、戦車として転生したその瞬間、先輩という存在を……先輩との思い出総てを思い出せたのですからね。

 複雑そうな眼差しを送るリアスに対し、とても綺麗に……可愛らしく微笑みながら『恩』を感じてると言い切った小猫は内心そう呟く。

 

 

「そして先輩と再会させてくれた事もまた、恩を感じてますよリアス部長? ふふふ」

 

「え、えぇ……それは良かったわね」

 

 

 小猫――白音にとっての全ては、名が変わっても『変わらない』愛しき人との永遠なのだから。

 

 

「で、でも小猫……その、嬉しいのはわかるけど、昼夜問わずマコトにくっついて、ええっとその……」

 

「分かっては居るんですけどね? こればかりは身体が無意識に先輩を欲しがっちゃうから難しいんですよ」

 

「そ、それはわかったけど、イッセーが言うにはその度に周囲の男の子達が鼻血出して気絶したり、えっと、ま、前屈みになっちゃうとか……」

 

「あぁ、お子様にはちょっと刺激が強いと?」

 

「そ、そうそれよ……。

マコトも妬まれるみたいだし、少しは健全というか……」

 

「意外と初ですね、リアス部長も」

 

 

 元・一誠と白音の再会は、中々どうして周囲の環境に影響を及ぼしている様だった。

 

 

 

 

 案の定というか何というか、誰が何処で嗅ぎ付けたのか知らないが、俺と兄ちゃんがオカルト研究部の部員になったという話が全校に知れ渡ってしまったらしく、早速俺達の教室にてクラスメート達が挙って質問……というより妬みっぽい台詞をぶつけまくられていた。

 

 

「何でお前等がオカルト研究部に入れるんだよ!? あの部は入りたくても入れないんだぞ!?」

 

「よりにもよってお前らかよ!? ふざけるなよ! 特にマコトなんて小猫ちゃんに……あんな……くそ!!!」

 

 

 あーうるせー……。

 本当の理由を言うわけにもいかないし、聞き流す事に専念しようとしたけど、こりゃたんまんねーぜ。

 

 

「イッセーとマコトは最早同志とは呼べんな!」

 

「お宝も最早貴様達に見せる事も無かろう!」

 

 

 微妙に馬が合ってた元浜と松田にも妬まれちゃったし……ちきしょう、これでエロ本やエロDVDの入手ルートが狭まってしまったぞ。

 折角彼女が出来ると思ったら、その人物が堕天使で、しかも俺を殺すために騙してたという間抜けな目に遇ってしまってるんだし、別に向こうはどうとも思ってないだけの部活に入るくらい良いじゃんか。

 

 夢くらいみさせろよ……こちとら兄ちゃんに勝てそうな要素まで潰されちゃったんだぞ? まあ、悪魔の人達相手に素敵な恋人なんておかしな話で、向こうからしたら力を持ってたから偶々目に止まっただけの存在なんでしょうけどね!

 

 

「大体お前! 何時から小猫ちゃんと……あ、あんな……エロそうな事をする関係になってたんだよ!?」

 

「少女漫画読んでニヤニヤしてるような奴が!」

 

「どんな弱味を握ったんだ!? えぇっ!?」

 

「……………」

 

 

 うーん、やっぱり矛先の強さは兄ちゃんの方が大きいな。小猫ちゃんの件で特に。

 まあ、兄ちゃんは自称ファン達の質問責めも平然とガン無視しながら、朝コンビニで買った少女漫画の最新刊を読んでるけど。

 

 

「んなもん読んでねーで答えろコラ!」

 

 

 だがバカというのは何処にでも居るようで、一々答えたくもなくて敢えて黙って無視に留めてやってるという兄ちゃんのお慈悲を知らないクラスの一人が、兄ちゃんから少女漫画を取り上げ、興奮した面持ちで詰め寄り出しやがった。

 

 

「おい、いい加減にしろよ。兄ちゃんが寡黙なのをお前等知ってるだろ? さっさと返せよその漫画本」

 

「うるせー! 無口で済まされる事じゃねーんだよお前等二人のやってることは!」

 

