ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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二人の祈祷師の巻 (ルプガナ①)

一人夜の見張りをするアーサーを狙っている邪教の祈祷師二人。彼が気を緩める

そのときだけを待っていた。闇に紛れ密かに彼を倒そうと決めていた。

 

「・・・ハーゴン様が言ってた三人組の一人だ。チャンスはそろそろ・・・だと思う」

 

「わかってる。眠気に襲われたとき、ぼーっとしているとき・・・その不意を突いて

 首を取る!失敗は許されないよね」

 

二人は女性だった。さらに言えば、邪教の祈祷師となったのもつい先日のことだった。

しかしそれに至るまでは決して短くない時の事柄が関係していた。

 

 

二人の名はそれぞれ『テイタニヤ』、『ディアマンテ』といった。共に代々商人として

生計を立てている家の生まれだった。物が有り余るほど富んでいるというほどでは

なかったが、それでも多くの者たちよりは裕福、そのような生活だった。

同じ町に生まれ育った同い年の二人は家族同士の付き合いも多く、とても仲のよい

親友で、幸せに日々を過ごしていた。ドラゴンの角の吊り橋が破壊されるまでは。

二人の家の取り扱う品々はほとんどがムーンブルク大陸から取り寄せていたものに

深く関わっていたので、売る商品が手に入らなくなってしまったのだ。

 

それ以降、急激に事態は悪化した。いくら待っても魔物たちの勢いは増していき

橋の復旧のめどは立たず、ならばと商売を変えてみても、長年やってきたことを

突然変えてみてもうまくいくはずがなく、あっという間に『終わり』を迎えた。

 

テイタニヤの両親はもはや限界だとある日突然彼女を残し姿を消した。少しの金を

残してはいったが、ほんとうに僅かなもので、それ以上に親に捨てられたという

事実がテイタニヤを絶望させた。そしてディアマンテの家のほうはそれ以上に

追い詰められた状況にあり、ついに彼女以外の家族は自ら首を吊り命を絶った。

たまたま彼女が外出していた、たった三十分の間の出来事だった。

 

二人はそれから互いに支え合って生きてきたが、人より恵まれた環境のもと

護られてきた彼女たちには突然の患難はあまりにも厳しく、やがて二日に一度しか

食事をとれなくなり、とうとう後がなくなった。残るは身体を売るか、

盗人となるか、ディアマンテの家族のように自殺するか・・・しかなかった。

 

互いに自分が下衆な男たちに抱かれに行くと言って譲らない。しかし論じ合って

いてもどちらも折れず、自分は汚れ、相手には余計な心の痛手を与えるくらいなら

この海に身を投げようと決めた。固く手を握ったまま海へと進んでいく。

 

『・・・ほんとうならあなただけでも生きてほしかった。でも・・・』

 

『もうこの世に望みはない。わたしたちは死ぬときも一緒、それがせめてもの幸福』

 

崖から飛び降りるための最後の一歩だった。突然それを妨げるように目の前が

輝き、眩しさのあまり二人はその場に尻もちをついた。その輝きは真実のもの

なのか、それとも幻か・・・光のなかから何者かの声が聞こえてくる。

男性とも女性ともとれる、どれほどの年齢かもわからない、まさに謎の声。

光のせいで姿もよく見えないのだ。それでも確かに聞く者を爽やかにする声だった。

 

『な・・・何が起きて・・・!?』

 

 

『・・・若き少女たちよ、なぜ君たちは意味もなく命を絶とうとするのか。

 生きたくても生きられない哀れな人々のことを少しも思いに留めないのか』

 

 

二人が死ぬことを思い留まらせようとしているようだ。二人はその声に返答する。

 

「わたしたちは生きていくためには死ぬよりも暗い絶望を味わうか、もしくは

 他人を不幸にして生き延びるしか道はないのです。だから死ぬのです」

 

「二人で考え抜いた末にこうしようと決めたんだ!邪魔をしないでもらおうか!」

 

