ツインズ・イッセー   作:超人類DX

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このシリーズってちょうど去年の今頃にやってんすよねー……だからどうだこうだって訳じゃあないけど。

んで、今回の話の内容は、何故か何もしてないのに理不尽な罵倒をされまくる小猫たんの心情と、マコトの選択ミス……?



小猫たんの憂鬱

 兄ちゃんって何であんなに悪魔が嫌いなんだろうとか思ったりする。

 とはいえ、理由を聞いても何時も帰ってくるのは『嫌いなもんは嫌い。てか悪の魔物と書いて悪魔って存在を好きになれる訳もないだろ』と、微妙に濁されてるせいでイマイチわからない。

 

 勿論最初は、流石に嫌いすぎだろとグレモリー先輩達にほんの少し同情したけどさ……。

 

 

「昨日、ウチの眷属からの報告で、シスターと接触したそうね? しかも見た限り、怪我をした子供を不思議な力で治療したとか……」

 

「……」

 

「あの……事細かに言われるとサブイボが立つんですけど」

 

 

 ごめん、段々ちょっと嫌いになる理由がわかった気がする。

 今まではおっぱい、美人、可愛いと俺も騒いでたけど、正体知ってからは妙に粘着気質というかさ……ほっとけ言ってるのにストーカーみたいに付きまとわれるのは、いくら美少女とかおっぱい特盛でも嫌だわ。

 

 アーシアがレイナーレさん達と生活する事になってから数日後、兄ちゃんと今日は材料持ち込んでたこ焼きパーティーでもしよかと話ながら放課後の学園を出ようとしたら、またまたまたまた立ち塞がるや否や、妙に勝ち誇った顔してグレモリー先輩に言われた訳で……。

 

 

「ホント勘弁して貰えません? 仲間にするなら他の、先輩達のファンの中から俺みたいな神器を持つ奴でも探して勧誘すればよろしいでしょう?」

 

「……。つーか、今のこの悪魔の器じゃイッセーの事を転生させるなんざ、いくら駒を追加しようが無理だってのにも気づけないものなのかね」

 

 

 流石に俺も兄ちゃん側に傾きっぱなしだぜ。

 

 

「そもそも、何やかんやでもう1ヶ月経ってるし、その間俺達は一日も休まず元気に登校してますじゃん。

てことは、レイナーレさん達に俺達はなーんもされてないって事になるでしょう?」

 

「………」

 

「それくらいは理解してるが、テメーの思い通りにならないイッセーと俺が気に食わねぇって所だろ。悪魔ってのは所詮、安いプライドをどう誇示できるかに人生賭けてる無駄な種族だからよ」

 

「あ、アナタね……! 知りもしない癖に勝手な想像で私たちを語らないで!」

 

「いや確かに今のは兄ちゃんがちょっとだけ言い過ぎたかもしれませんけど、俺達なんかに構うくらいなら、この管理とやらをしてる土地を外敵から守れる様に鍛えれば良いんじゃないですか? ……これも余計な一言でしょうけど」

 

「っ……」

 

 

 レイナーレさんと会う前までの俺なら無条件でホイホイと付いていったのかもしれないけど、今はもうレイナーレさん達に認めて貰う為に心血を注ぐ覚悟を注入してる訳だし、それをグレモリー先輩達にも絡まれて口論になる度に伝えてるつもりなんだ。

 それなのに、グレモリー先輩はその部下の皆は何時も揃えて言う。

 

 

「レ、レイナーレ達は元々無断で私の管理する領土に入り込んだのよ、だから――」

 

「そろそろちゃんと部長とお話ししてもバチは当たらないのでは?」

 

「何でマコト先輩は私を毛嫌いし続けるのですか? 今日も先輩が食堂でご飯食べてる席の隣に座った瞬間、コップの水をぶっかけて来た挙げ句『この席は予約済みだ、とっとと便所に行って食ってろカス』なんて……」

 

「悪いようには本当にしないから、ね?」

 

 こんな風に、やれレイナーレ達と居るのを知った以上黙ってるわけにはいかないだの、従えば咎めないだのと…………小猫ちゃんの場合、益々露骨に毛嫌いしまくってくる兄ちゃんに対して、捨てられた仔猫そのものな反応になりながらも、懲りずに話しかけようとしてるという、小猫ちゃんだけはマジで同情する話だったりするけど、概ねこんな感じだ。

