カラワーナさんという横入りポジも居るからアカン……
堕天使……その存在を見たとき、俺は懐かしいと思った。
そして意外な事に、過去の俺自身は騙されたというのにその堕天使の女が好きらしい。
アイツの決めた事だから、それに協力する事自体は惜しまないが……問題は俺があの堕天使を知らんって事だ。
レイナーレ、ドーナシーク、カラワーナ、ミッテルト……。
俺が一誠として生きていた頃に会った事なんて無い堕天使でありその後も会った事も無かった見知らぬ存在。
あのアザゼルさんを信仰しているらしく、名前を覚えて貰う為に色々とやってる様だが、果たしてこの世界のアザゼルさんがそんな真似をして喜ぶタイプなのか。
もし喜ぶタイプであるのなら……。
「だからほっといてくださいよ! 俺達はこうして無事に生きてるんだから、それで良いでしょうが!」
「無駄だ。このバカ共にそんな事言っても聞きやしねぇさ。テメーのクソ安いプライドか何かで動くしか能が無いんだ。そうだろ? 悪魔共」
悪魔共々……ってな。
ぬぬ……一回言えばそれで終わるなんて能天気な事を思ってた訳じゃ無いし、兄ちゃんがエグい嫌がらせをしたというのもあるかもしれないけど、中々しぶといぜ。
「いい加減にして貰えません? 大体今こうして生きてるんだから、アナタ達が思ってることなんて無いって証拠でしょ?」
「それはアナタ達がレイナーレ達と組んだからでしょう? 私達が何も知らないとでも思ったら大間違いよ!」
「……」
しかも流石にバレてるし。
はぁ……。
「だったら何だっていうんすか? 別に俺も兄ちゃんもレイナーレさん達と悪いことしてる訳じゃないですし、悪魔にでもなったのならイザ知らず、人間である俺達の交遊関係に口出しできる権限でもあるんですか?」
今日は今川焼きの気分なので、兄ちゃんと駅前に買いに行こうぜと話してたら、毎度の如くやって来たグレモリー先輩達。
曰く、俺達がレイナーレさんと仲良くしている所を突き止めたのと、それが気に食わないらしく、今日も元気に部員の皆さんと俺達二人を取り囲んでやがる。
因みに場所は体育館裏で、理由はレイナーレさんの話にまんまと釣られちゃったからだ。
「…………」
そしてこれまた因みにだけど、兄ちゃんの機嫌はめちゃんこ悪い。
理由はお察しなのだが……。
「先輩は何故か私が嫌いみたいですけど、それは何故ですか? 私、先輩に何かしてしまいました……?」
俺がグレモリー先輩とやりあってる直ぐそこで、小猫ちゃんにめちゃめちゃ絡まれているからだった。
「に、兄ちゃん? ここで手とか出したら駄目だからな? 退学コースになっちゃうから……」
「わかったわかっ――
「答えてください。意味も無く嫌われると気になるんです」
「―――――このカスがそろそろ黙らないと、俺でも解らなくなるがな……」
学校内で殴った蹴ったなんてすれば、ましてや小猫ちゃんみたいに見た目は小柄な少女を傷付けたとなれば、世間的に兄ちゃんがバッシングを受けるのはほぼ間違いない。
そりゃあ確かに兄ちゃんは何故か小猫ちゃんをめっちゃ嫌ってるし、ほぼ間違いなく態度も隠さないから理由を知りたい気持ちは俺もわかる。
けれど、兄ちゃんって言うほど気が長いタイプじゃないというか、既に堪えてるよとは言ってるものの、顔が鬼の形相三歩手前なんだ。
兄ちゃんって嘗められがちなのかもしれないけど、ぶっちゃけ喧嘩になったらまずいくら悪魔でも兄ちゃんには勝てないと思う。
なんせ、この前なんて堕天使であるレイナーレさん、ミッテルトちゃん、カラワーナさん、ドーナシークさんをまとめて無傷撃破したんだぜ? 十分すぎる信憑性だと俺は思うぜ。
「わかったわ、この前マコトをついでなんて言って悪かったわ……だから――」
「何時から気安く呼べなんて言ったかなぁ俺は。
勘弁してくれないかねぇ……ナマモノ共が」
「なっ……!」
「もう俺達の事なんて放って置いてくださいよ。
というか、兄ちゃんにその気が無い時点で俺もあり得ませんから」
……。まあ、流石に風当たりが何故か妙に一番強い小猫ちゃんだけは微妙に同情するっつーか、何だろうな、兄ちゃんってちんまい子に昔から妙に好かれるような……。
結局、マコトのイラつきから来た殺気に圧されてしまう形で今日も悪魔達から逃れたイッセー。
