デルコンダルの王ジョージが口にしたハーゴンという名に、アレンたちの
顔色は急変した。彼らのこの旅の目的はその者を倒すためであり、
ハーゴンの居場所を求めて世界の各地で情報収集に励んでいるからだ。
「・・・ハーゴン!やつがお前を見逃さないだと!どういう意味だ!?」
「まさかあなた、やつと会ったことがあるっていうの!?」
アレンとセリアはすぐに王に迫った。あまりの反応と気迫に王は後ろに下がり、
「ちょ、ちょっと待て!落ち着け、俺はハーゴンとは何の面識もない。顔は
知らないし会話をしたこともない!ただ、もしあの貴族の家の者たちを
皆殺しにしたとき、罪のない彼女までも同じようにしてしまえば・・・
ハーゴンがその軍を引き連れて裁きを下しに来るかもと思っただけだ!」
「どうしてそんな考えを?理解できないのですが・・・・・・」
「・・・ラダトームが滅んだからだ。あの国はお前たちの先祖、また俺の先祖の
生まれた地であったが、彼らが去った後から王族が悪い行いに走り始めた。
そして長い猶予期間の末に、とうとう先日滅ぼされたと聞いたのだ。
それもあのハーゴンが自らのしもべたちによってそうしたと・・・」
ラダトームのことに関しては、アレンたちのほうがよく知っていた。確かに
おそらくはハーゴンのしもべであろう『神の子の使い』を名乗る者たちが、
その罪深き歩みを断罪するためにアレフガルドに降り立ち、そして一夜のうちに
王とその息子たち、また高貴な者たちや貪欲な商人と兵士たちを打ち殺した。
残った人々もこの地を捨てたのでやがて人の住まない荒野となるだろう。
「ハーゴンに関しては全てが謎に包まれている。このデルコンダルにはまだ
直接的な影響はないが、魔物たちが凶暴になっているというのはある。
国でもやつのことを調べてはいるが、そうすればするほど謎が深まってしまい・・・」
デルコンダルでもハーゴンに関しての調査は進められていたが、この様子では
アレンたちの求める直接的な情報を得るのは期待薄だろう。
「ハーゴンとやつの組織の動きについての報告だが・・・ムーンブルクや
ラダトームの城を壊滅させ、徹底的な荒廃をもたらしたというのは有名だ」
「・・・・・・・・・」
「それに加え小さな村でも甚大な被害を受けたところもある。とある漁村など
邪教の影響を受けた魔物どもに漁師たちが全滅させられ、村には子どもや
老人を除けば女性たちしかいなくなってしまった!人手も船も失い、
あと僅かもすれば村は終わりだ!そして多くの人の住む地では目に見えない形で
侵食するかのようにやつらの影響が及んでいる。事態は深刻だ」
世界を破滅させ災厄をもたらす、それだけならばハーゴンはこの時代の魔王として
わかりやすい存在だっただろう。ジョージ王を悩ませていたのは更なる報告、
ハーゴンという者の実体を煙に巻く真逆の活動だった。
「・・・ところがある町ではやつの教えを聞いた人々が正しい行いをするようになり
犯罪者がいなくなったということだ!誰の手にも負えぬような大泥棒まで
罪深い歩みを悔い改めたのだ。また先ほども少し触れたように、やつが
滅びをもたらした地にはそれなりの理由があった!そしてその都市を
壊滅させることがあっても心の正しき人間は必ず救っているのだ」
ラダトームで大々的な殺戮を行った際も、腐敗した政治に関与しなかった者や
町人たちには決して手を出さなかったことはアレンたちも知っていた。
この例だけをとればハーゴンとその使いはまさに公正な裁き人のようだったが、
「・・・・・・でもセリアのムーンブルクには滅ぼされる落ち度なんてない。
王様たちもいい人だった。ハーゴンの裁きの正当な理由になんてならねえ!」
「そう、だからハーゴンの目指すものや行動の理由がわからないのだ!
