海底の洞窟で邪神の像を手に入れたアレンたちだったが、五つの紋章の残り一つ、
そして勇者ロトの装備でいまだ見つけられていない鎧。それらに関して
手がかりを得られないままついにその町へと到着した。一見平和に見える
この町『ベラヌール』は『魔界に最も近い町』と呼ばれていた。
「この先の旅の扉ね。わたしたちの旅の最終目的地・・・」
「そうだな。長かったようなあっという間だったような、不思議な感じだ。
あそこから邪教の総本山『ロンダルキア』へと続いているんだ」
ロンダルキア。それが大神官ハーゴンをはじめとした邪教の幹部たちが
悪霊の神々たちへの崇拝の中心部としている地の名だった。この町に
隠されている旅の扉によってのみ、ロンダルキアへと向かうことができるのだ。
「でも大丈夫か?結局おれたちは今のところ紋章はぜんぶ集められていないし
ロトの鎧はついに噂すら聞かないままだ。この不完全、不十分な状態で
ロンダルキアへ行っても問題はないのか?後悔だけはしたくないんだが」
「何言ってるのよ!『闘将ボーイ』ともあろうお方が弱気なことを・・・!
わたしはもう待ちきれないわ。あんな近くに今すぐにでも殺してやりたい
やつらが待っている地への入口があるのよ!?先延ばしにはできないわ!」
セリアの憎しみや復讐心は治まるどころか日に日に高まっていた。戦闘の際に
バギ一辺倒であることはなくなったが、それでも魔物たちへのとどめの
刺し方や敵を残らず全滅させにいくその執念は旅を始めたときよりも
更に妥協を許さないものになっていた。セリアの真の心の安らぎは
復讐を果たした後にしか得られないものであることがはっきりした。
一方アレンは、旅のリーダーとして少しでも気になる点があれば安易な突撃は
避けるべきだと考えた。本来彼もセリアと同じく熱くなるタイプの人間で、
多少の危険や不安には目を瞑って突撃したいという気持ちがあった。
しかし自分の身体や命であるならば構わないが親友であるアーサー、
そしてアレンが何があっても守ると誓ったセリアの身を案じるならば
そう簡単に後戻りのできない前進はできなかった。
「アーサー、あなたはどう考えているかしら?」
「そうだな。お前の考えを聞きたい。どうする?」
二人はこれまで沈黙を守っていたアーサーに意見を求めた。彼は自分の意思を
積極的に主張するタイプではないが、これまでもアレンとセリアの間で話が
まとまらずにいると、的確な意見を述べて正しい方向へと皆を導いていた。
「・・・・・・・・・」
ところが珍しく返事がない。顔はこちらを向いていても意識は別のところにあるのか。
こんなことはこれまで記憶になかった二人は心配になって彼の肩を叩いた。
「おいっ!どうしたんだ。聞いてなかったな?おれたちの話を」
「はっ・・・!ん、ああ・・・ごめん。ちょっと上の空だったよ」
改めてアーサーにも説明をした。この準備が不完全な状態でもロンダルキアへ
向かうべきなのか、全てが万全に整うまで行くべきではないのか。すると彼は、
「うーん・・・とりあえず行ってみてもいいんじゃないかな。もしかすると
最後の紋章もロトの鎧もその先にあるのかもしれないしね。一度行ったら
もう帰って来れないっていうことでもないだろうし。リレミトにルーラ、
必要に迫られたら戻って来れると思うし問題はないと思うよ」
「・・・そうか、なるほどなァ。危なくなったら体勢を立て直せるか。
確かにやばくなったら引き返せばいい、行けそうだったらそのまま行けばいい。
お前のように柔軟に決断を下せば最悪の展開にはならないだろうよ」
「・・・・・・なら決まりね。明日にでも向かいましょう」
太陽が沈み始め、そろそろ夕食の時間となったので三人は町を歩いてそのための
店を探した。明日にも決戦の地へ乗り込むかもしれないのだ。ある程度の出費は
気にせず、晩餐を楽しむにふさわしい料理店を求めていた。すると、
三人の前から全身を黒い装束で包んだ怪しげな人間がふらふらと
歩いてきている。男なのか女なのか、若いのか年老いているのかも
一切わからない薄気味悪いその者はアレンたちの目の前で立ち止まると、
その場に膝をついて頭を抱え、空に向かって叫ぶかのように、
「おおお・・・なんと不吉な!これほどまでに死相が目に見える形で・・・!
