ドラゴンクエストⅡ 大空と大地の中で   作:O江原K

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恋 君を忘れない

 

アレンとセリアは初夜の後も五日間最北の村に留まっていた。この村での生活は

二人にとって長い旅で蓄積していた心身の疲れを癒すものとなった。村人と共に

畑を耕し、大きな鍋でスープを作り、意味もわからない歌をいっしょに歌った。

二人がどのような者であるかは村長バルクしか知らないため、皆は若い旅人に

遠慮なく雑用の手伝いを頼んだりくだらない冗談を言ってきたりしていた。

もちろん二人はそれを望んで自分たちを知らない地に来たのだから構わなかった。

 

アレンはセリアにだけ本物の愛を示すと誓った。セリアもそれを信じている。

しかしこれまでの旅に加え、この村での日常を彼と過ごすうちに遠くない未来を

察した。おそらくアレンは自分以外の女性との間に跡継ぎを残すだろうと。

いま彼はそれを否定している。現に女に目がなかったころの彼はもういない。

だが、そのような欲望ではなく、彼の持つ正義感や優しさ、闘将ボーイと呼ばれる

熱き心が憂いに沈んだ人間を見過ごさないだろう。一夜限りのことだから、と

何らかの理由で温もりを求める女性を救おうとするだろう。ロトの血統は

数百年以上どのようなことがあっても長子から正式な家系が続いている。

精霊ルビスは、いずれその血は薄れ、やがては絶えると予言したがそれは世界が

完全なる平和を手にしたときだろう。少なくともこの時代ではあるまい。

 

(・・・ま、仕方ないわね。それでもいいと自分を慰めましょう)

 

もしアレンが裏切るのならばイオナズンを食らわせその局部をナイフで切断し

去勢してやるとセリアは以前彼を脅していた。もちろんアレンが性欲のままに動き

そのような行為に至るのであれば容赦してやる気など全くなかったが、情状酌量の

余地があるのなら彼を許し、イオナズンだけにしてあげてもいいと考えていた。

 

「ふふ・・・アレンの浮気を許してやってくれってアーサーの手紙にも書いてあったわ。

 そんな男についていくと決めたわたしにも落ち度はあるのだからまあいいわ。でも

 どれくらい許してあげるかはそのときのわたしが決めるけど」

 

「・・・?何だ?セリア、お前いまおれを呼んだか――――っ?」

 

離れた場所にいたアレンが自分の名を耳にしたことで大声で尋ねてきた。

 

「いいえ・・・あなたの勘違いよ。何でもないわ」

 

 

最後の日の朝、この日も二人は村の離れの建物で愛しあった後だった。まだ服も

着ないでベッドで並んで寝ていた。こんな毎日が続けば大いに幸福だろうし、

村人たちもアレンとセリアの定住を勧めてきているが、どちらが先に言い出したの

だろうか。このままではいけないということは二人ともわかっていた。

 

「・・・・・・帰ろうか」

 

アーサーのように、ロトの血の宿命とルビスの与えた使命に縛られずに生きていこうと

決意したアレンたちではあるが、一人間としてやらなくてはならないことがある。

たとえ彼らの意思が受け入れられずにまたこの村に戻ってくることになったとしても

アレンはローレシアに、セリアはムーンブルクに帰る必要がある。そしてアーサーの

故郷サマルトリアで、アーサーの死を彼の父や妹に自分たちの口で直接伝えなくては

ならない。責任を果たしてから新たな人生の幕を開けようと決めたのだ。

 

「まずはわたしのムーンブルク・・・あれから一度も訪れていなかった。でも

 勝利の報告ができるのだからたとえどのような荒れ廃れた廃墟になっていたと

 しても行きましょう。その後は・・・それよりも辛くなるでしょうから」

 

「ああ・・・一度ルビス様の奇跡によってサマルトリアにも伝わっただろうが・・・

 やっぱり一度は行かなくちゃあいけないだろう。国王である父親はともかくとして、

 あいつを溺愛していたあの妹にどう言ったらいいか・・・今から考えておく」

 

