二度の人生を得たら世界に怒られ英霊になりました…。   作:チェリオ

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第20話 サーウェルVSカルナ

 サーウェルは庭園上部に立ち並ぶ建物の一角に立っていた。

 対峙するは赤のランサーことカルナ。

 自身の霊基や腕前、戦士が纏う雰囲気からして格の違いを察してしまう。

 出来る事ならケイローンに援護して欲しい所であるが、彼は彼でアキレウスと戦闘中。

 遠目ながら飛行機上にて殴り合いを繰り返している。

 あれではどちらが勝つか分からない上に、終わっても無事と言う訳にはいくまい。

 即座の援軍は望めないとすれば全身全霊を持ってこの大英雄に勝利せねばならない。

 体内に渦巻く負の感情を空気と一緒に吐き出し、右手に聖槍(ロンゴミニアド)、左手には(グライデン)を持って構える。

 いつ踏み出すべきかと悩んでいるとカルナが構えていた槍を降ろした。

 

 「頼みがある」

 「…聞きましょう」

 

 そう告げられサーウェルも得物を下げる。

 ほぼ初見の相手を警戒せず武器を降ろすなど油断にしか見えないだろう。

 けれど何故か彼は不意打ちや騙し討ちをしてくる気配が少しもないのだ。

 なんというか彼が放つ雰囲気が純粋に澄んでいるように感じたからだろうか…。

 

 「俺達のマスターを救ってほしい。彼らはこの庭園の一室に幽閉されている。アサシンの毒で操られ、天草四郎によって令呪を奪われ、この聖杯戦争からは脱落している」

 

 真っ直ぐ瞳を見据えたままそう告げてきた。

 最早マスターでもないのに義理立てをするのかと口に出しそうになって辞めた。

 多分私が同じ目に合ってもそうするだろうと思う。

 ただし、私の場合は自分のマスターのみだろうけど。

 

 「安心するといい。そうでなくとも召喚したマスター達は捕縛する話になっている。抵抗さえしなければ殺す事もない。無事に地上に送り返す」 

 「感謝する。これで俺も肩の荷が降りた」

 「出来ればそのまま戦争から降りて頂ければありがたいのですが」

 「それは無理だろう」

 

 表情一つ変えずに彼は答えた。

 再び槍が向けられた事でこちらも構える。

 身体に魔力を流していつでも魔術を行使できるように準備は済ませてある。

 

 「先ほどの礼だ。全身全霊を持って戦おう」

 

 敵だというのに話していて清々しい気持ちになる。

 円卓にも色んな騎士が居たがその誰とも違う心地よさがある。

 出来れば戦わずに肩を並べれたらどれほど良かっただろう。

 同時にそんな相手に魔力の出し惜しみをして戦おうと画策していた自分が恥ずかしくなってくる。

 

 「こちらも今持てる全力を持って貴方に立ち向かおう」

 「では―――行くぞ」

 

 足元が爆ぜた。

 カルナは純粋な力、サーウェルは魔術による強化による踏み込みで足元を抉って相手に肉薄する。

 洗礼された一撃がサーウェルに向けられるが、ロンゴミニアドで受け止めグライデンを振り下ろす。

 と言っても片手でカルナの一撃を防ぎきれるわけもなく、一瞬でも受け止めた槍を弾くのに振り下ろしただけだ。

 獲物が下に下がった事で頭上を跳び越えて背後へと回る。

 鋭い視線が動きに合わせて追って来る。

 短く「囲め石壁」と呟いて彼の周囲を石壁で囲んで視界と動きを遮る。

 無論長く持つはずはない。

 視界を遮ったのはコンマ数秒で、次の瞬間には一振りですべてが砕け散っていた。

 あまり意味の無いようで、僅かな攻撃の機会にサーウェルは「穿て石槍よ」と叫び、着地した足場から石材の槍を幾重も生やしてカルナへと向かわせる。

 

