ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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空を飛ぶ鳥のように野を駈ける風のようにの巻 (砂漠)

 

「いよいよおれたちの誰も知らない・・・未知の大陸と人の住む地へ行くぜ」

 

「何が待ち受けているかがわからないっていうのが不安だし楽しみでもあるわね」

 

彼らの目指す邪教の中心地はアレンたちの知るところにはなく、新しい地を

あてもなく目指すしかなかった。その道中で有力な情報が得られるかもしれない。

 

 

「生まれたときからずっとムーンブルクにいたわたしでさえも西には行ったことは

 ないわ。兵士たちも少ない人数では決して向かわなかったほどなのよ。

 でも先へ進むためにはムーンブルクの西、それは避けられない・・・」

 

「ハッ・・・お前らしくもねえな。そんな不安そうな顔をするなんて。おれたちは

 勇者ロトの子孫、この難儀な時代に選ばれた三人なんだぜ?」

 

勇者ロトの時代から長い時が過ぎ、その血は薄まり力は弱まっているという

考え方もできる。現に、竜王を倒したラダトームのブライアンですら、自分は

ロトに比べて全てで劣っていると悩み続けていた。アレンたちも同じ思いがあった。

三人はそのブライアンにも及ばない。呪文が一切使えないアレン、非力なセリア、

腕力も魔力も凡庸なアーサー。三人とも口にしないだけだった。

 

 

「そう、一人だけでも特別な存在が三人もいるんだ。おれたちは三人で一つ、

 そんなケチなことは言わねえ。うまくいけば三倍だ!勇者ロトの三倍強く

 なれるんだ!だからここからは弱音なんか一切なし、これはリーダーとしての命令だ!」

 

「・・・言われなくても。少なくともこのわたしの闘志は何があろうと萎えないわ!」

 

 

強い決意表明をした二人。次の瞬間、二人の腕のロトの子孫のしるしであるアザが

光輝いた。アレンからは青、セリアからは赤の輝きが力強さと共に。

 

「・・・・・・この光・・・!ルビス様もおれたちを祝福してくれているぜ」

 

「ええ。わたしたちの歩みを止められるものは何もないわ」

 

 

何よりも心強い後押しによって二人がますます熱意に満たされていたところに

アーサーが水を調達し終えて戻ってきた。これで出発の準備は整った。

 

「・・・遅かったな。じゃあ気持ちが高まっているうちに出ようぜ」

 

「ごめんごめん。これまで以上に一息入れられない長い旅になるから

 準備は念入りに、と思ってね」

 

「食い物も水も最悪途中でどうにかなるだろ。あとはルートだが・・・

 セリア、お前、寄って行きたいか?ムーンブルクに」

 

アレンとアーサーはいまのムーンブルクについて何もセリアに教えていない。

彼女の父を含め多くの打ち殺された魂がさまよい続け、魔物の住みかとなった

悪臭のする廃墟。とはいえ彼女の故郷だ。最短の通り道を少しだけ逸れたら

行ける場所にあるので、あとは彼女がどう決断するかだった。

 

 

「・・・どんな様子になっているかは知らないけれど今は行かないわ。どうせ

 生き残りはいないのはわかっているんだから。それよりも一刻も早く

 邪教をこの世から消し去りましょう。その後に戻って復興を始めるわ」

 

「・・・・・・そうか、なら立ち寄る必要はねえな。お前の言うように

 仇であるハーゴンを倒すこと、それが何よりの孝行であり供養だろうよ」

 

そのためにも行く手を阻む魔物たちを撃退し続ける、果てのない戦いへの

意気込みはじゅうぶん過ぎるほどだったが、今回の冒険で一番の試練は

戦闘ではなかった。それとは別に彼らの命を脅かす大きな壁があった。

 

 

 

「・・・こ、このままじゃ・・・三人とも死んじまいかねねぇ・・・」

 

「そうね・・・誰にも知られずこの砂のなかに埋葬されるのね・・・」

 

辺りどこを見回しても全く同じ景色の広大な砂漠。ほんとうに前に進んでいるのかも

わからないのが、精神を蝕む。もちろんこの暑さは身体に甚大な悪影響を与え、

通常であれば人々に命を運ぶ太陽がここでは容赦なく殺人者として猛威を振るう。

アレンとセリアも初めこそ後ろ向きな言葉を吐かなかったが、数日間も砂漠を

さまよい続け、とうとう極限状態に追い詰められていた。

 