サマンサの兄に対する異常な愛はアレンたちも何度も目にしている。だが、ハーゴンの

介入によって実はほんとうの兄妹ではなかった二人が愛しあう男女として約束を

誓い合っていたことをアレンもセリアも知らない。もしそれを知っていたならば

サマルトリアに行くことが更に試練となっていただろう。

 

 

「そうか・・・行くのか。もしお前たちを国民や貴族どもが退けるのなら、それか

 王族の堅苦しい生活に飽きたのなら・・・またいつでも来い。お前たちの国を思えば

 もうここには戻ってこないほうが理想的なのだろうがな・・・」

 

「どうなるかわかんねぇが感謝するぜ、バルク。順調に事が運んだとしてもそのうち

 二人で羽休めに来るからよ、おれたちの正体は隠したままにしてくれや」

 

「フフフ・・・わかった。それを明かしたところでこちらにも利はない。

 村人が腰を抜かしたりショックで死なれても困るだけだからな」

 

 

惜しまれながら村を後にしたアレンとセリアは決めたとおりに旅をした。人の集まる

大きな都市を避けながらムーンブルクへと向かっていった。途中で人とすれ違うことも

船に乗り他の客と共になることもあったが、まさかこんなところに英雄である二人が

いるはずはないと誰もが思い込んでいるため、疑われることすらなかった。

 

そしてムーンブルクが近づくと、アレンはセリアに覚悟するようにと注意した。

まだセリアの呪いを解く前にアーサーと二人で城の調査にやってきたとき、その

悲惨さを目の当たりにし、その後彼女が人の姿に戻っても決して連れてきてはならないと

思い定めていた。兵士たちはリビングデッドとなって徘徊し、セリアの父たちは

亡霊として苦しみ続けている。至るところに毒の沼、下等な魔物の群れが我が物顔で

占拠するかつての栄華が見る影もないありさまだ。あれから更に時は過ぎ、

ますますセリアに見せられないものになっているに違いないとアレンは心を痛めた。

 

「・・・・・・だがいつかは行かなくちゃいけない・・・か」

 

「なら早いほうがいいでしょう?悪霊の神々たちが去ったいま、少なくともわたしたちに

 敵対する魔物たちはいないのだから。わたしならだいじょうぶ」

 

それでも彼女が泣き出してしまったら優しく抱きしめてやろうと思ったアレンだった。

だが、廃墟の城に近づけば近づくほど、何やら騒ぎ声が聞こえてくるのだった。

 

「・・・これは・・・何だ?人が集まっているのか、こんなところに!」

 

「歌声だわ、これは!戦いの勝利を祝う・・・勝利の歌!」

 

二人は歩く速度を速めてついにムーンブルク城に到着した。だが人々の姿は

どこにもない。そこにはリビングデッドや腐った死体、スモークたちがいた。

しかしその魔物たちは疲れを知らないゆえに、休むことなく世界の平和を讃える

歌を歌い続けていた。そしてアレンは彼らの正体を知っている。

 

 

「おお・・・!あんたたちは!まさか自我を・・・!」

 

「セリア王女ばんざ――――い!!アレン王子ばんざ――――い!」

 

「セリアさまがご帰還なさったぞ!我々の無念を晴らしてくれたのだ――――っ!」

 

邪悪な神たちが滅んだことで彼らは解放されたのだ。以前は彼らのためを思い、

断腸の思いでその命を絶ってやるしかなかったが、もうその心配はなさそうだ。

勝利を祝う祭りが終われば安らいだ魂たちは自然と天に還っていくだろう。

現に亡霊たちはセリアの顔を見ると思い残したことはないと言わんばかりに

静かに消えていくものもいた。こうなるとむしろ急がなくてはならなかった。

 

「・・・王座のそばへ急ぐぞ!国王・・・お前の親父さんに会いにな!」

 

アレンはセリアの手を取って走った。セリアも事情を把握し、今度は彼の前に出て

逆に彼を引っ張るようにして父のもとに駆けた。毒の沼地はすでに消えてなくなり

花が咲いていた。城は荒れたままではあるが、確かな救いがそこにはあった。

 

 

「・・・・・・お父様っ!お父様なのですねっ!わたしは・・・・・・!」

 