 

 

「いえですからね? 議論もへったくれも無いですし、監視でもしたければ勝手におやりになれば良い。

ただ、一々それに託つけて絡んで来ないで貰えるかって話なんですよ。

正直、先輩達のファンに良い顔されずに居たたまれない気分にもなるし」

 

「アナタだって最初は私達を見て騒いでた方だったじゃない……」

 

「あれこそ若気の至りですわ。

今はもう、レイナーレさんとデートする為に己を磨く事しか興味ありません」

 

 

 泥沼な気がするけど、こうして断り続けていればその内折れる筈。

 兄ちゃんが強行手段に出て暴力沙汰起こして退学になるのを阻止するにはこうするしかないんだ。そう自分に言い聞かせて今日も俺は悪魔さん達の追撃を避けるのであった。

 

 

 

 

 

 悪魔の存在を何故か知っている人間……だけなら、何処かで知ったのかもしれないので特に気にすべき所では無い。

 問題は、その知ってる人間が自分達悪魔を『まるで悪魔に何かされたのではないか』と勘繰ってしまう程に私達を毛嫌いしていて、その毛嫌いを双子の弟さんに植え付けているという事であった。

 

 

「今日も駄目でしたわね……」

 

「あの堕天使達に少なくとも人間の神器使いが二人もだなんて……」

 

「大丈夫かい塔城さん? 随分また兵藤君のお兄さんの方に言われてたけど……」

 

「……。大丈夫です。大丈夫ですけど、やっぱり納得できません」

 

 

 部長の勧誘を蹴り、部長の管理してる土地内に入っていた堕天使達と何やら仲良くやっている。

 私も含めて部長達はそれを危惧しているのですが、兵藤イッセー先輩はまだしも、あの兵藤マコトという人が心底私達悪魔を毛嫌いしているせいで、うまく事が運べない……。

 部長もそれに対して――マコト先輩にボロクソに悪魔全体を貶されてイライラした様子で親指の爪を噛んでいるけど、私なんて今日は頭からコップの水をお昼頃に掛けられた挙げ句『消えろ』なんて言われたばかりです。

 …………嫌われてる理由を含めて何かした覚えも無いのに、こんな事されて納得できる訳無いじゃないですか……。

 

 

「今日もレイナーレ達の所に行く様ですが、どうしますか?」

 

「勿論監視よ、何時もの様に交代制で――」

 

「なら私が行きます」

 

 

 どうしてそこまで悪魔を嫌うのか、どうしてその中でも私が毛嫌いされているのか。

 監視に託つけてその理由を探れば分かるかもしれないと、私は今堕天使達の根城へと行った二人の監視に立候補する。

 

 

「一人で大丈夫なの小猫?」

 

「大丈夫です。色々と貶されて過ぎて逆に平気になりつつあるので」

 

「…………それは慣れて良いものでも無いと思うけど」

 

 

 私の言葉に部長が何とも言えない顔をする。

 別に私だって慣れたくて慣れた訳じゃありません。

 

 

「……行ってきます」

 

「気をつけて」

 

 

 でも、何をしようとしても罵倒され続けられたら、慣れでもしないとやってられなんですよ……なんて内心愚痴りながら部室のある旧校舎から外へと出て、匂いを頼りに二人を追い掛ける。

 

 

「たこ焼きパーティーは兄ちゃんとしかやらなかったから、ちょっと楽しみだぜ」

 

「……何かいつの間にかアットホームな空気になったんだな」

 

「何やかんやで皆付き合ってくれるしなー」

 

 

 

「居た……」

 

 

 匂いを追えば見付けるのは造作もない。

 けれど、接触したら嫌な顔をされるのが目に見えてるし、何より監視が目的なので、私はイッセー先輩とマコト先輩がお喋りしながら歩いている数メートル後ろから後を付ける。

 

 

「でさぁ、その時アーシアが」

 

「その話、もう十二回目だぞ。床のコードに足引っ掛けて、レイナーレの胸にダイブしたんだろ?」

 

「そーそー! アーシアが凄い羨ましかったわぁ」

 

 

 ……。アーシアとレイナーレ。確か堕天使と最近仲間になったと思われる神器使いの名前。

 イッセー先輩が何やら羨ましそうな顔してるのを、私に一切向けられることの無い穏やかな顔で相槌を打ってるマコト先輩……。

 

