ツインズ・イッセー   作:超人類DX

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双子の進路先……それは――


双子の進路

 マコ兄はどうやら悪魔がマジで嫌いらしい。

 

 という印象を持ったのは、夕麻ちゃんが堕天使でレイナーレって名前でしたと知り、その後色々と知ってしまった事に対して兄ちゃんから説明をして貰った時の態度だった。

 

 

「お前がどんな種族と関わりを持とうが良いと思ってる。お前の持つ神器は鍛え抜けばそれだけの価値と力があるからな。

だが、あの悪魔共だけは俺は絶対勧めたくない」

 

「えっと、理由は?」

 

「まず悪魔って時点で地雷だ。あのクソ共は自分(テメー)を誇示する為には何でもやる。

相手の意思を無視して、駒ってので同族に転生させるだけには留まらず、その個人の持ってる力を勝手に使って強くなった気にもなる折り紙付きのカスだ」

 

「お、おぉ……グレモリー先輩達がそんな事するなんて全然想像出来ないんだけど。

というか、嫌に迫真というか……まるで経験した事あるみたいな言い方だな?」

 

「……………。それは無いが、そのせいで世の中にはクソ悪魔から逃げてる転生悪魔が多い。

それを奴等ははぐれとほざいて殺して回るんだよ」

「はぁ……」

 

 

 普段はシーンとしてる兄ちゃんが。俺の女の子に対する好奇心に無言で付き合う兄ちゃんが、物凄い嫌悪丸出しの顔で悪魔やらグレモリー先輩を貶しまくってる。

 この時点で既にレアであり、まるで前に経験させられたとしか思えない程に嫌に詳しい。

 

 思い返してみれば確かに兄ちゃんってのは、学園で俺を含めて他の生徒達がグレモリー先輩達とオマケのイケメン野郎を見てイケメンに野次飛ばしたり、美少女揃いの面子にひゅーひゅー騒いだりとしてる中、一人兄ちゃんだけは生ゴミを見るような顔してたりする事が多い。

 

 そのせいで女子に嫌われてる俺とは違い、男女関係なく微妙に嫌われてるのだけど、兄ちゃんってのはそんなの全く気にしないタイプなので、ますます嫌われてしまう。

 

 まあ、最近は俺の伝で元浜と松田って同志二人とはそれなりに話しもする感じだけどね。

 

 

「……。まあ、お前の自由だし、恐らく明日にでも奴等から接触がある。

その際、奴等の戯言に対してどう思うか、どうしたいかはお前の自由だ。

もし話しを聞いて、奴等が勧誘したりしても……選ぶのはお前だ」

 

「…………って言ってる割りには兄ちゃんの顔が凄い嫌そうなんだけど」

 

「実際は嫌だしな。

もしお前が悪魔に転生するなんて事になったら、俺は暫く真面目に不安になる」

 

「そこまで? そもそも俺なんか勧誘なんてすると思わないけどな……」

 

「いやする。

前にも言ったがお前の持つその力――神器(セイグリッドギア)は、奴等クソ共にとっても価値があるからな……」

 

「ふーん、この籠手がねー……」

 

 

 でまぁ話を戻すと、兄ちゃん的には如何に美人やら可愛い見た目でも悪魔なら信用しない方が良いとの事らしい。

 言われてみれば確かに、一般的に知られる悪魔像ってのはあんまり良い印象なんて無いし、こうまで兄ちゃんに悪魔は駄目だと言われると無視なんて出来ない話しでもある。

 

 とはいえ、悪魔……というか、オカルト研究部の人達って、美人または可愛い子しか居ないんだよなぁ。

 一人イケメンが居て余計だけどさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてのがレイナーレって堕天使とのやり取りで色々知ったその直ぐ夜での話。

 悪魔は総じてゴミとまでハッキリ言いきった兄ちゃんの言葉全部を信じるというのも流石にアレなので、取り敢えず何時もの様に纏まってそこら辺を歩くグレモリー先輩以下オカルト研究部の人達を元浜や松田達と眺めてみた訳だが……うーん、目が覚める程に素晴らしいね。色々と。

 

 

「お前夕麻ちゃんとはどうだったんだよ?」

 

「おう、軽く幻滅されて振られちまった」

 

「え? ……………あ、悪い。流石にバカに出来ねぇや」

 

 

 その際皆から夕麻ちゃん……いやレイナーレさんの話を振られ、堕天使でしたなんて言えない俺は、普段の行いから無難な理由を付けて振られたと返しておく。

 その際、微妙に皆から同情された様な気がしたけど、別に悲しくなんか無いんだからね!

