あれから1ヶ月が経っただろうか。あの恐怖感は消え去るどころか次第に大きくなっていき、なんとなく悟っていた。それはマリカも、当然三種ノ神器であるアメムラ、ヤタノ、そして同じく1ヶ月前仲間になった―武器なので手に入れたのほうが正しいのだろうが、俺はとてもそのように言う気にはなれない―八尺瓊勾玉こと「ヤサカ」も感じていたようで、ここ最近は特に慌てるかのような雰囲気があった。
「イチハ、アレは使わないの?」
マリカはここ最近よく俺の部屋にくる。日課である剣の手入れをしていると、不意にそんなことを聞いてくる。そちらを見ると普段クロニクルとクラウ・ソラスを置いている台座のそばを指差している。
「アレって・・・ああ、ウィンドイーターとテラリア・オブ・ガイアか」
アメムラから貰った、青と緑の片手剣のことだ。確かに保有能力としても切れ味などにしても愛剣に勝るだろう。だが・・・
「やっぱり、剣を変えると違和感がひどいからさ。まあ・・・もし、こいつらが折れたときは変えるしかないから別だけど・・・な」
あまり考えたくないことだが、ないとは言い切れない。そんな会話をしていたときだ。連続した雷の音を聞いて外を見ると、外にいくつもの黒い稲妻が走るのを見た。始まったと、そう確信した。それからの俺たちは確認する必要もなく、普段の三分の一程度の時間で用意を済ませ、落ちたと思われる場所へ向かったのだった。
「これは・・・まずいな・・・・・・」
そこには、これまで見たことのあるエンプネイスより2回りほどでかいやつが大量にいた。そしてそのほぼ中央に狭間のような場所があり、そこから次々と出てきている。総数で言えば100や200では済まない気がする。
「どうするの?」
マリカが聞いてくる。恐らくあの狭間にあいつらの元凶がいるかもしれない。どちらにしろ倒さないといけないのだ。
「ヤタノ、この辺一帯を囲むことはできるか?」
「できないことはないけど、ちょっとしか持たないと思うわ。長く見積もって10分」
「わかった、頼む。俺はあの狭間に突っ込む、マリカとヤサカは援護。アメムラは俺と一緒に来てくれ。・・・やってくれるな?」
もしできない、やりたくないと言うのなら俺一人で少しでも減らすしかない。だがあの中に入って3体やれれば相当だろう。なるべくそんな思いはしたくないし、まずそもそも――
「当然。やらないと皆が危ないしね」
「主君がやるなら、私も」
「やるならちゃんとやるわ、安心して」
「イチハだけじゃ大変だしね、やるよ僕も」
断らないと信じていた。断ることがないというわけじゃないが、きっと一緒にやってくれると、そんな気はしていた。
「よし、それじゃあ皆、やるぞ!」
これが、地獄の陽炎の開幕だった。
どのくらい戦っただろうか。といってもまだヤタノの結界が働いているので10分は多く見積もって10分経っていないだろう。それでもこの量で、ある一点しか狙えない奴らと戦っていると40分くらいはやっている気がする。だが一向に狭間の元にたどり着かない。迷ったわけではない。一応は着実に近づいているのだ。つまり、エンプネイスが多すぎる。普段より早く倒せているはずなのだが、狭間から出る量が多すぎる。バースト・レインを使ってもいいのだが、今の場所から狭間までとなると今残っている魔力全て使う必要はあるだろう。
攻撃を剣で弾き、ギリギリで避けて正確な攻撃をする。ちょくちょく魔法で攻撃したり、マリカが回復してくれたりはしているが、そんな戦闘をしているせいだろう、普段よりも集中力が持たない。右からの攻撃を弾いたが左からの攻撃を食らい、姿勢を崩してしまう。前からの攻撃をギリギリで受け止める。しかしその威力はすさまじく、かなりの距離を飛ばされた。
「イチハ、避けて!」
マリカの叫び声がする。顔を上げる。そこにはエンプネイスが触手を振り上げていた。防御しようにも剣は遠くへ行ってしまっている。それどころか、折れていしまっていた。二本とも。そして振り上げられた触手が――。
触手が来ることはなかった。盾で防がれている。それを持つ革と金属を合わせた防具を着た人。つまりこれは、イザヴェルの衛士。
「大丈夫かよイチハ」
「ヴィル!?なんで」
すぐに立つ。エンプネイスはすでにマリカが倒していた。後ろを見ると他の衛士たちが来ていた。
「街を守るのは俺たちの役目だからな!けど、元凶を倒すのはお前しかできない。だからお前はそっちにいけ」
「・・・わかった、任せる。アメムラ!ヤサカ!ヤタノ!」
三種ノ神器である3人を呼ぶ。剣を回収して鞘にしまう。その間に光の球として集まる。能力《
――こうなるならやはりウィンドイーターとテラリア・オブ・ガイアをもってくればよかった!
そう思いながら攻撃する。すると手ごたえがなかったのにエンプネイスが消えた。理屈はとにかく、これは嬉しい。だがそれでも狭間まで行くのにはきつい。そう思ったときだ。
「しゃがんで!」
声の主を認識する前に体が勝手に動く。そのすぐ後に頭の上を魔力を蓄えた槍が通る。その進路にいたエンプネイスは綺麗さっぱりいなくなった。
「行って、イチハ!」
「ありがとう、レイナ!」
俺はエンプネイスによって閉ざされかける道を全速力で走りぬけ、狭間へと入るのだった。
第12話<地獄の終わり>
元凶へとたどり着くイチハ。あまりにも早いことに、彼は違和感を抱いた・・・。