セリアの父、ムーンブルク国王であると思われる魂に向かいセリアは何から話を始め、

どう気持ちをぶつけたらわからずにいた。もはやただ苦しみと無念だけに囚われて

この世に縛り付けられているわけではない父には娘の思いがわかっており、セリアを

安心させるように優しく言うのだった。

 

「愛する娘よ、私は全てわかっている。我らに安らぎをもたらし、世界を邪悪な

 者たちから奪い返したのは誰であるか、そして華やかな偉業の裏でどのような

 困難を乗り越えてきたか・・・言葉にせずとも私には伝わっている」

 

「お父様・・・。もう一つわたしから言わなくてはいけないことが・・・」

 

アレンを前に出して隣に並ばせた。彼と夫婦になりたいという許しを得るためだ。

生前の父の意向や精霊ルビスの指示に反している結婚を隠しておくこともできたが、

どのような反応が返ってきたとしてもあと少ししたら消えてしまうかもしれない父に

報告せずにはいられなかった。すると意外なことに父の魂は愉快そうに笑い始めた。

 

「はっはっは・・・!そうかそうか、これはうれしい知らせだ。世界が平和に

 なったことと同じかそれ以上に喜ばしい!ローレシアのローレル王子と!

 確か真の名はアレンとかいったか。私の望み通りの相手ではないか―――っ!」

 

「・・・え、おれが?お、お言葉ですが国王、確かあなたはこのセリアのために

 ラダトームの三人の王子から一人を婿に迎える計画を進めていたんじゃあ・・・」

 

「あれは私の本心ではなかった。ラダトームとの付き合いもあれば、この王家を

 絶やさないようにするためのものでもあった。だがそれらはもう終わったこと。

 私は昔から君のような正義感に満ちた男がセリアと結ばれてほしいと思っていた!

 ラダトームの腐った連中が滅びたと聞いたときは笑いが止まらなかったわい!」

 

ローレシアの長子であるアレンがセリアと共になるというのは本来不可能だった。

この現状であってもすんなりと話は進まないだろう。セリアが国を捨ててアレンのもとへ

嫁ぐというのは、ムーンブルクの再生を完全に放棄することの証明であるからだ。

 

「だから私は大賛成だが、人々をどう納得させるのかはお前たち二人の腕次第だ。

 しかし全てはうまくいくことだろう。私は信じているぞ、セリア。お前たちや

 その子孫が作る新しい時代は必ず希望と笑顔に満ちた世であるということを」

 

「・・・お父様っ!わたしはまだまだ話したいことが・・・!」

 

父がいなくなってしまうという気配を感じ、セリアは必死に呼び止めた。いつまでも

このような姿で現世に残るわけにはいかないとはいえ、再会してすぐに永遠の別れでは

あまりにも悲しい。届かないかもしれない願いだが、セリアは涙ながらに叫んだ。

だが、先ほどからずっと予想を覆し続けているムーンブルク城とこの父だ。すんなりと

消えていくはずがなかった。またしても笑いながら娘の頼みに応えた。

 

「ははは、それならまだたっぷりと時間はある。私はまだ去るわけにはいかないからな。

 お前たちの結婚の式典も私の孫となる者の誕生も見届けなければならん」

 

「あ・・・あれ?そうなると結構この世に残られるおつもりで・・・?」

 

「加えてアレン、君が誓いの通りほんとうに我が娘にのみ愛を示すかどうか

 見張っていなければなるまい。君の噂は生前からよく耳に入ってきたからな。

 私の娘を傷物にしておいてそのような裏切りがあったとなれば・・・私は

 君を呪い殺して共に天へと向かうつもりだ。それを覚えておきたまえ」

 

(・・・げっ!!ば、ばれていた・・・!なんでわかったんだ!?)

