ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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起承転結Ⅸの巻 (竜王の城③)

ラダトーム城がわずか二人の『神の子の使い』を名乗る者たちによって陥落した。

町の人々は、富を独占し腐敗した政治を推し進め、挙句の果てに弱く貧しい者たちを

虐げていた王家と貴族、高貴な者たちが除き去られたことを喜んでいた。

不思議なことにそのなかでも民衆から人気のあった大臣や一部の兵士たちは皆揃って

殺戮者たちの手から逃れていた。彼らは王たちの悪事に加わっていなかった。

 

しかし喜んでばかりもいられない。神の子、つまりハーゴンがこれから自分たちをも

滅ぼすためにやってくるのではないかと恐れた。ラダトームは数百年以上昔、

この国が生まれたときから精霊ルビスへの信仰で満ちている。邪教の総帥が

残った自分たちをどう扱うか、希望は薄かった。そんな彼らのもとに

先代竜王シービスケットが現れ、群衆を一つのところに集めると、自分は

高きところに立ち、大声で呼びかけて言った。

 

 

「ラダトームの人々よ、ハーゴンとその使いを恐れてはならない!彼らは

 すでにあなた方が知っての通り、悪を愛する者たちだけを滅ぼしたからだ!

 そして彼らはラダトームの富には一切手をつけずに去っていった、これは

 もうこの地へ戻ってくることのない証だ。だからわしはいま、本来

 あなた方が恩恵を受けるはずだったその金や銀、その他すべてを開放する!」

 

ラダトームの新たな支配者であるかのように民に指示を出す。ところが人々は、

 

「いいえ、私たちはもうこの都市、この町にはうんざりだ!私たちを奴隷のように

 縛りつけていた者たちは死んだ!先祖たちのように新たな大陸を目指す!」

 

あまりにもこの地での思い出によいものがなかったので、出ていきたいのだという。

また、彼らは口にこそしなかったがハーゴンのほかに竜王たちをも恐れていた。

不平等条約のもとずっと耐え忍んできた竜王軍の魔物たちがその恨みを

晴らそうとどのような暴挙に出たとしても、もうそれに対抗できない。

現に今先代の竜王はアレフガルド全土の王のように振る舞っているのだ。

シービスケットのほうも、人々の心の奥の気持ちはわかっていた。なので、

 

「ならばそれぞれこの城より金目の物を持ち運び、それを持って好きな場所へと

 向かうのがよいだろう。奪い合いなどしなくとも皆に有り余るほどの

 財宝がある。それだけ彼らは不当に蓄えていたのだ。船代をはじめ、新しい生活を

 始めるための金などじゅうぶんにあるではないか。さあ、強欲な者どもの

 遺産を皆で分け合うのだ!」

 

 

こうしてシービスケットの言葉の通りに事は進み、ほとんどの人々が近日中に

去っていくこととなった。ラダトームどころかアレフガルドじゅうがこれで

『魔物の楽園』となり、先代竜王の望んでいたとおりになっていった。

 

(・・・ハーゴン・・・やつが真に死すべき者たちだけを打ち倒し、宝を全く

 持って行かなかったおかげで・・・人間にも魔物にも平和がもたらされた。

 まさかここまで全てわかっていたうえで・・・!?)

 

 

 

 

魔物たちの解放という記念すべき日ともあっては、竜王の城では大騒ぎだ。

アレンたちもその宴に招かれ、共に飲んで、食べるように勧められた。

百年に渡ったラダトームの支配がたった一晩の出来事で大逆転、勝利となった。

 

「はっはっは!だからわしは最初から言っていたのだ、ハーゴンよりも

 ラダトームに注意しろと!息子よ、そこのところがわからなかったとは

 お前もまだまだのようだな!何なら竜王の座を返上するか!ん?」

 

「・・・・・・いえ、父上はそのまま隠居の身でいてください。くっ!」

 

現竜王ホクトボーイは祝いの場であっても終始苦々しい表情だった。まんまと

ラダトームに騙され、引退した父に全ての点でまだ勝っていないということが

公になってしまったからだ。素直に喜んでなどいられなかった。

 

「ふんっ・・・!気に入らないわ!ハーゴンを英雄のように扱うようなこの祭り!