(・・・いよいよ危なくなったらルーラか。死んでしまうよりはましだ。

 しかし帰ったらここまでのすべてが無駄になって冒険は失敗だ。この失敗という

 結果はぼくらに重くのしかかって、再挑戦をしり込みさせることだろう)

 

まだ水はほんの少し残っている。砂漠地帯を抜け出すのが先か、水が尽きるのが

先か・・・。しかし慎重派のアーサーも、まだルーラによる『逃げ』の手を

実行するのはもちろん、提案もしていない。弱気の発言が漏れてはいても、

誰も『帰ろう』、『やめよう』、『しょせん無理だった』とは言っていないからだ。

ここで逃げ帰ったらハーゴンのもとには永久にたどり着けはしないとわかっていた。

 

すると、ここでもアレンたちが見えない何かに祝福されているのを味わうことになる。

 

「・・・お、おお!あれは・・・!」

 

「水、水よ!幻なんかじゃない。久々の木々と水場!生命の恵みがあるわ!」

 

砂漠のオアシス。もう限界かと思われたときにこれ以上ないタイミングで現れた。

幻でも罠でもなく、その安らぎの場から癒しを受け、憩いの時間を過ごした。

 

 

「危なかったぜ。安全な水もたっぷり確保できたし、これでしばらくは平気だな」

 

「でももうちょっと休んでいきましょう。ここなら疲れもしっかりと取れる。

 魔物たちの姿はないし、昼なのに涼しいし・・・いいところを見つけたわ。

 ここから動きたくなくなる前には出ていかなくちゃいけないでしょうけどね」

 

砂漠でも魔物たちがいるにはいる。植物の魔物『マンイーター』や砂漠で

命を落としたと思われる遺体が魔族により再利用された『ミイラ男』たちなど

新しい種類の魔物にも遭遇したが、砂漠そのものの猛威には及ばなかった。

 

落ち着いた休息の時間。ここで並んで座る三人の中央にいたアーサーが話を始めた。

 

「砂漠といえば・・・唐突だけれどいま思い出したことがある。勇者ロトの伝説だ。

 彼の夢のなかに精霊ルビスが幻を与えた話を覚えているかい?」

 

「ああ、あれか。広い砂漠を歩いていたら二人の男がいたって話だな」

 

その二人は兄弟だった。負傷した兄は弟に水を託し弟だけでも町へ向かうように言う。

水は一人分ほどしかなく、兄を背負って町へ行こうとすると共倒れになりかねない。

兄のために水を残し命がけで助けを求めに行く手もある。弟は決断しかねていた。

そこでロトに意見を求めてきたが、彼はそれを払いのけるように、

 

『やかましい!てめえらの問題だろうが!逃げずにてめえで考えろ!』

 

そのまま彼らを置いて去ってしまった。しかし自分の水を半分彼らのために置いていった。

 

 

「口は悪いけれど根は熱くて優しいところがあるって証明だね」

 

「・・・そんな男を知っているような・・・いや、気のせいかしらね」

 

「で、その話が何なんだ?いまにどう関係がある?」

 

アレンはアーサーが意味のない話をする男ではないことを知っている。

砂漠繋がりというだけでこんな話題を持ち出してきたわけではないだろう。

 

「・・・優柔不断はだめだってことだよ。その幻に出てきた青年は結局決断を

 下せずに兄弟二人とも死んでしまったという終わり方だった。ぼくたちにも

 何が起きるかわからないのだから、いざという時に素早い判断をするべきだ」

 

体力も魔力も尽き、キメラの翼もないというときに水もほとんど残っていない。

そうなったときにどう行動すべきかを考えておく必要があるということだ。

 

 

「そうだなァ。おれはお前たち二人くらいなら支えていけるだろうな」

 

「ぼくは一人が限界かな。だから変に動かないかもしれないね」

 

「わたしはあなたたちを連れていける力はないわ。悪いけど一人で行くしかない」

 

まだ砂漠はどれほど続いているかわからない。これから先、緊急事態のときに

優柔不断は一番いけない。今後のためにそれぞれのすべき行動をはっきり

しておかなければということだったのだが、この後砂漠のオアシスを

出てから数時間歩いたところで・・・。

 

 

「・・・おお、見ろ!砂漠が・・・終わった!」

 