 

「あんな顔……全然しないのに」

 

 

 学園に居る時では絶対にしないだろうマコト先輩の表情。

 相手が双子の弟さんであるイッセー先輩だからというのもあるのかもしれないけど、それにしたって差別を感じてしまう。

 此方は近づくだけで罵倒されか、何か投げつけられるか……この前なんて砂の塊を顔面に投げ付けられながら『邪魔だ、2秒以内に消え失せろ』――なんて言われたばかり。

 

 部長や副部長や祐斗先輩はまだ口だけなのに、直接何かされるのは何故か私だけ……。

 私が一体何をしたというからあんな事ばかり……教えて欲しいのにそれも教えてくれないなんて、酷い人を通り越して――――っ!?

 

 

「おーい、イッセーにマコト~!」

 

 

 ふつふつと段々マコト先輩の理不尽さに腹が立ってきながら監視していたその時だった。

 二人が歩いてる向こうの方から誰かが二人の名前を気安く呼びながら走ってやって来るのが見える。

 

 

「あれ、ミッテルトちゃんじゃん? どしたの? 一人か?」

 

「おいっす! いやー、最近レイナーレさんが柔らかくなっちゃって暇なんで電気屋に行ってたんすよ」

 

「電気屋? 何で電気屋?」

 

「いやほら、最近人間が持ってるじゃないっすか? こう、指で操作する板みたいな機械」

 

「? なにそれ?」

 

「板……指……タブレット端末の事言ってるのかお前?」

 

「多分それっすねー テレビで見て面白そうだったんで、ちょっと買いに行こうとしたんすけど~」

 

 

 …………金髪にフリフリした服装。

 堕天使達の写真を確認した時に確か一味だかで確認した事があるつり目気味の幼い見た目の堕天使なのは、既に私も知っている。

 大袈裟に身振りとかが多くて、見た目通りに幼いというか……。

 

 

「高くて買えなかったのか? あれなら俺持ってるし、オメーにやろうか?」

 

「え!? マジっすかマコト!」

 

「は? 兄ちゃん持ってたのかよ?」

 

「あぁ、この前何と無くカップ麺の点数集めて応募したら当たったんだ」

 

「アレ懸賞だったのか! スゲーな兄ちゃん。昔からそういう運が半端ねぇよなぁ。

宝くじとか父ちゃん母ちゃんに数字提供して大当たりさせたりとか」

 

 

 ……………。差別だやっぱり。

 何なんだ、悪魔だからにしたって、何であのミッテルトという堕天使相手にはそんな優しいんだ……。

 

 

「明日にでも持ってきてやるよ」

 

「ホントっすか!? わーい、マコト大好きっす~!」

 

「はいはい……」

 

 

 ミッテルトという堕天使が喜びながらマコト先輩に飛び付いて抱き締めてるけど、私なんて近づいただけで椅子を投げ付けられた事すらあるのに……。

 

 

「すっかりミッテルトちゃんと仲良しだな兄ちゃん。

ホント、昔から兄ちゃんって他人を寄せ付けないか、避けられてた気がしてたから良かったぜ」

 

「まあ、お前が昔から話し相手になってくれてたからな……」

 

「へー? じゃあ恋人なんて居なかったんすか?」

 

「………………。まあな」

 

 

 後ろから抱きつくミッテルトを普通に背負いながら歩くマコト先輩。

 何だろ、物凄く腑に落ちないというか……理不尽というかモヤモヤするというか……。

 

 

「で、さ……兄ちゃん。さっきから後ろの電柱から下手くそにこっち覗いてる小猫ちゃんはどうしたら良いと思う?」

 

「あ、それウチもさっきから気になってた。てか、隠れんの下手っすね」

 

「いい加減顔面でも破壊して奴等の根城に投げ捨ててやるかな……」

 

「い、いやダメだろそれは! 流石にやり過ぎだから――」

 

「わーってるよ。

だからわざわざシカトしてんだろ、あのクソガキを」

 

 

 やっぱり納得できない……。

 

 

 

 

 

 

 イッセーに言われてるからという理由で何もしないで居るマコト。

 しかし、やはりいい加減ムカつくものはムカつく訳で……。

 

 

「今すぐ消えなきゃ手足へし折るぞクソガキ」

 