 魔物たちの宴会に参加することだってだいぶ譲歩したのに!最悪の気分よ。

 ハーゴンの狙いはこれだったのよ!ほんとうに狡猾で卑劣な悪魔だわ」

 

ハーゴンを称えるかのような魔物たちも多いなか、不機嫌なのはセリアも同じだ。

不快感を露わにしている者同士、ホクトボーイと共に座っていた。

 

「・・・ほう・・・と、いうのは?」

 

「ハーゴンはわたしの故郷では恐怖の破壊者として、ラダトームでは救い主のように

 己を見せることで、様々な方法で存在感を示して信者を増やそうとしているのよ。

 何を言われようがあなたは正しいわ。警戒すべきはハーゴン以外にないわ!」

 

「おお、わかってくれるか!父上たちの考えは甘いのだ。この時代、世界に

 目を向けねばならぬのだ!世界の脅威である邪教への対抗策をこれからも・・・」

 

すっかり意気投合していた。それを遠くから見ていたシービスケットはアレンに近づき、

 

 

「ふむ・・・あの二人、なかなかにいい感じではないか・・・そう思わぬか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「どうだろう、わしはそろそろ息子にも妻を与えてやりたいと考えていたのだ。

 あのセリア王女はホクトボーイにふさわしい素晴らしい女性だな。

 彼女さえよければわしは真剣に、きみたちの旅が終わり次第・・・」

 

 

ラダトームと同じような展開が始まるのか、とアレンは目を鋭くした。

気の利いた言葉で先代竜王を退けようとしたが熱くなったあまり、

 

 

「・・・・・・いやだ!」

 

 

自分でも馬鹿か、と思ってしまうほどだった。しかもそれを聞いたシービスケットは

老獪な笑みを浮かべ、アレンの肩をぽん、と叩いた。

 

「・・・ふはは、安心しろ、冗談だよ。あいつにはもう決められた相手がいる。

 これから先の旅、あの子を離すなよ?そして守りつづけろ」

 

「・・・・・・あんたに言われなくてもそうするってんだよ。それよりもだ、

 もういいだろう、約束通りあんたの宝をもらおうか」

 

アレンがあまりにも露骨に話題を変えようとするのでその場にいた者たちは

噴き出してしまい、それもまた彼の顔を恥ずかしさ、そして怒りで赤くする。

いまこの輪のなかにセリアがいなかったことだけがアレンにとって救いだろう。

 

 

「・・・うむ、これだ。さあ、受け取るがいい」

 

「おっ・・・大層な箱に入ってやがるじゃねえか。これで薬草一枚だったら・・・」

 

 

大きな宝箱に保管されていた貴重な品を渡され、期待に胸を膨らませて箱を開けた。

その中には剣が入っていた。アレンはそれを手に取るまでもなく、見ただけで

この剣が特別なものであり、確かにこの世に並ぶもののない宝であることがわかった。

それは彼の先祖が世界を左右する決戦に勝利を収めた際に手にしていた剣だった。

 

「・・・・・・ロトの剣・・・!」

 

「そう、本物だ。その子孫には語り継がれていたのか?この剣の姿形が」

 

「まさかあんたたちが持っていたとはな。ブライアン様が身につけていた装備は

 どれも散り散りになって行方がわからなくなっていたんだ。どうやって

 手に入れたんだ。盗んだのか?そして他のものはどこにあるんだ?」

 

失われていた伝説の剣をこんなところで見つけたことで、アレンはシービスケットに

次から次へと質問を重ねる。しかしそれらに答えるつもりはないようで、

 

 

「・・・ま、詳しくは言えないがとにかくあらゆる手段を用いて手に入れたとだけ

 言っておこう。きみも知っているだろう、この剣によって我が祖父は倒され

 アレフガルドの魔物たちの苦しみの日々は始まった。わしの父も伯父も殺され、

 戦いに参加しなかった叔母もいなくなってしまった。そんな憎き忌まわしい剣を

 この手で破壊してやりたい、そう思うのは無理もないことだと思わないか?」

 

「・・・・・・」

 