 視界を回復し、正しく認識したカルナは動じない。

 ヴラド三世との戦いで同様の攻撃を幾度も体験しているのだ。

 それも格段に速く、鋭く、威力の高いものを。

 慌てる様子もなく片手を上にあげて軽く降ろす。

 動きにナニカあるのかと凝視したサーウェルは頭上に赤く輝く高魔力体の槍が円陣を組んで、穂先を向けている事に気付くのが遅れた。

 

 「ずらせグライデン!」

 

 慌ててグライデンの重力操作で穂先を僅かにずらし、その場を飛び退く。

 直撃こそ回避したものの、地面に直撃した爆風で地面を跳ね、ゴロゴロと転げまわされる。

 向かっていた石槍はまたも一振りで破壊され、カルナは地面を転がるサーウェルに急接近する。

 間合いに入るとサーウェルは魔術で脚力と腕力を強化して地面を押して空中へと跳ねた。

 人にとって死角たる頭上を取り、槍を付き出そうと構えるもその腕は一向に伸ばす事は無かった。

 

 ……目が合ったのだ。

 それも高魔力を宿した瞳と。

 

 先と比べ物にならない焦りを感じ、空中に足場を構築してその場を跳ぶ。

 太ももに激痛が走り、歯を食いしばりながらなんとか着地する。

 振り返ればカルナの瞳より一直線に放たれた輝きが真っ直ぐ走り、なぞったものをすべて溶かしては吹き飛ばしていた。

 直撃すれば足どころか下半身が消し飛んでいた。

 それを考えれば鎧が削られ、太ももの半分以上が焼け爛れたぐらい何でもない。

 

 「ブラフマーストラ・クンダーラ(梵天よ、我を呪え)

 

 飛び上がったカルナが赤く輝く光槍を投擲した。

 直撃は不味いが回避は不可能。

 グライデンを使用し、先をずらしながら流そうと振り下ろす。

 触れた瞬間肩まで焼け爛れるも苦痛に構ってはいられない。

 意地で流して後方で巨大な爆発が起こる。

 

 息が荒くなるも頭はまだまだ冷静だった。

 カルナに勝利するには持久戦に持ち込む事を一番だと考えていた。

 ヴラドとの戦いで幾らか情報は得ており、彼がかなりの魔力を使うサーヴァントであることは解かっていた。

 ゆえに持久戦に持ち込めば自然と魔力切れを起こして戦闘続行不可能となる。

 そう思っていたサーウェルはそんな甘い考えを捨てきった。

 彼に対して持久戦など不可能だ。

 そんなことしていたら間違いなく自身が先に消え去っているだろう。

 思念をロシェに飛ばし、許可を取ってロンゴミニアドに魔力を送る。

 カルナを倒すには聖槍の一撃を持って他にない。

 それを察したのかカルナは追撃することなく槍を高らかに掲げた。

 

 「俺はお前を打ち倒すための絶対破壊の一撃が必要だ」

 

 纏っていた鎧の一部が粒子に還り、槍へと集まっていく。

 何をする気だと浮かんだ疑問は瞬時に宝具を使用する気だと理解して解消される。

 周囲がカルナを中心に放たれる熱量(魔力)に当てられ溶けては波打つ。

 まるで火山の火口……否、溶岩に囲まれているかのように熱く重い。

 

 「神々の王の慈悲を知れ」

 

 ―――不味い。

 あれ程の威力を迎え撃つにはあまりに出遅れた。

 今から魔力を込めて宝具を放っても間に合うかどうか。

 瞬時に思考を巡らせたサーウェルはグライデンを眺めて剣先をカルナに向ける。

 

 「是に封じられし幻獣達よ。今こそ力を解き放ち、己が存在を示せ」

 「絶滅とは是、この一刺し」

 

 短い詠唱を呟くとグライデンに罅が走る。

 中から魔力が漏れ、邪悪な気が周囲に撒かれる。

 長年に使わせてもらっていた彼らに心の中で礼を述べ、しっかりと己が敵を睨む。

 

 「焼き尽くせ―――ヴァサヴィ・シャクティ(日輪よ、死に随え)

 

