ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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気まぐれジョージの巻 (デルコンダル①)

 

デルコンダルの王、『ジョージ』。アレンたちも知っていた通り、彼らよりも少しだけ

年上だった。サマルトリアの優れた戦士であるカブラヤとガビーの二人と同じ歳で、

まだ十代の半ば、若いうちから先代の後を継いで国王として治めていた。

 

王としての彼はその若さのせいなのか、『安定感』という言葉とは無縁の治世だった。

たとえば朝、上機嫌のうちに国王としての恩赦を罪人に与えたかと思えば夕刻には

別の囚人を牢屋から連れてきてその場で処刑してしまったこともある。共に

同じような罪で牢獄に入り、中での態度もそんなに差はなかったのだ。

とにかく読めない王の心とやり方に、仕える者たちも国民も気が休まらず、

多くの人間が彼のことを『気まぐれジョージ』と呼んでいた。

 

その日は穏やかに平和を求め、次の日は激しく戦いを求める。知性溢れる賢王と

人や魔物の血を見たがる暴君としての二面性を本人も制御できていない。

そんな彼の治めるデルコンダルへ、いまアレンたちが足を踏み入れていた。

そしてすぐに王のもとへと通され、三人とジョージは顔を合わせた。

 

 

 

「はるばるデルコンダルの城によくぞ来た!わたしがこの城の王、ジョージだ!

 ロトの、そして竜王殺しのブライアンの血統と意志を継ぐ勇者たち!

 そのブライアンと行動を共にした我が先祖もきっと歓迎していることだろう!」

 

ジョージの三代前には『ブリザード』という男がいた。彼はもともと旅人から

金品を強奪していた盗賊だったが、勇者ブライアンと出会い、彼の人間性に

惚れ込んだことで仲間となり、竜王を倒した後も彼といっしょに船に乗り

アレフガルドを去って新たな大陸に降り立った男だった。そのブリザードが

まさに大樹(タイキ)となり王となった。実際にはこの国で悪政を敷いていた

者たちを除き去ったことでデルコンダルの支配者となり、それから百年近くが

過ぎたいまも彼の子孫たちが王族として支配を続けていた。

 

(こいつが気まぐれジョージか・・・おれと同じくらい筋肉があるぜ。最近は

 優男と多く出会ってきたから新鮮な気分だぜ)

 

アレンがジョージのことを眺めていると、王のほうはにやりと笑いながら、

 

「三人ともなかなかの顔をしている。目つきもいいようだ。だが強さはどうかな?」

 

王が合図をすると、なんと檻から魔物が放たれた。『キラータイガー』という

凶暴な獣で、餌を与えられていないのか見るからに飢えている様子だった。

 

「グルルルル・・・・・・」

 

「こいつ相手にお前たちの強さを見せてもらおうか!なーに、ただとは言わん、

 わたしを満足させてくれたなら素晴らしいものを与えようではないか!

 さあ、わたしの先祖の生き方を変えた勇者の血が流れる者たちよ、

 ロトの末裔にふさわしい強さを披露してくれ!」

 

 

アレンたちがやる、やらないと言う前から王は鞭を地面目がけて叩いた。

それに応えるようにキラータイガーがアレンたちへ襲いかかってきた。

この城に来るまでに山や森から出てきた魔物と同じく殺意に満ちていて、

王の期待に背くことはすなわち死につながる。アレンたちを歓迎して

おきながら突然魔物との命をかけた勝負を強いるとんでもない男だった。

 

「・・・おっ!あいつ、おれのところへ来るか!一番うまそうに見えたかな?」

 

「さあ、どうかしらね。でもまずはあなたに任せたわ」

 

試合と呼ぶには過激な戦いが始まったが、三人は誰も焦りの色を見せていない。

デルコンダルに入って王のもとに通される前にこのようなこともあるという

情報は掴んでいたからだ。屈強な戦士が負傷して倒れていたが町の外ではなく

城内で傷を負ったというのを聞いていたし、王が強者の戦いを見るのが

大好きだということも町の人間から知らされていたからだ。

 

「グルラァ――――――ッ!!」

 

キラータイガーはアレンを狙いに定め口を大きく開いた。尖った牙が光る。

しかしこの獣は遠くから決めていた相手に向かっていたにすぎない。間近に

やってきたところでアレンに襲いかかったのだが、いざ彼のそばに近づき

彼をそばで一目見ただけで、その威圧感と圧倒的な実力差を実感した。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・ガ、ガルルゥ・・・・・・」