とても邪悪な力が・・・特にあなた、ローレル王子!あなたに憑りついています!」
「・・・ハァ?いきなり現れて・・・しかもどうしておれの名を知っている?」
「もし心当たりがあるのであればこれ以上進むのはおやめなさい!
ハーゴンのもたらす恐ろしい呪いに身体を蝕まれたくなければ・・・」
声を発してもなおどのような人間なのかがわからない。ただ一つ
確実なのは、ハーゴンと何らかのつながりがあり、アレンたちが邪教を
打ち倒しに向かおうとわかっているやつだということだ。この怪しい
黒装束にアレンは名指しで警告を受けた。このまま先へ行かせるわけにはいかない。
「おい、てめえ待て!どこまでわかっていやがるんだ!?」
「・・・・・・さあ、答える必要はない。しかしもし哀れにもその呪いが
降りかかったのなら、とある孤島の世界樹、その葉以外には救いはない!」
「世界樹!?いや、そんなことよりあなたの正体を明かしなさい!」
手を伸ばしたが、なんと姿を消してしまった。完全にここからいなくなったのだ。
「消えた・・・何だったんだあのやろうは!?不気味だ!」
「ああ。でもあの消え方・・・覚えているだろう?ローレシアの牢屋にいた
悪魔神官、トシフジ!あれと同じだ。そういう力を使っているんだろう」
「しかしわざわざご警告とはね。この冒険に旅立った時点でどんな脅しも
意味がないってわからないのかしらね、ハーゴンとその使いたちは。
さあ、店探しに戻りましょう。変な輩が出てきたせいで仕切り直しね」
魔界に最も近い町ともなればこのような者が出てきたところでおかしくない話で、
アレンたちもこの程度でしりごみするほどだったらここまで来ることは
できなかっただろう。薄気味悪い脅しも彼らの歩みを止めるには程遠かった。
「はっはっは!なぁ~にが呪いだよ!おれがローレシアを出てから今日までやつらが
おれたちに何をできたっていうんだ?やれるもんならやってみろってんだ、なあ!
ルビス様の加護の力に比べりゃあいつらなんか虫けら以下なのさ」
「ええ、その通りね。わたしを犬に変えたあの下衆な呪いのほかには何一つ
できないというのに!結局ハーゴンの力はそこまでだった、ということ。
二人とも、明日の朝にはあの旅の扉からロンダルキアへと向かいやつらに
引導を渡しましょう。今度はやつらが犬のように地面を這う番なのよ!」
アレンは酒こそ入っていないがおいしい料理に上機嫌で、セリアも男二人に
負けないほどの量の料理を平らげている。決戦へ向けて闘志は高まる。
「ははは、二人とも言うね!確かにぼくも勝利は固いと思っているよ!
だからこのお酒はちょっと早い勝利の美酒さ!」
「おお、あの頭脳明晰で先見の明があるサマルトリアのテンポイント王子の
お墨付きがありゃあ安心ってもんだぜ!しかしお前最近飲む量が増えたか?」
「そうかなぁ?まあいいじゃないか。細かいことを気にするなんてきみらしくもない!」
アレンの指摘通りアーサーはここのところ飲酒量が目に見えて増加していた。
しかし彼はどれだけ飲んでも次の日に支障はなく、酒に酔ったせいで普段ならば
間違ってもしないような愚かな行動に走ることも一度も無かった。だから
アレンとセリアもそのことをそんなに気に留めていなかった。
「はっはっは・・・しかし・・・急に味が変わったなあ?どうしたんだろう」
「そんなことあるか?おっ、どうしたんだアーサー、お前血なんか垂れやがって」
「え・・・ああ、ほんとうだ!気がつかなかったよ!口のなかでも切ったかな?