 

 ………。人の振り見て我が振り直せ――とは良く言ったものかもしれない。

 こうしてこの前まで自分が向こうの立場だったと思うと泣けてくるぜ。

 

 

「ハァ、兄ちゃんが無関心だった理由が何となくわかったかもしれないや」

 

「別にそういう意味じゃないんだが……」

 

 

 いや例えそうだとしても、これはかったるい。

 ぶっちゃけ何も知らずに俺も向こう側で騒いでるだけに留めておきたいくらいだもの。

 

 

「いやさ……この前まで俺もコイツ等みたいなポジションだったんだなと思うとさ、そっちの方が幸せだったんだなー……って」

 

「まあ、奴等に好き好んで関わるべきじゃないのは正解だが……」

 

「だろ? 考えてみたら部員になっても生乳揉める訳じゃないしさー……」

 

「当たり前だばか野郎! そんな事したらぶっとばすぞ!」

 

「――と、このように目の敵にされるだけじゃん? 兄ちゃんみたいにガン無視決め込めるメンタル無いしさぁ」

 

 

 その点兄ちゃんはスゲーよ。

 あの小猫ちゃんをああもゴロニャンさせるんだもん。

 まぁその……兄ちゃんがまさか小猫ちゃんみたいなのがタイプだったのは少し意外だったけど、別に年齢考えたらアウトでは無いし、俺は是非とも小猫ちゃんに色々と頑張って貰いたい。

 多分心配しなくても平気そうだけど。

 

 

「失礼します。

イッセー先輩とマコト先輩は――――って、何ですかこの状況?」

 

『小猫ちゃん!?』

 

 

 そんな事を一人考えつつ、あ、折角だし父さん母さんにこの事話してみよう、多分泣いて喜ぶだろうし……なーんて思ってると、噂をすればなんとやら、その小猫ちゃんが、クラスメート達に囲まれてる俺達を目にして首を傾げているじゃないか。

 

 勿論、今でもやっぱり学園のマスコットのご登場に全員がまたしても騒ぐが、スルースキルが高いのか、小猫ちゃんは無視ししてクラスメート何人かに道を開けさせ、俺と兄ちゃんに近寄って要件を話し出す。

 

 

「えーっと、今日の放課後は『部活』をするので部室に来るようにと部長から伝言を預かってます」

 

「おう……って、何で小猫ちゃんが? てっきり同じ学年の木場かと思ってたんだけど」

 

「私もそう思ってたのですが、何故か部長は私に伝言を頼むので……」

 

「ふーん?」

 

 

 流石に小猫ちゃんが居る手前下手な真似が出来ない様で、会話の度に殺気強く睨むクラスメート達の視線にげんなりしつつ、頬杖付きながらいつの間にか取り返していた少女漫画を読んでいる兄ちゃんを肘で軽く突く。

 

 

「聞いてたか兄ちゃん? 放課後部室にだとさ」

 

「おう」

 

 

 うーん、この一切動じない対応。

 小猫ちゃんと手合わせしてた時に見たハイテンションっぷりが嘘の様だぜ。

 

 

「ふふ……先輩らしい。

じゃあ伝えましたので私はこれで……」

 

「おーう」

 

「……」

 

 

 しかし貴重にも兄ちゃんの特性を理解してる小猫ちゃんは、そんな態度にも笑みを浮かべると、そのまま教室を出ようと背を向けて行こうとした時だった。

 

 

「あ、そうでした……」

 

 

 二~三歩くらい歩いてから、急に思い出したかの様に呟いた小猫ちゃんがクルリと振り返ってこちらに戻ってきた。

 既にクラスの奴等は小猫ちゃんに釘付けになってて単なる木偶の坊化しており、誰も何も言えない。

 かく言う俺も、漫画本から小猫ちゃんに視線を移していた兄ちゃんとジーっと目を合わせてるというやり取りを固唾飲んで見てるだけだ。

 

 

「何だよ?」

 

「いえ、前と違って朝から晩までずっと一緒じゃないから、半日も一緒じゃないと思うと色々と辛くて……」

 