 

 

アレン相手では到底勝ち目はないと、すぐに隣にいたセリアに狙いを変えた。

ところが彼女から発せられる殺気はアレンのそれを遥かに凌いでいた。

彼女もアレンと同じく言葉を発さなかったが、その鋭い視線と憎しみの

目つきが、もし襲ってきたのなら確実に殺してやるという意志の表れだった。

 

 

「・・・グルル・・・!!」

 

 

この華奢な人間な少女が自分にどう危害を加えてくるのかわからないが、

確かに何かしらの方法でやってくる。一番弱いかと思われたセリアにすら

自分は敵わないと思ったキラータイガーはすっかり追い詰められてしまっていたが

ここで後退していては主人である王によって斬り殺される。すでに仲間が

数匹そのような末路を辿っているのだ。それを彼はよく見ていた。

 

すると最後に気がついたのはアーサーの存在だった。これまで彼からは

何の印象も受けていなかったが、その彼から感じられたのは隣にいる

二人とは違い、心からの穏やかさ、そして優しさだった。やはり彼も

何も喋らなかったが、彼ならばこの敵だらけの状況から救ってくれると

信じていた。アーサーの前で鳴き声をあげると、裏返って腹を見せて、

 

「・・・・・・クゥ~ン・・・・・・」

 

「・・・これは・・・・・・助けを求めている・・・?」

 

 

突然の命乞いにアレンたちが顔を見合わせていると、王ジョージが

大きな足音と共にやってきた。その手には大きな剣があった。王が

何をするつもりなのかわからずにいたが、アレンたち、そして

キラータイガーのそばまで来たところで剣を納めると、

 

「・・・素晴らしい!これぞまさに先祖ブリザードが後代に語り継いだ

 勇者ブライアンの強さの表し方!やはりお前たちはその子孫であった!」

 

「ん・・・?そいつはどういうことだ?まだ戦ってすら・・・」

 

「いいや、もうじゅうぶんに戦いを楽しませてもらった。ブライアンもまた

 無駄な殺しをよしとしなかったと聞いている。そして得た力を他人に

 見せびらかして誇るようなことも。いまのお前たちはその通りだった!」

 

 

王は手を叩いて上機嫌そうだが、アレンはこの悪趣味な試し方に不快感を示し、

 

「・・・確かにお前の言う通りだ。おれたちは力を誇示したりしない。特に

 見せ物のように楽しむやつの前では絶対にな。腕前の一割も見せやしねえよ」

 

「わたしも同意見ね。もしその獣が町の外で襲いかかってきたのならこんな

 悠長な真似はしていないわ。そこを勘違いしているのではないかしら?」

 

気まぐれジョージと呼ばれ、いつ何が引き金で激高するかわからない王相手に

不機嫌な態度でこのような言葉を吐いたのだ。見守っていた人々は

気が気ではなかった。そして王は更にアレンとの距離を詰めているではないか。

 

「・・・お、王!このお方たちはご存じの通り、これまでの腕自慢どもとは

 わけが違います!もし何かあったら・・・!」

 

 

王の持つ剣に警戒しながら恐る恐る進言した王のしもべたちであったが、

その王は彼らの言葉に全く反応しない。しかしそれが聞こえないほど

頭に血が上っているというわけではなかった。ジョージは落ち着いていた。

またしても笑い始めると、三人に対して頭を深く下げながら、

 

「はっはっは、これはすまない。どうやら怒らせてしまったようだ。しかし

 今からわたしがお前たちに託すものがいかに重要か、それがわかったならば

 このようにお前たちを試し、わたしが心から納得しなければならないと

 いうことがわかるだろう!ローレル王子、近くに寄るのだ!」

 

アレンもまた王の剣に用心しつつ近づいた。突然の豹変からの騙し討ちがあるからだ。

その王はというと、両手で小さな箱を取り出し、それを大げさに開いてみせた。

 

 

「・・・そ、それは・・・!『紋章』じゃねぇか!輝きに満ちた聖なる光は!」

 

「おお、知っていたか!ならば少なくとも一つはもう持っているというわけか!

