二度の人生を得たら世界に怒られ英霊になりました…。   作:チェリオ

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 先月投稿出来ず申し訳ありません。
 こうでもない、ああでもないと考えこんだら書くに書けなくなり、今月になってしまいました。

 今月より十日と二十五日の月二投稿に変更しようと思います。


第19話 「庭園突入作戦」

 天草四郎時貞率いる赤の陣営がミレニア城砦より大聖杯を強奪し、空中庭園にて移動して数日。

 月のない新月の夜に大型飛行機群が後を追って飛んで行く。

 その最前列の大型飛行機上部にジャンヌ・ダルクは立ち、先を進む空中庭園を睨みつける。

 あそこに彼―――天草四郎時貞が居る。

 人類救済を謳い、大聖杯を手に入れた前回の聖杯戦争で召喚されたサーヴァント…。

 今や彼こそが赤のサーヴァントを纏めるマスターであり、調停者として自分が召喚されることになった元凶。

 

 彼が行う人類救済。

 それがどのような者かは解らない。

 もしかしたらとんでもなく素敵な計画かも知れないし、到底理解出来ないような非道なものかも知れない。

 どちらにせよその行為自体が裁定者として自分が決めたルールを超えた行為。

 良し悪し関係なくルーラーとして止めるべき事柄である。

 

 血も財も大半を消失してしまったユグドミレニアが用意した大型飛行機上部に立ち、次などない文字通り最後の機会であるこの作戦に全身全霊を持って挑む。

 

 周囲には同じく大型の飛行機が編隊を組んで飛行しており、何処に誰が居るか分からないように魔術的にジャミングをかけているので、向こうから視認できるのは私ともう一騎のみ。

 実際は大型飛行機群にはジャンヌを含めて二騎しかいない。

 庭園内に侵入するマスターと護衛を務めるフランケンシュタインらは安全だと思われる最後方に居り、アストルフォにサーウェル&ジャックは別行動。モードレッドに至っては単独行動で参戦するというだけでどういった手段を用いるのかとかは不明。

 不安は残るが、もはやこれ以上の手も手段も時間もない。

 出来るか出来ないかではなくやるしかないのだ。

 ジャンヌは小さく息を吸い、届きはしないだろうが聞いているであろうと声をあげる。

 

 「天草四郎時貞!」

 『吠えるな。見苦しい』

 

 やはり聞いていた赤のアサシンことセミラミスが返答を返す。

 眼前に文字の羅列が浮かび上がり、その中央にセミラミスの姿が投影される。

 その表情は余裕に満ち溢れ、笑みまで零しているように伺えた。

 

 『マスターは人類救済の準備に忙しくてな。おぬしらに構っていられる時間がないのだ』

 「赤のアサシン。彼は本当に大聖杯の力で人類を救済するつもりなのですか?」

 

 あの天草四郎時貞――いえ、シロウ・コトミネと名乗り、赤の陣営のマスターの一人として召喚した彼のサーヴァント。

 才色兼備であったアッシリアの女帝であるならば、知らされて居なくとも察しはついているだろうと当たりをつける。

 当たりと言うか確信に近い。

 が、そんな女性が敵からの問いに対して、あっさり本当の事を話すとも思えないのも確かだが…。

 

 『さて、知らぬよ。止めたければ必死に追い縋って来るが良い』

 

 セミラミスが笑みを浮かべたと同時に庭園周囲に浮遊している十一枚の漆黒のプレート―――迎撃術式“十と一の黒棺(ティアムトゥム・ウームー)”より光り輝く光弾が線を引くように駆け抜ける。

 光弾に触れた飛行機は爆発して周囲に破片と爆炎を撒き散らす。

 

 それがこの最後の大戦を飾る狼煙となった。

 

 庭園より空中を掛ける戦車が飛び出す。

 赤のライダーであるアキレウスのチャリオットは、馬鹿正直にこちらに向かって突っ込んでくる。

 彼が先鋒を務めるのは至極当然な采配。

 否、配置しなくともアキレウスならばこちらに突っ込んで来ただろう。

 性分というのもあるが、ジャンヌ以外に姿を見せているサーヴァントがこちらには居る。

 アキレウスの師であるケイローン。

 

