ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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あなたのためにの巻 (シドー⑥)

 

「こいつら・・・キリがねえ!おい、アーサーたちはどうなっている!?」

 

「わからない!破壊神が遠くのあのへんを飛んでいる、それしか見えない。

 ハーゴン様たちがどうなったか・・・まだ戦ってはいるようだが・・・」

 

破壊神が現代、過去、未来・・・また異世界や天界や魔界、あらゆるところから

召喚した魔物たちの出現に終わりはなかった。だんだんとザラキが効かない敵や

イオナズンを受けても倒れない敵が増え、アレンたちはだんだんと劣勢になった。

終わりが見えない戦いに気力のほうが先に限界に達しようとしている。

 

「がぁっ・・・クソが!右足をやられた・・・・・・」

 

「ハァ――・・・ハァ――・・・い、祈りの指輪を・・・」

 

このまま圧倒的な数の魔物の軍団の前に屈してしまうのか。そんなとき、

新たなる集団が現れた。アレンたちの背後から、炎の呪文を魔物たちに浴びせた。

誤爆したというのでない限り、これは援軍だ。戦況は変わろうとしていた。

 

 

「あ・・・あんたらは!確かルプガナの料理店にいた・・・美人だから覚えてるぜ!

 だがどうしてこんなところに・・・!?しかも今のはベギラマ・・・」

 

「ふふ・・・大体予想はついているのでしょう?私たちは・・・」

 

「もとはあなたたちと同じくらいの年齢の人間だったがハーゴン様によって

 モンスター人間となった者だ!あの方への恩を返すときは今しかない!」

 

ルプガナのテイタニヤとディアマンテ。二人の祈祷師が仲間に加わった。

しかし彼女たちだけではない。見ると、魔物たちの動きが鈍くなっていく。

これは特殊な毒だ。実際にその身に食らったことのあるセリアはよく知っている。

 

「あなたたち!あなたたちもここへ・・・!」

 

「お前たちと別れてからオレたちもロンダルキアに行こうという話になってな・・・」

 

「こんなことになっているなんて。なら力を貸さないわけにはいかない。

 世界が落ち着いたらまたあなたたち三人、そして私たちで船旅をするために」

 

船での旅に最後まで同行したしびれくらげのヘリオスとルビーだった。二匹は

ハーゴンの望む、人間と魔物の和解の生きた証拠だった。とはいえアレンたちの旅で

この二匹が最初の例というわけではない。ドドドド、と大量の足音が聞こえてきた。

 

「ウゴオオオ―――――ッ!!」 「ウキャア―――――!!」

 

マンドリルの群れが魔物たちに突撃し、勢いに任せて次々と突き飛ばしていく。

アレンとアーサーがセリアを呪いから解く前に友好関係を築いたマンドリルたち、

彼らとは言葉すら通じていない。それでもいま助けに来てくれたのだ。

 

 

「・・・こ、こりゃあ頼もしいぜ・・・!ん・・・そっちは見ない顔だな」

 

「そうですか。まあこれだけ姿が変われば無理もないでしょうね。ですが確かに

 あなたたちとは何度も言葉を交わしています!アレフガルドの竜王様の城で!」

 

アレンもセリアも見覚えのない、褐色の肌の少女。強力な呪文によって

マンドリルの群れやしびれくらげの二匹をサポートし、またアレンたちの傷を

回復させた。竜王の城、それでアレンは思い出しかけた。ラダトームがハーゴンに

よって陥落したとき、竜王の部下でたった一人だけいなくなった魔物がいたと。

 

「グレムリンのタウィーです。いまはハーゴン様を新たな主としています」

 

「やっぱり・・・!無事でほっとしたぜ!竜王にも顔を見せに行ってやれよ!」

 

「ふふ、いずれ近いうちに。まずはこの魔物どもを片づけてから・・・ですが」

 

アレンたちの知らないうちに姿を変えている者は他にもいた。僅かな合間を見つけ

一息ついていたセリアのもとに見慣れぬ二人組の男女が近づいてきた。

 