 

 

「………」

 

 

 ちなみに兄ちゃんは、皆して悠然と歩くオカルト研究部員を見てる中、一人全然興味無さそうに漫画なんて読んでいた。しかもジャンルが少女漫画。

 

 

「こんな漫画があったなんてな……『前』は全く気づかなかった。げげげ……やはり新しい……」

 

 

 たださ、兄ちゃんにとってツボに入る内容の少女漫画だったのは分かるけど、だからってそんな悪い顔して笑ったら変な奴に思われるよ……。

 ほら、漫画読んでる兄ちゃんに気付いた何人かが引いた顔してるし……。

 

 

「……イッセーは分かりやすいが、何でマコトってのはああも分かりにくいという奴なんだ」

 

「オカルト研究部達より少女漫画て……」

 

 

 なんてボソッと言ってる元浜と松田に対して俺はフォローがちょっと出来ない。

 だってまさか兄ちゃんがマジな意味であの人達が嫌いなんて言ったら、兄ちゃんが悪者にされちまう。

 そんなの言える訳が無いよ……。

 

 

 

 マコトとイッセー。

 似てるけど中身が変に違う双子の兄弟として学園ではそこそこ有名だったりする。

 例え話、イッセーの悪ふざけには割りとノリノリ……でも顔には出さずに付き合う癖に、一定の美少女を目の前にすると全然反応が異なる。

 そう、リアス・グレモリー達を前にすると如実に。

 

 

「兵藤一誠君と兵藤誠君だね?

リアス・グレモリーの使いで来たのだけど、よければこれから一緒に来てくれるかな?」

 

「あ……」

 

「……………」

 

 

 寧ろ嫌ってる様にも見える程。

 だから誠は彼女達のファンから微妙にヘイトを買ってたりするのだが、そんな事なぞ知らないそのオカルト研究部の部長に命じられて二人のクラスにやって来た、美男子部員の木場祐斗に、女子達が黄色い声を出している中、何故か「あ、やっぱり」といった顔のイッセーと、心の底から邪魔なゴミを見るような顔をしてるマコトにちょっと戸惑う。

 

 

「昨日の今日で本当に来たよ。スゲーよ、兄ちゃんの言ってた通りだ」

 

「ふん」

 

「……。なるほどね、少しは僕たちの事を知ってそうなら話しは早い。その昨日の事について部長がお話ししたいと言ってる。

だから来てくれないか?」

 

「あー……どうする兄ちゃん? 正直話してた方が色々と良いような……」

 

「決めるのはお前で、俺は只の付き添いだ」

 

「おっけー おい木場、行くから案内よろしくな?」

 

 

 まるで見透かされてる様な双子の態度に内心少しだけ警戒する木場だが、そうとは知らないのか、マイペースに案内宜しくと言ってきたイッセーに『じゃあ付いてきてと』二人を先導する。

 その途中、何人かの女子が三人を指しながら何かを言っていたのだが、三人は多分知らない方が良いのかもしれない。

 

 

「こっちだ」

 

「あ、噂に聞いてたけど、本当に旧校舎なんだな」

 

「………」

 

 

 こうして木場に案内されるがままにやって来たのは、今は全く使われなくなった駒王学園旧校舎。

 普段絶対に立ち寄る事も無かった旧校舎へと案内されたイッセーは、聞いていた通りだとぼんやりした声で感想を呟き、マコトは更に冷めた顔をしてたりと双子でありつつ真逆の反応をする中、旧校舎の中を進んでいくと……。

 

 

「ここが僕たちの部室だよ」

 

「おぉ」

 

「……………」

 

 

 辿り着いたオカルト研究部の部室の扉の前で一旦止まった木場に、イッセーは新鮮なモノを見るように感心した声を、マコトはどこまでも氷点下な顔だった。

 

 

「部長、お二人をつれてきました」

 

 

 そして漸く……マコトにとっては約数万年振りになるかもしれない忌々しいオカルト研究部の部室の扉が開けられた。

 

 

「…………」

 

「お、おぉー……オカルちっくぅ~」

 