先頭を歩いていたアレンが大きく飛び跳ねるように喜びを全身で表す。セリアも

両手を広げて彼の後を追っていった。うんざりするほど続いていた死の砂漠地帯は

水場で手に入れた大量の水を残し終わりを告げた。もちろん水はこの先も決して

無駄にはならない。普段は微妙な仲であるアレンとセリアが意識せずに手を

とって喜び、思わず抱き合いそうになったところで我に返って距離をとる、

そのやりとりを後ろから眺めていたアーサーは、またしても昔の言葉を思い出した。

 

(・・・『真の勇者たちを待つ試練は多い。しかし彼らは精霊ルビスに

 愛されているゆえに、その試練の時は短くされる』・・・だったかな。

 だったら試練自体をなくしてほしい・・・とか言ったら罰当たりかな・・・)

 

 

「こういうときを狙って抱きつこうとしてくるなんてやっぱりあなたは汚い獣ね!」

 

「何言ってやがる!お前こそ犬のときのクセが抜けてないんじゃねえのか!?」

 

二人が大声で口論を始めていたが、アーサーはそれを止めるでもなくただ

黙ってしばらく様子を見ていた。自分が介入しないと終わらないと思い

ようやく間に入り、その場を収めて先へ進んだ。

 

砂漠を抜けてからまた幾日かは野宿生活が続いたが、砂漠に比べたらどうという

ことはなく、やがてムーンブルク大陸の果てに到達した。『ドラゴンの角』と呼ばれる

塔であり、魔物の手から逃れるため吊り橋をかけて南北の塔を結んでいたが、

それすらも数年前魔物によって破壊され、人の行き来はなくなってしまった。

 

 

「そのせいで商売ができなくなった商人や家族に会えなくなった人もいるという

 話は聞いていたわ。あれが唯一の移動手段だったのよ」

 

「じゃあそれだけ海の魔物は手強いってことか。中途半端な力だと船も

 危ない、まして泳いで渡るなんて無理か・・・」

 

普通の人間ならば無理でも自分たちなら、とアレンは真面目に泳ぐことを考えたが、

 

「・・・いや、だめだな。おれは泳ぎがそんなに得意じゃないんだった。こんな

 重装備じゃ尚更だ。アーサーかセリア、どうにか向こうの大陸の人里まで先に

 向かって結界を張っておいてくれないか?それならルーラで行けるだろ」

 

「・・・自分だけ楽をしようっていうのはよくないわね。わたしたちも嫌よ」

 

さすがに泳いでいけるような距離ではなかった。道は断たれたかに思えたが、

 

「こういう時こそこいつの出番ってわけか?風のマント・・・」

 

ムーンブルクで代々守られていた宝を手に、アレンが閃く。この場で広げてみたが

いまは何も起こらない。無風ではだめだということか。

 

「じゃあこの塔はどうだろう?何か手に入るかもしれない」

 

 

アレンたちはドラゴンの角の扉を開け、試しに探索してみることにした。

この塔も風の塔と同じく、警備する兵士たちがいなくなったこと、吊り橋が

なくなり人々の足が完全に遠のいたことで魔物たちで溢れかえっていた。

 

「今回は前みたいに塔ごと壊滅させるっていうのはやめてほしいね」

 

「わかってるよ。いくら何でも命が続かねえよ」

 

「それに風の塔とは違うわ。あれはすでに何の役にも立たない建物だったけれど

 このドラゴンの角はいずれまた人々のために用いられるべき施設だもの。

 魔物たちを根絶やしにしてどの道吊り橋がいらなくなったとしてもね」

 

この南北にそびえ立つ立派な二つの塔は後々利用価値が大いにあると期待できた。

安全な海での船旅を終えた人々の休憩所、宿泊施設、また港としても使える。

これだけ階層があるのだから上のほうでは兵士たちの訓練場兼見張りの塔としての

役割もできるとセリアは考えた。ムーンブルク復活のためにこの塔は重要だった。

 

「いまからちゃんと考えておかなくちゃ夢のままで終わっちゃうわ。邪教を

 滅ぼすのは当然として、それから素早く動かないといけないの」

 

「ふーん・・・意外としっかりしてやがるんだな。とにかく上を目指そうぜ。

 将来も大事だが今日くたばったら夢を叶えるのは不可能になっちまうからな」

 

 

この塔にも強力な魔物たちは多かった。こちらの防御力を落とす呪文『ルカナン』や

ラリホーを唱える厄介な存在である『メドーサボール』はその姿も不気味で、

無数の蛇が浮遊する球体の中心から飛び出してきているが、そこには巨大な目が一つ。

近寄りたくないし危険な呪文を使ってくるので、ギラとバギで優先的に排除すべきだ。

 