「取り込み中すみませんが・・・サマルトリアのアーサー王子はどちらへ?」

 

「今ここにはいないわ。それよりも・・・あなたたち、誰?」

 

「私たちは今でこそ人の姿でいますがもとはドラキーです。アーサー様には

 命を助けていただきました。そのときのボスだったドラキーに逆らえず

 嫌々あの方と戦闘になってしまったのですが私たちを見ただけで全てを

 理解してくださって・・・逃がしていただいたのです。ハーゴン様は

 それを聞き、ますますあの方に興味を抱かれたようです」

 

アレンはそれを聞き、そそくさと離れた。二人旅を始めてほんとうに最初のころだった。

自分はこのドラキーたちを皆殺しにするようにアーサーにきつく言っていたことを

覚えているからだ。もしあのとき自分がドラキーたちと共に襲ってきた幽霊ではなく

こちらを相手にしていたら・・・。なるべく遠くに、顔を見られない位置にまで逃げた。

 

 

「・・・あんなにいるんだ。私たちのほかにも勇者たちに加勢する人たちが」

 

「そうみたい。でもそのほとんどがアーサー、あの人のおかげで救われている。

 そしてハーゴン様によって生かされている・・・。世界は変わりつつあるのかも」

 

激しい戦闘を遠くから眺めていたのは、ロンダルキアと下界をつなぐ洞窟で

アーサーと出会い、彼によってアレンとセリアから隠されたホイミスライムと

はぐれメタルのコンビだった。この二匹の言う通り、グレムリンのタウィーを除く

魔物や元魔物のモンスター人間たちはアーサーがいなければアレンかセリアによって

命を落としたか、逆に彼らの命を奪う結果になっていたかもしれない。

 

「破壊神と戦いに行ったみたいだし・・・大丈夫かなぁ・・・」

 

「し、心配ないって。私たちの宝物のあの玉を渡したんだからきっと・・・」

 

とても戦力にはなれないので戦いの様子を祈りながら見守るだけの二匹だった。

 

 

「よーし!一気に力がみなぎってきたぜ!回復してもらったのもあるが何より

 気持ちが楽になったことが大きい!力を合わせて一気にこいつらを殲滅するぜ!

 こうなるとあとはおれたちの世界のことが心配だが・・・さすがにここを離れて

 戻るほどの余裕はねぇ・・・。それだけが不安だ」

 

援軍の登場にアレンたちの士気が再び高まったが、シドーの召喚した魔物たちは

すでにアレンたちの世界にもある程度流れ込んでしまっている。しかしいま

確実に追い風が吹いている。地上の様子を水晶で確認していたキンツェムが

もう一度見ると、魔物たちが次々と倒れている様子が各地で見られる。

 

「これは大国の軍隊か・・・!優勢に戦っているようだ」

 

「よし、見せろ!こっちによこせ!どれどれ・・・ああっ!!これはおれの国だ!

 親父、それにバージ、ラッキー・・・プレス・トウコウも・・・いい顔だぜ。

 みんな死ぬなよ・・・シドーさえ倒せば戦いは終わるんだからな」

 

ローレシア軍が魔物の群れを圧倒している。そしてどんどん水晶が映し出す地は

切り替わっていく。いずれも魔物たちを相手にアレンたちのよく知る者たちが

勇敢に戦い、敵を倒していく。彼らから勇気を与えられた。

 

「デルコンダルの気まぐれジョージ王・・・やっぱり強いわね。それに竜王軍も。

 これなら地上のほうは必要以上に気にし過ぎることはないわ!」

 

「いい流れだぜ。あとは早くアーサーの援護に向かうだけだ!」

 

 

 

 

希望が見えたアレンたちとは違い、破壊神を前にアーサーはどうすればいいか

わからずにいた。世界樹の葉により死んだはずの命が一度は救われたが二度目はない。

ベホマを使えるハーゴンが隣にいても即死してしまうような攻撃が来れば終わりだ。

持病を抱える彼女も万全ではない。いつか魔力と体力が尽きてしまうだろう。それに

病ということで言えば、ハーゴンよりも深刻なのはアーサーのほうだ。

 