そうとも知らずにいっしょに飲んでいれば味が変になるわけだよ!」
大した量ではなかったが、出血に気がつかないというのはあまりいいことではない。
この日の彼はいつもよりも機嫌がよさそうで、もしかしたら酒が回ってしまい
感覚を鈍らせているのではないかとセリアは懸念するようになり、
「もうこれくらいにしておいたらどうかしら?珍しく酔っているのではなくて?」
「ん?ああ、心配させたかな。でも平気さ、これくらいで酔ったりしないよ」
「セリア、こいつが言うなら確かだろう。普通のやつならこんな言葉が出たときには
もう手遅れってモンだがこのアーサーはおれたちのなかで誰よりも冷静で
分析力に富んだ自制心のある男なんだぜ。好きにさせてやりな」
アーサーの酒の量が増えた理由、それを仲間の二人は知らない。表面では
何も気にしていないように見せて、実は彼は日々考え、そして悩んでいた。
なぜ自分はアレンとセリアとは違い、ルビスに選ばれた人間ではないのか。
(・・・ぼくのこの手のアザは一度も光ったことがない。それに五つの紋章のうち
四つを見つけたけれど、二つずつあの二人を選んでいった。これだけでも
すでにぼくは彼らとは違うというのはわかっている。加えて・・・)
戦いの日々を経て、経験を積むことで三人とも成長していった。しかし
アレンやセリアと比べて目に見えた成長に乏しい彼は、どうにかそれを隠そうと
日々全力のベギラマを放ち、倒すべき相手を見極める巧みさで補ってきた。
そのアーサーの本気が、アレンとセリアが力を抑えた戦い方と同じレベルに
過ぎないのだ。いかに周りと自分を比べず、余程のことがない限り焦らない
彼であっても打ちのめされ、酒に逃げたくなるには十分の仕打ちだった。
(・・・・・・まあ、ぼくは『ピエロ』でいいさ。少しでも彼らの力に
なれるのなら、選ばれてもいないのに勇者の仲間になった身の程知らずで馬鹿な
ピエロがいた、後の世代にどう言われようが構わない。あの二人とは
決定的に違うってことは昔からわかっていたことじゃないか。今さら・・・)
『闘将ボーイ』アレンとは剣術大会で何度も戦いながら勝利できず、その彼が
いないと『グリーングラスの乙女』と呼ばれたセリアの魔法力の前に敗れるという
過去もここで重くのしかかる。これまで気にしていないつもりだったはずなのに
心のなかでは自らが劣っていることを本人も知らぬ間に思い悩み続けていた。
「・・・ふう。さすがに今日は飲みすぎたかな。先に戻るよ」
「おっ、そうか。おれたちはまだ料理が残っている。もう少ししてから
宿に向かうぜ。気をつけて歩けよ」
珍しく一番最初に食卓を離れる彼の姿に、もしかしたらこれが言われていた
ハーゴンの呪いなのではないかとアレンとセリアは談笑していた。このとき
二人は、いまだあの怪しげな言葉を疑い、軽く考えていた。
二人はアーサーから三十分ほど遅れて宿に戻ってきた。夕食の前にすでに
宿泊のための宿は決めていた。旅を始めてすぐ、つまりムーンペタの町やルプガナの
町を訪れたときから彼らは町に入ったら真っ先に宿を確保することにしていた。
せっかく人の住む大きな町に着いたのに、いい宿に泊まれなければ疲れも取れない。
そんな宿はすぐに客で埋まってしまうので最初に部屋を取るのが当然だった。
「しかしそれもたった二年で変わりつつある。今日だって宿は後回しでも
問題はなかった。つい最初のころの癖で続けているが、近頃は大都市も
田舎も宿がいっぱいなんてことはちっともないぜ」
「・・・ええ。この間ムーンペタに行ったとき、それがわかったわ。
旅人の数が世界中で激減している証ね。邪教の影響による魔物たちの
脅威は増すばかり、戦士も商人も遠くへ旅立つことがなくなってしまった」
