ハクロ将軍の乗るニューオプティン発特急04840便が反政府過激派ゲリラ組織『青の団』によるトレインジャックが発生。
独裁者である大総統のブラッドレイによる、戦争が尽きない現在のアメストリスへの糾弾と、
かつてとあるリーガルによって逮捕された、彼らの指導者の解放の要求が犯行声明に盛り込まれていた。
対策本部は東方司令部のマスタング大佐率いる部署であった。
そろそろ勤務時間が終わるのでハクロ将軍を見捨てようかというあまりにもあまりな軽口を叩く大佐に、
彼の部下であるフュリー曹長が諌言と共に、乗客名簿を提出した。
東部で幾つかの反政府組織の兆候が活発になってきているのに、態々旅行に行くハクロ将軍に呆れながら、
そのリストに目を通したマスタングは、ある名前を見つけて機嫌がよくなった。
「『鋼』のが乗っている」と。
だが、その下に続くリストを引き続き見た彼の表情は、少し歪んだものになった。
「――――それと、青の団の首謀者を捕らえた男もだ」
正義の実行者の代名詞として有名な存在に、殆どの部下達は事件は解決したも同じだと安堵のため息を吐いたが、
事情を知る彼の腹心、リザ・ホークアイ中尉はただ俯く事しかできなかった。
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犯人の人数は合計で十名。
ハクロ将軍の家族を人質にした一等車の中には、テロリスト達が四人、機関室に二人待機していた。
そして一般車両に移動してきた四人が、その車両の乗客達を纏めて人質にしようとしたが、
そこには有名な一切の黒を含まない白と銀で構成された制服に身を包む、
法律の番犬が其処に居た。
「大総統府付き独立法務執行官ローズ・ジャスティだ。
お前達を『青の団』残党だと断定する。
申し開き、陳情、交渉の類は一切受け付けない。
国家反逆罪及び、武器の不当所持及び使用、殺人等の罪で有罪。
判決――――――――――――死刑」
一方的に突きつける正義の宣告。
それと同時に彼が構えた銃の引き金が引かれる。
その拳銃も銃弾も
ライフリングの回転で加速した紋章が刻まれた弾丸が銃口の円と揃う時、
その銃弾の真価が発揮される。
発射された細長い銃弾が、その形を更に細長く変え、
まるで串の如き形状になると、前の車両から移動してきた四名を纏めて貫通した。
ローズは未だ眠っているエドワードを起こすと、国家に従属する者の義務として協力するように命じた。
寝ぼけたエドワードが動けるようになり次第、支援させろとアルフォンスに告げ、
尤も、その頃には終わっているハズだと付け加えると、
車両の側面にある乗下車用の扉を解放して、機械式二輪車――通称ジャスティスに乗ってそのまま飛び出した。
乗客達が見守る中、汽車と並走しながら疾走するバイクは、更に加速して一等車の側面に並んだ。
ローズは銃を一等車の窓に向かって撃ち出す。
弾丸の種類によって効果を変えるリーガルの標準装備。
この拳銃が今回撃ち出した銃弾の弾種は閃光弾。
車内が轟音と閃光に包まれるや否や、サングラスを何時の間にか付けていたローズは、
車両の側面にジャスティスごと突進した。
機械式二輪車ジャスティス。このバイクは
無線による遠隔射撃など様々な機能があるが、やはり特筆すべきはその走破能力。
跳躍だけでなく、激突した物体を分解して如何なる障壁をも突き抜ける事が出来るリーガルの相棒だ。
壁に背を付けて立っていた男一人を反対側の壁に吹き飛ばし、
人質と残り三人のテロリストを分断するように正義を駆る男は急停止した。
犯行グループのリーダーであるバルドは、未だ先程の閃光から十分に復帰していなかったが、
僅かな視界に映る穢れない正義の象徴である制服を確認した。
バルドはその服に身を包む男の顔を知っていた。
嘗て彼の右目を奪い、己の所属する組織のボスを逮捕して壊滅に追い込んだ、国家の狗――ローズ・ジャスティ。
交渉や事情などを一切受け入れない冷徹な執行者。
「お前はっ!!!!」
「――裁きの時だ」
反政府組織『青の団』。彼らはここで完全にその願いを成就する機会を失った。
バルドを含む一等車の四名と、
機関士に銃を突き付けて一等車にやって来た二名のテロリストの額には空虚な穴が開けられていた。
もう、彼らは二度と罪を犯す事は無いだろう。
大総統府付き独立法務執行官。
様々な専用武器と高い能力を駆使する、戦う裁判長。
彼らの最大の武器は、専用の銃でも、専用の機械式二輪車でも無い。
――――――――法律である。
ハードボイルド展開。
但し、主人公は童顔である。