捨て台詞っぽくリアスに『最終通告だから』なんて言われたけど、イッセーもマコトもまともに取り合うつもりなんて当然無かった。
マコトは悪魔を憎悪してる故に、イッセーはそんな忠告以上にレイナーレを慕うが故に……。
「そろそろ一匹ずつぶち壊すか……」
「さ、流石に物騒な事はやめた方が……。レイナーレさん達が悪魔に目を付けられちゃうし」
「付けられたらソイツも……いや、いっそ根城ごとぶち壊せば良いだろ」
「えぇ……? いくら何でもそんな無茶な……。堕天使の上の人達と悪魔達に何らかの接点とかあってもし仲良しとかだったらマズイし……。
それに兄ちゃんだけそんな割りを食う事ばかりじゃ……」
「……お前ってホント良い子だよな。俺の弟である事が勿体ねぇわ」
かつての自分……とはまるで似もしないこの世界のイッセーの良い子っぷりに、マコトはちょっと内心嬉しく思いながら、なんと無く隣を歩く弟の肩をポンポコと叩いてフッと表情を緩める。
自分を騙したばかりか、殺そうとまでした相手に惚れた心を崩さずにアタックするのもそうだけど、何より後先なんてまるで考えずに気に食わないものを破壊し続けた自分には無い慈悲を持つイッセーが、マコトは甘い性格だと思いつつも嫌いじゃなかった。
「レイナーレに関しても、その内本当に脈入るかもな?」
「ま、マジ? だったら嬉しいなぁ」
へへへ、と子供っぽく笑う姿といい、男としては半人前なのかもしれないけど、マコトはそんなイッセーを『自分では決して持てない強さがある』と最大の評価を下している。
単純に能天気なのかもしれないけど、それを踏まえてもマコトは弟としてのイッセーが嫌いじゃなかった。
「今川焼きのチョコとクリームと小倉を三つずつで良いと思う?」
「充分だろ、ドーナシークは微妙に甘いもん苦手らしいし」
「じゃあドーナシークさんにゃあ激辛ラー油味でも……」
さて、そんな二人は今駅前に到着し、これから会いに行くレイナーレ達への手土産の購入を済ませ、町外れの教会へと歩を進めながらペチャクチャとお喋りしている。
途中途中でソックリな顔した男二人が並んで歩いてるという理由からか、通行人に物珍しそうな視線を向けられるが、本人達はそんな視線も気にせずにあーだこーだと会話を繰り広げていると……。
「☆&〒☆♭♭♭&!」
突然、自分達にはわからない言葉で後ろから話し掛けられ、驚いた様に二人は反射的に振り返る。
「¥$%≠∴≦≧∞」
「は、はい?」
「………。英語、じゃないな」
格好からしてまず新鮮味を覚えるその人物。
フードを被った、声の質からして恐らく女性かと思われるだろうその人物の聞き慣れない言語にちょっとテンパるイッセーと、冷静に英語株では無いと解析しながら、格好を見てかつての仲間が好んで身に付け続けたシスター服である事を見抜いたマコト。
「ちょ、ストップ! ストーップ!」
「!」
そんな解析の最中、矢継ぎ早に知らない言葉で話続けられて我慢出来なくなったのか、イッセーがわたわたしながらその人物に伝わりそうな言葉を取り敢えず口に出して喋るのを止めさせると、それが伝わったのか、風の悪戯で被っていたフードが外れて容姿が露になった金髪少女は、マコトとイッセーにすがるようは目を向けながら黙って見つめていた。
「うわ、可愛い……」
「…………。誰だ?」
その容姿にイッセーは驚き、マコトは目を細めてそのまま思っていた事を口にした。
勿論、マコトの口にした誰だという疑問はそのまま……一誠として生きていた頃には見なかったという意味も込められているが、生憎言葉がわからない少女も、そのままの意味で捉えたイッセーには分からない。
「もろに外人って顔だな……ミッテルトちゃんで慣れてるつもりだったんだけどなー」
「ありゃ只の餓鬼だろ……」
「でも西洋人形っぽくて、もし学園に連れてったら人気出そうじゃん」
「……まあ、好き者ミーハー共には騒がれるだろうな、レイナーレ共々」
「…………。やっぱ連れていくべきじゃねーな」
謎の少女の容姿……というよりは金髪に対してミッテルトの名前が出てきて話が脱線してしまった。
「しかし、何を言ってるのか全然わっかんねー」
「………。チッ、しょうがねぇ」
しかし忘れていた訳では無かったので、気を取り直したマコトはイッセーにも意味が分からずに首を傾げる行動――――人指し指をキョトンとしている金髪少女の額に向かって軽く突き……。
