アメストリス絶対法   作:蕎麦饂飩

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喜怒哀楽鹿威し

マスタング大佐の紹介状を携えてタッカー氏を訪ねたエルリック兄弟。

彼等はタッカー氏の許可を得て、大量の檻の中に実験動物が容れられた研究室と、

蔵書量は多いものの、特に価値のある情報は含まれていない彼の研究成果を纏めた資料室を閲覧していた。

結局、それらの実験や研究成果からエドワード達が求めているものは、その日には見つからずじまいで、

タッカー氏の娘ニーナとその飼い犬に別れを告げて帰る事にした。

 

エルリック兄弟が帰ろうとした時、

丁度入れ違いの様に、エドワードがマスタングの部屋で見た写真に写っていた少年に良く似た青年と出会った。

アルフォンスはその青年に問いかけた。

 

「ローズさんもタッカーさんに用事?」

 

「…ああ用事だ。そろそろ子供には遅い時間だ、早く帰ると良い」

 

何時も冷徹で不機嫌そうな表情をしているが、この時は輪をかけてその印象が強かったローズに追い出されるように、

兄弟は帰途についた。途中、エドワードはアルフォンスに、

 

「大人は何時だって子供を遠ざけようとするよな」

 

と呟いたが、エドワードも特に意味があって呟いたわけでも無く、アルフォンスもその意味を理解できなかったので、

その話題は掘り下げられる事無く終わってしまった。

 

 

次の日、エルリック兄弟が未読のタッカーの資料を読みに、彼の家を訪れたが、

入り口には憲兵たちが立ち塞がり、入る事が出来なかった。

 

「一体どうなってる」

 

エドワードがそう問いかけても、憲兵は答える事は無かったが、

彼が国家錬金術師の証明となるアメストリスの紋章が刻まれた銀時計を見せると態度を変えて説明がなされた。

 

 

「タッカーさんを、逮捕…?」

 

「ああ、あまり大きな声では言えないが、

あの野郎、人間を使って(・・・・・・)生体錬成してやがったそうだ」

 

 

エドワード達の記憶に、タッカーとの会話、ニーナや犬のアレキサンダーとの触れ合い、

そしてローズの「子供には遅い時間だ」という声が思い返された。

 

 

 

その時だった。

 

「また奴等に先を越されたっ!!」

 

「軍法会議所の面子が丸潰れだな、ヒューズ」

 

エドワード達も良く知った声の持ち主、ロイ・マスタング大佐とその補佐官リザ・ホークアイ中尉。

そして大佐と長い付き合いのあるマース・ヒューズ中佐がエドワード達の後ろからやって来た。

 

 

「大佐、一体どういう事なんだ?」

 

そのエドワードの質問にマスタングは素直に回答した。

 

「ショウ・タッカーは嘗ての人語を解する合成獣(キメラ)の実験成果を報告したが、

その材料(・・)に彼の妻が使われていた。

それで国家錬金術師の資格を剥奪して逮捕されたと言う訳だ。

解決したのが何処かの法律狂で無ければ良かったのだが、

地区担当としてタッカーの身分を保証していた我々や、

リーガルに手柄を取られたコイツら軍法会議所の人間は、面目丸潰れだ」

 

「ああ、アイツらは法を傘に着た無法者だ。全く嫌になる。

様々な禁止事項が許可されているから、自分達が法律だと奢ってやがる。

それでも、昔はロイとは仲が良かったんだがなあ、アイツ「その話はするな」……悪いな」

 

まただ、またその話になると無理矢理打ち切った。

余程根が深いのだろうとエドワードは理解した。

 

「所でニーナは…、ニーナは何処へ行った!?」

 

「彼女なら孤児院だ。今後この噂が広がっては、この辺りではショウ・タッカーの娘としては生きて行けまい。

遠い孤児院に行くことになったそうだ。

…タッカーはもう牢から出る事も無いだろうからな」

 

 

「ロイ、話しすぎだ相手の年齢を考えろ」

 

「…そうだな。言うべきでは無かった」

 

話を変えるついでに、タッカーの娘の事を問い詰めたエドワードは、少し残酷な現実を知った。

そして、国家錬金術師という資格を持っていても、

世の中には越えられない壁というものが在るという事も。

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