 恩師であり、今回の聖杯大戦では敵同士となった彼らは互いに闘志を向けており、ケイローンの読み通りにアキレウスはジャンヌに目をくれる事もなく、ケイローンに向かって突き進む。

 無論ケイローンは迎撃するが、連射される矢の悉くが躱され、アキレウスは速度を落とすことなくケイローンが足場にしていた飛行機に突っ込み貫通して行った。

 機体上部から翼へと駆け、近くの飛行機に飛び移ろうとしつつも矢を放つ。

 またもそれらを躱しながら突っ込み、ケイローンが着地した飛行機目掛けて突撃を敢行する。

 突っ込まれると分かっているケイローンは迎撃しつつ、また別の飛行機に飛び移ろうと右翼から左翼を駆けて行く。

 三機目に飛び移った頃には一機目は爆発炎上して雲へと沈み、二機目が爆発して炎に包まれる。

 なんと出鱈目な戦闘だろうか。

 アキレウスの戦いっぷりを横目で伺っていたジャンヌはそう思ったが、出鱈目なのはその師も一緒である。

 飛び移った三機目に魔力を流し、硬化させると同時に90度傾かせ、突っ込んでくるアキレウスに対して巨大な盾として使ったのだ。

 さすがにこれは貫通し切れなかったのか、アキレウスは槍ではなく拳の一撃で飛行機を殴りつける。

 そして四機目に移り、飛行機の盾でその様子が見えていないケイローンはあたかも知っていたかのように、アキレウスが居る位置へと矢を放っていた。

 矢の直撃を受けた飛行機も爆発し、戦端が開かれてからすでに四基もの飛行機を失った。

 

 「―――フッ!!」

 

 アキレウスとケイローンの戦闘に気を向けながらも、周囲を警戒していたジャンヌは向かってきた矢を旗で弾き飛ばす。

 飛んできた方向へ視線をやると、そこには赤のアーチャーであるアタランテが弓を構えてこちらを見つめていた。

 次の矢が放たれるかと構えていると十と一の黒棺の一枚が輝き、発射体制に入っている事を知る。

 自身の身は護れても足場である飛行機は確実に撃沈されるので、放たれた光弾を躱す事も受ける事も許されない。

 一直線に放たれた光弾をジャンヌは躱さず、受け止めずに受け流した。

 光弾は旗に振れ、上空へと向きを変えて進んでいく。

 すかさずそこを狙ってアタランテの矢が放たれるが、それを予想して飛行機前方へ振るように光弾を流したので、矢はジャンヌに触れる事無く光弾に飲み込まれる。

 苦虫を潰したような顔で、アタランテが何やら叫んでいる。

 ここでは何を言っているかは解らない。

 だが、放った矢が空中に空いた穴に入って行ったことで何かを仕掛けてきた事は容易に察した。

 

 「―――ッ!?後ろから!!」

 

 背後から聞こえた風切り音に気が付き、振り返りながら旗を振るうと二本の矢に当たる。

 どうやらセミラミスの魔術によって矢をどこからでも放てるようにしたらしい。

 これは厄介と思いながらも、アタランテがこちらに注目しているのは悪い状況ではない。

 

 (ここまでは予定通り…後は彼らが何処までやれるかです)

 

 本命でありながらも囮であるジャンヌは周囲から放たれる矢と光弾に注意しながら、彼らの作戦が上手くいくことを願う。

 

 

 

 

 遠くより爆発が起こる様子を見ていたアストルフォはペちんと両頬を叩いて気合を入れる。

 彼はこれより空中庭園の防衛網を崩すという役割を担う。

 ヒポグリフという空中を自由に飛行できる利点を持つ彼が、その役割を担うのは当然の選択ではあったが、熟せるかどうかは別問題である。

 十一枚もの防衛術式の破壊だけならまだしも、姿を見かけていないカルナが出てくる可能性が非常に高い。

 カルナと戦闘しながら防衛術式を破壊するなど至難の業。

 それでもアストルフォがやらなければならない。

 いや、アストルフォにしか出来ない。

 気合も覚悟も決め、アキレウスをケイローンが、アタランテをジャンヌが惹きつけている間に接近しようとしたアストルフォに“十と一の黒棺”が狙いをつける。

 一射、二射、三射と放たれた光弾をヒポグリフが回避し、アストルフォは誇らしげに笑みを浮かべる。

 