 黄金の鎧を吸収し、巨大な矛を持った槍から今までとは比べ物にならない程の巨大で高魔力の光線がサーウェルを蒸発させようと向かってくる。

 対してサーウェルは逃げる事も焦る事もなく、落ち着いた様子で一息つきながら最後の一言を告げる。

 

 「宝具崩壊―――グライデン(目覚めろ幻獣達)

 

 グライデンが弾けると同時に黒い光が辺りを包み、カルナが放ったヴァサヴィ・シャクティを受け止めた。

 目を見張るカルナの前にはサーウェルの前に巨大な黒いドラゴンが立ち塞がっている姿が映った。

 だがそれだけだ。

 龍種が現れる事は驚きであるが、蘇ったわけではなく一時姿を現しただけ。

 そして防げるのはほんの一時のみ。

 すでに現れた肉体は溶解し、悲痛な雄たけびを上げている。

 一瞬で蒸発しなかった辺りは、さすが龍種と褒めるべきだろう。

 

 そう思っていたカルナは身体を深く斬りつけられて血を噴き出した。

 何事かと驚きに飲み込まれる。

 サーウェルはドラゴンの後ろに居り、斬りつけるにしても攻撃手段は何もないはずだ。

 否、あると思って警戒してサーウェルを見ていただけに奴の攻撃でない事だけは確か。

 ならこの一撃は何なのか?

 カルナの疑問を解消したのは視界の端に映った一匹の獣。

 猫のようだがもっさりとした毛から覗く爪は鎧であろうが切り裂くほどの鋭利さを持ち、瞳は憎悪や殺気とは違った悪寒をもたらせるには充分な感情を持っていた。

 アレは魔獣などではない。

 災厄の獣の類…。

 

 「王より簒奪せし最果ての光よ。我らに立ちはだかる者を討ち、救いを与えよ」

 

 獣に注意が逸れた一瞬だがサーウェルを見失ってしまったカルナは、ヴァサヴィ・シャクティの射線上から避けて槍を構えるサーウェルを見つけた。

 すでに聖槍には高魔力が収拾され、その矛先がこちらに向けられていた。

 

 「―――ロンゴミニアド(最果てにて輝ける槍)!!」

 

 放たれた輝きの飲み込まれたカルナは驚き、ふっと微笑んで輝きの中に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 状況が大きく動く。

 アストルフォが天空要塞の防衛術式を砕いたので取り付く事事態は容易となり、すでにサーウェルとジャックが庭園内で戦闘を開始している。

 庭園上より夜空を照らす程の輝きが起こり、一つの戦闘の終結を知らせる。

 小型機で庭園に向かっていたカウレスは誰の戦闘が集結したのかと機内を見渡す。

 機内にはサーウェルのマスターであるロシェにジーンとシェイクスピア、フィオレとゴルド、それと武装したホムンクルスとゴーレムが搭乗している。

 ここに居ないセレニケはサーウェルとの契約でアストルフォをジークへ渡しているので聖杯戦争からは脱落しているのもあってミレニア城砦にて魔術師でないので支援が出来ない六導と共にお留守番となっていた。

 脱落と言う点では同じであるゴルドであるが、彼はジャックが持って行っているゴーレムへの魔力供給から指示を出す役割があるのでここに居る。

 見渡したところ、ロシェが満面の笑みで喜んでいたので間違いなくサーウェルがカルナに勝ったのだろう。

 これは良い兆しだ。

 正直なところ、誰もがサーウェルではカルナに勝てはしないと思い込んでいた。

 出来ても時間稼ぎが関の山だろうと。

 天草側のサーヴァントが敗れた事で戦況はこちらに傾く。

 後はサーウェルに続いてケイローンが勝利すれば………っと、淡い期待を抱いたカウレスは夜空を駆ける一つの輝きに目を向けた。

 輝きは上空。

 雲よりも高い位置から伸びていて、頬を窓に押し付けるように見上げてみるとそこには射手座が弓を構えた状態でそこに居た。

 射手座と言えばその元となったケイローンだ。

 彼の宝具かとフィオレを見つめると彼女は悲しそうに左手を握り締めていた。

 出発前にケイローンに令呪を使って強化していたのを知っているが、まだ一角令呪は残っていた筈。

 なのにその手の甲には令呪は存在しなかった。

 それがどういう意味を刺しているのかを悟り、カウレスはそう上手くは行かないものだなと苦悶を浮かべる。

 