「それだけならいいけどな。町へたどり着けずに息絶えちまった人たちが
増えた・・・なんてこともあるからな。でもそんなこともそろそろ終わる。
おれたちが終わらせてやるんだ。行こうぜ、やつらの本拠地ロンダルキアに!」
「ついに待ち焦がれていたときを迎えたわ。そのためにも今日はゆっくり・・・」
一人に一部屋ずつ確保できていたので、アレンの部屋の前で二人は別れようとした。
アレンがその扉を開けると、彼はすぐにセリアを呼びとめた。
「・・・?どうしたのかしら?まさかわたしをあなたの部屋に強引に連れこむ気じゃあ
ないでしょうね?あなたのことならありえるのが何とも・・・」
「・・・・・・おれがこれまで一度でもそんなことをしたか?まあいい、
おれの部屋・・・のはずだったんだがあれを見な!」
アレンが指さした先には、ベッドで眠っているアーサーの姿があった。
「あら・・・!やっぱり今日は珍しく酔っていたんだわ。部屋を間違えたのね」
「そうみたいだ。今までこんなことはなかったのにな。仕方ないからおれが
あいつの部屋で寝ることにする。どっちでも変わりはしねぇからな」
この時点で彼らは異変に気がつくべきだったのだが、ちょっとした違和感を
問題にすることなくベッドに入り、翌日に備えて眠ってしまった。もっとも、
気がついたところで何ができたのかはわからないが・・・。
次の日の朝、アレンとセリアはいよいよロンダルキアに向かうとあって
早々に身支度まで整えていたがアーサーはいまだに起きてすらいないようだ。
「やはりあれ以上飲ませるべきではなかったわ。完璧に寝坊じゃない」
「う~む・・・そんなだらしないやつじゃないのにな。叩き起こしに行くか。
けれどあいつの調子次第じゃ出発は延期だぜ。構わないな?」
「・・・ええ。わたしの体調が優れないせいで迷惑をかけたことも何度かあった。
少しでも早く邪教の本拠地に行きたいけれど、今度はわたしが我慢する番ね」
アーサーの部屋の前まで来て、彼を呼んでみたが返事もない。魔界に挑む大事な朝に
これでは、彼の緊張感の欠如を露わにしている。とはいえこれまではこのようなことは
なかったのでいきなり怒鳴るのもかわいそうだと思い、アレンは扉を勢いよく
開けるだけにした。アーサーを責めるつもりもなかったのだが、アレンとセリアが
大きな音を立てて近づいてきてもアーサーはうつ伏せのまま動かなかった。
「ははは・・・こりゃあ呆れて何も言えねえな。おいどうした?そろそろ起きても・・・」
頭までかぶっていた布団を剥がし窓を開け、アーサーの顔に朝日の光をあてた。
その瞬間、アレンは固まってしまった。セリアも口を押さえて立ちすくむ。
「・・・・・・うう・・・・・・」
「な・・・な・・・何だこりゃあ・・・・・・」
アーサーの枕は赤い血に染められていた。うつ伏せになっていたのだから、
頭から出血したわけではなく口から吐血していたのだ。すぐに身体を
反転させ顔色を確認するが、単なる二日酔いや体調不良の人間のもの
ではない、青くなった彼はとても冷たく、明らかな緊急事態が起きていた。
「アーサー、しっかりしろ!薬草か、水か!お前を癒すものは・・・」
「・・・・・・アレン・・・か。これは・・・・・・ハーゴンの呪いだ。
ぼくにはわかる。薬草や・・・回復呪文くらいじゃどうにもならない」
「そんな・・・どうして!どうしてあなたが・・・!邪神の像をずっと
持っていた影響のせい!?確か昨日はアレンが呪われると・・・・・・!」
アレンとセリアは混乱しきっていた。ここでアレンは昨日の出来事を思い出し、
まさかと思いながらも息も絶え絶えのアーサーに尋ねた。
「・・・・・・お前・・・昨日珍しく酔っていたのは・・・もしかして芝居か?