もう一度立ち上がり、謎の声を振り切って目的を果たそうとした。ところが

その寸前で足どころか身体が突然動かなくなった。超人間的な力によって、だ。

この世には呪文を使いこなす者たちがいるとは二人も知っていたが、どうやら

そういう力とは全く別物であるらしい。そして光が近づいてくる。

 

 

『・・・わたしが君たちの苦しみと悲しみを取り去ってあげよう。わたしは

 『ハーゴン』、全ての息ある者の嘆きや苦痛を取り去るためにやってきた者

 だからである。さあ、わたしの声に耳を傾け、わたしの手を取りなさい』

 

 

もしこの声がハーゴンと名乗らなければ二人はこれを神の使い、もしくは精霊だと

思っただろう。ハーゴンという邪教の大神官の名は多くの人々に警戒感と嫌悪感を

与えるものだった。しかしいまの二人には関係ない。優しく手を差し伸べる

慈愛に満ちた目の前の存在は神々、または精霊ルビスかそれ以上の存在に見えた。

どれだけ日々信仰を抱き、この苦難のときに祈り助けを求めても何ももたらして

くれなかったそれらよりもハーゴンは遥かに救い主だった。そしてハーゴンの

言葉は口だけではないことをすぐに知った。

 

 

『・・・・・・!!こ、これは・・・!!荒れていた肌や髪があの幸せだったころの

 艶を取り戻し・・・いや、それ以上に!』

 

『疲れ切っていたのに力に満たされていくよう!こんなに爽快な気分は今までにない!』

 

身体だけではなく着ている服までもが清潔感のある僅かな汚れもないものになり、

気がつくと二人の前には食べきれないであろう量の魚とパン、それに野菜があった。

 

『何をするにもまずは食べてからにするのがいい。それからわたしと話をしよう』

 

飢えていた二人はすぐにそれらを口にした。噛みしめるたびにハーゴンへの

感謝の念に満たされていた。奇跡による救いの業に感動を抑えきれなかった。

やがて落ち着いてから、二人はハーゴンのほうを見つめて膝をついた。

 

『ハーゴン・・・様。わたしたちはあなたにどう応えるべきなのでしょうか』

 

すると、その言葉を待っていたと言わんばかりにハーゴンはそれまでよりも明るい

口調で二人に答えた。顔は確認できないが、きっと笑みを浮かべていることだろう。

 

 

『・・・いまわたしが与えた救いは一時的なものに過ぎない。真の救いを

 得たいのであれば・・・わたしが指し示す場所へ行き、『勇者ロトの子孫たち』と

 接触しなければならない。彼らは三人であるが、そのうちの一人が他の者たちと

 離れているとき、秘かに近づかなければならない。君たちはいまわたしから

 力を与えられはしたが、わたしの言うことを守らなければ死ぬからである』

 

ハーゴンたちと勇者ロトの子孫が敵対関係にあることは二人も知っていた。

ムーンブルクへ行く手段がなくなっても噂だけはなぜか届いてきて、その王国が

魔物たちの排除に熱心であったこととそのためにハーゴンの軍により壊滅的な

打撃を受けたことは聞いていたからだ。ムーンブルクと友好条約を結び、

しかも同じ祖先を持つローレシアやサマルトリアが動くのも当然だった。

 

『・・・やつらが一人になったとき・・・そのときを狙えということですね』

 

『君たちは一人とだけ近づきなさい。事を終えて確かな収穫を手にしたら

 他の二人には関わらずにその場から速やかに去るべきだ。そうすれば

 確かに君たちには幸福な未来が与えられる。約束しよう』

 

 

確かな収穫・・・それは三人のうちの誰かの首だ。真っ向から戦いを挑んでも

勝てるほどの力はないが、暗殺によってその使命を果たせる。成功すれば

ハーゴンからの報いが与えられる。テイタニヤとディアマンテはそう解釈した。

盗みすら良心が咎めていた彼女たちだったが、命を救われ新たなる力をも

与えられたいま、救い主に応えるためには迷ってはいられなかった。

そしてハーゴンに言われた場所に向かうと、三人の冒険者が歩いているのを

見つけたので、警告されていた通りに絶好の機会を待った。

 