「あ? 一昨日まで他人の振りしてたのにか?」

 

「わかってないですね先輩は。こうしてまた一緒になれるとわかったら、一々我慢なんてできませんよ……ほら」

 

『!?』

 

「わ~ぉ」

 

 

 そんな周囲を丸無視するかの様に、ホントもう何て言えば良いの? 童貞の俺ですら分かるレベルに好きで好きで堪らないって表情になってる小猫ちゃんが、微妙にどうでも良さそうな顔をしてる兄ちゃんの手を取り、何とそのまま自分の胸に押し付け出したのだ。

 

 

「先輩が欲しくて欲しくて、昨日から私の身体はこんな事になっちゃってるんです……ほらお腹も……」

 

「………」

 

 

 女子達が顔を真っ赤に、男子達はショックを……そして俺は微妙に呆れた気分で、それでも平然としてる兄ちゃんの手が、若干ハァハァと瞳を潤ませ、頬を紅潮させてる小猫ちゃんのお腹へと移るのを見せられる。

 

 なんつーエロゲー……いやエロゲーでもこんなんそうそう無いわ。

 

 

「だからそろそろください先輩……言いたいのはそれだけです。それじゃあ――ちゅ♪」

 

『!?』

 

 

 挙げ句そんな危険な……なんかもう犯罪的に官能的な色気を漂わせた状態で兄ちゃんに平然と頬にキスまでしおってからに……。

 

 

「……………。チッ」

 

「良いなぁ兄ちゃん……」

 

「ふふん、イッセー先輩も見つかると良いですね?」

 

「見つかっても二人みたいな事にはなりそうも無いけどな~」

 

 

 ちきしょー……羨ましい。

 俺は兄ちゃんのお相手さんという事でアレだが、またクラスの野郎どもが前屈みで固まってら。

 こりゃ卒業するまで何回前屈みになることから……。

 

 

 ちなみに、これ以降兄ちゃんに詰め寄れる度胸でも削がれたのか……殺気立たれはするものの、特に何をされる事も少なくなったとだけは言っておく。

 

 

 

 新メンバーを加えたオカルト研究部。

 その部室に集まる部員達の正体は悪魔であるのだが、イッセーとマコトは部長兼主であるリアスから悪魔としての基本的な仕事についての説明を受けていた。

 

 

「願いを叶え、代償をもらう。それによって人間達の中で名を広めて信仰心を高める。

これが此処での主な仕事よ」

 

「へー? 案外大変そうっすね」

 

「こうした積み重ねが大事なのよ。

頑張ればアナタ達でも出世できて、自分の駒を持てる様になれるかもしれないわ。それこそハーレムとかもね」

 

「おおっ!? そりゃ夢がありますね! ……兄ちゃんはそんな必要も無さそうっすけど」

 

「…………まあ、そうね」

 

 

 リアスとイッセーの視線がイッセーの隣に座ってたマコトに向く。

 

 

「…………」

 

「はぁ……先輩……♪」

 

 

 そこには相変わらず死んだ魚みたいな目のマコトに対面座位でしがみついてご満悦な白音が居たそうな。

 

 

「小猫、もう少し離れられないの?」

 

 

 別にもう何も言うつもりは無いが、人目も憚ずにイチャ付かれるとアレというか、微妙に悔しい気分になってしまう訳で……。

 リアスはコホンと咳払いをしながら小猫を咎めると……。

 

 

「あ、はいごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって……」

 

 

 小猫は漸く気づいたかの様にマコトから離れてくれた。

 

 

「よっぽどアナタが好きというか、ちょっと異常な気もしないでも無いわね」

 

「………。俺は別に何もしてない」

 

「ええ、そうね……。でもアナタにとって何でも無い事が、あの子にとって好きになる要素だったりするのよ?」

 

「………」

 

 

 一度肉塊になるまでグチャグチャにしてやった後、勝手に復活したらそうなってたが、それの何処を好かれる理由として考えられるんだよ……と内心呟くマコト。

 

 

「それでもちょっと過激なんだけどね……」

 

「うん、二人のせいで何人の野郎達が泣きながら前屈みになった事やら」

 