「お前はもう、死んでいる」
と、どっかの世紀末救世主伝説主人公の台詞を若干ふざけ混じりで口にするのだった。
「?」
「な、なにやってんだよ……」
これにはイッセーも流石に苦笑いだったのだが……。
「おい、伝わったら返事してみ? 俺達の言葉……伝わるか?」
「!? あ、あれ? は、はい……」
「嘘ぉ!?」
まるで言語の壁を乗り越える秘孔でも突きましたと云わんばかりの奇跡がそこには巻き起こった。
なんと、それまで訳のわからない言葉で捲し立ててきた少女の口から、少女自身も自分で驚いた様な顔で癖の全く無い日本語の返事の声が出てきたのだ。
これには兄ちゃんスゲーのイッセーもびっくりだ。
「チッ、まさかあの白髪のカスから埋められたもんがこんな所で役立つとはな……」
「は? な、何の事だよ兄ちゃん? いやでもそれより、この子普通に今日本語で返事を……」
「あ、あの……急にお二人の言葉が分かる様になったという事は、私の母国の言葉を知ってたという事ですか?」
「して――おっふ、なんてネイティブな日本語……」
手品じゃ説明つかないまさかの展開に、イッセーはただただ驚き、少女自身も普通に自分の言葉が伝わり、また二人の言葉も自分に伝わっている事に驚く中……。
「で、キミ誰?」
マコトだけはマイペースに、目の前の少女に用件を聞き出そうとするのだった。
最近のウチ等は微妙に弛んでるのかもしれない。
「イッセーとマコトはまだっすかねー」
「また悪魔共に邪魔されてるのでは無いか?」
「大丈夫かしら?」
けど、二人と知り合う前よりは今の方が楽しいとウチは思ってる。
それはカラワーナもドーナシークも――
「……………」
「……。レイナーレよ、そんなに心配しなくても待ってれば来る」
「そうよ、というかさっきから外出たり入ったりで落ち着きの無い」
「!? ち、違うわよ! これはアレよ、折角好き勝手に使い潰せる赤龍帝が悪魔ごときに取られでもしたら、私達の事がリークされちゃうって心配で……」
レイナーレさんも……。
「マコトの心配はしないんすね~ じゃあウチが心配してあげよーっと」
「なっ、べ、べべ、別にあんなしつこいだけの人間の心配なんてしてないわよ!」
人間は特にどうとも思ってないけど、あの二人なら認めても良い。
ウチ等四人は最近そう思うようになってるっす。
特にウチの場合は、妙に人間離れした力を持ちつつ、その技術を惜しげもなく自分達に提供してるマコトと遊んでる時が楽しいと思ってる。
何故か知らないけど、マコトの傍って妙に安心するというか……。
「ちわー」
「うーっす」
「! お、遅いわよイッセー! 何を道草食っ……て……?」
「待ってたっすよマコト! 今日はウチの椅子にな……って……?」
「ほら、此処が教会だぜアーシア?」
「偶然にしては出来すぎてるが、あってんの?」
「あ、はい……間違いないです!」
……………。
「あ、レイナーレさーん! 今日は今川焼きを持ってきました!」
「おいチビ、お前今俺に椅子になれってほざいたよな?」
………。あ、本来の作戦の事すっかり忘れてた。
「あ、あの……今日から此方でお世話になるアーシア・アルジェントですけど……」
「あ、うん……ま、待ってたわアーシア」
「? 知り合いっすか?」
「………」
ヤバイ事態発生っす。
いや、決してイッセーとマコトと遊んでて忘れてた訳じゃ無いんですよ? ただほら……まさか二人がターゲットを連れてくるとは思わなかったからというか……。
「えっと、取り敢えず今日はこのままアーシアの歓迎会でも……」
「おおっ、良いっすね! 良かったなアーシア、レイナーレさんと何するか知らないけど」
「は、はい!」
「……………おい、ミッテルト。ちょっと来い」
あ、やばい……レイナーレさんにメロメロな能天気イッセーは誤魔化せる空気だけど、やっぱマコトには通じてないみたいで、あからさまに声と表情がマジな感じになってウチを……。
「は、はいっす」
逃げようか? と思ったけど、ここ最近でマコトの純粋な戦闘力が普通にウチ等四人を遥に凌いじゃってる時点で無理な訳で……。
ドーナシークとカラワーナが知らんぷりしてるのを恨めしく思いつつ、呼ばれたウチはドキドキしながらマコトの前まで近づく。