 

 初めて訪れたイッセーは、内装のアレさに変なリアクション、そしてマコトは今すぐにでもぶち壊してやりたい憎悪を心の奥底に秘めさせながら一歩足を踏み入れる。

 そして内装に変なリアクションをしてたイッセーの目に飛び込んできたのは……。

 

 

「昨日振りね兵藤一誠君に、兵藤誠君」

 

 

 黒髪を後ろに束ねるタレ目気味な美少女を横に、目立つ紅髪を持つ美少女が悠然とした態度で二人を迎える。

 オカルト研究部部長、リアス・グレモリー

 副部長・姫島朱乃。

 二人を案内した平部員・木場祐斗。

 同じく平部員・塔城小猫。

 

 

「私達オカルト研究部は貴方達を歓迎するわ」

 

 

 イッセーにとっては憧れの。マコトにとっては世界が変わろうとも殺意しか沸いてこない面子との対面が果たしてどうなるのか。

 それを知るのは未来のみである。

 

 

「さて早速だけど、兵藤一誠君……ふむ、イッセーと呼んで良いかしら?」

 

「へ? あぁ……はい、どうぞお好きに」

 

「ありがとう、じゃあそっちはマコトとでも――」

 

「……………」

 

 

 リアスに促される形でソファに座るイッセーと、ちょっと遅れてマコト。

 既にマコトの機嫌はかなり悪く、早速リアスの問いに対してガン無視しており、若干顔をしかめるリアス達にハラハラするイッセーは、慌てて話を切り替える。

 

 

「えーっと、それで話というのは?」

 

 

 悪魔を極限に嫌ってるマコトに絡んでしまったら間違いなくヤバイとイッセーがわざとらしく声を大きめにリアスに対して用件を問う。

 それが功を奏したのか、マコトへ向けられた意識がイッセーへと切り替えたリアスが、隣に立つ学園二大お姉様の片割れである姫島朱乃に小さく何かを告げ、一枚の写真をテーブルの上に置いた。

 

 

「この写真の相手に見覚えがあるでしょ?」

 

 

 イッセーとマコトにも見えるように写真を置いたリアス。

 

 

「あ、レイナーレさんだ」

 

「………」

 

 

 写真に写るは長い黒髪の……というか昨日イッセーがデートした相手、堕天使のレイナーレが天野夕麻に化けてた姿であった。

 その写真を見て思わずといった様子で堕天使の方の名前をイッセーがさん付けして声に出したので、リアス達の表情が若干訝しげになる。

 

 

「名前を知ってるの?」

 

「え、はい。昨日名乗られたんで……な、兄ちゃん?」

 

「…………」

 

 

 イッセーの答えに対してだけ、無言ながら軽く頷くマコト。

 

 

「そう、でもアナタ……イッセーは彼女に殺されかけたわね?」

 

「ま、まあ……」

 

「でも怪我はしてないみたいだけど……?」

 

「それはまあ……調度何かに気付いてどっか行っちゃったからとしか……」

 

 

 想像していたよりも尋問されてる感が半端ない……と、内心残念に思いつつスラスラとあった事を話すイッセー。

 もうちょっとこう、和気藹々さがイッセーはご所望だった様だ。

 

 

「なるほど、じゃあ質問を変えるわ。

アナタが何故この女に殺されそうになったのかは知ってるの?」

 

「えーっと………あれ、何でだ? 何でだっけ兄ちゃん?」

 

「…………………神器(セイグリッドギア)

 

『!?』

 

 

 どうして狙われたのかというリアスの質問に対し、身に覚えの無い様子でイッセーがマコトに振り、それに対してマコトが心底嫌そうに小さく呟く神器の言葉に全員が目を見開く。

 

 

「あ、それかぁ。やっぱりデートは嘘だっんだね……」

 

「ちょっと待った。今アナタ、神器って言葉を出したけど、アナタ達は神器を知ってるの?」

 

 

 堕天使から無傷で生還してる時点で、まるで無知と踏んでいた訳では無かったが、まさか神器の存在についてこうも当たり前の様に口に出した二人にリアスが食い入る様にして二人に問いかける。

 

 

「一応……兄ちゃんは無いみたいですけど、俺は何かあるっぽくて」

 

「……………」

 

「……。じゃあ今此処で呼び出せる?」

 

 