「………」

 

 

 かつて元の原型すら分からなくなる程の肉塊に破壊してやった悪魔と同じ姿と名前をしたこの世界のリアスの言葉にマコトは無言のまま、ツンと明後日の方を向く。

 思えば、こうして『まとも』に悪魔と会話する事は無く、ある種新鮮な気分にすら浸らせるものがあった。

 

 白音の言うとおり、確かに己が一誠として生きてきた世界の悪魔達とは微妙に気性が違うのかもしれない……かと言って信用するつもりは無いが……。

 

 

「お茶ですわ……イッセーくんとマコトくんもどうぞ」

 

「ありがとう朱乃。少し休憩しましょうか」

 

「あざっす姫島先輩! ふーむ、確かに考えてみれば、こうしてオカルト研究部の人達と茶飲むなんてこの前までならありえない話でしたわ」

 

「…………」

 

 

 そう誰にも悟られずに考えたマコトは、また寄ってきた白音を膝に乗せ、ボーッと天井の模様を眺める。

 

 

「最早小猫の定位置ね……」

 

「誰にも渡しませんよこのポジションは。まあ、イッセー先輩は良いですけど」

 

「もうそんな歳じゃないしなぁ……小さい頃は何回かやって貰ったけど」

 

 

 結局殺せず、敗けを悟り、そこから白音と共に生きてきた。

 まさか微妙に違う過去に戻る事になるとは思わなかったものの、今の自分は驚く事にそこまで悪魔に対しての殺意が無い。

 

 微妙に違うというのもあるのだろうし、この連中以外がもし似ていたらどうかは解らないが、まさか今になって呑気に悪魔と茶なんて飲むとは世の中は中々解らないものだとマコトは自嘲する。

 

 

「さて、早速イッセーとマコトにはこのチラシ配りをして貰うけど……」

 

「へーい、了解でーっす」

 

「………」

 

 

 悪魔にされ、縛られ、経験の無かった悪魔の仕事に着手するなんて最早奇跡としか言い様が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ兄ちゃんはこの場所から向こう半分頼むぜ?」

 

「おう……まさかこんな事までするとはな」

 

「まあ、したっぱの仕事なら仕方ないべ……んじゃ、負けねーからな!」

 

 

 さぁてと、加わるって言った手前、仕事があるならちゃんとしないとね。

 ……という事で早速その夜、俺と兄ちゃんは新人の仕事らしいチラシ配りの為、半分に割って別れて仕事を開始した。

 

 ちなみに走り縛りで兄ちゃんとどっちが早く配り終えるか競争してるが、勝てる気はしない。

 

 

「そぉい! 終わりぃ!」

 

 

 折って投函。その繰り返しは中々簡単に見えて骨が折れる仕事であり、15分も掛かってる時点で最早負け確定は言うまでも無い。

 だがこういう下積みを経て出世したらハーレムがどうのこうのと言われたし、頑張る価値はありそうだ。

 

 俺だって素敵な恋人が欲しいのさ……。

 

 

「んぁ?」

 

 

 小猫ちゃんと兄ちゃんみたいにはなれそうもねーけどな……なんて考えながら、合流地点まで走っていた時だった。

 

 

「………」

 

 

 既に夜で、街灯が照らす住宅街を走っていた俺の目に、電柱を背にして座る人影が目に入り、思わず足を止めてしまう。

 

 

「あの……?」

 

 

 いや、別に特筆すべき事でも無い気もしないでも無いが、何というかその時は偶々目に入ったというべきか、こんな夜に一人で何をしてるんだろ? という疑問と好奇心に負けちゃったというか、とにかくそんな要素が色々と合わさった結果、俺は思わず座り込んでいた人影に話し掛けてしまった。

 

 

「え……私?」

 

 

 電柱の灯りの外に居た為若干見え辛かったが、どうやら声からして女の人だったらしく、なら尚の事そんな電柱の所で一人で座って何をしてるんだと思った俺は、もしかしてヤバイ人なのか? という気持ちを押し退けつつ、俺に気付いて此方を向く女の人が立ち上がるのを黙って見つめ――