「…………。一応、これも仕事なので勘弁してください」

 

「だってさ兄ちゃん。良いじゃん、俺達別にやましい事なんてしてないし、存分に納得して貰うまで監視でも何でもしてもらえば」

 

「悪魔に監視される事は正直ムカつきますけどねー」

 

 

 下手くそに隠れていた小猫に、ミッテルトやイッセーに向けてるソレとは正反対の、生ゴミを見るような目と顔で消えろと言い放つマコト。

 それに対して小猫は、どこか納得出来なさそうな顔してこれも仕事なのでと正面から言い返すのだが、その目はマコトの飲み掛けだったスポーツドリンクをコクコクと勝手に飲んでるミッテルトに向いていた。

 

 

「? なんすか悪魔さん? ウチ何か悪魔さんに対してしました?」

 

 

 当然その視線の意図がわかってないロリっ娘ミッテルトは首を傾げながらちびちびと飲んでる。

 最初はアーシアという神器の存在故に教会から追い出されたシスターを騙しておびき寄せ、その神器を抜き取ってやるというレイナーレの計画に協力してたのだが、イッセーのアホさとマコトのマイペースっぷり、そして二人の人間の可能性を前に、自分達も上に行ける可能性を見出だした今となっては、アーシアの神器を抜き取るという事も必要なくなった。

 

 だから今は、自分達からパシりになると言ってきたイッセーとマコト同様、行く宛無しのアーシアを流れで保護してそれなりに仲良く楽しく生きてるだけで、悪いこととは無縁に近い生活を悪魔の領土内とはいえ過ごしてる筈だった。

 なのに、何故か今自分は悪魔の部下の転生悪魔の白髪の少女から、微妙に敵意を持った視線で睨まれている。

 

 それがミッテルトには疑問だったのだが……。

 

 

「私なんて……」

 

「はい?」

 

「私なんて、近づいただけで罵倒されたり物を投げつけられるのに……」

 

 

 その理由は、白髪の転生悪魔の口から出てきた嫉妬混じりに聞こえる言葉で何と無く察してしまった。

 

 

「……あー」

 

「アンタ悪魔だし、こればっかはしょうがないっしょ?」

 

 

 悔しそうにする小猫の言葉に、イッセーとミッテルトはお察し状態で横で生ゴミを見る様な目を全然止めようとしないマコトを見る。

 異常なまでに悪魔を毛嫌いしてるのは、ミッテルトを始め、その仲間達の堕天使も周知している事実だ。

 

 そして、この目の前の悪魔の少女が、その理由を知りたがってるのと、自分とは正反対の扱いをされてるミッテルトに嫉妬混じりの気分になってるのも。

 

 

「だから何だ? 俺が誰と仲良くなろうと、テメーごときに何の関係があるんだ?」

 

「別に無いかもしれません。でも、理由も無く嫌われてるなんて理不尽じゃないですか……。その上でそこの堕天使の人には優しいとか……このモヤモヤした気分はどうたら良いんですか?」

 

「知るか。何なら今此処でテメーをぶっ殺してやろうか? そうしたらもう永遠に余計な事は考えずに済むだろうしなぁ……!」

 

 

 ちょっと涙目の小猫に対して、相変わらず容赦しないマコト。

 

 

「……。異常に嫌ってますね~」

 

「あんな調子なせいで、学校じゃ小猫ちゃんファンに敵意持たれてんだぜ? フォローも大変だよ」

 

「その上でマコトに近寄って来ようとするあのちんまい悪魔も大概な気もするけど」

 

「いや、それは多分……うん」

 

「? なんすかイッセー? 何か言いづらい事でも?」

 

「いや……多分小猫ちゃんってさ……」

 

 

 異常なまでに小猫に攻撃的なマコトが疑問で、イッセーとミッテルトがヒソヒソと二人の後ろで話し合ってる訳だが、そんな最中も殺意が更に膨れていたマコトが笑い……いや、嗤いながら言い出す。

 

 

「もう放課後だしな……。

そろそろぶち壊すかぁ……ぐげげげげ!!」

 

「っ!? な、嘗めないでください……! 私はそこまで弱くはないんです……!」

 

 

 そもそもマコトは悪魔が嫌いだ。

 そしてその中でも、かつて完璧にぶち壊してやった筈なのに、自分と『同じ気質』と自分から奪って残っていた気質の両方を引っ提げて復活した白音という悪魔が頗る嫌いだった。