「しかし大魔王ゾーマでも砕くのに三年を要し、我が祖父に至っては壊すことも

 できなかった。その者たちに大きく劣っているわしなど、傷一つもつけられない。

 ラダトームの連中に見つかってやつらが喜ぶのも癪なのでな、こうして保管して

 今日まで過ごしてきたが・・・本来の持ち主のもとに帰るときが来たようだな」

 

 

アレンに手にするように促す。世界を救わんとするこの時代の勇者に伝説の剣が

渡される瞬間となり、騒いで酔っていた魔物たちも注目し、セリアも近づいてきて

どのようなことが起きるのかをしっかり見届けたいと思っていた。

そしてついにアレンがその剣を持ち、高々と掲げてみた。ところが、

 

「・・・これといって特別な気持ちは湧いてこないな。おれのアザも反応しない」

 

「む・・・ならば試し斬りのための木でできた人形を持ってこい!」

 

その剣を振るってみれば考えも変わるだろうとシービスケットは速やかに

用意を整える。アレンもそういうものか、と言われた通りにした。

 

「うりゃあぁぁっ!!」

 

人の形をした木の人形は見事に切断された。魔物たちから歓声があがったが、

当の本人は失望を浮かべ、その剣を静かに台の上に置いてしまった。

シービスケットに対しても、ただただ元気のない、彼らしくもない声で言う。

 

 

「・・・これは偽物だ。残念だがよく似せてあるだけの剣だよ」

 

「な・・・なんと!そんなはずはない!確かにこれは・・・」

 

「こんな剣であんたの爺さんをはじめとした、力ある魔王たちが倒せるはずが

 ないだろ。特別な力は一切感じられなかった。それでいて切れ味も鋼鉄の剣と、

 破壊力はおれがいま使っている金槌とそんなに変わらねえ。これをロトの剣として

 使うなんて、誇りある祖先たちへの侮辱だ。いらねえよ」

 

『ロトの剣』が店で売られている武器と比べても何ら特筆すべきものがないことに

アレンはすっかりこの剣への興味を失っていた。すると横からアーサーが

やってきて、剣をひょいと持ち上げると、自身の手にしっくりくるのを感じていた。

 

「・・・まさかお前こんな偽物をこれから武器にするわけじゃあ・・・」

 

「ロトの剣とかその偽物だとか思うからいけないんだ。なかなかのものじゃないか。

 少なくとも鉄の槍なんかよりはね。余計なことを考えずに使ってしまえばいいんだ」

 

「・・・そういうことならまあ・・・止めはしねえよ。しかし不思議だな。

 鋼鉄の剣と重さは同じくらいなのにあっちはだめでこっちはいいだなんてな」

 

「せっかくもらったんだから細かいことなんていいじゃないの。アーサー、これから

 その剣を大事にしなさいよ。隣の力馬鹿は金槌を振り回していればいいのよ」

 

「・・・・・・てめ―――――っ!!このくそアマが―――――ッ!!」

 

 

セリアの言葉に堪忍袋の緒が切れたアレンがその金槌を持って吠えながら

逃げる彼女を追う。もちろん二人とも本気ではない。アレンは怒りに狂った

ように見えるが確かに笑っていて、セリアもいたずらっ子のような顔をしていた。

 

二人の『芝居』の様子にアーサーは大勢の観客と共に拍手をしていた。その一方で

彼特有の、抱いた疑問を頭のなかで一人論じる時間が始まっていた。アレンが

拒否したことで今日から彼の武器となったロトの剣に関してだ。

 

 

(・・・これは確かに本物なんだろう。そうでなければ鋼鉄の剣も満足に扱えない

 ぼくの手に合うはずがない。ロトの血をひく者だからこそ、なのだろう。

 しかしアレンの言うことも確かだ。とても伝説の剣だなんて大層なものには

 思えない。そう思えてしまう理由は・・・長い年月の末に剣自体が劣化したか、

 もしくはロトの血自体がかなり薄まっていてこの剣の祝福もそのぶんしか

 受けられないということなのか・・・アレンにはとても言えない説だな)

 

 

「じゃあ地図とこの剣、あんたたち親子からの贈り物をこの先大事に

 使わせてもらうぜ。しかしこの先おれたちは何をすればいいんだ」

 