単なる魔王であればすぐにでもやつの居場所を探し出し討伐に向かうのだが」
ハーゴンは何者なのか。邪教の狂信者でない者すら、その語ることを聞き
人となりに触れることで『あれは『神の子』で世界を救うためにやってきた』と
口にする。しかしその裏で行われる暴虐や侵略もある。だから『ハーゴン』は
二重人格なのか、もしくはジョージ以上に気まぐれで危険な人物なのか、
その名を騙って悪事を働いて罪の責任を押しつけようとする別の勢力があるのか。
デルコンダル内でも意見は割れ、いま話を聞いたアレンとアーサーも具体的な
結論に全くたどり着けなかったが、セリアにはそもそも関係のない話だった。
「・・・細かいことを議論したり推察する必要なんてないわ。たとえハーゴンが
どんなやつだったとしてもわたしのやることは一つ!わたしの故郷を滅ぼし
世界の罪のない多くの人々を苦しめる悪魔をこの手で討ち取ること!」
「・・・・・・まあ・・・そうなるか・・・」
「でもやつがわたしの城を襲った理由については聞いてみるのもいいかもしれないわ。
半殺しにして捕まえて、真実を吐かせた後で遠慮なく殺してやるわ」
セリアからすればハーゴンを少しでも高めるような話が出るだけで憤りに
満たされるのだ。残っていた酒を飲み干すと一人でどこかへ行ってしまった。
「・・・なかなか怖ろしい女だ。アレン、お前も苦労しそうだな」
「・・・・・・ああ。だが守ってやらなくちゃいけないやつだ」
「あれではお前の不貞など許さぬだろうな。先ほどの女性しかいなくなった
村の件だが、俺とお前で半分ずつ引き取ってやろうと考えていたのだがな。
幼子も白髪の女性も関係ない、みんなまとめて我らの妻に、と思っていたのだが
どうやらお前の命のためにもやめておいたほうがよさそうだ」
王の言葉にアレンはすぐに反論した。彼の語ることには間違いがあると。
「おいジョージ!おれとあいつはそんな仲じゃないんだよ!勘違いするな!
さっきアーサーから聞いていたんじゃなかったのかよ!」
「・・・ジョージ王、確かにアレンの言うことが正しいです」
アーサーもアレンに続いたが、王はすっかりまたほろ酔い気分に戻っていて、
「はっはっは、どちらでもよいわ。どの道精霊ルビスが望まれるのであれば
お前たち二人は結ばれるだろう。そうでなければそれまでのこと!
俺は楽しみにしているぞ!お前たちが天より与えられた使命を完遂し
再び戻ってくることを!それまでは簡単にくたばるでないぞ!
おお、そうだ。そのための一品があった。二人とも、ついてこい―――っ!」
王は勢いよく立ち上がると二人を連れて歩き出す。人気のないところへ案内され
そこでいきなり修行だなどと言って真剣での戦いを始めたりしないか心配も
あったが、王が向かっているのは町の武器屋だった。もう店じまいしていたが
構わずに扉を何度も打ち叩き、店主を呼び出した。
「・・・こ、これは国王様!今日はどのような御用で・・・」
「知れたこと。お前の持つ『ガイアの鎧』、そいつをもらいにきた。伝説の
ロトの鎧には及ばぬものの精霊ガイアの加護を受けているというその鎧、
この者たちのために差し出すのだ。早くしろ」
勇者ロト、そして子孫ブライアンが愛用した鎧の行方はこの時代、全くわからなく
なっていた。もしかしたらもうどこにもないかもしれない。ならば世界で最も
優れた鎧はこのガイアの鎧だ。王は店の主人に今すぐ持ってくるようにと言う。
「い、いえいえ国王様!あれは簡単に渡せるものではありません!あなた様も
よく知っておられるはずです!世界に二つとない・・・」
ただで差し出せという王に対し当然店主も抵抗するが、王は鍛えられた
拳に力をこめると、店の壁を殴りぬいた。中央に大きな穴が開いたと思うと
そこからひび割れが入り、ついには壁全てがガラガラと音を立てて崩れ去った。
それだけでは足りず、王は剣を抜いて店主の眼前の机に突き刺した。少しでも
間違っていたら鼻を削ぎ落していたかもしれないほどだった。
「あ・・・あああ――――――っ!お、お助け――――――っ!!」
「何を言うか!あれはお前が貧困の者からほんの僅かな値で奪いとるように
手に入れたものではないか!ならば手放したとしても惜しくないだろう。
私腹を肥やし続けたラダトームの商人たちがどうなったのか知らないわけでは
あるまい。必ず裁かれる時が来る。いまわたしがそうしても・・・」
王の脅しの言葉に武器屋の主人は早々に屈し、店の奥に隠していた鎧を
持ってくるとすぐに差し出した。王の言う通りこれはただ同然で仕入れ、
高く売りつけようと機会をうかがっていたものだった。莫大な収入を
失ったのは痛いが、損をしたわけではない。ここで王に歯向かうならば
それ以上に大変な目に遭うのでこれ以上の抵抗はしなかった。
「よしよし、それでいい。もし世界が滅ぼされてしまったら蓄えた富も
全て無駄になるのだからな。ならば彼らに託すのが最善というもの!