 さっさと殺せば良かったとすら後悔する程に厄介な存在まで昇華し、喰えば喰うほど進化し、最後まで自分に笑い掛けていた――

 

 

『あはは……もう限界みたいです……ね。

でも、先輩に壊されて終わるならそれで良いし、なによりあの二人より長く先輩と関われて、沢山壊された(アイサレタ)私は、自分があの二人に勝ったと疑わない。

だって、先輩は私を完全に殺しても、私の事は先輩の中にずっと残るから……。

ふふ……せーんぱい♪ 死んでも私は先輩が大好きですよ……♪』

 

 

 悪魔を越えた悪魔(ネオ)の少女に。

 

 

(やっと殺したのがこの世界に飛ばされてから合わせて117年前……。中身は違うが、そのツラは見飽きてんだよ)

 

 

 だからマコトはこの世界だろうと、中身が違うであろうとも、小猫という存在自体にうんざりしていた。

 

 

「ストップ兄ちゃん! 今本当に傷付けたら、レイナーレさんやミッテルトちゃんがこの町に居られなくなっちゃう! だから……!」

 

「………。チッ、わかってらぁ、そこまで考えられなくなる程キレちゃいないから安心しろ」

 

 

 故に壊してやろうと考えた回数は既に500は越えている。

 けれど、この世界は何もかもが違う。白音も居なければ、大好きだったゼノヴィアとイリナも中身が全く違う。

 目の前の、戸惑ってる小猫にしても白音という悪夢みたいな存在とは違うし、何より今の自分は一人で好き勝手に相手を壊せる立場では無い。

 

 向こうから仕掛けて来るならいざ知らず、鬱陶しく絡まれてるだけな以上、イッセーに言われた通り、ある程度は我慢しないとならない。

 

 

「お、おい兄ちゃん!」

 

「ま、マコトの顔が怖いっす……」

 

 

 だから……。

 

 

「な、何ですか――っ!?」

 

「イッセーに何かしたら……殺す」

 

 

 迫力に圧されて後退りする小猫にマコトは低い声で囁くようにそう告げながら……若干壁ドンっぽい体勢でそう脅すだけに留め、焦るイッセーとちょっとビビるミッテルトを引っ張ってそのまま去る。

 

 

「…………………」

 

 

 びっくりしながら固まる小猫にその背を見つめられながら……。

 

 

「あ、焦ったぞ兄ちゃん……」

 

「アホか、雑魚相手にマジになるかっつーの」

 

「でも結構迫真だったというか、マコトって時折ドキドキするくらい怖いっすよね……」

 

「へ……」

 

 

 

 

 

 

 初めてかもしれません。

 

 

『イッセーに何かしたら……殺す』

 

 

 この言葉を向けられた――じゃない。

 

 

「…………。マコト先輩から近づいてきたの、初めてです……」

 

 

 理由がどうあれ、マコト先輩から近寄られた事が私にとって初めてだった事に。

 それも、あんな……あんな囁き声が鮮明に聞こえるくらい顔まで近くて……。

 

 

「…………。あ、監視の、仕事……しないと……」

 

 おかしい。理不尽な事を言われた筈なのに。

 

 

「監視して……あ、露骨に監視したら怒るかな……」

 

 

 殺すなんて言われたのに……。

 

 

「悪いことしたら、またさっきみたいに近付いてくれる……のかな……」

 

 

 覚えてしまった先輩の匂いが近くて……。

 あれ、どうして……かな。

 

 

「ドキドキするのが収まらない……。マコト先輩のせいだ」

 

 

 理不尽なのに、嫌じゃない……。

 

 

「監視……お仕事……そう、これは部長に命じられた大切なお仕事。

だから仕方ない……例えマコト先輩の怒りに触れてしまっても仕方ない。

また殺すぞなんてあんな近くで言われても、それはもう仕方ないんです……」

 

 

 …………ふふ。変なの。






補足

軽い飴と思ってしまう辺り、レベル的に割りとヤバめなのは普通に気のせいだ。

というか、あまりに理不尽にし過ぎたマコトの判断ミスだからとしか言えねぇ。

まあ、脅したつもりが、壁ドンされて耳元で囁かれたと思われるなんてそんなバカなですけど。
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