「な、なんすか――ひゃ!?」
ま、まさか拷問でもされちゃうのか? あ、でもマコトにされるからそれはそれで――なんて現実逃避してるウチだったけど、そのマコトはというと、急にしゃがんでウチを横から肩を組む様にして抱き寄せてきた。
「にゃ……にゃんすかマコト……! そ、そんな急に……」
あまりに突然でウチは心臓がぶっ壊れるんじゃないかくらいバクバクなんだけど、マコトはといえば相変わらずウチの軽い悪戯すらスカすのと同じ冷静な顔でウチの耳に口を近づけ。
「お前等、あの神器持ちの女に何するつもりだったんだ? 確か俺等がパシりになる前は、人間なんぞと見下してた筈だろ? 聞いた話だと、俺等と知り合う前には『教会本部』から此処に来るようと命じられたらしいが?」
ほぼ見抜かれてるっぽい前提でウチにそう、聞いてきた。
けど……
「あひゃぁ……ま、まことぉ……い、息が掛かって変になるからやめろ~」
ウチはそれどころじゃなかった。
だってマコトの膝に乗せて貰う時よりも顔近いし、息が耳やら首筋に当たって身体の力は抜けるしで……。
人間の癖にちょうむかつくっす……。
「あぁ? 何言ってるかわかんねーよ。つーか、イッセーにバレたら色々と亀裂入りそうだからこうして俺だけ聞こうと思ってるんだから、さっさと話せよ? ………まあ、あの女の神器に対して何かしようとしてる的なそんな理由なんだろうが……」
「へぅ……」
ふ、普通にバレてる。
な、何なんだよマコトのばか。そこまで見抜いてるなら、こんな恥ずかしい真似しないでさっさと殴れば良いのに……!
「けどまぁ、これはあくまでも俺の予想だし今はあの女も何もされてない。
加えて今のお前等に俺の予想した真似が……特にレイナーレに出来るとは思えねぇ。
カラワーナもドーナシーク……そしてミッテルト、オメーもな」
「な、何が言いたいんすか?」
「さてな、俺なりの忠告だよ」
そう言ってからマコトはヘラヘラ笑ってウチを離すと、ムカつくけど嫌いじゃないその手でウチの頭を優しくポンポンした。
「つーか、神器なんぞ頼らんでもお前等ならなれるだろ? ええっとほら、至高の堕天使だっけ? それによ」
「………」
ホントむかつく。微妙に見透かしてるその目が。
「レイナーレさーん、明日休みだしデートを! 何卒デートを!」
「で、これがイッセーよ。女好きの変態だからアーシアも気を付けなさいね?」
「えっと……は、はい」
「そりゃ無いぜレイナーレさ~ん!」
けど……。
「良いなイッセーの奴、あのアーシアって女とも直ぐに仲良くなれる器は俺にはねーわ」
「マコトの場合は女を見る時の目がエロいからじゃないっすか? ウチの事も襲うような目を時折り……」
「おーい、全部が対象外のクソガキがギャグ言ってっぞ~」
「ムキーッ! やっぱムカつく! ウチだってこの前よりおっぱい膨らんだんだよ! なんなら試せバカや――んぁっ!?」
「………………。ねーな。いや、若干柔っこい……のか?」
「ギャー! ホントに揉むバカが居るかー!!」
「いてっ!? テメーが挑発こいたからだろうがこのクソガキ! マジで追い回してメチャメチャにしてやろうかボケ!」
やっぱりそんなに嫌いじゃないっす……。
ホントに今胸揉まれたりしたけど……。
「で、彼がイッセーの双子の兄のマコト。
……見ての通り、ミッテルトにだけ欲情してるロリコンよ。あ、ロリコンというのはミッテルトみたいに幼い見た目をした子に……」
「え……そ、それは……」
「いや違うからねアーシア? 兄ちゃんそんなん違うからね? ………あ、でも兄ちゃんって前々から妙に一回り下の女の子、またはそんな見た目の子に懐かれる様な……」
「聞こえてんぞ。デラタメこいてんじゃねーよ」
「マコトはロリコンだったんすか、なるほど~ ということはウチはストライクなんすね? それはうちにとって好都合――じゃなくて、土下座すればちょっとくらいはウチの事好きにしても良いっすよ~」
「……………。お前、新型マッスル・スパークの実験台にしてやるわ」
終わり
補足
ロリコンと勝手に呼ばれ始める辺り、オーフィスたん編の一誠……じゃない。
まあ、でもほら……ミッテルトたん可愛いしええやん。
小猫たんがめっちゃ割りを食いまくってるけど