紅い霧は晴れ、金色に輝く月がその姿を取り戻した夜のこと。
紅魔館の住人達、紅霧異変の首謀者レミリア・スカーレットとその従者、友人が博麗神社に集まり、あらためて謝罪を――
「咲夜ぁー! お酒たんなーい!」
「はっ。少々お待ちを、コレを片付けてすぐ参ります」
「あの、咲夜さん、居眠りしてたのはしてたんですけどぉ、雰囲気起きてたんで……ノーカンじゃないですかね、出番なかったし」
「魔理沙魔理沙! みてみて、妖怪捕まえた!」
「おーフラン、めんどくさいやつ連れてきたなぁ」
「離せったらはなせぇ! アタイは最強なんだからな! お前らなんか一瞬でけちょんけちょんにできるんだぞー」
するはずもなく、そこは宴会場と化していた。
昨日の敵は今日の友、なんて言うが、まだ一日たりとも経過していない現実に霊夢はそっぽを向きたかった。一体全体どんな神経していれば、命を奪い合っていた敵と仲良く酒を飲み交わすことが出来るのだろうか……
「まぁ……いいわ」
今回の宴会に出てくる料理や酒が全て紅魔館メンバーのものだったので良しとする霊夢だった。
◆ ◆ ◆
宴会も幕引きとなり、神社にやってきた妖怪風情は寝るものもいれば、帰るものも、暴れ回るものもいた。
そんな中、
「……鬼?」
「ん? ……はっ? ふぁっ!?」
三日月を見つけ月見酒としゃれこもうとしていた霊夢は博麗神社の屋根で酒を呑んでいる『鬼』を見つけた。
「……あぁ、えっと……」
霊夢の目の前にいる鬼は、あたふたと懐から酒瓶を取り出すと、霊夢に渡し、
「い、伊吹萃香……よろしくなあ!」
とりあえず、自己紹介をした。
◆ ◆ ◆
「それで一人で飲んでたわけ?」
「まぁね、私ァ鬼だから、あまり人目にはつけないのさ」
「へぇ……」
霊夢は酒を飲み答えた。しかし一つだけ気になることがあった。
人目につかない所にしかいられない……ということは萃香が根城にしているこの神社には――
「……それって私の神社に人がいないってこと?」
そんな霊夢の問に、萃香は少し考えると、
「……はははっ、どうだろうね」
この神社に人が来ない理由を鑑みて萃香は曖昧な答えを返す。
「いや、別にいいわよ」
「おや……神社に参拝客がいなくて大丈夫なのかい?」
「……だからこそよ」
「え?」
「こんな寂れた神社だから、妖怪だろうが人だろうが関係無しに集まれる……ちょっと良くない?」
霊夢のその考えは理想論でしかない。今までの歴史が、その夢の実現は不可能だと語っている。
だが現に、数時間前まで萃香がいた屋根の下には、妖怪人間妖精入り乱れる『宴会場』だったことを思い出す。
「……いい、かもしれないねぇ」
過去を思い出したのも今日があったからかもしれないと、萃香は伊吹瓢を片付け、月を見ていた。