 その問いに対してマコトがまたしても無視する中、イッセーが答える。知っていると。そして自分にはあると。

 その瞬間、リアスの目が若干光りを帯ながらコントロールの有無を聞いてきたので……。

 

 

「あ、はい」

 

 

 極々当たり前の様にイッセーはその左腕に神器の力を生成させた。

 

 

「驚いたわね。呼び出せるだけのコントロールが出来るなんて……龍の手かしら?」

 

 

 左腕に現れるそれを見て驚くリアス達がしげしげと眺めて神器の種類を予想するが、イッセーは首を横に振りながら違うと話す。

 

 

赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)……でしたっけ? そんな名前っす」

 

『!?』

 

「何ですって!?」

 

「……。(一誠、それは言い過ぎだ)」

 

 

 シレッと答えたイッセーに今度こそリアス達は驚愕した。

 赤龍帝の籠手……二天龍の片割れが封じられた神器の中でも最上位に位置する神滅具の一つ。

 そんなレアの中でも取り分け強力な力を持つと言われもすれば、リアス達とて驚かない訳が無く、最早マコトは只のオマケと見なしてイッセーに注目を集める。

 

 

「何時から自覚してたの?」

 

「えーっと、ちっちゃい頃、テレビの前で兄ちゃんとドラゴン波の真似してたら何か出てきまして……」

 

「ドラゴン波?」

 

「え、ドラゴン波知りません? ドラゴソボールも?」

 

 

 事もなさげに答えるイッセーと、更に不機嫌そうな顔をしてるマコト。

 マコトは置いておくにしても、堕天使に狙われた人間が思わぬ才能を持っていた事にやっと気付いたリアスは、マコトはともかくイッセーをこのままにして置く訳にはいかないと、とある提案を出す。

 

 

「アナタ、私達の仲間にならない? そう、悪魔として」

 

 

 これが地雷であったと知るのに、さほど時間が掛からないとこの時は知らずに。

 

 

「え、悪魔?」

 

「ええ、昨日の女とのやり取りで大体予想は付いてるでしょう? 女が人間では無いことを」

 

「そりゃあまぁ……」

 

 

 仲間にならないか? というリアスの言葉にイッセーは顔をしかめる。

 敢えて一定の力を持ってますと出した瞬間、もう勧誘までしてきた……そう、兄の言葉通りだったと。

 

 

「あの女は堕天使、私達の天敵。

そして私達は実は悪魔なの」

 

「………」

 

 

 余りにもマコトの予想通り過ぎる。

 改めて兄に対して妙な尊敬心を抱くイッセーは、リアスを筆頭にその場から悪魔の羽を背に広げる部員達を見ながら、さてどうしようかと考える。

 

 

「そして私達は仲間を増やせる。アナタの持つ神器を狙ってあの堕天使がまた来る事を考えれば、私達の仲間になればアナタを守る事ができるわ」

 

「は?」

 

 

 ぶっちゃけ超胡散臭い。

 マコトの言葉による先入観のせいもあるが、力を見せた瞬間に間髪入れずに勧誘する時点で、自分達に力を貸せよと言われてる気しかしない。

 

 それでもイケメンアンチクショウの木場を除けばイッセー好みの美少女達の仲間になれるというのには魅力だとは思うが……。

 

 

 

「どう? ついでにお兄さんも一緒に仲間にできるけど?」

 

「………………は?」

 

「…………」

 

 

 先程からめちゃ不機嫌なマコトをついで呼ばわりしたのが、イッセーにとって何よりの地雷であり、それまで割りと穏和な雰囲気を出していたイッセーの顔つきが変化する。

 

 

「今、兄ちゃんをついでって言いました?」

 

「え?」

 

 

 そこを突っ込まれると思わなかったのか、急に真顔になったイッセーに言われたリアスはちょっと面を食らう。

 勿論、木場、姫島、塔城の三人もだ。

 

 

「だから、今兄ちゃんをついでって言いましたよね?」

 

「えっと……いや、言ったわね……」

 

 

 その静かな、有無を言わせない微妙な迫力に圧されてしまったリアスは、コクコクと頷いた。

 よくは解らないけど、イッセーが急に怒り出した原因がイマイチわからないままに。

 

 

「帰ります」

 

「え!?」

 

「いやだから帰りますよ。仲間? なりませんよ、そんなの」

 

