アメストリス絶対法   作:蕎麦饂飩

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犯罪者といえばあの人


人肉販売フェスティバル

『リーガル』それは法の解釈者、それは法の適用の決定者、それは――――法の執行者。

 

時は数年前に遡る。

バリー・ザ・チョッパーは背後から迫る警察から逃走を図っていた。

 

「まだだ、まだ捕まるには殺し足りねェッ!!」

 

 

 

狭い通路に逃げ込んでは、追っ手である警察官達を一人ずつ切り刻んでは逃亡を繰り返していた。

そのやり口はシンの更に東にあるという国の『ムサシ』という伝説の剣豪の戦い方にも似ていた。

 

町には殺人鬼逃走の警戒放送が響き渡り、どの家も戸に鍵を閉めて電気を消してはブルブルと震えながら抱き合っていた。

その放送と、警察官達の声以外は静まり返った夜の街。

 

その静寂を金切り消す様なエグゾーストを撒き散らせながらソレ(・・)は現れた。

最強の法務執行存在、『リーガル』。

 

「おおっ、リーガルが来たぞっ!!」

 

警察官達もこれ以上被害が出ることなく事件が解決する絶対の安心感に思わず言葉を漏らした。

リーガルは僅か一人。それもその人物は今まで警察官達の誰もその顔を知らなかった者、

つまりは新人であった。

 

だが、それは彼がアメストリス六法大全を身に着けた戦士というだけでどうでも良い事となり下がる。

 

「本部、本部、こちら大総統府付き独立法務執行官、ローズ・ジャスティ、ただ今現地に到着しました。

これより刑の執行を実施します」

 

特製の無線機で本部に連絡するローズ。

彼の使っている無線は周波数さえ特別仕様で、一般の警察官や軍人の受信機では傍受する事すらできない。

それは、リーガルの会話はリーガルだけが知っていればいいという傲慢さの表れでもあった。

 

 

己が此処にいる。そう自己主張してやまないジャスティスのエンジン音は、バリーを確実に追い詰めていた。

此処で掴まっては人をこれ以上殺せない。

その事が殺人鬼には非常に恐ろしかった。

 

 

適当な民家の扉を壊してバリーは家に押し入った。

そこには女性が一人震えていた。

――殺人鬼はその口元を吊り上げた。

 

 

 

扉が壊された民家の前でローズは今すぐバリーに民家から出てくるようにと警告した。

だが、

 

「どうせ、今掴まっても死刑は確定だ。わざわざ出られるかよ。違うのかァ?」

 

そう挑発するバリーにローズはその通りだと肯定した。

 

「殺人鬼、通称バリー・ザ・チョッパー。

既にアメストリス刑法第2条殺人罪が確定している。申し開きは受け付けない。

今すぐ出てきなさい。尚、それによる刑の免減は無い」

 

「ヘタな交渉だな。人質がどうなっても良いのかよ」

 

 

ローズは呆れたように返事をした。

 

「ヘタな交渉はどちらだ。――既に死体になった者で人質になるとでも思っているのか」

 

「クソッ!!」

 

既に人質はいないと見抜かれたバリーは裏口から逃走を始めた。

狭い通路を積極的に選んで大型の二輪車ジャスティスからの追跡を避けていた。

逃げながらバリーは思い出す。

イシュヴァールの内紛が終わったころ辺りに出来た大総統府付き独立法務執行官、通称リーガル。

その噂は聞いていた。大総統の忠実な番犬にして、国家に仇為す一切の者を食い破る猛犬。

如何なる場所に逃げても、如何なる時でもその追跡を続けるその妄執染みた彼らを揶揄して、

異次元より来たる猟犬(ティンダロス)と呼ぶ者も居る。

 

開設されてから数年しかないが、既に多くの犯罪者やスパイなどが摘発されている。

ここ数年ではアエルゴから入り込んできた窃盗団を一挙に捕縛した事例がその名前を騒がせた。

その逮捕劇さえ、僅か数名で行われたというのだから、彼らに追われるという事がどれだけ恐ろしいかわかるだろう。

 

 

走り続けていたバリーだったが、次第にローズの駆るジャスティスの音が最早聞こえない事に気が付いた。

もしや逃げ切れたか?

そう思った時に暗闇の向こうから、リーガルの者が身に着けている、白と銀の色彩で構築された制服が浮かび上がった。

 

最早、逃げられない…。

 

 

「殺人鬼バリー・ザ・チョッパー。大量殺人の疑い及び、殺人の現行犯の罪で逮捕する」

 

正義の執行者の声が闇夜に響いた。

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