アメストリス絶対法   作:蕎麦饂飩

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洗脳都市開発デストロイ

「やあ、エルリック兄弟。20日前の器物破損罪と、12日前の逃走犯の幇助罪はきちんと罰金を払ってきたか?」

 

「……出会い頭に罰金の話から始めるのって一体どうなんだ?」

 

 

 

「特に君とは罰金を払う側と払わせる側以外の関係は無いから道理だろう?」

 

「…払ったよ。払わないとそのバイクの染みにされそうだしな」

 

あー、いきなり嫌な奴に会ってしまった。

そんな気持ちで空を見上げるエドワード・エルリック。

彼が見上げる空は気持ちが良いくらいに快晴である。

 

 

「所で君達は()という存在を信じるかい?」

 

「こちとら科学の徒、錬金術師だぜ? それとも何か、あんたは信じてたりするのか?」

 

いきなり神の実在について問い始めたローズに、エドワードは首を振って否定した。

 

 

「いや、信じていない。僕の信仰はこの聖書に奉げているからね」

 

ローズはアメストリス六法大全を取り出すとエドワードに見せた。

彼の入信している六法大全教は、恐らくジャッジと同じ人数しか信者はいないだろう。

 

 

「困った時や、迷った時にはこの書に全てが書いてある。

人を救うのは神じゃない。法だ。六法大全は本屋で買えるから君も読んでみると良い。

では、そろそろ休憩は終わりだ。仕事に取り掛かるとしよう」

 

そういうとローズはジャスティスに乗って道を駆けて行った。

尚、あらゆる通路を走破する事がリーガルには許可されている。

これは最新版のアメストリス六法大全にも記述されているので問題のある行動では無い。

 

 

 

「それにしても、罰金の話と神の実在の会話しかしてないって、

アイツの話題選びのセンスなさすぎねーか、きっと友達いねーぜ?」

 

「それは言い過ぎだよ兄さん」

 

きっとこの兄弟の会話が聞こえていたら、ローズはアメストリス刑法第73条侮辱罪だと告げていたに違いない。

 

 

 

 

 

その後、この兄弟はリオールの街で急速に広がっている宗教、教主コーネロの絶対権者と崇めるレト教の話を聞き、

どうやら『奇跡の業』の使い手コーネロが錬金術師ではないかと判断し、

またその錬成の歪さから、彼の錬金術が『賢者の石』を使用したものではないかとあたりをつけた。

 

コーネロは教会に訪ねてきたエドワードの詰問に、当初は己の奇跡の業は錬金術の類では無いと言い張ったが、

流石に賢者の石の指輪が種ではないかとまで見破られては、それ以上取り繕う事は無かった。

 

それどころか――――、

 

「死をも恐れぬ最強の軍団で、あと数年のうちに私はこの国を切り取りに掛かるぞ!!

はははははははははははははは――――――――――――」

 

そう高笑いした。だが、その高笑いは教会のステンドガラスを突き破り、飛び込んできた鋼鉄の塊の排気音に掻き消された。

 

 

 

「詐欺罪、扇動準備罪並びに、特級犯罪、国家反逆の罪状で教主コーネルお前を逮捕する。

弁明は聞かない。交渉は受け付けない。情緒酌量は特級犯罪には適用されない。

抵抗すれば、この場で射殺する」

 

一方的な要求を左手に構えた拳銃と共にコーネロに突き付けるその者は、

大総統府付き独立法務執行官――――――通称リーガル。

一切の容赦も情けも無い冷徹で忠実な法の番犬である。

 

その名前はコーネロも聞き及んではいた。

だが、コーネロも一国を手に入れようと言う野心がある程の男である。

此処で、はいそうですかと引き下がるつもりは無かった。

 

 

「狗は猫の相手でもしておけ」

 

コーネロは百獣の王ライオンと闇水の咢ワニの合成獣(キメラ)を呼び出してローズへと嗾けた。

ローズはそれを受けて宣告した。

 

「公務執行妨害も罪状に追加する。刑罰は変わらない。死刑以上の刑罰は無い。

だが、これ以上罪を重ねずに降伏する事を推奨する」

 

 

要約すれば、どのみち死刑だけど大人しくお縄につけという事である。

リーガルの職員の半数に言えることだが、彼らが法務と執行のエキスパートである故に、

交渉という発想がそもそも弱い。

というか根本的に自分が正しいと思っている故に、交渉が余りにもヘタ過ぎた。

 

エルリック兄弟も、流石にあの交渉は無えよと呆れていた。

 

 

ローズは集団的自衛権と国家に尽くす錬金術師の本分、

加えてこの状況から正当防衛でコーネロの殺害をリーガルの権限で許可すると彼ら兄弟に宣告しながら、

キメラに対して躊躇無く発砲。どう見ても拳銃の威力では無い明らかなオーバーキルがキメラを襲った。

 

銃弾を特殊な錬成陣で加工しており、銃身内の腔綫で回転した銃弾が、

銃口の円を潜る時にその効果が発揮される。

 

その効果は強力な火炎放射。エドワードは『焔』の二つ名を持つ何処かの大佐を思い出した。

コーネロはその威力にまともにやり合っては勝てないと先程までの威勢が一気に消え失せて怖気づいた。

 

 

そのまま、ローズはジャスティスで階段を駆け上がり、コーネロを追いかけた。

コーネロは壁を何度も生成しながら逃げ出したが、その壁をまるで水で固めた小麦粉を砕く様にジャスティスは突き破り続けた。

この機械式二輪車も特別な物で、車輪とエンジンに錬成陣が描きこまれている。

それによって様々な無理を可能とするリーガルの相棒だった。

 

コーネロは建物の構造を知る自分だからできる裏ワザで狩人から逃げていた。

放送室に向かう途中の全ての壁を扉に変えて最短経路で逃げる事にしたのだ。

 

 

何とか放送室に辿り着いたコーネロは放送設備のスイッチをONにして、死をも恐れぬ戦士の候補者たる信者達に、

今すぐ助けに来るように放送した直後、撃ち抜かれて死んだ。

 

放送しようとした時、扉を粉々に砕きながら突入するジャスティスを駆るローズがそのまま発砲したのだ。

コーネロは咄嗟に防御しようとしたが、そこで『賢者の石』が、正確にはその粗悪品がエネルギー切れで壊れた。

 

 

リオールの町中に放送で発砲音と教主の断末魔が響き渡った。

そして放送室でジャスティスから降りたローズはそのまま放送を使い、町の人々に呼びかけた。

 

 

 

「大総統府付き独立法務執行官の者だ。

レト教教主コーネロを国家反逆及びその他の罪で処刑した。

彼の遺志に従い国家の反逆を企てる者にも同様の処罰が降る。

現段階で既に罪を犯した者は、最寄りの警察署で取り調べを受けて裁きを待て。

尚、特級犯罪故に弁明や諸事情は一切考慮しない」

 

ようやく追いついたエドワード達が呆れる程融通性の無い、

法の番犬の咆哮が町中に響き渡った。

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