「・・・ぐ・・・・・・」

 

「むむ・・・血を!まさか世界樹の葉でも全快とはいかなかったのか!?」

 

この吐血はシドーの攻撃によるものではない。旅の終盤からアーサーを襲っていた

正体不明の病魔だ。おそらくは非力でルビスの加護もない彼が選ばれし勇者たちと

肩を並べて戦うため体に極度の負担を与え続けたことが原因だろうが、もはや

わかったところで意味はない。唯一はっきりしているのは、もうアーサーは

長く生きられない、それだけだ。これはすでにどうしようもないことだった。

 

だから彼はもうここで死んでもいいと思っている。しかし何かを残さなくてはならない。

出来ることなら破壊神を倒す、おそらくそれは無理なのでアレンたちのために少しでも

シドーにダメージを与え、また時間を稼ぐ。それがアーサーの最後の戦いだった。

だがロトの剣はなくなり、光の剣も通用しない。ならば何があるというのか。

 

 

「・・・わたしのイオナズンは確実にやつを追い詰めている。しかしあの怪物が

 倒れるのが先か、わたしが力尽きるのが先か、と言われると・・・・・・。

 回復のための魔力も残しておきたいしわたしだけではやつを倒せない。

 いや、勇者である君でなければ決着はつけられない。それは歴史が証明している。

 そこで・・・だ。ロトの剣や防具なんかよりも素晴らしいものを贈りたい!」

 

「そんなものはこの世にないだろう。それにぼくにはロトの防具は装備できなかった。

 だからそれ以上のものがあったとして、ぼくではとても・・・」

 

「時間がない。議論や説明は飛ばして、わたしからのプレゼント、受け取ってくれ!」

 

ハーゴンが不思議な力を使い、何もない空間に腕を伸ばすと、そこから剣が出てきた。

それに続き、鎧、盾までもが出現したが、アーサーは後ずさりしてしまった。

その武具はいずれも喜んで装備しようという気にはなれない、禍々しいものだったからだ。

 

 

「・・・一応聞くよ。こいつらは・・・」

 

「まず剣だ。これはわたしの自慢の傑作だ!『破壊の剣』と呼ばれるこの世で最強の剣に

 改良に改良を重ね、ついに隼の剣のような軽さを兼ねることに成功したのだ!

 続いて鎧!『悪魔の鎧』と人間たちは言うがロトの鎧なんて比にならないほどの

 安心できる防御力だ!そして最後に盾だ。これはわたしが少し手を加えておいた。

 君でも装備できるように重量を軽くしておいた、『死神の盾』改めハーゴンの盾!

 兜までは用意できなかったがこれだけあればじゅうぶんだろう。さあ!」

 

「・・・どれも危険な気配がする・・・。とはいえぼくに選択の余地はないか。

 ありがたくいただくことにする。これでシドーと接近戦に持ち込める!」

 

魔族の武器と防具であろうがこれに頼るしかない。アーサーはすぐにそれらを装備した。

だが、次の瞬間身体が非常に重くなり、歩くのもやっとという状態だ。

 

「・・・ぐぐ・・・こ、こんなの・・・欠陥品だ!やはり呪いの装備じゃないか!」

 

「そこは仕方ない。素晴らしい力を手に入れるにはリスクがある。そのうち慣れるさ。

 しかしあの破壊神はこちらから攻撃しなくても襲ってくる!そこを逃すな!」

 

シドーが飛びかかってくる。その鋭い爪で先ほどと同じようにアーサーを貫く気だ。

ハーゴンは攻撃を受けないようにするためアーサーの後ろに隠れた。彼の真後ろに

いて、その背中を掴んでいる。ここであれば安全だと言うかのようだ。

 

 

「・・・残念だけどじゅうぶん危険だ。さっき見ていなかったのか?やつはぼくの

 腹を貫いたんだ。そこにいるときみも危ないぞ、離れろ!」

 

「いいや、ここがいい。密着していたいんだ。離れてしまうと怖いからね。

 君が倒れてしまったらわたし一人残っても同じことだ。頼むよ」

 