「ちょっ!」

 

「行こうぜ、兄ちゃん。たこ焼きが食べたい」

 

「じゃあ駅前のタコさん屋に行くか」

 

 

 完全な地雷だった。

 イッセーは基本的にマコトが大好きだ。つまりブラコンだ。

 そしてマコトに関しての事のみ異様に沸点が低かった。

 マコトに落ち度があると思えば怒りはしないものの、今リアスは明らかに自分のついでにマコトを仲間にしてやると上からモノを言ってきた。

 その時点でイッセーの中にあったオカルト研究部美少女達へのミーハーな気持ちはほぼ失せた。

 

 

「ま、待ちなさい! まだ話しは終わってないわ!」

 

「あーはい大丈夫っすよ。堕天使さんから襲撃されても逃げれば良いんで。仲間の件は要りません」

 

「そうは行かないわ、狙われる理由であるその力は私達にとっても見逃せないわ」

 

 

 さっさと帰ろうとするイッセーとマコトに対してリアスは咄嗟に部員達に命じて取り囲み、話を続けさせろと主張する。

 ……第二の地雷を踏んでしまった事になるとは知らずにだ。

 

 

「しつけーな」

 

 

 それまでイッセーにのみ相づちを打っていたマコトが、取り囲む悪魔達に対してめちゃくちゃ不機嫌そうな顔をして、そう言い出し、ムッとしてるイッセーにこう言った。

 

 

「ほらな一誠。悪魔なんて大概こんなもんだ、力の無い奴は無視な癖に、あるとわかった瞬間掌を返す」

 

「だな。赤龍帝の籠手って言った瞬間なんかもう隠そうともしてなかったもんよ」

 

「っ!? あ、アナタ達、私を試してたの!?」

 

 

 流石に双子。そっくりそのままの冷めた顔で部員達を見渡しながら、まるで自分達を試してたといった態度にリアスが憤慨する。

 しかし双子はヘラヘラしているだけでまるで動じない。

 

 

「試すっていうか、先輩のリアクションが余りにも思ってた通り過ぎただけですけど」

 

「つーか邪魔くせぇな。帰るって言ってんだから退けよ。たこ焼きが食いてぇんだよこっちは」

 

「っ!?」

 

 

 もはや話す舌なんて無い。

 自分達を逆に見下すような台詞を平然と口にする双子にプライドを傷つけられた思いのリアスは双子を睨み付ける。

 その視線から逃がしてはならかいと察した部員の一人、小柄な白髪美少女・塔城小猫が……。

 

 

「たこ焼きなら今私が駅前まで行って買ってきます。

だから、もう少し部長のお話を――」

 

 

 イッセー――いや、距離的に近かったマコトの袖を掴もうと手を伸ばした。

 そう……兵藤マコトに手を伸ばしてしまった。

 当然――

 

 

「気安く触るなゴミが……」

 

「っ!?」

 

 

 小猫の手は触れる前に振り払われ、そしてマコトは何処までも殺意に満ちた低い声を小猫に向けた。

 

 

「ぅ……」

 

 

 その言葉と振り払われた事に、かなり傷ついた顔の小猫だが、マコトはそんな表情でもイライラが止まらない。

 

 

「兄ちゃん……」

 

「チッ、わーってるよ。

おら退け、人間様の事は未来永劫放っておきやがれ」

 

 

 それを察したイッセーの声で漸く落ち着いた訳だが、結局の所このどうしようも無い空気がどうなるでも無く、わざとぶつかりながら外に出ていくマコトと、それに続くイッセーを見送るしか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 あー……びっくりした。

 いきなり兄ちゃんが小猫ちゃんに対してマジになるんだもんよ。

 

 

「小猫ちゃんちょっと泣きそうだったぞ?」

 

「知るか、あんなモノ」

 

「モノって……小猫ちゃんファンに石投げられんぜ?」

 

 

 前からグレモリー先輩達を嫌ってた面があったけど、こりゃ重症レベルだわ。

 とはいえ、兄ちゃんをついで呼ばわりした時点で俺も仲間になるつもりは無いけどさ。

 

 

「アレで大人しくなるとは思えないんだけどなー」

 

「ああ、寧ろゴキブリの様にしつけぇぞ。油断するなよ?」

 

「はふはふ……おーぅ、取り敢えずそうならないように暫くは鍛えないとな。兄ちゃん、頼むぜ?」

 