メドーサボールが補助的な役割をするならば、直接命を削ってくるのは『しにがみ』だ。

この死神、鎖鎌を持ち自分たちの仲間を増やそうとしているようで、アレンであっても

一撃くらうとかなりのダメージだった。ムーンブルク大陸で一番の強敵だった

マンドリルもおり、この塔にいるものとは『友好条約』が通用せず戦いになった。

 

戦闘は激しく、決して気が抜けない時間が続いたが、それでも逆に言うならば

ある程度の腕を持つ戦士であれば魔物たちを倒し続け、かつて吊り橋が架けられていた

地点まで到達するのは可能だった。特別なものなど必要なかった。それが求められたのはここから先のことで、砂漠のとき同様魔物との戦いとは別のところにあった。

 

 

「確かにこれじゃあ渡れないな。しかしいい風だぜ・・・」

 

「こっちのほうが『風の塔』って名前にふさわしいと思うよ。素晴らしい景色だ」

 

アレンとアーサーは疲れを癒すかのように眺めを堪能していた。しかしセリアは

ずっと先を見ていた。決して下には目をやらなかった。

 

「・・・もういいかしら?そろそろ出発しましょう。新たなる大陸へ」

 

もうここには用はないという感じで、次なる地を目指そうと言う。しかし現状

先へ向かう手段は見つからず、この塔にもそれはなかった。

 

「そうか。こういうのは好きじゃないのか?じゃあアーサー、リレミトを唱えてくれ」

 

アレンの言葉に頷いてリレミトを唱える準備に入ったアーサーをセリアは手で制止した。

 

「・・・急にどうした?」

 

「リレミトなんか使っちゃダメよ。せっかくここまで頑張ってきたのに・・・」

 

「いや・・・ここには何もなかったじゃないか。きみの言うように早く先へ

 行くなら一瞬で一階まで戻らないと時間の無駄だろうに」

 

 

やれやれ、と首を振った後、ここでセリアはアレンの持っていた風のマントに触れた。

 

「・・・・・・この風に乗るのよ!予言されていたマントを使うべきはここしかない!」

 

「・・・正気?落ちたらまず命はないこの高さ!一瞬で地面に叩きつけられるから

 ルーラの呪文も間に合わない!ぼくたち三人ただの肉塊に・・・」

 

アーサーはとてもじゃないが受け入れられないという意思を示したが、アレンは

そうではなかった。風のマントを装備し、一歩前へと踏み出した。

 

「そうだな・・・よし、行くか!確かにおれもお前さんの言う通りな気がしてきたぜ!」

 

「アレンまで何を・・・そんな勢いに任せるような真似は・・・」

 

「なーに、もし失敗したらそのときこの女を糾弾してやればいいだけのことさ!

 ここで死んだらこの塔の死神にはなれるだろ!延々と文句を言ってやろうぜ!」

 

頭が痛くなるようなアレンの言葉。とても正常な人間の思考とは思えない仲間二人に

アーサーはどうしたものかと悩まされたが、ここで彼は見た。決して命を軽視している

わけではなく、平和のために自ら道を切り拓こうとする強い意志に満ちた二人の

勇者が確かに祝福されているという証明を。

 

(・・・!!二人のアザが・・・・・・光っている!)

 

アレンとセリアは向こう側のドラゴンの塔を見つめていたために気がつかなかったが

後ろにいたアーサーには確認できた。青と赤の小さな光が二人の腕から放たれているのを。

 

 

(・・・なるほど。やっぱり今回も間違っていたのはぼくのほうというわけか。

 ただ魔物を倒し旅するだけなら誰にでもできる。でも世界の危機を救う

 真の勇者となるためには・・・実は別の要素が大きいんだ)

 

単なる腕力や魔力ではない。勇気を持ち恐怖を乗り越え、それでいて常識を外れ、

自ら未来を勝ちとろうという強靭な精神力、そして天運。それを神や精霊は高く評価し、

愛される。前を行く二人にはその資格があるが、自分にはまだ足りない。

アーサーはそれを思い知らされた。利口で冷静なだけでは壁を越えられないのだ。

 

 

「・・・・・・よし、ぼくもきみたちを信じよう。どうすればいいのかな?