さあアレン、このガイアの鎧をハーゴン討伐のために使ってくれ!」
(・・・いま王に滅ぼされそうになった・・・というのは黙っておこう)
王からガイアの鎧を渡され、宴が終わった後アレンとアーサーは改めて
ジョージ王が優れた人物であると語り合っていた。ところが町の人々の
会話が聞こえてきて、その評価を急落させることになった。
「なあ知っているか?武器屋のあの鎧、王が旅人にやっちまったらしいぜ。
強欲な武器屋から没収した名裁きみたいな感じになってるけど・・・」
「あの鎧は数か月前、そもそも王が武器屋に渡るように仕向けたのになあ。
きっともう忘れちまってるんだろうな。ほんとうにそのときの気分で
動くから・・・明日になったらもう後悔しているかもしれないぜ。
昨日の自分を叩き殺してやりたいってな。そういう男だぜ、あの王は」
困窮した者の借金の清算のためにガイアの鎧を質として持っていったのは
他でもない王だったのだ。その後も人々は、今日は上機嫌だったから
明日あたり大荒れだろうと語り合っていた。それが気まぐれジョージだと。
「・・・・・・悪いやつじゃないんだが・・・ローレシアだったら
とっくにアウトだっただろうな、あいつは・・・」
「まあ紋章と鎧をもらえたことは確かだ。そこは素直に感謝しないと」
翌日以降もデルコンダルに留まり、剣に魔法に鍛え抜かれた兵士たちと修行を
重ねるのもいいと考えていたが、ジョージが優れた王でいるうちにここを去るのが
彼のためでもあるということで意見は一致した。セリアもそれに同意し、
夜が明けて朝になるとすぐに三人はこの地を後にした。
デルコンダルを去ってからまず彼らが向かったのはアレフガルドだった。
その地の聖なるほこらに『ロトの兜』があると聞かされていたため、
ローレシアで手にしたロトのしるしを持ち向かったところ、一人ぽつんと
そこにいた賢者からロトの兜を受け取った。また、一瞬で遠い地に旅人を誘う
『旅の扉』に乗り別のほこらへと飛んだ。そこは『炎のほこら』と
呼ばれていて、アレンたちの求める紋章の三つ目、『太陽の紋章』が
眠っていた。太陽の国ローレシアのアレンの胸に刻まれた。
太陽の紋章の力が次なる『水の紋章』の在処へとアレンたちを導いたが、
なんとムーンペタの町の地下牢にそれはあった。まさか何回も訪れた
この町に紋章があったなんて、と三人を驚かせたがそれには理由があり、
グレムリンよりも高位の悪魔『ベビル』という魔物たちが隠していた。
しかし経験を積んだアレンたちの前では宝の番人としての役目を果たせず
打ち倒され、水の紋章はセリアの胸に刻まれた。これで五つあると言われる
聖なる紋章も残り一つ。アレンとセリアに二つずつそれは刻まれている。
船とルーラの呪文を駆使し世界を旅して回り、その間無数の魔物たちとの
戦いを経て三人は成長していった。また、向かった町や村の人々が思わぬ
重要な情報を教えてくれたり、先へ進むための貴重な品を託してくれたりと、
この旅は彼らだけのものではなく多くの人々によって支えられているのだと
実感しながらの旅路だった。噂でのみ聞いていた女性ばかりの漁村も
ハーゴンを恐れ人々が地下に潜ってしまった町もこの目で実際に見た。
アレンが一番はじめにローレシアを発ってから二年が過ぎようとしていた。
「ここは・・・なんて暑さだ!こんなところ長くはいられねえ!」
「そうかしら?あなた、ちょっと鍛え方が足りないんじゃないの?」
「ほざきやがって。お前の着ている『水の羽衣』!そいつならどこにいても
涼しいだろうよ!おれの鎧に兜は最悪だぜ、何なら交換するか、いま」
「いやよ。汗だらけじゃない。それにそんな重いもの、とても身につけられないわ。