「あぁ、今までは軽くやってたが、こっからはレベルを上げてやる。

付いてこられたら1週間で奴等なんてゴミ同然ににぶちのめせる力を持てるだろうよ」

 

「いや、ゴミは流石に失礼だぞ兄ちゃん……」

 

 

 ただその代わり、先に決着を着けないとまずい事案が一つだけある訳で。

 駅前でたこ焼き5人前分程購入した俺と兄ちゃんは、家……では無く気配の感じるままフラフラととある場所を目指していた。

 

 

 そう――

 

 

「あ、いたいたー! おーい!」

 

「っ!? お、お前は……!」

 

 

 俺を殺そうとしてた堕天使さんの所にね。

 

 

「すげーな兄ちゃんナビ。精度抜群だ」

 

「一度覚えなきゃ意味ねーけどな」

 

 

 悪魔の仲間にはなれない。しかし悪魔は間違いなく次も同じく接触して仲間になれなれと言うかもしれない。

 ならどうするか? 俺の考えはこうだ。

 

 

「人間? おい確かあの顔、レイナーレが仕留め損ねた神器使いじゃないか」

 

「何しに来たのかしら? というかバカ?」

 

「あ、良い匂いがするっす」

 

 

 

 

「あれ、あの人達も堕天使?」

 

「あぁ、間違いないな」

 

 

 先に誰かの仲間なっちまえ、である。

 兄ちゃんはこの話に呆れて『短絡的だろ』と言ってたけど、否定はしなかった。

 曰く、悪魔の嫌がらせになるならぶっちゃけ何でも良いらしい。

 

 兄ちゃんはつくづく悪魔が嫌いみたいだ。

 

 

「何しに来たのかしら? わざわざ自分から殺されに?」

 

「いやー……そうじゃないんですけどね?」

 

 

 さて、そんな訳で妙に古びた教会にやって来てレイナーレさんを見付けた訳だけど、どう見てもレイナーレさんの仲間と思われる堕天使さん達共々歓迎はしてくれなさそうな空気だった。

 トレンチコート着た男の堕天使、ゴスロリ衣装の小柄な少女、赤いホディコンスーツを着た長身の女堕天使……。

 其々が俺と兄ちゃんの出現に対して微妙に見下した様な顔で見てくる訳だけど、まあ、こんなもんだよな。

 

 

「いやほら……昨日はあんなオチだったしと思いまして」

 

「へぇ、私と戦いにでも来たの? 人間風情が?」

 

「違います」

 

「はぁ? じゃあ何よ?」

 

 

 夕麻ちゃんに化けてたんだなぁ、と改めて思う大人びた容姿のレイナーレさん。

 もう、おっぱいと言いぶっちゃけ魅力的でしょうがねぇやとした思えない俺は、戦いに来た訳じゃないという俺の言葉にバカを見るような目をしてるレイナーレさんに向かって言った。

 

 

「もう一回最後までデートして欲しいです!!」

 

 

 そう、中途半端に終わったデートを最後までしてほしいと……。

 

 

「……。俺の考え付かない事を平然と決行しようとする。やっぱお前、俺より遥かに大物だわ」

 

 

 唖然としてる堕天使さん達に土下座して懇願する俺の横で、兄ちゃんがあきれつつも妙に優しげにそう言ってるけど、俺は兄ちゃんこそスゲーとしか思ってない。

 そもそも弱い俺にはこれくらいしか出来ないんだから。

 

 

「正真正銘のバカねアンタ。昨日私がやった事を忘れたの?」

 

「忘れてませんよ。でもほらレイナーレさんって超美人だし、殺される思いされても……的な?」

 

 

 同じく呆れるレイナーレさん達から、殺気が少し薄れる。

 俺がバカ過ぎる故に殺す気が失せでもしてくれたのか……。

 

 

「悪魔に絡まれて鬱陶しいってのもあるが、一誠の奴がアンタに殺させれ掛けてもアンタとデートしたいんだとさ」

 

「悪魔? グレモリー一族の方かしら?」

 

「正解。

あのクソ共、イッセーの神器の力を知った途端掌を返しやがった。

ぶっちゃけそれがムカつく」

 

「それとウチ達の所に来るのと何の関係が? 私達もそこの人間の持ってる神器が邪魔だから始末したいと思ってるんすよ?」

 

「そう、それだ。邪魔に思ってるのならイッセーはアンタ等の役に立てば殺される心配も無いと考えてるみたいでな。あと、レイナーレって言ったか? アンタに結構マジな意味でホの字らしい」

 

「…………」

 

 

 よし、兄ちゃんアシスト! ホの字なのカミングアウトされて地味に恥ずかしいけど、届け俺の想い!