 

アレンに釘を刺すと国王の魂は声高に笑った。生きていたときはこんなに笑う

人物ではなかったはずだが、彼がそうしたことで周囲の亡霊や魔物の姿に

なった者たちもそれに合わせて笑い声をあげた。王女様を泣かせたらただでは

済まさないとかお前もリビングデッドにしてやるなどといった言葉も聞こえた。

 

 

「・・・・・・こいつら・・・さっさと成仏してくれないかな・・・?」

 

セリアが笑顔のうちに父をはじめとした人々との再会を楽しみ、ムーンブルクを

後にできたことはアレンにとってもよかった。だがあの様子ではしばらくは

アレンにとって厄介な監視役として居座り続けるであろう者たちの存在に

頭を悩ませた。セリアを裏切るつもりはないとはいえ、セリアとの行為まで

把握していた者たちが常に目を光らせているというのは重圧だった。

 

「あら、どうしたの?お父様と話して緊張した?疲れているようだけど」

 

「ん・・・ああ。だが大したことはないぜ。先を急ごう」

 

 

 

二人が次に向かうのはサマルトリアだ。ここが一番の難関だ。アーサーの死を

彼の父や妹たちに報告し、頭を下げなければならなかったからだ。アレンたちも

彼がどのような最期を遂げたかこの目で確認したわけではないのでハーゴンが

述べたことをそのまま伝えるしかないのだが、遺体や遺品が一切残っていない

壮絶な死を肉親たちにどう言えばいいものかついに案は出てこなかった。

 

すでにアーサーが死んだことは知られている。町や城では勝利を祝う祭り

ではなく、喪に服している悲しみの日々であるかもしれない。サマルトリアの

そばまで到着したが、町には入らず外で野宿し夜を過ごすことにした。

ローレシア大陸に戻り、いよいよ旅も終わろうとしている。最後のキャンプと

なるだろうが、長い距離を歩き続けたことで思い出話に花が咲いたりはせず

二人はすぐに眠りについた。この夜、アレンはまたしても幻のような夢を見た。

 

 

 

『よくやった息子よ!今こそお前に王位を譲るときだ!引き受けてくれるな?』

 

『はい。お受けいたします。このセリアと二人、力を合わせて再び訪れた平和を

 ローレシアのみならず、世界中で永遠のものとなるよう励みます!』

 

『新しい国王の誕生だ―――――っ!!ばんざ――――――い!』

 

ローレシアに凱旋し、歓喜の輪のなかアレンはこの場で王となった。セリアを

迎えることに異を唱える者もおらず、新たな世は希望に満ちていた。しかし、

アレンが僅か数秒、歓びのあまり『彼』を忘れていた瞬間だった。彼がいなければ

生きている意味がないという古き世の生き残りが気がつくと間合いに入り込んでいた。

 

 

『・・・サ、サマンサ王女!いつの間に?まったく気配に気がつかな・・・・・・』

 

『・・・・・・おにいちゃんのかたき・・・・・・』

 

その手にはナイフがあった。一突きで急所を確実に刺し通していた。このときの

サマンサの顔はこれまで戦ったどんな敵よりも憎しみに満たされたものだった。

 

『・・・・・・がはっ・・・・・・』

 

『おにいちゃんのかたき―――――――っ!!』

 

一撃で致命傷であるにも関わらず、何度も何度もナイフで突き刺してくる。

身体中至るところから血が噴き出し、サマンサはアレンの血で真っ赤に染まっていた。

 

『お・・・王子――――――っ!!きさま――――――っ!!』

 

兵士の剣がサマンサを斬った。だが彼女は全く痛がる素振りを見せることも

倒れることもなく、アレンですら聞いたことのない呪文を唱え始めた。

するとサマンサを攻撃した兵士だけでなく一瞬で十人以上の人間が巨大な

炎で生きながらにして燃やされ、跡形もなく消滅してしまった。

 

 

『アレン・・・!気を確かに、いま助けるから!』 『緊急事態だ――――っ!』

 

セリア、それにアレンの父や三人の弟たちも突然の出来事に混乱しながらも、アレンを

救いサマンサを取り押さえるために動いた。だが、サマンサの魔法の力は誰にも

止められず、アレンの愛する者たちが次々と命を奪われていった。

 

『おまえたちも・・・・・・みんなしんじゃえ―――――――っ!!』

 

『ぐわあああああ―――――っ!!』 『ぎょえ――――っ!!』 『うげ・・・』

 

すでに動けないアレンには見ているしかできなかった。イオナズンを唱えてサマンサを

倒そうとしたセリアだったが、サマンサはその数倍以上の威力を誇るイオナズンで

セリアの呪文を飲み込み、彼女を無へと変えた。アレンはセリアと一瞬だけ

視線が合ったが、何もできないままいとも容易く目の前で最愛の妻が失われた。

 

『あ・・・ああ・・・・・・ああああああ――――――っ!!』

 

激しく泣き叫ぶアレンに構わず、サマンサは最後の呪文を唱えた。ローレシア城が

瞬きほどの瞬間で火の海と化した。あのシドーが吐き出した激しい炎すら凌ぐ

この煉獄火炎はすぐに町をも襲うだろう。希望が燃えて消え去っていく。

 

『あははははは!もえろもえろ、ぜんぶきえてなくなれ――――――っ!!

