アレンたちをつけ狙っていた邪教の女祈祷師の二人、テイタニヤとディアマンテ。
彼女たちは暗殺者であったが、アーサーは金を渡し戦闘を回避した。それに応じた
二人が邪教の上層部からどんな処遇を受けるかはアーサーの知ったことではないが、
彼が平和裏にこの場を終わらせた理由は彼女たちを少なくとも自分の手で倒したくは
なかったからだ。どうしようもない悪人であれば躊躇いなく斬りかかることに
心の痛まないアーサーが、二人の本質を見極めたうえでこの結論に至ったのだ。
とはいえその二人が去った後、アーサーは大きく息を吐いて力なく座り込んだ。
うまく説き伏せているように見えたが、彼に余裕はなく、そう思わせているだけだった。
「・・・危な・・・かった~っ・・・。よく何事もなく終わったものだよ・・・」
完全な尾行だと思っていたのにアーサーに見破られた二人がその後も勧めのままに
対話の席に座り、大人しく帰ることに同意したからよかったものの、もし自棄になって
襲いかかってきたとしたならば、よくて相討ちだっただろう。魔術師よりも位が
高いとされる祈祷師なのだ。戦闘の経験がなくともギラくらいは仕込まれているに
決まっている。アーサーが全力で立ち向かったところで実は勝機は薄かった。
どうにか自分を大きく見せることで彼女たちに説得を受けるように導いた。
(そしてぼくでよかった。今日の夜の見張りの当番がこのぼくで)
もしセリアであれば邪教に身も心も捧げた人間など人の皮を被った獣として
躊躇うことなくバギを放ち二人を殺害していただろう。それだけ邪教への
憎しみは強く、相手の本質や内面などを考えようともしないのだ。
アレンだったらどうだろうか。歴代の勇者たちに倣い、人間を殺すことを
よしとせず、どうしたらいいかわからないうちに危険な目に遭うかもしれない。
もしくは優れた容姿を持つ二人によって色仕掛けでもされたら完全に終わりだ。
(とはいえあの二人は男に自分を売ることを拒んだゆえに最終的にあのお方とやらに
付け込まれたようだから色仕掛けの可能性は薄いな。しかし誰も傷一つ負わずに
事が終わった。これでよかった、と思いたいけれどね)
金を持たせてこの場を終わらせたことをアレンたちが知ったらきっとアーサーに対し
激怒するだろう。相手を傷つけなかったとはいえこのやり方は正義ではなく邪道だ。
(ふふ・・・こういうところがあの二人に比べてぼくの足りないところなんだろうな。
これじゃあルビス様にもロトをはじめとした昔の勇者たちにも愛されるはずもないか)
そのとき、『それがきみのいいところだよ』という声がどこかから聞こえてきたような
気がしたが、もちろん辺りには誰もいない。励ましが欲しい自分の空耳に過ぎない。
アーサーは立ち上がりアレンたちの眠るテントのそばへと戻った。
それから数日、ついに彼らはムーンペタ以来の大きな町に到着した。その名は
港町『ルプガナ』。ムーンブルク大陸よりも一段上の強さを誇る魔物たちの
妨害の連続も、町まであと一歩という希望がアレンたちに普通以上の
力を与え、山々を、砂漠を、時には空中をも乗り越えてきた旅を成功させた。
「はー・・・。砂漠ではあんなに汗をかいて・・・だいぶ絞られたわ。けどまあいい
ダイエットにはなったわね。余計な脂肪がなくなってよかった、おほほほ・・・」
セリアが両腕を伸ばしながら厳しいときの記憶をしみじみと思い返す。砂漠を
過ぎた後も野宿続きであったので、彼女は自身の身体の肉がこれまでになく
落ちているのを実感していた。ただ、これは健康的なダイエットなどではなく、
必要以上に細くなってしまっているのもわかってはいたが、弱音を吐きたくは
なかったのでそのような言葉になった。それに対しアレンは、
「・・・それはいけないな。いまは疲れて食欲もあまりないかもしれないけども
たっぷり食っておけよ。あんまり痩せた女はおれの好みじゃないからな。