 

 

「・・・そしてそれはいま・・・ということなのね。でも・・・正直わたしは

 まだ・・・・・・罪人でもない人を殺してまで得られる幸せが何なのかはわからない。

 ハーゴン様のために出来る限りのことをしたいという気持ちはある。けど・・・」

 

テイタニヤが一人焚き火の前に座るアーサーを見つめながら呟く。ディアマンテの

ほうも彼女と同じ気持ちだったが、ここで何もせずに帰りハーゴンの恩に仇で返すような

行為はどのような結果をもたらすかはわかっていたので本心を押し殺し、

 

「・・・・・・ならわたし一人で行く。あれはハーゴン様に逆らうやつだ。

 あの偉大な方に背くんだ。死んで当然だろう?わたしがすぐに終わらせる。

 でももしものことがあったら・・・テイタニヤだけでも逃げるんだ」

 

自分がやると懐からナイフを取り出した。あとはアーサーが眠気に襲われる時を

狙って決着をつける構えだった。ところがアーサーは突然立ち上がり、焚き火の火が

風などによって眠っているアレンたちの天幕に飛ばないこと、魔物の気配が

全くないことを確認してから辺りを見回すと、なんと持ち場を離れ、二人が

潜んでいた草むらに向かってきた。静かに、一歩ずつ迫ってきた。

 

(・・・!ば、ばれていた・・・いつから・・・!?)

 

(わからない!でも・・・もうごまかすのは無理だ!)

 

二人は助かるためにはもうここで覚悟を決めて戦うしかなかった。しかしもともと

魔物との戦闘の経験もなく、まして人に危害を加えたことも一度も無い二人が

この状況でアーサーに襲いかかるのは無理だった。足が震えて立てない。

そうこうしているうちにアーサーは彼の持つ鉄の槍の射程圏内まで二人に接近する。

二人は互いを庇い合うように肩を寄せながら息を殺していた。

 

 

「・・・・・・ここじゃまだちょっと近いな。もう少し向こうに行かないか?」

 

「・・・・・・え?」 「・・・・・・」

 

「そこにいるのは結構前からわかっていた。でもテントの二人が完全に眠るのを

 待っていたんだ。戦うつもりは全くない。この槍は予期しない攻撃のためのもの、

 きみたちに害をもたらすためじゃないんだ。あそこの木の陰に移動したい」

 

アーサーは二人を排除する気はなかった。とはいえテイタニヤとディアマンテは

言う通りにしなければ彼の心が変わるかもしれない、と思いそれに従った。

二人は動揺と緊張に満ちていたが、アーサーは普段と何も変わらず落ち着いていた。

 

 

「・・・で、これはきみたちの独断ってわけじゃないだろう。誰の指示だ?」

 

「・・・・・・言わないという選択肢はないんだろ?」

 

ディアマンテがあきらめ気味に手を広げるが、意外にもアーサーはそれ以上追及せず、

 

「言いたくなかったら別にいいよ。どうせ邪教の上のほうの人間だろ?いや、

 人間とは限らないか・・・まあとにかくその名前を言われたところで

 わかるわけもないし何ができるわけでもないんだからね。聞いたのが間違っていた。

 じゃあ質問を変えよう。どうして邪教の信者になったんだ?」

 

命の危険を冒してまで自分たちのもとにやってきたからには中途半端な信者では

ないだろう。各地で信者を増やし続ける邪教のからくりについてはアーサーも

興味があった。彼らの教えのどこが人々を集めるのか。

 

「・・・・・・それなら話してもいいかな。あなたもあのお方の素晴らしさに

 気がつくかもしれないし・・・」

 

テイタニヤは自分たちの苦難の生活から話を始め、自ら命を絶とうとしたところで

幻かもしれないが目の前に救世主が現れたことも話した。救われた恩義があるので

そのためには何でもやるという気持ちであることを隠さなかった。

 

「だからまだ詳しい教理とかはわからない。あくまであのお方に惹かれただけ」

 