 うふふ・・・あはっ、あはははははははははははははははははははははは

 ははははははははははははははははははははははははははははははははは』

 

 

世界が再び暗黒に染まることを予感しながらアレンは静かに意識を失っていった。

 

 

 

 

「・・・うおおおぉっ!!」

 

生涯で最悪の目覚めだった。これほどの悪夢は後にも先にもないだろう。あまりの

汗の量に、水浴びの後に体を拭かないでいたかのような状態だった。

 

「・・・!?ど、どうしたのよ」

 

「いや・・・・・・」

 

何でもないと言おうとしたが、もしかするとこれは現実になるかもしれないと

アレンは考えた。ルビスが忠告のために幻を与えてくれたとするならば、

セリアにも協力を仰いだほうがいいだろう。夢の中身を包み隠さず伝えた。

 

「あの妹なら・・・ありえるわね。わたしの魔法よりも上というのはないけれど

 あなたへの逆恨みのためにナイフ片手に奇襲を仕掛けることは・・・。なら

 そうなる前に少しでも危険な気配を感じたらわたしがあの子を殺すわ」

 

「・・・それはやめてくれ。この夢は予知じゃなくて警告に過ぎないはずなんだ。

 おれがあいつ・・・アーサーを忘れなければいいだけだ。王になったからって

 浮かれたりせずに魔物や身分の低い民を虐げて楽しんだりしない。どれだけ

 勧められても酒は飲まない。あいつが忠告してくれたことを覚えていればいいんだ」

 

いま抱いている正義感を何十年統治したとしても失わずに、親友アーサーが生前に

与えてくれたアドバイスや最後の手紙に書かれていた中身を彼の顔と共に思いに

留めていれば必ず善い支配者として成功を収められるというメッセージなのだ。

ショッキングな内容の夢であったが、大切な教訓をアレンにわかりやすく伝えるための

ものに過ぎず、セリアが協力すべきなのは近日サマンサをどうにかということではなく、

将来自分が道を踏み外しかけたとき矯正するという意味だとアレンは説明した。

 

「多分そういう意味の夢だったんだ。おれが失敗したらローレシアは象徴的に

 火の海となっちまう。お前や親父たちもおれを見捨てていなくなるか、こんな

 ことなら死んだほうがましと感じる・・・そんな幻なんだよ」

 

「なるほど・・・ならわたしはいまは何もしないわ。あなたに任せる」

 

 

セリアはそれ以上追及しなかった。そして二人はサマルトリアに着いた。しかし

アレンの胸にはある決心があった。もしアーサーの死を報告した後、サマンサが

自分たちに負の感情を向けるとき、自分ひとりでそれを受け止める気でいた。

セリアにはサマンサのことは気にしなくてよいと言ったが、アレンは今日、

サマンサに刺されて死ぬ覚悟はできていた。兄の死を恨むのなら自分を殺して

くれて構わない。だが、それで終わりにしてほしいという条件付きで。

セリアやローレシアには罪はない。セリアは逆恨みと言うがアーサーが死んだ

ことは何もできなかった自分に非があるとアレンは思いを固めていた。

 

 

(・・・そうさ。おれは平和な世のために命を捨てても構わないと誓ったはずだ。

 おれの体の一部のように大切な仲間のためにも喜んで死んでやるとな。だから

 セリアを、新たな時代に向かって進んでいく世界を守るために・・・・・・)

 

アレンにとって最後の戦いが迫っていた。しかし彼は咄嗟に身を守るようなことが

あってはならないと剣を持たずに王の間へと入っていった。許しを受けられない

のであれば、自分がその罪の罰を身に受けることで全てを終わらせようとしていた。

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