 このデルコンダルが大切に保管していた『月の紋章』がお前たちの最初の

 紋章ではなかったことは残念だが・・・さあ、受け取るがいいぞ―――っ!!」

 

 

大灯台のとき同様に、月の形をした輝きが光の矢となってアレンの身体目がけて

放たれた。紋章は目に見えるものではないが、確かに刻まれたという感触が

得られるのだ。星の紋章に続く聖なる力をアレンも迎え入れる構えでいた。

 

「よ――し!月の紋章よ!おれを貫け・・・・・・」

 

ところが、その光の矢は逸れていき、アレンを素通りしセリアのもとへと飛んでいった。

 

「・・・・・・えっ!わたし!?そんな急に・・・・・・!」

 

「ああ!なるほど!『ムーンブルク』の出であるお前のほうが月の紋章に

 相応しいってことか!なら仕方ねえ!ここは譲るぜ、迎え入れな!」

 

 

準備なんて出来ていない、とセリアは珍しく慌ててしまっていたが、そもそも

備えなど必要ではなかった。自然とその力に満たされ、紋章が刻まれていた。

 

「こ、この感じ・・・!凄いわ!力強さと安らぎの両方が包み込んでくれるみたい!」

 

「これは素晴らしい瞬間に立ち会えたものだ。しかしほんとうに紋章は心に

 刻まれるだけなのか?少しは体のほうにもその証しは出ないのか?どれ、

 このわたしに見せてはくれまいか・・・」

 

ジョージがセリアの胸元へと手を伸ばしたが、もともと冗談のつもりでゆっくりと

出したせいか、その手は空を切った。一瞬のうちにセリアはいなくなっていた。

そのセリアを守るかのようにアレンが覆うようにして立っていた。一秒あるかないかの

瞬間的な反応もアレンは優れていた。とっさに彼女をジョージの手の届かない位置へと

連れ、しかもしっかりと盾となり完璧な守り手となっていた。

 

「・・・おお、これはこれは・・・見せつけられてしまったよ。わたしのような男の

 前では力を出さないと言っていたが・・・こういう場合は例外のようだな!」

 

王がこれまで以上に愉快そうに笑うと、アレンとセリアはすぐに身体を離し、

 

「・・・あなた、わたしを守ってくれたのは感謝しているわ。でも彼の手を

 叩くくらいで十分だったのではないかしら!相変わらず隙あれば女性の身体の

 感触を味わおうとしているのね!破廉恥で下衆な次期国王様だこと・・・」

 

「あァ!?おれはただ・・・!!つくづく何て女だ!お前こそ聖なる力に

 包まれた直後とは思えないような腐った言葉を吐きやがる!」

 

言い争いを始めてしまった。取り残された王はアーサーと共に傍観者となり、

 

「・・・止めなくていいのか?いまにも戦いが始まってしまいそうなのだが。

 確かに実力者同士とはいえ・・・こんな勝負はわたしでも見たくないぞ?」

 

「大丈夫ですよ。放っておけば収まります。二人とも相手を嫌ってはいませんから。

 むしろ心の内では逆・・・・・・無意識の照れ隠しですよ、あれは」

 

「そ、そうか?見ろ、王女が杖で叩き始めたぞ!彼が反撃できないのを

 いいことに本気で何回も!・・・あれはいくら何でもまずい!」

 

「・・・・・・・・・止めてきます」

 

 

アーサーがどうにか二人の間に入って、これ以上の醜態を晒す事態は免れた。

そして王もこの騒動には触れずに、かつての親友の子孫が百年の時を経て再会した

素晴らしい日を記念して夜になったら盛大な宴を開くと宣言した。数時間もあれば

アレンとセリアの気持ちも静まり、宴は問題なく開催された。

 

 

 

「わっはっは!愉快だ、実に愉快!今日という日を俺は生涯忘れん!さあ、

 もっと食え、もっと楽しめ!この騒ぎの声を天にまで響かせるのだ!」

 

ジョージ王は何人もの美女たちに囲まれ、すでに酒もかなり入っていてすっかり

楽しそうにしていた。自らのことを俺と呼び、繕う様子もまるでない。

アレンは旅の途中でたてた誓いに従って酒を飲むことはしなかったため、ジョージと

いっしょになって喚き散らすことはなかった。しかし彼の周りにもやはり

美しい、しかも肌の露出の目立った女性たちが多くいたため、酔った気分になった。

 

「へへ・・・これはいい!おれの人生のなかでも最高の宴会だ!ジョージ、お前と

 おれの友情は、そしてローレシアとデルコンダルの友情はこれまでよりも

 更に固いものとなったぜ!おれが王になったら互いのためにもっと親交を

 深めていくつもりだ、いいだろう?」

 

「ははは、もちろん大歓迎だ!新たなる時代を築いていこうではないか!」

 

 