 「大丈夫?」

 「今夜のボクは特別さ。マスター、しっかり捕まっててね。このまま空中要塞まで突っ込むよ」

 

 なにせボクの為(・・・・)に出撃日をずらす事になったんだ。

 それだけの活躍を見せなきゃってね。

 後にいるマスターであるホムンクルスのジークに微笑みかけ、正面に向き直るといつになく真面目な表情を向ける。

 

 「我こそはシャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ!いざ、お相手仕る!!」

 

 名乗りを挙げ、速度をあげる。

 ジークがぎゅっと抱き着いている腕に力を籠める。

 一射ずつの光弾では当たり辛いと考えたセミラミスは、三枚の“十と一の黒棺”を集めて魔力を中央に収縮する。

 一枚では得られないほどの高出力の光弾を放つ気だ。

 だけどそんなぐらいで臆する事は出来ない。

 立ち止まる事は出来ない。

 

 「さぁ、刻限だ。我が心は月は無く。恐怖に震えされど断じて退きはしない!」

 

 出撃日をずらすというのはユグドミレニア一族にとってはデメリットであった。

 なにせ日が、時間が過ぎれば過ぎるほど空中庭園は離れて行き、ユグドミレニアの勢力圏であるルーマニアより脱してしまう。

 しかしながらずらす原因となったアストルフォ…正確にはアストルフォが持っている宝具は空中庭園攻略には必須であり、それを使用するには月の出ない夜を待つしかなかったのだ。

 そして本日月は無く、月によって理性を蒸発させた彼は理性を取り戻す。

 忘れてしまっていた宝具の真名と共に。

 開いた魔導書よりページが空へと舞い上がり、アストルフォの頭上で金色に一枚一枚が輝く。

 宝具の使用を察したセミラミスであったが、脅威とは認定せずにそのまま三枚による光弾を放つ。

 

 「宝具解放―――破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)!!」

 

 アストルフォの宝具解放によって頭上を待っていたページが正面に展開され、放たれた光弾を受け止めるように打ち消していく。その光景には気持ちが良いほど爽快で、自然と笑みが漏れだしてしまう。

 

 「…凄い」

 「これぐらいで驚くのはまだ早いよ。よし、アイツの宝具と勝負だ」

 

 ジークの驚きを含んだ一言に気分を良くしながら、二射目を準備しているというのにそのまま真っ向より突っ込んだ。

 放たれた光弾はまたも打ち消し、接近で来た一枚目のプレートを砕く。

 集まっていた一枚を破壊するとそのままの勢いで二枚目を連続して破壊していく。

 こんな感じで全部壊せたら楽で良いのになと思いつつ、三枚目に立っていたサーヴァントと目が合った。

 赤のランサー、カルナ…。

 

 「悪いが落ちて貰う」

 「行くぞヒポグリフ!」

 

 出て来たかと内心焦りながら、槍を構えて突撃する。

 向こうも迎撃すべく、速度を上げながらこちらへと降下してくる。

 二人は急激に近づき、得物を振るう。

 

 「こけおどしだな」

 

 カルナの方が断然早く、ヒポグリフごとアストルフォを切り裂いた。

 しかし切り裂いたにしては手応えはなく、切り裂いた筈の者達は闇夜に消えるように消失した。

 

 「これは…次元の跳躍か」

 「その通り!」

 

 驚きを露わにしたカルナの背後にアストルフォが突如現れ、振り返り様に横薙ぎに槍を振るう。

 またも手応えは無く、アストルフォらの姿は消失した。

 今度は喜びから笑みが漏れる。

 

 「驚きだ。これほどの英雄がまだこの世に居たとは」

 「お褒め頂き恐悦至極。期間限定だけど今日の僕は一味違うよ」

 

 称賛を受けたアストルフォは気を緩める事無く、次のプレートへ向かう。

 勿論そうはさせまいとカルナの追撃を受けるが、次元を跳躍して回避し続ける。

 続けるが当たり前のことだがその分魔力を消費し、マスターであるジークに負担がかかる。

 まだ余裕はありそうだが何時までも相手をしている訳にもいかない。

 そうこうしながらも五つ目を破壊したアストルフォ。

 もう破却宣言は打ち消す容量を超えてしまったが為に使用不可。

 我が身とヒポグリフだけで半分以上を壊さなければと思うと焦りも募る。

 