 

 

「論外ね。私が人間風情なんかの想いに答えるとでも?」

 

 

 あう、冷徹に言われちゃった。やべ、泣きそう……。

 

 

「じゃあ逆に聞くが、アンタ等にイッセーを殺せるとは思えんがな。

確か神器を狙って始末しようとか言ってたが、神滅具持ちのコイツは既にある程度コントロール出来ている。

そう、昨日の時点でもしクソ悪魔の邪魔立てが無く続行してたら…………」

 

「な、何ですって?」

 

「神滅具だと!?」

 

 

 お、何か驚いてる?

 

 

「ふざけるな! そこで情けなく地面に額を擦り付けてるアホが神滅具だと!?」

 

「嘘じゃない。おら、イッセー見せてやれ」

 

「ドラゴン波!」

 

 

 急に狼狽える堕天使さん達が否定したがるので、兄ちゃんに言われた通り、土下座体勢から立ってドラゴン波の構えをしながら左腕に真っ赤な籠手を生成してやる。

 

 

「二天龍の片割れ、ドライグ――んっん、赤い龍帝が封じられた神器……赤龍帝の籠手。

名前くらいアンタ等も知ってるだろ? ほら、龍帝の紋章だ」

 

「な、なん……だと……?」

 

「ど、どうなのよドーナシーク?」

 

「た、確かにグリゴリの資料室で見たのと同じ……かも」

 

「と、ということはアイツ赤龍帝なんすか?」

 

 

 おお、何て説得力。

 兄ちゃんの説明込み込みのお陰ですっかり堕天使さん達が萎縮してしまってるぜ。

 

 

「だ、だから何よ! いくら赤龍帝の籠手だとしても、使い手が脆弱な人間なら……!」

 

「そう思うならやってみるか? 多分今のイッセーならアンタ等全員相手取っても完勝可能だぜ?」

 

「え!? ちょ、兄ちゃん! それはいくら何でも大袈裟だぞ」

 

「って、言ってるんすけど?」

 

「謙遜だよ謙遜。俺の弟は昔からちょっと照れ屋さんなんだよ」

 

 

 い、いやいや、小猫ちゃんと違って堕天使の小さい子に対して柔らかい態度で話す兄ちゃんの言ってることが誇張だっつーの! まだ兄ちゃんのレベルアップメニューに手も付けてないのに、無理だっての!

 

 

「でまあ、話を戻すとだね。弟のイッセーはレイナーレさんの事が一晩経っても忘れられないらしくてな? 兄としてはそのアシストをしてやりたいというか? クソ悪魔にイッセーの力が狙われてるのであるなら、敵対種族であるアンタ達に使われた方が、まあ、コイツにとっても良いんじゃねーかなと。

何と言ってもアンタにコイツが惚れてるしな」

 

『……………』

 

 

 ペラペラと何時も以上に流暢に話す兄ちゃん。

 もしかしたらセールスマンの才能とかあるかもしれねぇと今更ながらに思うのだけど、そんなレイナーレさんの前で惚れてる連呼したら恥ずかしいわ。

 

 ………。レイナーレさんは驚いた顔だけしかしてないけど。

 

 

「ど、どうするレイナーレ? もし此処でコイツ等を殺したら、恐らく監視してるだろう悪魔が来るかもしれんぞ?」

 

「っ……!」

 

「よく解らないけど、アナタにあの赤龍帝が惚れてるってなら利用できるまで利用したらどう? 牽制にも使えそうだし」

 

「片方の喋ってる方も多分ただ者じゃ無いと思いますしねー」

 

 

 さて……そんな堕天使さんの答えに俺はドキドキしながら待つ訳だけど……。

 

 

「……。本当に私達の言うことに逆らわないのね?」

 

「ういっす!」

 

「程度によるけどね。基本はパシりだろうとやるぜ?」

 

 

 堕天使さん――レイナーレさんの答えは。

 

 