 

 

「珍しいや、私に気付くなんて。気配は隠していたつもりだったんだけど」

 

「いや、そんな刺激的な格好してる女の人に気付かない男はあんまり居ないと思うけど……」

 

 

 俺はその女の人の格好に、不覚にも釘付けになってしまった。

 いやだって……色々と大きいんだもん。仕方なくね? 胸とか。

 

 

「ふーん? 変わってるねキミ……? あ、そっか、なるほど……悪魔かな?」

 

「!」

 

 

 そんな俺の露骨な視線に気付いて無かったのか、街灯に照らさせて露になる容姿を見せながら、俺に対してハッキリと悪魔と口にした。

 

 

「……。堕天使かあんた?」

 

 

 その瞬間、俺はデートと称して騙して殺そうとしてきた堕天使の女を思い出し、少し警戒してしまう。

 だが目の前の女の人は何処かで見覚えのある色をした目を丸くすると、次第にクスクスと笑い出す。

 

 

「あはは、違う違う。私は寧ろキミの同類だよ?」

 

「え?」

 

 

 堕天使では無い……と自称する女の人が俺と同類と言うので思わず固まる。

 というのも、感じ取れる気配が確かに同類だったからだ。

 

 

「悪魔……?」

 

「正解~ ま、といっても私の場合はちょっと事情があるんだけねー?」

 

 

 何故か見覚えがある気がする女の人はからかうようにケラケラと笑いながら悪魔であると口にする。

 そう……俺はこの女の人を何処かで見たことがあるとさっきから感じてたが、街灯に全身が照らさせる事でやっと思い出す。

 

 兄ちゃんと手合わせした時、小猫ちゃんが出していたのと同じ耳と尻尾……。

 

 

「小猫ちゃんと同じ種族かアンタ?」

 

「!?」

 

 

 そう、猫妖怪という種族だと思われるのだ。

 案の定口に出すと図星だったらしく、女の人は――

 

 

「小猫って……もしかして白くて小さくて、私みたいにこういう耳があったりする!?」

 

「ぬわ!? な、何だよ急に!?」

 

 

 いきなり近付いてきて、俺の肩をガッチリ掴んだかと思えば、かなり必死な顔で揺さぶってくるじゃないか。

 

 

「答えてよ! どうなのよ!?」

 

「いや……た、確かに今アンタの言った特徴の子は、俺と同じ眷属仲間だけど、アンタこそ何者――」

 

「っしゃあ! 白音の仲間を確保だにゃ!!」

 

「ぬわーっ!?!?」

 

 

 そればかりか、一気に怪しさ満点の女の人に無理矢理掴まれたかと思ったら、兄ちゃんと合流する場所とは正反対の方向に引っ張られてしまった。

 てか、この女の人力が強い!?

 

 

「ちょっとだけキミに聞きたいことがあるから、時間ちょうだい?」

 

「だ、ダメだ! 俺仕事中――」

 

「……………だめ?」

 

「―――――――良いっすよ別に(キリッ)」

 

 

 ごめん兄ちゃん、ちょっと遅れる。

 だっておっぱいには勝てないもん……。

 

 

 

 

 

 簡単な話、全部を取り戻した白音は、まず『はぐれ』となった姉の為に、はぐれ悪魔となった現実を否定し、悪魔社会から抹消してやった。

 これにより姉は悪魔から追われる事も無く自由になれたのだが……。

 

 

『まあ、そういう事です黒歌姉様。

最初で最後の姉孝行だと思ってください……』

 

『じゃ、じゃあ私と――』

 

『それは無理です。私は私で探さないと――いえ、どんな事をしてでも会わないといけない人が居ますから』

 

 

 『何かが』急に変化した妹とはそれ以降一切会うことが出来ず、この世界の姉の黒歌は――まあ、言うなれば妹の白音を遠くから盗撮盗聴をする様になってしまったのだとか。

 

 

「………と、いう事で聞きたいんだけど、白音の会いたい人ってどんな人? というか、良く見たらキミじゃないの?」

 

「………………。いや、正確には俺の双子の兄ちゃんなんだけど――えぇ?」

 