それに一着しかない水の羽衣をわたしにくれたのはあなたじゃない」
三人は海底の洞窟に足を踏み入れていた。入ったとたんに尋常ではない熱気が
彼らを襲ったが、特別な力で包まれている水の羽衣を装備しているセリアだけは
全く堪えていないようだった。アーサーも『魔法の鎧』を脱いでしまおうかと
考えるほどで、それ以上の重装備をしているアレンは滝のように汗を流した。
「あんな溶岩の上を通ったら死んじまうぜ。どうやって先へ進むんだ?」
「そういうときのために・・・トラマナ!」
アーサーは『トラマナ』の呪文を唱えた。すると溶岩の上に光が満ち、その光の
上を歩くのであれば全く問題なく通れるようになった。毒の沼地や宝を守る
バリアの上でも効果を発揮し、彼らの命を守る重要な呪文だった。
しかしこの洞窟本来の熱気だけはどうしようもなく、アレンは常に水を飲んでいた。
「こんな最悪な場所でも魔物どもは元気だな・・・やってやるか!」
根っこを使って動く、不気味な顔まで持つ木の魔物『ウドラー』、また魔力によって
操られし人形『パペットマン』が行く手を阻む。アレンたちはそれらと似た魔物、
『じんめんじゅ』や泥人形と戦っていて、魔力を奪う不思議な踊りによって
アーサーとセリアを苦しめる存在であることを知っていた。
「先が見えない洞窟なんだ、こいつらは早々に始末するのが吉だぜ!」
魔力を持たないアレンからすれば何の脅威でもない相手で、他の魔物から受ける
直接的な打撃のことを考えたら後回しにしたいところだが、二人の仲間のことを
思えば真っ先に排除すべき魔物だった。自分のことだけを考えず、三人全員の
益を思って行動することがリーダーである彼のすべき事であり、自然とそれは
自分の身を守ることにもなった。
「あっちからも来たわね。ならここは・・・マホトーン!」
煙の魔物『ガスト』が襲ってくると、セリアはマホトーンでその呪文を封じた。
ガストはラリホーやマヌーサといったいやらしい呪文が得意なので先に使えない
ようにしたのだ。以前までのセリアであればたとえ一撃で倒しきれないのが
わかっていてもバギを唱えて攻撃一辺倒になっていたところだが、いまは
覚えた多くの呪文を無駄にせず、うまく使い分けて補助に徹するときもある。
アレンもセリアも口にはしないが、ローレシアの牢屋で戦った悪魔神官、
自らをトシフジと名乗った女に指摘された事柄を二人とも守っていた。
先頭にいるアレンは敵の特徴を掴み全員のことを考えて戦うべき、セリアは
自分で敵を倒したい気持ちを抑えアレンたちが戦いやすくするための呪文を
唱えなければならないときがあると言われていたのをずっと覚えていた。
「おっ・・・大群でやってきた。一気に焼き払え!ベギラマ―――っ!」
アーサーがベギラマを唱えると、集団で火の息を吐くのが得意な『ドラゴンフライ』
たちがお株を奪われ、丸焦げになって息絶えた。ベギラマを唱える魔物たちとも
出会うようになったが、アーサーのベギラマはそれらよりも一段上の威力を誇った。
サマルトリアで妹サマンサや優秀な従者たちから受け取った魔法の解き明かしの書が
大いに役立ち、それまでギラの呪文でも剣での攻撃でも火力不足気味だった彼が
アレンやセリアと肩を並べて戦えるようになった大事な武器だった。
「よし、このあたりから魔物の気配は消えたな。やっぱり強くなってるぜ、おれたちは」
「そりゃ弱くなってたら困るよ。もう長いこと旅をしているのだからね」
「魔物たちも強くなってきているけどその上をいけばいいだけの話よ。さあ、
先へ進みましょう。この洞窟は邪教の拠点でもあるのだから長居はできないわ」
その後もミイラの『マミー』やデルコンダルでも対峙したキラータイガーなどが