 「もうしつこい!なんなのさこの出鱈目なランサーは!?」

 

 魔力消費など無いかのように高火力を持って追撃してくるカルナに対して悪態を付く。

 

 「このままだと埒が…」

 

 埒があかない――と、口にしようとした時、接近する魔力反応を感じて笑みを浮かべる。

 カルナも気付いたようで足を止めて上空を見上げる。

 

 「遅いよ。まったくもう!」

 「作戦通りでしょう」

 

 上空より振るや否や鉈をカルナに向けて振り下ろすサーウェル。

 一瞬の足止めの隙にアストルフォは次のプレートに向かって突撃する。

 

 サーウェルはジャックと共に別行動をとっていた。

 それは小型機で上空より接近し、ジャックは庭園への降下。サーウェルはカルナの足止めを担うというもの。

 二人は飛行能力がなく、近づくには防衛術式の破壊が必須だったために参戦が遅れてしまったのだ。

 六枚目から七枚目に移ったアストルフォはちらりとサーウェルの様子を伺う。

 

 サーウェルは飛行できない。

 が、空を行けない訳ではない。

 背負ったリュックサック内の土を魔術で空中にて固形化し、魔術を持って自身の体重を軽くして、魔術のブーストによって固形化した土を蹴って駆け上がっていくという荒業。カルナと剣を交えたサーウェルはその荒業を使って距離と取ったり、カルナの攻撃を回避したりして空中庭園へと降り立とうと必死に位置調整をしている。

 助かったのは事実なのだが、あまりのこっけいさに笑いが込み上げてくる。

 そんな中、サーウェルが乗っていた小型機は庭園に向けて墜落していき、サーウェルが作ったゴーレムが納められた棺桶二つを持って中よりジャック・ザ・リッパーが飛び出してアタランテ目掛けて降下して行く。

 気付いたアタランテは迎撃するも小型機内には盾代わりに用意していた鳥型のゴーレムが大量に飛び立ち、ジャックを護る盾、または回避する為の足場として活躍していく。

 

 そしてカルナの追撃がなくなったアストルフォは七枚目、八枚目、九枚目と破壊していき残りは二枚となる。

 残り二枚ではあるがすでにアストルフォもヒポグリフも疲弊しており、二枚を破壊するもの一苦労な状態へと陥っていた。

 一枚がこちらを狙いをつけた辺りでアレを使おうと決める。

 出来れば使用せずに返してあげたい所だったけど…。

 

 「マスター、槍を!」

 

 ジークは言われると背負っていた棒をアストルフォに渡す。

 手にするとその棒を振るい、中に収納されていた穂先を跳び出させる。

 

 「頼むよ。貫けトゥルヤーグ(外れるも必中の槍)!」

 

 祈るようにサーウェルより渡された宝具の槍を投げ、槍と光弾の射線上より退避する。

 槍は真名を叫ばれたことで解放され、強い魔力を帯びて目標に向かって飛んでいく。

 そうはさせまいと予測進路に向けて光弾が放たれる。

 光弾に飲み込まれ消失する筈であった槍は、飲み込まれる事無く目標に向かっていく。

 

 トゥルヤーグはサーウェルが外しながらも龍に直撃させた話を宝具にしたもので、その能力は高い貫通能力と必中、そして大きく軌道がズレるという点にあった。

 目標としていた十枚目に向かっていたトゥルヤーグはがくんと軌道がズレ、光弾を躱すとまたも大きく軌道を変えて、狙っていた地点よりズレて直撃を果たし、トゥルヤーグはプレートと共に砕けた。

 曲芸の様な攻撃にセミラミスも驚く中、迎撃に当たっていた十一枚目がアストルフォによって破壊された。

 

 「任務完了!さぁて、行くよマスター!」

 

 進路を変えてアストルフォも庭園に向けて突入する。

 防衛術式を破壊した事でジャンヌがそのまま前進。

 後方で待機していたマスター達やフランケンシュタインを乗せた小型機も乗り込もうと前に出る。

 ケイローンとアキレウスを除いた者らの戦場は空中から庭園へと移行するのであった。

 

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