 ゴーレムが操縦する小型機は庭園に向かって着陸態勢に入る。

 未だに攻撃を受けないのはジャックがアタランテを押さえているのと、まだ到着こそしていないが敵の目を惹きつけた上に攻撃の悉くを弾いたジャンヌ、そしてアストルフォが空中庭園の防空術式を砕いてくれたおかげだ。

 着陸地点を見下ろしたカウレスは異変に気付いた。

 近くにはアストルフォとジークが待機しているのだが、ナニカが巻き付いているように見える。

 徐々に距離が近づいた事でそれが鎖と気付いた時、恐怖を肌身で感じる事になった。

 二人を縛り付けた張本人である赤のアサシンことセミラミスが手を向け、魔法陣らしきものを空中に展開しているのだ。

 非常に不味い。

 魔術によって多少機体を硬化することは可能であるが、サーヴァントの攻撃を防げるほどではない。

 爆発させられれば確実に死ぬ。

 冷や汗が噴き出る中、一機の戦闘機がセミラミスに向かって突っ込んで行った。

 躊躇う事無く減速せずに突っ込んだ戦闘機が爆発を起こす。

 爆炎の中から苦々しい顔をしたセミラミスが出てくるとすぐさま姿を消した。

 そして少し遅れて爆炎よりモードレッドが姿を現した。

 性格なのだろうけど派手に来たな。

 おかげでアストルフォ達もこちらも無事だったのだが…。

 

 無事に着陸を果たした事でシートベルトを外し、「行くぞ」とフランケンシュタインに声を掛けて立ち上がる。

 すると裾を誰かに捕まれ、振り返ると不安げなフィオレと目が合った。

 

 「気を付けるのよカウレス」

 「大丈夫だって。そっちこそ気をつけてな」

 

 カウレスはこれより空中庭園内に突入する。 

 目的は敵対勢力の排除と赤のマスター達の救出。

 当初はマスター達が抵抗するのであれば排除であったけど、ロシェより伝えられたサーウェルとカルナの会話よりその抵抗どころか意思さえあるか怪しい。

 今後の事も考えれば救出が一番だろう。

 中々に危険で難しい事であるが、機内にて待機するゴルドとフィオレも危険な事には違いない。

 何しろ古代の街並みを再現している空中庭園上部に小型旅客機が着陸しているのだ。

 馬鹿みたいに目立つし、それがこちら側の足だと気付くだろう。

 下手すると見つかった瞬間、優先的に破壊される可能性すらある。

 だからお互いに無事を祈り、カウレスは庭園に降り立つ。

 ロシェにロシェの護衛を命じられたモルド。

 ジーンに非戦闘サーヴァントのシェイクスピア。

 武装ホムンクルス数体と正直戦力として頼りになるのはフランケンシュタインだけだ。

 先ほど居た筈のモードレッドはもう姿が見えない事からセミラミスを追って行ったのだろう。

 つくづく団体行動に合わないなとため息を漏らし、アストルフォの状態を見定める。

 彼らは術式破壊でかなりのダメージを受け、魔力の消費をしているので少し休ませる必要があると判断し、とりあえずここに残して行こうと思う。

 ジャンヌとは後で合流するとして、今いる面子で先に進むしかない。

 というかシェイクスピア辺りは機内に残ると駄々をこねると思っていたのだが…。

 予想と反したシェイクスピアへ振り返ると新しい玩具を手にした子供のようにキラキラした瞳をしていた。

 

 「いざ行かん。この戦争の根源たる聖杯の下へ!」

 

 敵地のど真ん中で高らかに叫ぶシェイクスピアにジーンは呆れた視線を向けつつも、慣れた様子で注意すらする気はないらしい。

 なんとも笑ってしまう光景に気が緩むが、すぐさま張り直して庭園を睨み、この戦争に勝利すべく踏み出すのであった。

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