どうだ、あの店で売っている丸い菓子はうまそうだぜ。買ってくる」
本気でセリアを気遣うような表情、そして真剣な声。この返しは彼女も予想しておらず、
(・・・・・・てっきり『ちょうどよかったじゃねえか』とか言うものだと
思ってたけれど・・・こんなに心配されるなんてね)
「ふん、別にあなた好みの女性になるつもりは毛頭ないけれどそうさせてもらうわ。
まずは食事にしましょう。お菓子は売りきれないうちに先に買っておくとして・・・」
まだ昼間であったので宿屋探しは後でいい、まずは昼の食事のための場所だ。
雰囲気のよさそうな一軒の料理店を見つけ、三人一致でその店にしようという
ことになった。海の魔物の影響で漁業は以前に比べうまくいっていないと嘆く
町人はいたが、多少値段が上がったくらいでまだまだ魚料理を楽しめるようだ。
「そういえばアレンのローレシアでも漁が盛んだったね。懐かしいんじゃない?」
「ああ、でも魚の種類が違うだろうがな。それにローレシアよりも値段が高い。
いまはたくさん金を持っているからいいが節約したいなら入れない店だぜ」
「・・・料金が高いだけならまだいいわ。そのうち食べられなくなるかもしれないのよ。
わたしたちが平和な海を取り戻さない限りはいずれそうなるわ」
海の魔物を一匹一匹片づけてもきりがない。やはりその魔物たちを凶暴化させた
邪教を壊滅させない限りはセリアの言葉通りの未来が待っているだろう。
この町だけではなく、ローレシアでも僅かながらその傾向はすでに見られているのだ。
そのためにもまずはここで満腹になるまで食べて飲み、英気を養うのが大切だ。
「いらっしゃいませ、旅のお方!空いているお席にご自由に・・・」
「・・・・・・・・・!!あっ!!」
アレンたちを迎える店員。その姿にアーサーは固まってしまった。なんと、数日前彼が
深夜に秘密の交渉をした女祈祷師のテイタニヤではないか。もう一人のディアマンテも
他の客の注文をとったり料理や酒を運んでいる。当然この二人のことを知らない
アレンとセリアにとっては何でもないことで、どこにでもいる若い女性の店員に
過ぎない。アーサーはこっそりと彼女たちに近づき、小声でわけを尋ねた。
「きみたち・・・これは・・・」
「・・・まさかこんなに早く再会するなんて。まああんたたちはこの町を目指して
北上していたから当然なのかもしれないけど。見たまんまさ、働いているんだよ」
「しばらくはこの店で地道にお金を貯めようって決めたんです。あなたから頂いた
大金は保険として持ってはいますがまだ手をつけてはいません。約束通り
いずれお返しするために、あなたと別れてからすぐにここで働くことにしました」
ハーゴンによって人間と魔物の中間の存在ともいえるモンスター人間に転生
させられたとはいえ見た目はこれまでの人生のままだ。人間の社会に
溶け込むことなど容易い。雇う側も疑問を抱くことすらないだろう。
「・・・大きな力を持つ商人の家に生まれたわたしたちに足りなかったのは謙遜さ、
へりくだる気持ちだった。今まで心のどこかで見下していたような人々に
使われることをよしとせず、そのせいで状況を更に悪化させてしまったんだ」
「娼婦になるとか盗人になるとか・・・または自ら命を捨てる。そんな極端な
考えしか思いつかなかった。はじめからこうしていればよかったのです」
二人にとって大きな遠回りだった。テイタニヤの言うように、最初から
己を低くしていれば邪教の一員になどならなくても済んだのかもしれない。
「まあそのおかげであんた、それにあのお方にも出会うことができたんだ。
一概に失敗とも言えないさ」
「前向きだね。その調子なら必ずこの先うまくいくさ。でも・・・」
アーサーが懸念している事柄について聞こうとしたところ、後ろから大きな声で、
「おい!アーサーッ!!何やってんだ――っ!お前おれとの約束忘れたのか!