襲いかかってきたがこれらを退けた。また洞窟内にはいくつかの宝箱があったが
邪教の者たちが組織に敵する存在が入り込んでくることを想定しているのであれば
罠があるかもしれない。熟考の末、全ての宝箱を無視することにした。
「でもそう決まったら惜しい気もしてきたわ。中にはやつらが大事にしている
本物の宝もあるはずなのだから。奪って帰りたかったわ」
「まあまあ・・・箱を開けたら毒がまかれたりとか神への崇拝の儀式のための
動物や虫の死骸がいっぱい出てきたらいやだろう?それよりもまずは・・・」
「そうだ。もうそろそろだぜ。こんな海底のしかも最深部に偽物の神どもを
奉るくそったれな祭壇があるって話だ。そこでやつらが使っている
像を手に入れることが今回の目的だったんだからな」
アレンたちがはるばるこのような洞窟に挑んだ理由は、邪教の信者たちの持つ
『邪神の像』を入手することにあった。もちろん彼らは邪悪な神々を偶像を
用いて崇拝することに何の関心もない。しかし旅の途中でたびたび耳にした
情報のなかに、ただの人間はこの像がなければハーゴンのもとまで導かれることは
ないのだというものがあった。この像はどうしても必要なものなのだ。
「むむ・・・お前たちか!悪霊の神々に逆らう愚か者どもは!」
「炎の聖堂を汚す不届き者め!生贄にしてやろう!」
世界の各地で得られた情報は正しく、この洞窟のなかでは最も地位が高いであろう
仮面を着けた二人組がアレンたちへ近づいてきた。ここまでの侵入を許したが
最後の番人として立ちはだかろうということだ。その外見は自らを地獄の使いと
名乗ったローレシアの男そっくりで、与えられた戦闘能力も似たようなものなのだろう。
そのようなわけで、さほど苦労することなく二人の敵を倒すことができた。
この祭壇までの道中で戦った謎のからくり戦士『メタルハンター』や
骸骨剣士『スカルナイト』のほうが危険を感じさせる強敵だった。
「ぐ・・・!大神官ハーゴン様万歳・・・・・・ぐふっ!」
「よし、勝った!この像を回収してさっさとリレミトで脱出しようぜ。
しかし気持ち悪い像だな。これがやつらの崇拝する神なのか?
この化物が・・・・・・ううっ!」
アレンは邪神を象った像を拾い上げたが、その姿に激しい嫌悪感を覚え、
長く手に持っていることができず落としてしまう。像が転がっていった先には
セリアがいたので今度は彼女が邪神の像を手に取ったが、
「・・・なんておぞましい・・・!気分が悪くなってしまうわ・・・・・・」
「危ない!セリア!」
彼女もやはりその像をしばらく持っていたせいで頭を抱えながらその場に
倒れこみそうになった。それをアレンが間一髪支えたが邪神の像のほうは
地面にがしゃんと音を立てて落ちてしまった。目に見える破損はなかったが、
邪神に魂を売っていない普通の人間、しかも精霊ルビスの加護に満たされた
者にとってその像はあまりにも汚れに満ちていて持ち続けることができない。
仕方なく最後にアーサーがそれを拾った。先の二人のようにその像からは
苦々しい気持ちにさせられたが、ずっと持っていられないというような
ことにはならず、そのまま手にしていることができた。
「お、お前・・・大丈夫なのか?よく平気な顔していられるな」
「まあ全く平気ってわけじゃないよ。でも頭が痛くなるほどでは・・・」
「不思議ね・・・。でも助かったわ。あなたまでわたしたちのようになったら
誰もこの像を持って帰れないところだったわ」
なぜアーサーの体だけが邪神の像への拒否反応を示さなかったのか
わからずじまいだったが、騒ぎを聞きつけた邪教の信者や魔物たちが
大勢やってくる前にリレミトで退散し、地上へと戻った。