 マントを身につけたアレンの両隣にぼくらがしがみつく形で飛ぶ?」

 

「おお、お前も来るか!やり方はそれでいいんじゃないか?善は急げだ、

 三人の誰かの気が変わらないうちにさっさと飛ぼうぜ!」

 

「わたしははじめから思いは変わらないわ。この高さに腰砕けになって

 やっぱりやめたと言い出すのはあなたのほうじゃなくて?」

 

 

「・・・・・・!!このくそ女が~・・・・・・!」

 

挑発的なセリアの言葉にアレンはカチッときたのか、『じゃあ飛ぶぞ』とかの

言葉もなく即座に二人を抱えたまま足場から身を投げた。

 

「ちょ、ちょっと!やるならやるって言いなさいよ!心の準備が・・・!」

 

「ケッ!やっぱりてめえも少しビビってやがったのか!ざまあみろ!」

 

空を飛びながらも二人の言い争いは続いたが、飛行のほうは思った以上に

安定し、まさに風に乗るかのようにまっすぐに目的の場所へと彼らを運んだ。

 

「これはすごい・・・こんな体験は誰にもできやしないだろうね」

 

偉大なる勇者の子孫であり、その名と意志を継ぐにふさわしい者にしか

決して成せない奇跡。アーサーはアレンにしっかりと掴まりながらも

だんだん恐怖が和らぎ余裕が出てきたので自分の腕のロトの紋章のアザに

目をやった。しかしここでも彼のアザが光ることはなかった。それとは

異なり、アレンとセリアの腕からはいまだに力強く輝きが放たれていた。

 

(・・・・・・果たしてぼくは必要だったのだろうか。いや、いまは

 こんなことを考えている時間じゃないな。いくら安定しているとはいえ

 意識を逸らせば落ちてしまう。ぼくだけじゃなく二人を巻き込むかもしれないし)

 

 

奇跡的な時間はあっという間に終わった。アレンたちは北側のドラゴンの角に

導かれ、ついに三人の誰もが知らない新たな地での冒険が始まったのだ。

 

「うーん・・・あとは地図でもあれば知らない土地でも安心なんだが」

 

「地図があったって全くその通りとは限らないでしょ?それに・・・昔の地図

 だとしたらもう滅ぼされている町や村だってあるはずだもの。あてにならないわ」

 

ムーンブルク側と同じほど魔物たちがうじゃうじゃといるドラゴンの角よりも

静かな野外で野営としたほうが安全だと判断し、暗くなるまで彼らは歩いた。

ムーンペタを出てからずっとキャンプ続き、さすがにそろそろベッドが

恋しくなってくるころだった。せっかく新たな大陸に入っても人の集まる

落ち着けるところがないこともありえるが、今回に関しては距離こそわからないが

町が存在するというのはわかっていたので、あともう少しの辛抱だった。

 

「町に着いたら二泊はしたいところよな。金は余裕があるんだから」

 

「使える場所がなかったからね。ねずみやムカデに金の価値がわかるはずもない。

 でも『綺麗なもの』には興味があるのか・・・硬貨や宝石を持っていたりする」

 

魔物たちを倒したときに得られる戦利品もかなり溜まっていた。この先ようやく

それを使える機会がやってくることを三人とも楽しみにしていた。

 

「あなたたちと違ってわたしはこのただの布の服でここまで戦ってきたんだから

 何か買いたいわね。わたしでも装備できるいい防具があればいいのだけれど」

 

「・・・そのぶんおれたちが前線で戦っていたじゃねえか。とはいえ確かに

 三人とも防具の新調は必要だ。戦いの日々のせいでだいぶ傷んでやがる」

 

この大陸ではこれまで見たことのない新たな魔物たちの姿も確認できた。

これから先の旅のことを考えても、敵は更に強くなることを覚悟して

万全な準備をする必要があった。いかに天に愛されし強運を持ち、精霊ルビスに

護られている彼らとはいえ、自分でできることはちゃんとやっておくべきだ。

 

 

「ま、とりあえず今日は寝るぜ。アーサー、頼んだ」

 

「わかった。魔物の気配はしないけれどちゃんと見張っておくから

 安心して眠ってよ」

 

 

アーサーは一人残され、最近の出来事を静かに振り返っていた。自分ではなく、

アレンとセリアによってこの冒険が先に進んでいる事実を。それぞれ強力な

武器を持っている二人に対し、自分は全てにおいて中途半端であることも。

 

 

「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」

 

 

一人焚き火の前に座るアーサーを近くもない遠くもない位置から気配を殺して

じっと様子を見ている二つの人影があった。それは邪教の祈祷師の姿をした

者たちであり、この『きとうし』の二人組は暗殺の機会を待っていたのだった。

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