女遊びもしないし口説きもしねえと誓ったじゃねえか!お前がそれを破るって
いうのならおれも今から酒を飲ませてもらうとするぜ―――っ!!」
アレンが吠えていた。面倒くさい男だとセリアは冷ややかな視線を向けていたが、
アーサーは一応、男と男の約束であったのでちゃんと弁明することにした。
とはいえ真実は伏せて、事態がややこしくなるのを避けながら。
「違う違う。このお酒をちょっと安くしてもらおうって思っていたんだ。
これは大したものだけどなかなか高い。ねえ、少しまからない?」
酒の値段交渉に見せかけた。これでもしほんとうにまけてくれたならばそれはそれで
儲けものだ。この二人なら応じてくれるかもしれない。しかしそう甘くはなく、
「それは無理です。わたしたちはまだ新入り、そんな権限はありませんよ」
「・・・そう。それは残念。じゃあ定価で貰おうかな・・・」
苦笑いしながら席に戻ってきたアーサーにまたもアレンが噛みついた。
「アーサー、あんまりみっともないマネはするなよ?お前だけじゃない、
おれたちまで、しまいにはおれたちの国までよくないうわさが広がるぜ」
「そうかな?この町でぼくたちの正体を知っている人間なんていると思う?
ムーンペタやリリザとは違う。誰一人気がついていないだろう。これから先は
例外の場合以外は身分を隠して旅をしたいと言ったのはきみじゃないか」
「うーむ・・・そうなんだが・・・ま、勇者ロトの子孫として、それに
ルビス様の名に恥ずかしくないような行動をしろってことだよ」
そんな二人をよそに、セリアは届いた料理を先に食べ始めていた。
「どうでもいいけど、冷めるわよ?さっさと食べないと」
「・・・・・・この調子ならお前さんの身体もすぐに元通りだな」
それからたっぷりと昼食の時間を楽しみ、代金を払って店を後にした。
次に向かうのは武器と防具の店だ。アレンの剣とセリアの防具の調達が必須だった。
「特別な素材の『みかわしの服』が欲しいわね。兜や盾は重いから持てないし」
「そうだな。おれのほうは剣がだいぶ傷んできた。手入れはしているんだが
ここまでくると新しいものに買い替えたほうが安く済むかもな・・・」
その店に向かう途中でちょっとした出来事があった。彼らを呼びとめる声があった。
「ねえそこのお兄サン、あたしって可愛いでしょ?ぱふぱふしていかない?」
バニーガールがアレンに誘いの言葉を投げかけてきた。しかしアレンはそれに
答えを返すこともそちらを向くこともせずに無視するようにその場を離れた。
「・・・ってあら、あたしより可愛い女の子を連れているじゃない。
それじゃ仕方ないわね。大切にしてあげるのよ~」
案外諦めが早く、すぐに他の男に狙いを変えたようだ。バニーが見えなくなった
あたりまで歩いてからアーサーとセリアがアレンの振舞いについて質問を始めた。
「さっきのは意外だったよ。きみのことだからもしかしたらと思ったけれど、
まさか全く相手にしないだなんて。よほど好みじゃなかったのかい?」
「・・・・・・」
「もしかしてわたしたちが邪魔だったかしら?別にいいわよ、行ってきても。
無理して格好つけなくたって誰も気にしないわ」
二人の話している内容がまるで見当違いだとアレンは首を何度も振る。
全ての真相に気がついているのは自分だけだ、彼は二人にそれを教えた。
「・・・いいか、二人とも。あれは・・・女装した男だよ。それも結構いい歳した」
「・・・・・・・・・は?」 「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまう。いまアレンに言われるまで全くわからなかったのだ。
「・・・・・・冗談・・・ってわけじゃないみたいね、その顔は」
「よ、よくわかったね。ぼくらはすっかり騙されてしまっていたよ」
アレンは胸を張り、得意気に笑顔を見せるが仲間たちの反応は思ったものとは違い、
ひそひそと二人で小声で話し始めたのだった。
「・・・やっぱり女性に対して異常なまでの執着を見せる男は違うわね。
匂いとかでわかる・・・とかだったらちょっと怖いわ」