どうやら邪教の祈祷師となって間もないらしい。祈祷師としての本来の

務めもこれからだというのだ。アーサーはそれを聞くと、この二人はまだ

戻れる希望があると感じた。いまは奇跡的な出来事に興奮して勢いのままに

ハーゴンの手駒となっているだけだ。説得次第で間違った世界の深みに

入ることから立ち返らせるのも可能ではないかという感触があった。

相手を刺激せず、しかし巧みで説得力のある言葉が求められた。

 

 

「・・・なるほど、確かに大した人物だ。ぼくも一回会いたくなってきた。

 邪教と呼ばれているきみたちの組織に対する偏見を改めなくちゃと思ったよ」

 

あくまで肯定から入る。ただし伝えるべきことははっきりと言わなくてはいけない。

 

「・・・だからこそ疑問がある。そんな憐れみ深い人物であれば果たしてきみたちに

 いきなりこんな危険極まりない暗殺を命じるだろうか?捨て駒同然のように」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「冷静に考えてほしい。魔物たちによりドラゴンの角の吊り橋が破壊されたこと、

 それがきみたちの苦境を招いたと言っていたね。その魔物たちを率いる総帥が

 まさにハーゴン以外にない。ハーゴンに感謝の念や恩なんて感じるべきじゃないんだ」

 

 

ハーゴンによって救われたと主張する二人に、そもそも救いの必要を生じさせたのは

他でもないハーゴンではないか、と指摘する。魔物たちが暴れなければ二人は

彼女たちの先祖と変わらず何不自由ない商人としての日々を安らかに楽しんでいたのだ。

 

「・・・それでもわたしたちは・・・あのお方を初めて見たとき・・・確かに

 どんな精霊や神よりも愛と憐れみに満ちた方だと確信した。お前にも会わせて

 やりたいほどで・・・でもどこにおられるのかなんてわかりはしないけれど」

 

「これはなかなか難しそうだ。きみたちを元の生活に戻すのは」

 

「・・・・・・元に戻る?それはもうできないよ。だってわたしたちは・・・

 あのお方によって新しい命を頂いたのだから。もう人間ではないの!

 人間と魔物の中間の存在になった!どうやって元に戻るっていうの!?」

 

 

もう人間ではない。何のことを言っているのか・・・アーサーはよくわからなかったが、

邪教の業について噂程度に聞いていたうちの一つを思い出した。

 

「・・・それは『モンスター人間』のことか。人間の親と魔物の親によって生まれた

 子どもはそうなるって耳にしたことがあるけれど、普通の人間を変えてしまうことも

 できるのか。邪教にはとんでもない力を持ったやつがいるんだな」

 

モンスター人間と呼ばれる種の存在はアーサーたちロトの子孫が大切にしている

『勇者伝』の本にも幾度も登場していた。人間はもちろん、並の魔物よりも

高い戦闘力、そして知性を持つと言われているが、逆に失敗作と呼ばれるものも

誕生し、身体は弱く戦いに向いていない無力なモンスター人間もいるらしい。

 

勇者ロトとその仲間たちの前に強敵として立ちはだかったモンスター人間たちも

記録に残されているが、いまアーサーの目の前にいる二人はどうやらそこまでの

戦闘力はなさそうだ。もしそんな力があったらとっくにアーサーは倒されている。

 

「でも見た目はほんとうに人間と変わらない。だったら取り返しがつかないことも

 ないだろう。もう一度やり直すチャンスはある。たとえば・・・・・・」

 

アーサーはそこまで言うと一度荷物をまとめて置いてある場所まで一人で

歩いていき、一つの箱を手にして戻ってきた。それを二人の前に置くと、

小さな鍵を使って開けた。すると・・・・・・。

 

 

「・・・・・・!!お、お前!これは・・・・・・!!」

 

「約1万ゴールドはある。これをきみたちに渡すからこの場は退いてほしい。

 できれば邪教とも手を切ってほしいところだけどもそれは任せる」

 

信じられないほどの大金だった。受け取る代わりにこのまま帰るようにと言う。

規模の大きい商売人の家に育ったテイタニヤとディアマンテにとって見たこともない

金というわけではないが簡単に他人に差し出せる額かと問われたら決して違う。

まして命を奪いに来た敵対する組織の者に惜しげもなく渡せるものなのか。

 