最終的には邪教の総本山を目指すことになるのだが、そのためにはどうすべきか、

船が手に入り世界地図という頼もしいものも譲られ、世界が広がったことで

逆にどこから向かえばいいのか、何を手に入れればよいのか選択肢が無数に広がり

アレンたちを迷わせる。人の住む大きな都市はラダトーム以外なくなってしまい、

そのラダトームですらもう間もなく長い歴史を終えようとしているアレフガルドに

まだ向かうべき場所はあるのか、この土地に誰よりも詳しい親子に聞いてみた。

すると、今後の旅路にとってとても重要な情報を聞くことになった。

 

 

「そなたたちは打倒ハーゴンを目指しているのだろう?やつの本拠地に

 乗り込むというのなら・・・『五つの紋章』、そして『ロトの装備』!

 世界中をまわりそれらを一つも欠けることなく手に入れるのだ!」

 

「・・・五つの紋章・・・?なんだそれは?ロトの装備っていうのは

 いまアーサーが持つ剣以外の防具のことなんだろうが・・・」

 

「紋章がなければハーゴンのもとへはたどり着けまい。ロトの剣と防具を

 装備しないことにはハーゴンには勝てない。どちらも必要なのだ。

 その紋章のうち一つはかつてメルキドと呼ばれた町の南の海に

 小さな島があり、その島の大灯台にあると聞いているが・・・・・・」

 

紋章の正体については謎のままだが、早くも次に目指すべき場所は決まったようだ。

実際に手に入れてから紋章とはどのようなものなのか確認するのがいいだろう。

一つ入手すれば勢いに乗れるかもしれない。『大灯台』と呼ばれる塔に

さっそく向かおうとしたが、シービスケットから警告を与えられる。

 

「・・・しかし用心するがいい。その塔はわしらの支配が行き届いていない。

 人間相手に容赦することはない、邪教の影響を受けた残忍な者どもだと

 報告を受けているだけでわしらも行ったことがないのだ」

 

アレフガルドの人間たちとも竜王軍とも接触を持たない大灯台の魔物たち。

目的の品があるとはいえいきなり向かわせてよいものかと竜王親子は

躊躇ったが、アレンたちがその程度で後ろ向きになるはずがなかった。

 

 

「なーに言ってやがるんだ、あんたたちは!おれたちが負けるわけないだろ!

 もしそれで倒れるようだったら所詮はそこまでだったって話なだけだ」

 

「そうね。一番近いっていうのなら一番最初に行くのは当たり前じゃない。

 時間を少しでも無駄にはしたくないわ。紋章とやらをさっさと全部集めて

 ハーゴンをこの手で倒す!そのためには遠回りなんてしていられない!」

 

 

「・・・ふむ・・・ならば止めはしない。しかし意地を張って無理はしないようにな」

 

「ああ。何かあったらまた来るのだぞ。我らは親友なのだからな」

 

世界地図とロトの剣のほかにも旅に必要な食物や衣類などを持たされ、しかも

引き続き案内役としてしびれくらげの二匹を連れていくようにと渡された。

竜王城で朝を迎えるとアレンたちは出発し、大灯台へと船で向かった。

 

 

「今回は驚かされることばっかりだったわ。結果的には多くのものがこうして

 手元にあるわけだけれどラダトームみたいなことは二度とごめんだわ」

 

「・・・そうだな。おれもこれからは・・・・・・」

 

ここでアレンは言葉を濁した。まさか『これからはもっとそばでお前を守らないと』

などという台詞が出てくる人間ではなかったからだ。一種の興奮状態にあった

ラダトームでの逃亡劇のときの感情の高まりはアレンもセリアもすでに沈静化し、

どちらもそれを後になって語り合ったり振り返ろうとはしなかった。

 

 

「・・・そういえばアレン、きみも確か竜王城で昨日の夜・・・ホクトボーイに

 縁談を持ちかけられていたような・・・妹と結婚しないかって」

 

アーサーの言葉にセリアの表情が変わった。そんなことは知らないといった様子だ。

城で出された酒のせいで彼女が早くに眠ってしまった後に起きた出来事だった。

動揺を悟られないように立ち上がってその場から離れたところで話の続きに

耳を傾けようとしたが、アレンの説明によってすぐに戻ってくることとなった。

 

「・・・・・・ああ、それか。お前、その妹を見たか?」

 

「ん・・・そういえば会わなかったな。やっぱり美人だった?」

 

「わからねえな。なんたって・・・純粋な『ドラゴン』だったんだからな!

