無題   作:海猿

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氷精チルノ、湖に散る

霊夢達を逃がすため、チルノはその身一つで自分より一つ二つ格上の妖怪、レティ・ホワイトロックに挑む。

 

「 喰らえッ! 『アイシクルフォーールッ!!』 」

 

 チルノの放った氷は隊列を組み、一斉にレティに襲いかかる。

 

「はぁ、疲れるわね……」

 

 そんな氷を見てため息をつき、レティは手を前に突き出す。すると、襲いかかってきた氷が、全てレティの目の前で『消滅』する。

 

「馬鹿な妖精の相手は」

 

 

 

「氷の妖精なら分かるだろう? 同じ『属性』とも呼べる私にお前の『攻撃』は効かない」

 

 『寒気』と『冷気』類似したその能力は、両者ともに相手に効きにくい。

 

「くっ……でも、それならそっちの攻撃も、あたいには効かないんじゃないのか?」

 

 チルノの考えはあながち間違えではない、それが『能力』だけの戦いならば――

 

「だから馬鹿だと言われるんだ――よッ!」

 

 いつの間にか、チルノの前まで接近していたレティの拳がチルノの体を貫く。

 

「ッ――!!」

「力も速さも耐久も、お前達妖精とは段違いに強いんだよ、能力を使わずとも片手で倒せる」

 

 妖精と妖怪。そこには単純な力の差が存在していた。

 

 『能力』は通用しない、力でも相手を上回ることは出来ない。

 

「今なら見逃してやってもいいけど……どうする?」

 

 それならば、屈するしかないのか、力の前に膝をつくしか出来ないのか。

 

「いいや、まだだ……まだ頭は働くし、体も動く、これならきっと『撃ち落とせる』」

 

 チルノは立ち上がる、何度だって、どれだけ絶望の淵にいても。

 

「あたいはさいきょーだからね!」

「チッ……どいつもこいつも馬鹿ばっか、反吐が出るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 啖呵をきったのはいいが、それで状況が好転したわけではない。  

 チルノが絶体絶命なのに変わりはないのだ。敵の攻撃はチルノにダメージが入るが、チルノの攻撃は敵に当たることすらない。

 

「ほら、どうした? かかって来なよ最強の妖精さん?」

 

 そんな状況だと分かっているレティは自分から攻撃を仕掛けては来ない。

 あくまでも、ハッキリと『妖精』と『妖怪』の違いを見せつけて敗北させるため、チルノが攻撃してくるのを待っている。

 

 そんなこと知らずにチルノは、攻撃を仕掛ける。

 

「一点集中……『アイシクルフォール!』」

 

 氷の大群は一箇所に集まり巨大な氷の塊となると、レティ目掛けて飛んでいく。 

 

「猪口才なッ!」

 

 レティはその氷塊を受け止めると、両手に力を込める。

 すると、氷塊は跡形もなく砕け散った。

 

「よぉく分かったかしら? 妖精の……なッ!?」

 

 容易く砕けた氷塊、その奥にはチルノがいた。

 チルノは氷塊の後ろに隠れながらレティに接近し、直接触れてレティを凍らせようとした。

 そのまま速度を落とさず、レティにしがみつくチルノ。

 

「このまま直接、凍らせてやるッ!」

 

 だが、

 

「……効かない!?」

 

 どれだけ力を込めても、レティの体は凍らなかった。

 これが、妖怪と妖精の圧倒的な差。

 

 属性耐性が、妖精と妖怪では圧倒的に違う。チルノが寒いと感じる温度は、レティには真夏に感じる。

 それほど二人の間には『温度』への耐性の差が存在している。

 

 元から、勝ち目のない勝負だったのだ。どれだけの奇跡が起ころうと、起こそうとしても……この差がある限り、チルノに勝ち目は無かった。

 

「う、うわあああああああっ!!」

 

 その勝ち目のなさを悟り、チルノは一目散に逃げた。 

 

 

 チルノの逃げに、考えは無い。ただ今の危険な状態から脱しようとしているだけで、なんの戦略も無い。

 

 チルノ自身もそれは分かっていた。

 

 だがどうしても、逃げている感じがしない。逃げている最中の今も、自分で自分を罵っている。自分はどれだけ弱くて、臆病なんだと。大手を振って切った啖呵は何だったのかと。

 敵前逃亡したチルノを誰も許してくれるわけが無い……チルノ自身そう思った。それなのに、どうしても、チルノの脳裏には軽く笑って許してくれる霊夢しか浮かばない。

 

「ふふ、ようやく理解したのねェ……けど、遅い」 

 

 既にチルノはレティの敵対心を最大まで引き上げてしまっていた。妖精が妖怪に楯突いてしまった。その結果の見せしめにするために、レティは全力で追いかける。

 

 限界までスピードを上げ、一瞬の内に遠く離れたチルノに追いつく。

 

「つかまえた」

 

 勢いに乗り、チルノに追いつくと同時に打撃を繰り出すレティ。

 避けることも、防御することも間に合わず、全ての攻撃を食らってしまうチルノだったが、倒れない。

 レティは追撃しようと、もう一度拳を振り上げる、

 

「……私には、見えたんだ、思い出したんだ」

 

 しかし、レティを無視するかのように、チルノは俯いたまま動かない。

 チルノは思い出していた、人間でも、妖怪でも、妖精でも、分け隔てなく接する霊夢のことを。

 そして、顔を上げ敵であるレティと目を合わせると、全身全霊の一撃を繰り出す。

 

「そして賭けた。お前がノコノコと逃げる私を追いかけてくることに賭けたんだ!」

 

 霊夢は最後まで希望を捨てたりしない。どんな事があっても、逃げることすら戦略に組み込んで、どんな敵にでも必ず勝ってみせる。

 そんな霊夢を少し真似しみるのもいいだろう。

 

 ここは『霧の湖』チルノが凍らせられる水の量は数え切れない。

 

 チルノは冷気を集め渦巻かせる。その渦の中心にいるのは、レティ。

 

「やめっ――――」

「『マイナスK!!』」  

 

 冷気は一気に凝縮し、弾ける。

 

 霧の湖にそびえ立つ、一本の巨大な氷柱。その中にレティホワイトロックを閉じ込めることが出来た。

 

「ハァ……ハァ…… 馬鹿な妖精を演じて敵を欺く……あたいってばさいきょーね!」

 

 

 チルノvsレティ。レティは氷柱に閉じ込められリタイア。

 チルノの勝利!

 

 

 

 

 








レティのキャラ全然わかりません。
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