「きっとこれまで何千人もの女性の身体をじっくりと眺めてきているのだろう。
ローレシアの王子という立場を利用すればじゅうぶん可能なのだから」
冗談も混ざっていたようではあるが、アレンはそれまでの笑顔とは違う笑みを浮かべ、
「よ―――し、お前らっ!一人ずつお仕置きしてやるからこっちにこい!」
結局アレンの『お仕置き』が決行されることはなく、武器や防具、この先の冒険で
必要とされる道具の購入をこの日のうちに終え、翌日は情報収集に専念できる。
これからどこへ向かえばよいのか、またその手段は・・・。船に乗って遠くまで
旅をする人々ならばアレンたちの知らない多くの情報を持っているだろう。
「じゃあまた明日。それにしても久々の宿屋だなぁ・・・ってムーンペタでも
言った気がする。大きな町と町の距離が長すぎるよ」
「そうね・・・。ムーンペタの宿ほどじゃないけどテントとは比べようがないわね。
じっくり疲れを癒しましょう。アレン、あなたはわたしたちが寝静まったら
さっきの人のところに行くんでしょう?あれは男だとか何とか言ってほんとうは・・・」
「なるほど!あえて男ということにしておけばぼくらの目をごまかせるというわけか。
そんなことをしなくても別に止めないというのに・・・」
まだアレンを半分冗談、半分疑いの目で見る二人に対し彼は、
「・・・お前ら、そんなにおれを男色家にしたいようだな。わかった、それなら
アーサー、お前はサマルトリアの妹と寝ろ。セリアはその辺の汚い犬とでも楽しめ」
「・・・・・・は?」
「男同士で寝るのも近親姦も獣とやるのも全部重罪だ。どうしてもおれを国から
追放され存在すらなかったことにされるような男にしたいのならお前たちにも
そのくらいの覚悟はあるってことだよな?」
アレンは本気で怒っていた。さすがにいじりすぎたか、と二人は反省した。
それを見てアレンは何も言わずに自分の部屋へと去っていき、セリアもまた
アレンがいなくなってからあくびを一つすると眠る準備を始めた。
「・・・・・・さて、アレンもセリアももう寝たかな・・・よし」
他の仲間が寝静まるのを待って宿屋から出ていったのはアレンではなくアーサーだった。
まだ昼間の店には明かりがついている。もう一度テイタニヤたちに会っておきたかったが、仲間にいらない誤解を抱かせないためにこうしてひそかに出てきていた。
彼に気がついた二人のほうももう仕事は終えていた。これならじっくりと
話すことが出来そうだ。
「どうしましたか?一人で晩酌ですか」
「まあそんなところだね。よかったらきみたちもいっしょにどう?仕事が終わって
いるんだったら客として一杯・・・お金なら出すよ?」
「・・・まだわたしたちに話したいことがあるって顔だな。いいさ、付き合おう。
でも自分たちのぶんくらいはこっちで払う。それなら構わない」
アーサーは昼間よりも値段は安いが強い酒を飲み、モンスター人間の二人も
そこそこの酒で一日の労働の疲れを癒していた。
「この身体になってからこれまで飲めなかった酒が入るようになった。とはいえ
別に半分魔物だからって好みが変わったりはしないけれどな。人の血や肉が
欲しくなったりとかそういうのはない。体力は比べ物にならないほど漲っているが」
「・・・その身体・・・か。きみたちにその力を与えた『あのお方』に関してだ、
ぼくが気になっているのは。ほんとうに大丈夫なのかな、と思ったんだよ。
きみたちはぼくたちを攻撃すらせずに・・・制裁は避けられないだろう」
何も持たない二人に突然並外れた力を与えたのだ。その期待に背いた裏切りの
責任を取らされるに決まっている。幸せな時間は突如として奪われるに違いない。
しかし二人はそんなに思い悩む様子を見せずに、終始あっさりとしていた。
「そうかもな。ま、それなら仕方ないさ。もともと自ら海に身を投げようと
していたんだ。今さら命が惜しいということはない」
「・・・そんなもの・・・なのかな?」
「ええ。それにあのお方があなたの言うような残酷なことをするなんて
思えません。直接そのお声を聞いたわたしたちにはわかります」