お前はわかっていたのか?おれが本来泊まるはずだったこの部屋そのものに
呪いが仕掛けられていたことを。部屋を間違えたふりをして身代わりに・・・」
アーサーは弱々しくもにこりと笑った。アレンにしては鋭いとでも言いたそうな目だ。
「・・・ぼくの役割って何だろう、そう考えたら・・・勝手に体が動いていたんだ。
きみたち二人はルビス様に愛されし勇者、でもぼくはどうにも違うみたいだ。
だからできる限りのことをした、それまでさ・・・。さあ、ぼくに構わず
ロンダルキアに行け!ハーゴンの呪いはここで食い止める、きみたちは・・・」
自分を置いていくようにと言うアーサーの手を、アレンは強く握り、
「何言ってやがる!いいか、絶対に死ぬな!おれたちがお前を助ける!
ハーゴンの呪いなんか打ち破ってやるからな、ここで待っていろ。
いつか言ったろ、三人で一人だと。誰か一人でも欠けちゃダメなんだよ!」
彼を救うと力強く宣言した。しかもその当てがアレンにはある。
「・・・世界樹の葉だ。あの黒装束が言っていただろ、呪いを解けると。
おれがいまからそいつをとってくる・・・セリア、アーサーを頼む」
「・・・・・・罠かも・・・しれないぞ?行くのか・・・」
「罠でも何でもそれしかないっておれの直感が言ってやがるんでな。よーし、
それじゃあちょっとばかし行ってくるぜ!ロンダルキアへ向かうのは
延期になっちまったがどの道二人じゃ勝ち目は薄いんだ、勘弁な!」
アレンは支度を短時間で済ませると部屋から出ていった。その彼の背を
不安そうに見ていたセリアに対しアーサーが外を指さし、
「・・・こうなった以上・・・きみもアレンと行くんだ」
「えっ・・・でもあなたが一人に・・・・・・」
「ぼくなら平気さ。苦しいけれどもう死んでしまうって感じでもない。それよりも
ぼくのせいでアレンが危険に晒されるほうが不安で気が気じゃなくなる。
きみが彼のそばにいてくれたら安心だ。きみたち二人ならロンダルキアすら
攻め取れるとぼくは思っているくらいだからね。頼まれてくれるかな?」
アーサーがそう言うと、セリアは荷物を持って立ち上がった。
「ふ・・・あなたがそう言うのならわかったわ。わたしたちが留守の間に
勝手に死んだらだめよ。でもあなたの言う通りね。あなたを一人にするより
あの男を一人にさせるほうが心配で仕方がないもの。じゃ、わたしも行くわ!」
置いていかれないようにとアレンの後を走って追いかけていったセリア。
アーサーは小さな声で、これでよし、と呟いた。
ベラヌールの宿屋でアーサーが倒れた前日、ハーゴンの呪いについて警告した
謎の黒装束を着たその者はちょうどアレンとセリアが世界樹の葉を求めて
旅立ったそのとき、サマルトリアの町にいた。すでに自らの姿を隠すものは
身にしておらず、どこにでもいる人間であるかのように町を歩いていたが、
向かう先は城だった。本来なら城の兵士たちが顔も知らない人間を簡単に
城内に入れるはずがないのだが、目の前をすたすたと歩いてもなぜか
声をかけられることもなく自分の家に帰るかのように問題なく足を踏み入れた。
「・・・順調だ。ここまではわたしの計画通りか。あとは・・・・」
その少女こそ、ハーゴンそのものだった。ハーゴンは自らアレンたちの前に現れ
呪いを予告した後にすぐにベラヌールを去り、このサマルトリアに来ていた。
彼女が目当てとする人物のもとへ一歩、また一歩と近づいていた。