青の団は壮大な犯行声明を出した結果、僅かにハクロ将軍の護衛を殺害した以上の成果を出す事無く全滅した。
青の団の残党は再興も、首領の救出も、世間への影響も生む事無く死体となって駅へと着いた。
駅にはトレインジャックの犯人達を捕らえるべく、アメストリス東方軍の者達が待ち構えていた。
一般乗客の人々が、恐怖の現場となった汽車から離れたいと急いで駆け出した後、
軍人達が車内に乗り込んでハクロ将軍を迎えに行き、合わせて物言わぬ屍となったテロリスト達を回収した。
その後に車両から下車したエドワード達を、一応の今回の責任者であるアメストリス軍大佐、ロイ・マスタングが出迎えた。
「やあ、エルリック兄弟、―――――ローズ」
少しだけ空気が張り詰めた。
エドワードはそれを軍内部の管轄争いかと判断した。
宮仕えは大変だと、自分が国家錬金術師である事を棚に上げた他人事の目線で。
兄と同じ結論に至っていたアルフォンスは、空気を和ませようとしたのか、
言わなくても良い発言を放り込んでしまった。
「やっぱりこうして見るとちょっと似てるよね」
「ああ、嫌味な所なんて瓜二つだ。もしかして親戚とか、生き別れの兄弟かだったり?」
弟のパスを抜群の連携力でキャッチした兄はその爆弾の導火線の根元に直接着火させてしまった。
「「誰がこんなヤツとっ!!」」
焔の錬金術師ロイと、法務の番犬ローズは完全に同一のタイミングでエドワードに吠えた。
エルリック兄弟にはやっぱりこの二人は似ているなと再確認した。
ロイと同じ空間にいるのも嫌なのか、ローズはジャスティスに乗ると後で管轄の東方司令部に報告書を出すと言い捨てて消えて行った。
大人げなく怒った大佐と、暗い顔をして俯いているホークアイ中尉には流石に聞けないと思ったエドワードは、
特に聞いても問題無さそうなハボック少尉にローズとロイの関係を聞いた。
「あの二人って仲悪いのか?」
「俺も詳しくは知らないけど、昔は親友だったって噂――――「ハボックッ!!」…ま、まあ…あくまで噂だ」
上官のロイに遮られたハボックがそこで話を止めたので、エドワードはそれ以上知る事は出来なかった。
ただ、その大佐の声と表情から、よっぽど訳アリだという事は理解できた。
それから暫く時間が経った後、
エドワードはちょっとした知り合いでもあるマスタングの執務室にいた。
恐らく副官のホークアイが片付けているのだろう。部屋の整頓はしっかりとされていた。
勝手に触らない様にマスタングに言われた本棚を、エドワードはジロジロと眺めて、ある本を棚の中に見つけた。
「アメストリス六法大全…」
他の本と違い、明らかに使われた形跡のないその本は埃を被っていた。
法の番犬がこの本の状態を見たならば、批難するか憤慨するだろうとエドワードは思った。
挙句に背表紙を見るに、製本年はかなり古い。
最早、情報保障分野や通信分野などの近年変更が著しい分野は現在の規則に正確でないどころか、
記述が無い部分も多いだろう。
エドワードはその本を引き抜くと、
中に挟まれていたのだろう。
その本の隙間から一枚の写真がヒラヒラと床に落ちたので、それを手に取った。
「これは…」
やつれた金髪の男と、その娘らしき少女。
そして肩を組み合った少年と青年の間であろう二人の黒髪の男性が映っていた。
「返して貰おうか」
何時の間にか背後にいたマスタングに写真を奪い取られ、六法大全は本棚に直された。
「なあ大佐、これ…もしかして」
「その話をしたいのなら、もう帰って貰おう。
他に聞きたいことがあるなら答えられる範囲で答えてやっても良いが」
有無を言わさないマスタングの拒絶に、
エドワードは本来の目的である元の身体に戻る手掛かりになるかもしれない、