一発ネタ集(続き無し)   作:蟹男

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読みたい物と書きたい物、そして書ける物は一致しない。


目指せ、ポケモンマs……え?違う?

むかしむかし――今よりもずっと、小さいころ。たまたま点けたテレビに映っていたあの光景。

 

思うがままに空を駆け、全てを焼き尽くす炎を生みだす竜。大地を揺るがし、フィールドを支配する獣。目にも止まらぬスピードで動き、倒された事さえ相手に気付かせない伝説のモンスター。そんな恐るべき力を持つ彼らを、手足の様に自分の意のままに操るトレーナー。

 

感動か、恐怖か、あるいは羨望か……確かな事は分からない。だがこの出会いは間違い無く俺の中に何かを生み出し、夢を抱かせたのだ。いつの日かアイツと同じ舞台に立って、そして――

 

ずっとずっと、昔の事。思い出はいずれ色褪せてしまう。今となってはそれが何才の頃の出来事で、誰が戦っていたのか定かでは無い。もしかしたらそれはただの幻想で、本当はそんな物存在していないのではという気さえしてくる。確かな事は、たった一つ。

 

あの時生まれた衝動が、今もなお俺を動かしているのだ。

 

 

 

~目指せ、ポケモンマs……え?違う?~

『原作:ポケットモンスター(断言)』

 

 

 

「おきなさい、わたしのかわいいむすこよ……」

 

「母さん、それゲーム違う」

 

「あら、そうだったかしら?」

 

魔王でも退治に行かされるんじゃないか、と誤解してしまう様な最悪の目覚め。勿論現実にそんな事起きたりせず、中世の様な世界が広がっているとか人の家のタンスを漁る生活をしなければいけないなどといった事は一切無い。いつもの様にテレビや時計、ゲーム機も置いてある自分の部屋で普段通りの朝を迎えただけだ。

 

だがそう誤解してしまうのも無理は無いかもしれない。誕生日を迎えた今日、いよいよ俺は夢に向かってスタートを切るのだ。きっとその道程には様々な障害が待ち構え、勇者が歩く道程と比べても遜色の無い過酷さを誇っている事だろう。

 

「ああ、心配だわ……。いくら誕生日を迎えたって言っても、あなたはまだ子供。これからの旅路でもしもの事が有ったら私あの人に何て言っていいのか――」

 

「ねえ、母さん」

 

これだけは家を出る前に言っておかなければいけない。今の今まで中々言い出せずズルズルと引き伸ばしてきてしまったが、勇気を持って伝えなければ。いくら言い難い事でも口に出さなければ分かって貰えない、何より俺は後悔したくないんだ。覚悟を決めて口を開く。

 

「母さん――夕飯までには帰ってくる予定だよ」

 

「あ、あら?そうなの?私はてっきり遠くに旅に出る物だとばかり――」

 

「いや、それは勿論その内遠くに行く事も有るだろうけど……そんな所にわざわざ歩いて行く訳無いし、まずは近場のジムを巡ってバッジを集めるからさ。もうポケモンは大分前から六匹使っているし、今日はすぐに帰って来るよ」

 

「そうだったの、なら安心ね。良かったわ……あの人が遠く彼方から見守ってくれているとは思うけど、危ない目に合うんじゃないかって心配で心配で――」

 

ちなみに、父さんは死んでいる訳じゃなく単身赴任で少し離れた所に居るだけだ。これまでの会話で充分分かる通り、この人は心配性で少々思い込みが激しい所が有る。無視してさっさと出掛けるのが一番の対処法だ。

 

「それじゃ行ってきまーす」

 

「覚えてる?あなたが五歳の時――あら?待って、まだ話したい事が……!」

 

振り返らずに家を出る。外泊する訳じゃないとはいえ、心はもう広い世界に飛び出しているのだ。どんな言葉であっても俺の気持ちを抑える事など出来やしない。

 

「今日の夕飯は何が良いの!?一人だし簡単に済ませようと思っていたから材料を買いに行かないと――」

 

「何でも良いよ、別に……」

 

訂正しよう、気落ちさせるのは簡単な様だ。もうちょっと心配したり引き止めたりすると思っていたのに、少々切り替えが早すぎやしないだろうか?足取りも重く、幾分か下がったテンションのまま最初のジムを目指し歩みを進める。

 

が、そんな気分だったのもほんの僅かの間だ。

 

「これが、ポケモンジム……よし」

 

程無くして辿り着いた建物は、他と特に違う訳でも無いのに不思議な重圧を放っているかの様に感じられた。きっとその正体は俺自身の中に湧き出た期待や恐れなのだろう。柄にも無く緊張してしまっているらしい、落ち着く為に持ち物を確認する。

 

「ボールは有る、道具も有る。準備は万端だな」

 

きずぐすり、あなぬけのひも、それから使い慣れたモンスターが入ったボール。それらがいつでも使えるよう整理し、いよいよ入口の前に立つ。

 

「それじゃあ――戦いの始まりだ!」

 

勢い良くドアを開け、堂々と中へ入り込む。目指す場所は只一つ、ジムリーダーの居る場所だ。さっさとポケモンバトルで勝利しバッジを貰ってそして次の街へ――そう考えていたのだが、やはり簡単には行かないらしい。入ってすぐの場所に待ち構えて来た男が俺に話し掛け行く手を阻んできた。

 

「おーす、みらいのチャンピオン!ニビシティジムへようこそ、リーダーのタケシの所に行くにはまずここで学ぶトレーナーたちを倒してからでないといけないんだ。あまり焦ってはいけないぞ」

 