 

 暗い公園のベンチまで連れてかれたイッセーは、いきなり目の前の女性の半生を聞かされ、その上で質問をされて返答に困った。

 

 何というか、この目の前の女の人からは自分と同じ匂いを感じるというか……。

 

 

「ふーん、双子の弟君……か。

ならその双子のお兄さんが何で白音とあんなイチャイチャしてるのか知らないわけないよね?」

 

「……。ちょっと待て、何でアンタは当たり前の様に知ってるんだよ?」

 

「当然、白音のお姉ちゃんだからにゃん!」

 

「…………」

 

 

 いや、訂正しよう。コイツは只のストーカーだ。

 イッセーは先程上目遣いでトキメイてしまった自分を殴りたくなる程に連れてこられた事を後悔していた。

 

 

「でもお姉ちゃんだからって全部知ってる訳じゃない。

だからキミに色々と教えて貰おうと思ってるにゃ」

 

「それ、もし兄ちゃんと小猫ちゃんが恋人同士って答えたら……?」

 

「決まってるにゃん、キミのお兄さんにちょっと『お話』する」

 

 

 目が全然笑ってない笑顔でお話するという白音の姉……黒歌なる女性にイッセーはヤバイと内心焦る。

 ぶっちゃけこの黒歌という女……面影を感じる辺りは確かに小猫の姉なのだろうが、何というかどう見積もっても妹の小猫より強いとは思えないのだ。

 

 いや、それでも感じられる気配からは並みの存在を蹴散らせるだろう強者の波動を感じるのだが……。

 

 

「そんな事したら小猫ちゃんに嫌われると思うんだけど……」

 

「う……や、やっぱりそう思う?」

 

「まあ、いくら身内だからって口出しされるのはいい気分じゃないと思うぞ?」

 

「うー……」

 

 

 それでも小猫の方が強い気がしてなら無い……立場も何もかも。

 イッセーは嫌われるぞという自分の忠告を受けて、急に狼狽える黒歌に対し、さらに続ける。

 

 

「つーか会えば良いだろ、そして直接聞けよ?」

 

「!? む、無理無理無理無理! 無理にゃ!」

 

「なんで?」

 

「だ、だって……白音がリアス・グレモリーの眷属になってからはあんまり会ってないし、それにいきなり私なんかが顔を出しても嫌がられるかもしれないし……」

 

「そりゃ盗聴盗撮をしてましたなんてバレたら嫌われるわな……」

 

 

 つーか気付かれた上で無視してるんじゃねーの? と小猫のあの性格を考えたらとイッセーは思う。敢えて黙ってるのはイッセーなりの優しさだ。

 

 

「うー……。

変な男に引っ掛かったら白音が不幸になるから、ちゃんと見定めないと……」

 

「変な男じゃねーよ、俺の兄ちゃんは」

 

「どうかしら? 双子のキミはさっき私の胸をずっと見てたしー?」

 

「げっ!? き、気付いてたのかよ!?」

 

「当たり前だにゃ。キミ、目線が露骨だよ?」

 

「ま、マジか……て事は部長や副部長も気付いてたっぽいのか……」

 

 

 視線を指摘され、イッセーはちょっと凹む。

 

 

「まあ、キミはどうでも良いとして、取り敢えずさっさと私にお兄さんの情報を寄越すにゃ。悪いようにはしないから」

 

「そう言って良いことになった事は漫画だろうと無いんだよ。それにアンタが思ってる様な男じゃねーよ兄ちゃんは!」

 

「ふん! そんなの弟だから庇ってるだけにしか聞こえんにゃ」

 

「んだよゴラ! ボインだからってチョーシ乗りやがって! 絶対教えてやらねー!!」

 

「にゃ!? 何その態度!? 教えてくれたらちょっとお礼してあげようと思ったのに!」

 

「けっ! そんなもんこっちから願い下げた!」

 

「うるさい教えろにゃー!」

 

「嫌だったら嫌だ!!」

 

 

 気づけば夜の公園で言い争う初対面同士。

 シスコンとブラコン……それ故に争う姿は微妙に微笑ましくもないのかもしれない。

 

