アメストリス絶対法   作:蕎麦饂飩

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汚職炭鉱ラプソディ

エドワード達がリオールを去って汽車でユースウェル炭鉱へと向かっていた。

その汽車に乗っているものは、人間が二人、鎧とバイクが一つずつである。

 

 

「なんでアンタが汽車に乗ってるんだ」

 

「流石に機械式二輪で長距離を行くのは疲労が溜まる」

 

 

「いや、そうじゃなくて東部の果てに何しに行くのかって聞いてるんだけど」

 

漸くエドワードの質問の意図を正しく理解した、ジャスティスの持ち主ローズは得心したと言う風に答えた。

 

「それについては秘密事項だ。それより飲食店で器物破損を犯したという情報があるようだが」

 

「…証拠はないだろ? ラジオは新品同様の物しかあそこには無い筈だ」

 

 

「……証拠がない以上断定はできないか。

残念だよ。一応現地の一般警察官に証拠を集めて貰ってはいるが地域の住人が非協力的なのだそうだ」

 

そう言って、六法大全の551ページに視線を戻したローズに対して、エルリック兄弟はこの男に友達はいなさそうだと思った。

 

 

 

その後、ローズとは一切の会話をすることが無く、エルリック兄弟は気まずい時間を過ごした。

エルリック兄弟は終着駅の炭鉱の町ユースウェルで、ローズと共に汽車を降りた。

ローズは汽車から降りるや否やジャスティスに乗って何処かへ去って行った。

 

エルリック兄弟は酒場を兼ねた宿場に泊まる事になった。

元々ぼったくりの気があったが、エドワードの方が有名な国家錬金術師だとわかると周囲の態度が急変。

軍の狗である国家錬金術師に喰わせるタンメンも、寝かせるベッドもねえと周囲の酔っ払い共に追い出された。

 

その後、一人で宿泊したアルフォンスがその事情を聴き、

お上に何時もひどい目に遇わされてきた事を、炭鉱夫達の愚痴から知った。

 

ドアの外に追い出されたエドワードの為にアルフォンスは自分の為に出された食事を持ってきた。

高い宿泊費の割には多くない食事だったが、

中身の無い鎧の身体の為、食事が必要ないアルフォンスには自分の取り分は要らないので、

丸々エドワードに譲渡できたのだ。

こういう時に正義の代名詞を気取るあの青年ならどうしただろうか?

ふと彼ら兄弟は駅を降りて直ぐに居なくなった青年を思い出した。

 

 

その夜、エドワードが追い出された酒場に、この炭鉱の経営者であり軍に所属しているヨキ中尉がやって来た。

一方的に給料の削減を告げ、それに激昂した少年に布巾をぶつけられたヨキは見せしめに、

部下に命じて少年を切り捨てようとしたが、間一髪のところでエドワードがその鋼の義手でサーベルを受け止めた。

 

そして自分が国家錬金術師のエドワード・エルリックだと名乗ると、先程の酔っ払い炭鉱夫と同様に態度は急変。

ただ、その方向性は極めて友好的な方に向いていたが。

 

その後、エドワードはヨキの屋敷へ招待されて食事などの歓待を受けた。

そして賄賂の代わりに融通を図るように要求された。

 

 

三日月が空に登る頃、ヨキの部下達による放火により、

炭鉱夫の棟梁である男の家であり、酒場であり、宿屋であった建物が全焼した。

その火事を知らせる鐘の音は、喧噪も無い寂れた町に広く響き渡った。

 

何故この町を去らないと非難していた棟梁に聞いたエドワードに、

この町が家で棺桶だと告げる棟梁の言葉が低く響いた。

この町の人々の生活が火葬されるにはまだ早すぎると少年の青い心に響いたのである。

 

 

 

外れにある静かな町でも更に静かな場所に、エルリック兄弟はいた。

 

「これだけの量の金があれば、経営権は買い取れるか」

 

「…仕方ないね、兄さんは」

 

この町の人々を根本的な意味で救う為に、石炭にもならない悪質な石材、

1トン以上は優にあるボタ山を金に変えて計画の下準備をしようとエドワードが手を合わせた時だった。

 

 

 

「国家錬金術師3原則。

一つ、軍に忠誠を誓うべし。

一つ、人を造るべからず。

一つ、金を造るべからず。

さて、エドワード・エルリック、その石材の上に金貨を乗せて、これから何をするつもりかな?」

 

 

闇夜でもはっきりわかる白と銀の色彩で構築された制服を着た男が歩いてきた。

 

「いや…これは…」

 

言葉を濁すアルフォンスに対照的に、エドワードは威勢よく答えた。

 

「大衆の為に在れ――――錬金術師の誇りを実行するだけだ」

 

 

 

 

「――ならば、それ以上君は何もしなくていい。

問うのは収賄罪だけで許してあげよう、

そのヨキの印の入った袋と、中に入っていた金貨の件だけは問わせて貰う」

 

「……見逃してはくれない…か」

アルフォンスは、残念そうにそう呟いた。

それはローズにとっては、全く以って問うまでも無い事だった。

 

 

「誰に物を言っている。罪を見逃さない事が僕の誇りだ。

エドワード・エルリック、アルフォンス・エルリック、良い機会だ。

人を救う為に必要なのは錬金術でも腕っぷしでも謀略でもない。

ただこの本を読み、信仰し、実践するだけでよいという事を教育してあげよう。

着いてくるが良い。

――――――ああ、収賄罪の罰は、受け取った罰金に5割を加えたものだ。

後日裁判所に届け出るように」

 

 

六法大全を片手に持ったその嫌味な後姿は、一瞬良く知った誰かに似ているように兄弟達には感じられた。




基本的に犯罪者とロイ以外には良いヤツ。但し、人に好かれる性格では無い。
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