ローレシアとデルコンダルはこれで当分の間親密な関係が維持されていくだろう。

彼らが一言発するたびに女性たちが歓声を上げ、しかも抱きついてきたりするので

アレンとジョージはますます楽しくなっていった。だが、当然それを見て

面白くないのはセリアだった。軽蔑の目で彼らを眺めながら少量の酒を飲み、

 

「・・・男ってやっぱりくだらなくて単純ね。アーサー、あなたはどうなのかしら」

 

お前も向こうに混ざりたいのではないのか、という目つきでアーサーに近づいてきた。

そのアーサーはというと、セリアとは比べ物にならないほど、またジョージよりも

ずっと多く酒を飲んでいたが、いまだ顔色は変わらず、受け答えもまともだった。

彼のようにいくら飲んでも決して酔わない人間を探すのは難しいだろう。

 

「いやいや、他人がああしているのを見ると冷めちゃうものだよ。ぼくは遠慮する。

 でもあのジョージ、単なる気まぐれな気性の荒い王というわけではないみたいだ。

 ぼくたちを試し、合格だと認めたらすぐに紋章をただで譲ってくれる大物ぶり、

 それにたった一回のこの宴でアレンとの仲を深めてローレシアとの関係を

 強固なものとした。あれは大した王様になるかもしれないね。将来アレンと

 協力して世界を導いていく資質はじゅうぶんにあると思うよ」

 

「・・・ふん、どうかしら。二人そろってあの締まりのない顔じゃあね・・・。

 あんなのに導かれる世界中の人々の不幸を思うと涙が出てきそうだわ」

 

 

「・・・いいえ、王女。アーサー殿の仰る通り、ジョージ王は必ずや

 このデルコンダルを今以上に豊かで強い、民みんなが幸福で笑顔に満ちた

 国とするでしょう。彼自身が、まだその幼いときから誓ったのですから」

 

すると二人のもとにデルコンダルの将軍がやってきた。『コレヒデ』という名で、

王やアレンと同じほど鍛え抜かれた身体をしている、齢を重ねた男だった。

彼は先代の王と同い年で、当然ジョージが生まれたときから今に至るまでの

全てを知っている。コレヒデは二人のそばにゆっくりと座った。

 

「幼いときから、ですか。ジョージ王はそのときから王になることが

 定められていたということですか。ならば使命感も高まるでしょう」

 

「そういえば王様の兄弟を見ないわ。姉妹の人はさっき会ったのだけれど、

 一人息子であるなら早いうちから次の王になると決められるのもわかるわ。

 でも、だったら気まぐれジョージだなんて言われるような統治はどうかと・・・」

 

セリアのちょっとした棘に、コレヒデは怒ったりはしなかったが、手にしていた

グラスをテーブルに置くと、遠くを見ながら語り始めた。

 

 

「・・・実はジョージ王は最初からたったひとりの男子だったというわけでは

 なかったのです。サマルトリアやムーンブルクにはこの話、伝わっては

 おりませんでしたか。我々も広めようとはしなかったので当然かもしれませんが」

 

「・・・・・・それって・・・」

 

「まだ王が三歳だったときです。王の家で突然大きな火災が起きたのです!

 あれは悲痛な事件でした。その火災は実は放火で、王族に打撃を与えようと

 企んだ、とある貴族の仕業だったのですが多くの犠牲者が出て、王の兄弟たち

 全員が火の海のなかでお亡くなりになられたのです。」

 

デルコンダルを襲った悲劇に二人は絶句する。コレヒデもまた、十数年前の

出来事とはいえ、いまだに心を痛めていることをその表情が示していた。

 

「先代・・・『カブト・シロー』は私以上に強靭な男でしたが、それでも

 そのときは魂が抜けたかのようになりました。シローは数多くの男の子を

 残し、後継者の座を争わせるつもりでいたのですが残ったのはまだ幼く、

 しかも目立たぬ存在であったジョージ様ただ一人だったのです・・・。

 母親の『エリモ』に抱かれながら難を逃れた彼はずっとその燃え盛る炎を

 瞬きすらせずに、ただじっと・・・見続けていたのです。そのときのことを

 ジョージ王はこう振り返っています。あのときの自分は確かにこう誓ったと」

 

 

『・・・亡くなった兄や弟たちのぶんまで、必ず自分が立派な王となる。

 そして何もなくなってしまったこの国に春をもたらすと。何もない

 デルコンダルに春がやってきたと皆が慰められるためにこの命を燃やす』

 