「そんな弱気なことを言うな。心中だなんて愚かなことは・・・・・・」

 

アーサーは自分で口にしながらもおかしいと思った。ハーゴンはこの世で最も

知恵を持つ賢者であり、愚かというところからは一番無縁な存在だ。ならば

この一見思考を放棄したような行動にも意味はある。シドーが自分を貫くまで

あと十秒もない。脳を最大限に働かせてアーサーはどうすべきかを考える。

 

(ぼくがやられた瞬間に無防備で油断しているシドーを討ち取るつもりか?いや、

 ハーゴンはぼくを無事に帰すとサマンサに約束した。自分が死ぬことになっても

 ぼくを見殺しに、まして捨て駒にはしないだろう。ならばこの行為の理由は

 一つ!呪われた盾と鎧、この防御力は絶対的だということだ!おそらくは

 ほぼ無傷で凌げると・・・逆に言うならチャンスはここだ!)

 

 

結論は出た。そしてシドーが右の腕を突き出してアーサーを襲った。

 

「―――――――――――――――ッ!!!」

 

なぜ殺したはずの男がまだ生きているのか、シドーはわからずにいたがそれももう

どうでもよいことだ。再び殺してしまえば何の問題もない。手応えありだった。

だが、目の前の人間はやはり何かが違うのか。自慢の攻撃が体を貫通していない

どころか、しっかりと止められてしまっている。こんなことは初めての経験だった。

 

「―――――――!!――――――!??」

 

「こ・・・ここだ―――――っ!!」

 

シドーの動きを止めているいま、攻撃の最大のチャンスだった。しかし全身を覆う

呪いの防具がアーサーの動きを妨げる。剣を振ろうとしても肩が動きそうにない。

それでも彼は破壊神を討つために右肩が砕けてもいいと覚悟を決め、呪いの力に

逆らって破壊の隼の剣をシドーの頭目がけてついに振り抜いた。

 

 

「うおおおおおおっ!!」

 

「――――――――――――――――――――!!」

 

その剣は破壊神をも討つほどのものだった。シドーの頭蓋骨を砕いた感触があった。

同時にアーサーの右肩にも激痛が走った。その苦痛の顔を見たハーゴンがすぐに

ベホマを唱え痛みを和らげる。それでも嫌な汗が大量に流れた。本来極限の

興奮状態であれば大きな負傷をしても痛みが襲ってくるのはしばらくしてからだ。

なのに我慢強いアーサーがこれほどまでに苦しむのだ。いかに呪いの武具が

人間の体に負担を与えるか、実はハーゴン本人もわかっていなかった。

 

「・・・テンポイント!しっかりしろ!わたしの武器と防具は失敗だったか!?」

 

「い・・・いや。予想以上にしんどいけれどこれでいい。あのままじゃあだめだった。

 この盾と鎧だからシドーの攻撃はもう怖くない。ぼくでもシドーに大きな一撃を

 与えられたんだ。も、もう一発・・・この機は逃さない――――――っ!!」

 

シドーの頭部、その特に傷ついたポイントを狙いもう一度激しく斬りつけた。

更なるダメージに骨は陥没し、大量の血も噴き出した。とうとうシドーは

逃げるようにアーサーから離れ、これまでとは違う叫び声をあげた。

 

「――――――――――――――――――」

 

痛みに悶えている。体を意味もなく回転させていた。アーサーのほうもどうやら

右腕は完全に使い物にならなくなったようで、剣を手から落としてしまった。

回復呪文を受けても、もう何かを扱うことはできないだろう。

 

「・・・・・・・・・」

 

「そ・・・そんな顔をしないで、ハーゴン。ぼくはきみに感謝しているんだ。

 きみのおかげでぼくもアレンやセリアに恥じないような・・・・・・」

 

アーサーは両膝を地についた。そして口からはこれまでにない血がぼたぼたと

落ちていき、真っ白な雪が赤に染まっていった。いよいよ限界が来ていた。

 

「その血は・・・!まさか君はもう・・・・・・!」

 