「・・・このお金はあなたたちの旅の資金のはずでは・・・!?」

 

「いや、違うんだ。ぼくがサマルトリアから持たされたお金だよ。旅の初めに

 旅の一式を揃えるのに使ったっきりさ。アレンなんかは自分で稼いだ金で

 冒険がしたいって言って譲らないからね。ずっと腐っていたんだ」

 

「しかしどうしてわたしたちに・・・そんなことに何の意味と得が?」

 

ここでアーサーはこれまでよりも更に表情を厳しくした。彼女たちに金を渡す理由だ。

 

 

「・・・これはきみたちのような人にこそ渡さなければいけないお金だ。本来、

 困窮する臣民のために王国の金銀は用いられるべきだからだ。今回だって

 ドラゴンの角の吊り橋を早くに復旧させていればきみたちが自ら命を絶とうと

 するようなことも、まして邪教に身を落とすこともなかったはずだ。管轄の

 ムーンブルクに非があるとはいえもはや滅びてしまった今、姉妹国である

 ぼくらが責任を持ってきみたちに詫びなければいけないのだから」

 

アーサーは深々と頭を下げた。いきなり謝罪された逆に二人のほうが申し訳なく

なってしまい、早く頭を上げるように頼んでしまうほどだった。

 

「あなたたちのせいというわけでは・・・」

 

「いや、ムーンブルクもぼくたちの国も魔物を倒すことばかりに躍起になって

 そちらに人と費用を使いすぎた。間違いだったんだよ」

 

「今さら仕方ないって。わたしたちがこうなったのも何かの縁か運命だったに

 過ぎない。橋を直したところで魔物たちを放っておいたらまた同じことの

 繰り返しだっただろうに。原因を絶たないことには」

 

この件に関してはムーンブルクの生き残りであるセリアが、将来また大陸同士の

貿易や人の行き来を再開させると誓っていたのでそれを信じるのがいいだろう。

セリアであれば、魔物に怯えて空高く吊り橋を架けるのではなく、魔物を

根絶やしにしてもっと簡単な移動を実現させるつもりでいるだろう。

 

 

「・・・そういうわけだから、きみたちは彼女に会わないで帰ったほうがいい。

 アレンにも気づかれないほうがいいな。そしてこのお金だけど・・・」

 

地面に置いていた大金入りの箱を手渡す。そして唯一の条件を伝えた。

 

「このお金はいつか必ず返してほしい。何年、何十年かかってもいい。

 利子なんて取らないから、余裕が出来たらサマルトリアの国に返済してくれ」

 

「・・・『あげる』のではなく『貸す』ということか。わたしたちの生活が

 軌道に乗るまでの金であって、自分たちで稼げるようになれというわけか」

 

「ああ、その通りさ。ポン、と大金が手に入ったら人間おかしくなるからね。

 ただお金をあげただけじゃ一時的な幸せと救いに過ぎないからね。そのお金が

 あるうちにちゃんとした未来設計をしてほしいんだ。きみたちは普通の人間より

 遥かに長い時間があるんだろう?焦らずにやってくれよ」

 

アーサーの言葉を聞き、二人は目を大きく見開いていた。驚かせるようなことを

言ったつもりはないアーサーとしてはこの反応は意外だったが、その理由を

聞くと彼はこの二人以上に衝撃を受けることになった。

 

 

「・・・いまだけじゃなく将来末永い幸せを・・・かぁ」

 

「お前は・・・どこかあのお方に似ているな。その言葉も雰囲気も」

 

 

あのお方・・・邪教の総帥と似ていると言われても嬉しくなるわけがない。

しかしこうなるとアーサーも気になってしまう。果たしてハーゴンとは

どのような者なのか。テイタニヤとディアマンテが主張する憐れみ深い

神よりも愛に富んだ存在であるはずは絶対にないが、ほんとうに自分と

近いところがあるのか・・・会ってみたいという気持ちが高まっていた。

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