二人が現状を受け入れているのでアーサーはもうそれ以上は語らなかった。
現実的な助けを差し伸べようかとも考えたがその必要はない。あとは
どうなろうとも彼女らと邪教の者たちの問題だ。
「だからあんたも思い悩むな。それよりもあの金だ。いつか必ず返しに行く。
あんたが近い将来サマルトリアの王になるまでには・・・」
「・・・いや、その件だけど、あの夜はそう言ったけども別に返さなくたって
構わないよ。きみたちがこうして勤勉に働いている、その結果が欲しかったための
言葉だったんだから。『あのお方』とやらにいまだに敬意を示しているのは
気になるけれど、あのお金が邪教の活動資金にされたりしないのはわかる。
サマルトリアで父からただで受けたものなんだからただで与えただけだよ。
まあきみたちの気が済まないっていうのならいつか・・・」
その後も酒を飲みかわし、基本的には雑談のなかで時々『あのお方』、つまり
ハーゴンに関しての情報を聞き出そうともしたアーサーだったが、うまくいかない。
二人が隠しているというわけではなく、姿すら見ていないのだから仕方ない。
それに、邪教への愛着や忠誠はほとんど感じられないが、ハーゴンという存在を
崇め、もはや神に近い存在だと考えている二人の気持ちは変えられなかった。
(確かハーゴンというのは神ではなくあくまで『大神官』だった気がするけれど。
ならば彼らの神々についてどうしてこの二人は教えられなかったのだろう。
そこが一番重要な気がするのに・・・)
このことに関してはアレンたちの間でもはっきりしていない。『打倒ハーゴン』を
掲げてはいるが、ハーゴンやその配下が崇拝しているとされている邪悪の神々とは
果たして何なのか。それは実在するものなのか、彼らの想像するものに過ぎないのか。
もしほんとうに存在するのだとしたら、どれほどの力を持っているというのか・・・。
これらは自分の目で確かめるしかないようだ。その後に命があるかは知らないが。
「じゃあ二人とも、お元気で。また会える日を楽しみにしているよ。
・・・もしかしたら明日また会うことになるかもしれないけれど」
「はい、サマルトリアの王子、テンポイントさま。あなたもお元気で」
アーサーは酒に酔って余計なことまで話す人間ではなかったが、この日は
テンポイントという本名に加えいろいろなことを語った。後から思えば
秘密にしておかなければいけない情報のいくつかをこぼしてしまったかもしれない。
それでも構わないと彼が考えたのは、彼女たちが信頼に足りると判断したからか、
もしくは近いうちに聖人の皮を被った無慈悲な者によって処刑されるからなのか。
後者のほうはそうなってほしくはないと願いながら宿屋に戻った。すると、
「・・・セリア・・・起きていたのか」
「ふふふ・・・アレンは寝ているけれどわたしは違うわ。昼間のときから怪しいと
思っていたもの。爆睡している単細胞な男はすっかり気にしていなかったようだけど。
あなたにしては珍しくわたしといっしょになってアレンを煽って注意を逸らそうと
思っていたみたいね。まさかあなたがこっそりと女の子に会いに行ってたなんてねぇ」
アーサーは全身が冷たくなった。会話の内容を聞かれたか?彼女たちの正体を
知られたか?この場をどう切り抜けるのが最善かを必死で考え始めたが、
「・・・そんなに心配しなくたって平気よ。わたしはそこまで追跡はしていないわ。
あなたがあの店の女の子たちと会ってその後何をしていたかも知らないし聞いたりも
しないわ。むしろたまにはいいじゃない、息抜きしても。あいつには内緒にするわ」
心の底から安堵した。自分がどんな誤解をされようが構わない。彼女たちが邪教に
関わるものすべてを除き去ろうとするセリアによって命を奪われずにすんだのだから。
「・・・ところで・・・もしこっそりと出ていったのがアレンだったら?」
「別の意味で詳細を聞いたりはしないわ。すぐに捕まえて百叩き、それ以外ないわ」
今日のところは何も悪いことをしていないはずなのにどうにもいい目を見なかった
アレンに同情と謝罪の気持ちを感じつつ、アーサーもようやく寝床に入り、眠りについた。