 

ジョージ王の決意は確かに実を結び、デルコンダルは成長を続けている。

エリモ・ジョージはこれからも強き王であり続けるだろう。

 

「・・・そんな過去が・・・。でも王様がたいへんな気分屋である理由は?」

 

「おそらく父親譲りでしょうな。シローもまた癖のある男だったもので。

 ほら、あそこにいるのが先代の王、カブト・シローですよ。この頃

 体調がよくないと塞ぎ込んでいたかと思えば今日にはあの様子だ」

 

上半身裸で若き女性たちと走り回り、息子たち以上に痴態を見せつけているのが

先代の王だった。彼もやはり朝になって一日が始まらなければ何をするか

わからないという、周りからすれば難儀で扱い辛い王だったという。

 

「・・・・・・なるほど、血筋ってわけね。よくわかったわ」

 

「それに加えてジョージ王は幼い日に多くの兄弟や従者たちと別れておられる。

 人はいつ死ぬのかわからない、という思いがあるのでしょう、楽しむときは

 遠慮や制御など不要、最大限に楽しみ、後悔のないように全力で日々を過ごす。

 その結果がある者たちからすれば不安定で気まぐれな統治だと思うのでしょう」

 

 

まだコレヒデが話を続けようとしていたところで、ふらふらとした足取りで

ジョージがやってきた。アレンも彼と肩を組みながらいっしょに輪に入ってきた。

 

「おいおい、何だお前ら~~っ!こんなめでたい日に辛気くさい顔をして~っ!」

 

「・・・・・・これは失礼。しかしジョージ王、ぼくたちはあなたのことを

 誤解していました。あのような辛い過去があったなんて知らずに・・・」

 

 

そんなアーサーの言葉すら、王は暗くなるからやめろと一蹴するかのように、

 

「わっはっは、あの火事のことか!あれは確かに悲しい出来事であったが

 いつまでも引きずっていてはよくない!俺が王になってすぐに犯人である

 貴族の家の者たち数十人全員を裁判もせずに皆殺しにしてしまったわ!」

 

「・・・・・・さ、裁判もなしに!?」

 

「証拠がないとか当時まだ幼かった子供は関係ないとか喚いていたがすでに

 やつらの罪であることは明白であった上、幼くともその犯行の計画を

 耳にしていたのならばそれを黙っていたことは死罪に値する!よって

 この俺が一人一人剣で斬り刻み、キラータイガーどもの餌にしてやった!」

 

王が徹底的に復讐を果たした話にアレンは思わず組んでいた肩を解きそうになり、

アーサーは顔を引き攣らせていた。ただセリアだけが王のやり方を受け入れていた。

彼女も現在進行形で復讐を誓い、それを成そうとしている人間だからだ。

 

ここで王は唐突に王宮を指さし、一人の少女にアレンたちの注目を集めた。

 

「・・・しかし彼女は別だ。あれはその貴族たちの家の者ではあるが

 ただ一人殺さなかった。別に妻にするつもりはないが俺の家で養っている」

 

「どうして生かしたんだ?かわいかったからか?確かにけっこう美人だな・・・」

 

アレンはにやにやとしていたが、酔っていたはずの王は真面目そのもので、

 

「俺のことを無差別な殺人者だと非難するやつもいるがそうではない。彼女は

 放火の計画が出てから犯行の日の後まで病の療養のため別の場所にいた、それが

 調査の末に明らかになったからだ。他の者は幼い子どもも奴隷たちも全て

 言い逃れなどできない状況にいたが彼女だけはほんとうに潔白だったからだ。

 その彼女から家族と住む家を奪ったのだ、死ぬ日まで養うのは当然の義務だろう」

 

「・・・なるほどな。お前さん、王として、それに男として大したやつだぜ」

 

このジョージはやはり今も、そして将来はもっと優れた王になると三人は

確信した。むしろ自分たちが見習うべき多くの長所があるのではとさえ思うほどに

なり、当初抱いていた不安は一切なくなっていた。ところが、王の次の言葉で

この宴の席での話は全く別の方向へ向かうことになる。

 

 

「・・・しかしほんとうに彼女をそれ以外の屑どもと共に除き去らずに

 正解だった。もしそのようなことをしていたら・・・きっとやつは、

 ハーゴンは俺のことを見逃したりはしなかっただろう」

 

「・・・・・・ハーゴン!?」

 

突然に挙がった邪教の総帥の名。アレンたちは揃って立ち上がった。

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