「……。わかったわ、本当は人間なんて信用したくないけど、どうもアナタ達は他とは違うし…」

 

「っしゃあ! あざっす! レイナーレさん大好き!」

 

「うるさい! 人間ごときにそんな目で見られたくないわ!」

 

 

 オーケーだった。

 神器使いとして悪魔からのボディーガード的なポジで雇われる事になったぜ。ひゃほーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、それから一週間が経った頃だった。

 結局堕天使に雇われる形でパシりとなったイッセーとマコトなのだが、悪魔に悟られずに一週間堕天使と接触する手腕もさる事ながら、力を信用して貰う為にイッセーとマコトと戦ったりしたお陰か、それともイッセーの人柄の良さが影響されたのか……。

 

 

「ちわーたい焼き買って来ましたー」

 

「あら、今日は早いのねイッセーにマコト」

 

「クソ悪魔共にしつけーよボケって書状を1000通くらい投げて来たから、それの対応の隙を突いてな」

 

「おお、すっげー地味な嫌がらせっすね」

 

 

 もう順応していた。

 

 イッセー&マコトの真骨頂その1

『相手の心を許させる』

 

 

 根に残る面倒見の良さのマコト、人懐っこい性格のイッセーのレイナーレ達に対するリスペクト心と、何よりイッセーのしつこいくらいのレイナーレに対する好き心……そして仲間に認めて貰うに足りる力と、引くレベルと鍛練を積み重ねる場面を見せた結果、既に堕天使四人衆は二人の人間を人間だけど認めていた。

 

 

「ほほう、これがマコトの使ってた『クロカミ・ファントム』か。確かに素晴らしい速力とパワーが出せる」

 

「流石、堕天使さんは飲み込みが速い」

 

「どうかな、まだまだお前みたいに適当に落ちてる枝で鋼鉄を切り裂いたりは出来んよ」

 

 

 そして地味にマコト――嘗ての一誠が尚持つ進化の異常性をトップに弟のイッセーに続き、堕天使達もその進化の影響を受けていた。

 

 

「レイナーレさんデートしましょうよ~」

 

「嫌よ。確かに少しは出来ると認めてはあげてるけど、調子に乗らないで」

 

「ちぇ……」

 

「なら私とするか? レイナーレじゃなくて残念かもしれないけど」

 

「か、カラワーナさんとですか? いや、して貰えるなら俺はもう喜んで」

 

「そう、なら明日にでも行きましょうか? レイナーレなんてほっといて」

 

「なっ!? イッセーあんた、私が良いって言ってたのにカラワーナと行くわけ!?」

 

「え? い、いやそれは……」

 

「あらあらレイナーレ? 自分で断っておきながら酷い事を言うのね?」

 

「う……ぐぬぬ!」

 

 

 

 

「アイツ等またやってるぞ、良いのか? 弟が困ってるぞ」

 

「あぁ、良いよ良いよ。何事も経験だしな」

 

「イッセーもマコトも不思議な奴っすよね。この前まで変な奴だと思ってたけど」

 

「まあ、変なのは自覚してるな」

 

「まあ、悪魔に従うより我々堕天使に与するという考えは誉めてやるぞ?」

 

「はは、どーも」

 

 

 そう、繋がりを深める事で始まる無限の進化。

 それは上級悪魔だろうと、その他だろうと……止められない成長。

 

 

「マコト~ 一緒にテレビ見ようよ~」

 

「え? 別に良いけど……チッ、イッセーはボインに好かれてるっつーのに、俺はこんなちんまいのとテレビかよ……はぁ」

 

「ちんまい言うな! 成長期に入ったらすごいんだぞ!」

 

「いや……無理っぽくね?」

 

「うぎー! 黙って膝貸せっす!」

 

「はいはい……」

 

 

おわり




補足。
と、イッセーくんが一途でレイナーレさんにマジ惚れしたのでこうなります。

イッセーからの提案でこうなりましたが、マコトとしては既に自分の辿った一誠としての人生とは違う道を歩んでるこの世界の自分に『新しさ』を覚え、その道を歩む為に邪魔となる存在をぶち壊す気持ちを更に固める。

そして、前世共通……『妙にちんまいのに好かれる』のも変わらない。

このIFシリーズでチラホラ出たけど、ちんまりミッテルトたんに地味に懐かれてるのだった。
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