「やっぱり邪魔が入ったか、しょうがないな」

 

「はっはっは、ルールは分かっているだろう?バッジを貰うにはリーダーをポケモンバトルで倒さないと――」

 

「ああ、分かっているよ……ちゃんとルールは守ってやる!」

 

思わず両手に力が籠る。まずは一人、目の前のトレーナーとのバトルを制す。するとその音を聞き付けたのか、奥からぞろぞろと門下生たちが現れてきた。

 

「お、おい!かなりの強敵だ、皆行くぞ!」

 

「チッ……まあ良い、手間が省けたんだから良しとするか!」

 

激闘の末、かなりHPは削られたが無事全員を打ち倒す事に成功する。回復しに戻ろうかとも考えたが、その間にこいつ等が元気になって振出しに戻されても面倒だし今の流れを捨てたくは無い。相手は俺よりずっと格上なのだから勢いで押し切らなければあっと言う間にやられてしまうだろう。きずぐすりで体力を回復し、僅かな休息の後にジムリーダーのタケシが待つ部屋へと向かう。

 

「良く来たな!俺がジムリーダー……の……だ、大丈夫か?どうしてそんな――」

 

「流石に強いな、アンタの弟子達は。お蔭でこの有様だ」

 

「い、いやいやいや!そんなボロボロの格好をしている理由は説明が付かないぞ!?おまけに血まで流して……」

 

「バッジはリーダーをポケモンバトルで倒して始めて貰える――そう言うルールだよな?」

 

六つのボールを取り出しバトルの準備を整える。どうにか予定通り万全の状態でここまで来る事が出来た、皆バトルが始まるのを今か今かと待っているに違いない。

 

「つまり、他のトレーナーはポケモンを使わずに倒しても良いッ!俺はこの日の為に鍛え上げて来たんだ――この体を、二つの拳をッ!岩タイプの体を砕くのは苦労したが、どうにか全滅させる事には成功した。ちゃんとヒモで縛り上げて来たんだ、邪魔する奴は誰も居ないッ!」

 

「いや合っているけど……合っているけど!そんなのわざわざ書かなくても分かるだろう!?どこに素手でポケモンとトレーナーを打ち倒そうなんて考える奴が居るんだ!ま、まあいい。一応ここではポケモンでバトルする気が有るんだろう?だったら俺が君を倒せば済む話だ。その後に警察にたれ込んで……ゴホン!さあ、早速バトルを始めようじゃないか!いけ、イワーク!」

 

「望む所だ――行くぞ、イシツブテ!」

 

全長10メートルは有ろうかという巨体が繰り出され、俺達を威圧してくる。対する俺のポケモンはそんな相手をみてすっかりビビッてしまったのか、この場から逃げ出そうとしていた。

 

「手加減はしないぞ!イワーク、いわなだ――」

 

「遅いッ!いくぞイシツブテッ!」

 

外へ向かおうとするイシツブテの頭(ほぼ全身だが)を掴んだ俺は、抵抗を物ともせず振り被り技を繰り出した。

 

イシツブテ を なげつける! イワーク に 300 のダメージ! イワーク は たおれた! イシツブテ は たおれた!

 

「え……?あ、なげつける……え……?」

 

「子供の頃からずっと鍛えて来たんだ……五歳の時にはそれで怪我をした事も有った。だけどそれでも俺は諦めなかった!俺はずっとこれを――イシツブテがっせんをトレーニングしてきたんだ!今じゃこの競技で俺の右に出る者は居ない、そして俺にはまだ五匹のイシツブテが居る――覚悟は良いな?」

 

「いや、ポケモンバトル――」

 

「ちゃんとポケモンを使ってポケモンの技で勝っているんだ、何も問題は無い。次、行くぞッ!」

 

「ヒ、ヒィッ!」

 

二匹目のポケモンが繰り出されるが、やる事は同じだ。出て来た敵に向かって次の弾――もとい、仲間で攻撃する。相手が出せるポケモンは最高で六匹、こっちには特性ががんじょうの奴が一匹いるから俺が誰よりも早く一撃で決めれば絶対に勝ちは転がり込む。幸運な事に、タケシは三匹しか持ち合わせていなかったらしく勝負はあっと言う間に終わった。

 

「こ、降参!降参だから!もう戦えるポケモンが居ないんだ、早くバッジを持ってどこかに行ってくれ!」

 

「おいおい、まだ戦える奴が一人残って居るだろう?トドメだ、くらえッ!」

 

「ヒ、ヒィィィィッ!」

 

イシツブテ を なげつける! きゅうしょ に あたった! タケシ に 999 のダメージ! おや、タケシのようすが……

 

「お、俺のモンスターボールが……」

 

おめでとう! タケシ は タケコ に しんかした!

 

「……長い戦いだった、流石リーダーだな」

 

地面に這いつくばり呻き声を上げる男――だった奴から視線を外し、ジムを後にする。激闘の成果腹が減った、早く家に帰って夕飯を食べよう。ハンバーグとかカレーだったら良いな……俺はウキウキしながら家路を急いだ。

 

むかしむかし――今よりもずっと、小さいころ。たまたま点けたテレビに映っていたあの光景。もしかしたら今と昔じゃあ胸に抱いたこの想いの名前は変わっているかもしれない、それでも最近になってやっと気付いた事が有る。あの日テレビに映っていたトレーナーは――

 

どや顔がムカつく。このムカつきを何とかする為に俺は旅に出るのだ。

 

待っていろよ、チャンピオン!お前の命は俺が貰い受ける――!

 




何だこれ……何だこれ!?
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