 シービスケットが人間の女と子どもをつくればホクトボーイのような

 モンスター人間になるが、ドラゴンとの間には人間の血なんて入ってない

 ただのドラゴンが生まれるのは当たり前だった!だからあの野郎、

 ホクトボーイも遊びで言ってやがった!くそ、親子揃って気に入らねえ冗談を」

 

父の冗談とは、セリアをホクトボーイの妻に、というものだったが、彼女の前で

自分のそれに対する反応を知られてしまったら恥ずかしいことこの上ない。

アレンは頭を掻きながら、もらったリンゴの実に力強くかぶりついた。

 

 

「あら、勿体ないことをしたんじゃなくて?結婚できないわけではないでしょうに。

 シービスケットだってラダトームの女性を妻にしたって言っていたじゃない。

 ドラゴン族のなかでは素晴らしく美しい方だったかもしれないわよ」

 

「ちっ・・・そんなにてめえはおれとあのドラゴンをいっしょにしたいのか。

 見分けなんてつかねえだろ!まあ向こうもそれは同じかもしれねえが・・・。

 でもシービスケットの爺を唯一評価できるところがあるとすれば、ラダトームが

 友好のために王族貴族の女だといって連れてきた人たち、あいつは最初から

 全部嘘だとわかっていたのにその人たちを思って受け入れたってことだ」

 

「ふーん、そうだったの。まあわたしには関係のない話だわ」

 

 

アレンを茶化すセリアの様子は、明らかに何かに安堵しているようだった。

当事者アレンにはわからなかったが、アーサーには隠しきれなかった。

 

(・・・ふふ、ラダトームに行ったことは確かに無駄ではなかったようだ。

 行く前よりもすっと二人の距離は縮まっているじゃないか)

 

アーサー自身もロトの剣という収穫を手にし、気分は上々だった。これまで

他の二人と比べてロトの子孫としての資質に劣っていると感じていたが、

この剣を扱える、ということが自分にもロトの血が流れ、精霊ルビスからの

加護が与えられている証となったからだ。

 

(竜王の城・・・この旅の目的を果たしたらまた行ってみたいものだな)

 

 

竜王たちは多くの点で寛大さを示した。百年前の因縁を水に流し、惜しみなく

貴重な品々を与えてくれた。だからアーサーもまた彼らに対し寛大に接した。

 

アーサーは歴史を正確に把握していて、偉大なる先祖ブライアンが、彼の倒した

竜王のその娘に暗殺されてその生涯を終えたことを知っていた。それを

シービスケットやホクトボーイが把握しているかはわからないが、アーサーは

それに関して一言も言わなかった。アーサーも過去のことを不問としたのだ。

 

 

 

ラダトームの地に縁の深い勇者ロトの末裔三人がやって来たことに動かされて

数日のうちに急激な変化がもたらされたアレフガルド。多くの勢力が集結し

誰が最終的に笑うことになったのか。それは滅ぼされた王家以外の皆だった。

 

アレンたちロトの末裔は先祖の愛用していた剣と多くの品を船に積み込み、

彼らを愛し続ける精霊ルビスの祝福をまた感じることができた。

 

竜王をはじめとするこの地の魔物たちは自由を得た。厳しい生活を強いられていた

ラダトームの民衆たちもまた解放を味わい、新たな土地へと希望を抱いて旅立った。

 

ハーゴンと仲間たちも確かに目的を果たした。しかしその真の狙いはどこにあるのか

アレンたちにはわからない。依然謎の深まる相手であることに変わりはない。

 

 

ラダトームの王国は終わりを迎えたが、ある意味では彼らも『報いを得た』と言える。

自分たちの邪悪な行いの結果が返ってきただけだった。アレフガルドの土地そのもの、

また勇者ロトの血統であるからルビスの加護を受けられるのではなく、正しく清い

生き方をすることこそ何よりも大切であったことを最後まで知らなかったからだ。

その滅びを見たアレンたちも、無条件でルビスからの保護を得られるわけではないと

今後の歩み方の教訓、戒めとしてこの地を後にすることになった。

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