「・・・隠しきれなかったか・・・。そう、ぼくはもうじき死ぬ。

 あとはあの破壊神の最期をできれば見てからそうしたいところだけど・・・」

 

アーサーは当然として、彼が死んでしまうということでハーゴンも平静さを

保っていられなかった。もはや彼を救うにはすぐに適切な処置を施さねばならず、

それでも助かる可能性は数パーセントもない、そう思った。どうすればその僅かな

確率を少しでも・・・それに注意が向き、破壊神のことを忘れてしまっていた。

 

 

「―――――――――――――!!」

 

果たしてこの破壊の神シドーはどれだけの年月生きてきたのだろう。ゾーマの時代は

もちろん、ゾーマの前に世を自らのものにしようとした邪神やそれを倒した勇者、

彼らよりもっと昔から存在しているのかもしれない。そのシドーがこれほどまで

痛めつけられたのは初めてだった。アレンのロトの剣による攻撃から始まり、

イオナズンの大爆発、頭部の激痛。そしてそれら以上に自らの絶対的な打撃が

受け止められてしまったことは大きな衝撃だった。こうなってはシドーに

できることはただ一つ、必ずこの世界の全てを破壊して屈辱を晴らすことだった。

 

「――――――――――――――――ッ!!!」

 

シドーは激しい炎を吐いた。その灼熱はロンダルキアの積もった雪であっても

すぐに溶かす。それに気がつくのが遅れたアーサーとハーゴンをも襲った。

 

「ぐあああぁぁっ・・・・・・!!」

 

「うあっ」

 

ハーゴンの用意した呪いの防具にはロトの防具に比べて大きな欠点があった。

炎に対して無力であることだ。いかに直接的な攻撃から完璧に身を守れても

これでは一長一短、動けなくなる危険を考えれば無理をして装備するほどの

ものではなかった。もっとも、アーサーの言うように彼はロトの防具を

装備できず、この呪いの防具で身を守らねば炎の前の攻撃で死んでいた。

重傷ではあるがまだアーサーは生きている。彼がとっさに守ったハーゴンは

ダメージが軽く立ち上がったがアーサーはいまだ起きることができない。

 

「うぐあっ・・・・・・」

 

「・・・すまない・・・。だが君はじゅうぶん活躍してくれた。あとは

 このわたしに任せてくれ。君の休む時間くらいはどうにかするさ・・・」

 

倒れるアーサーにベホマでの癒しを与えてから、その頬に軽く口づけした。

そして破壊神のもとへハーゴンは自らゆっくりと歩いていく。戦闘の

始めから今に至るまで僅かに抱いていた緊張や恐怖は、この最も死が迫る

状況になってすっかり消えてなくなっていた。欲望や野心のためではない、

愛する者を守るために戦うというのは初体験であったが、思っていたより

心地よい気分だった。これなら普段通り、もしくはそれ以上の力が出せそうだ。

 

 

(人間たちがこんな心境で戦いに臨むと、持っている能力以上を発揮することは

 知っていたが疑問を抱いていた。絶対に負けられないという気持ちが災いして

 むしろ萎縮するのではないのかと思っていたが・・・そうではなかったようだ。

 勇者と呼ばれた者たちの強さの秘密はここにあったとわたし自ら知ることが

 できたのは収穫だった。さて・・・もうそろそろいいだろう)

 

「お待たせした・・・さあ、始めようか。戦いの続きを」

 

「――――――――!!!」

 

破壊神と向き合うハーゴンには微笑があった。勝算などないが、心穏やかに

シドーを相手にすることができた。その堂々とした姿を人々が見たならば、

これはまさに神の子だと口を揃えて認めるだろう。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

アーサーはというと、ハーゴンによる頬の柔らかい感触にも気がつかないまま

意識を失っていた。そして静かに夢の世界へと落ちていく。もし彼がもう

苦しむのはこりごりだと思っていたなら即座に息を引き取っていただろう。

どうにかまだ現世にとどまっていたが、まさに首の皮一枚、といったところだった。

 

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