 そう――

 

 

「遅いと思って探してみれば、何をやってんだイッセー? それにその女は……」

 

「に、兄ちゃん!? そ、それに――」

 

「し、白音!?」

 

「何をしてるんですか姉様、こんな所で?」

 

 

 帰ってくるのが遅くて心配になったイッセーを探しに、付いてきた白音と一緒に見つかってしまえば……色々と大変なのだ。

 

 

 

 

 そんな訳で劇的でも何でもない状況で再会してしまった姉妹。

 

 

「し、白音……あ、あのその……お姉ちゃんね?」

 

「知ってますよ全部。折角自由になれたのに、何で私に拘るのか意味はわかりませんけど」

 

「だ、だって! ……お、お姉ちゃんだもん……」

 

 

 

「うわー……やっぱりバレてたんだ」

 

「何の話だよ?」

 

「いや、あの人小猫ちゃんの姉ちゃんで、ちょっとストーカー気質みたいなんだ」

 

「………。あ、そう(あの女……あのクソ厄介だったスキルは無いか)」

 

 

 かつての黒歌とこの世界の黒歌の違いを察して、少し安心するマコト。

 

 

「む! お前が白音とイチャイチャしてる奴だにゃ!? 答えろ、白音とは――」

 

「姉様には関係無いんでさっさと帰ってください」

 

「んにゃ!? ひ、酷いよ白音ぇ……」

 

 

「……。なぁ兄ちゃん、俺、一周回って小猫ちゃんのねーちゃんが可愛く思えてきたんだけど……」

 

「お前、確実に俺の弟だよ。趣味の悪さとか特に」

 

 

 そんな黒歌の扱いの悪さを見てて、徐々にかわいいと思い始めるイッセーに、マコトは何とも言えない気分になる。

 で、何だかんだど揉めた結果。

 

 

「そこまで言うならお前の事を見定める為に、お前を四六時中監視するにゃ! という訳で家に連れていけ!」

 

「……。おい白音、コイツは何を言ってるんだ?」

 

「すいません、この人前よりバカなんです」

 

「無理に決まってんだろ……父さんと母さんがひっくり返るわ」

 

 

 かつての頃より残念な性格をしてる黒歌に殺意の欠片も沸けないマコトは、しつこい故に仕方なく親に断って貰おうと連れていくのだが……。

 

 

「み、見ろ! イッセーとマコトがこんな可憐な女の子を連れてきたぞ!?」

 

「今日はお祝いよ!」

 

 

「………。父さんと母さんも呑気過ぎるだろ」

 

「…………」

 

 

 両親も普通に呑気だった為、普通に受け入れられてしまった。

 

 そして……。

 

 

「だぁかぁらぁ! 兄ちゃんはクールでナイスガイなんだよ! 小猫ちゃんだってそこに惚れたの! だから脅したとかねーよ!」

 

「違うにゃ! 白音は可愛いからきっと弱味を握ってエッチな事をしようとしたんだにゃ!」

 

「するかそんなせこい真似!

何だお前、聞き分け無さすぎて一周回って可愛いじゃねーかちくしょう!」

 

「イッセーも此処まで言い返してくるから、ちょっと格好いいにゃ!」

 

 

 

 

 

 

「……。アレは何だ?」

 

「さあ? 昔の先輩ってあんな性格だった気もしますのでわかりますが、姉様はちょっと私にも解らないですね……」

 

 

 シスコンとブラコンの仁義なき戦いは続く。

 

 

「この野郎……いっそその無駄にでかい乳にダイブしちまうぞ!?」

 

「やれるもんならやってみろにゃ! もし成功して無理矢理組伏せられても私は負けない!」

 

「……。うるせー……」

 

「……。馬が合うんじゃないですか? 多分……」





補足

残念なお姉ちゃんでは無いさきっと。

白音たんのお陰ではぐれじゃ無い分性格がそっちに寄っちゃっただけなんだよきっと……。


その2
そこは兄弟……いや、別世界の己同士。
趣味が色々と伝染して似てるぜ
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