カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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 元凶の下へたどり着くイチハ。そんな彼を待ち受けるのは・・・


第12話<地獄の終わり>

 狭間の中。予想はしていたが闇一色だった。とは言っても完全に闇ではなく、夜のように、わずかな光がある。しかしその中に存在するやつだけは、本当の闇だった。

 残りの距離を一気に駆け抜ける。気付いた奴は触手を伸ばしてくるが、背中から八咫鏡を前に回して弾く。そしてそのまま回転させながら飛ばして攻撃する。普通ならできない芸当だが、三種ノ神器ゆえか浮いた状態で操ることができる。飛ばすときに伸ばした左手から、手首に取り巻く形で存在する八尺瓊勾玉で攻撃。しかしこれは弾かれる。その隙に接近して天叢雲剣で斬る。先ほどのエンプネイスはこれで消え去ったが、格が上ということもあり、手ごたえはあったがまったく効いていない。そのまま連撃に入る。何回か弱点にあたったと思うが、かなり硬い。しかもその連撃の間にこちらに傷をつけるほどだ。おそらくこのままではいつまでたっても倒せない。それどころか、俺の傷が、体力が先に尽きるだろう。

「ハアァッ!」

 少しの気合と共に神器全てで仕掛ける。同時に剣技強化、15連撃《ルクス・オブ・ヘクセゴン》を発動する。上段右水平切りから左肩辺りを左斜めに、右肩辺りを右斜めに斬りつける。その後下段左水平切りから右足の辺りを右切り上げ、左足の辺りを左切り上げで攻撃。上段右切り下げからの、左切り上げ、横一回転して遠心力を乗せた上段左切り上げと切り返しの下段右切り下げ。しかしあと5連撃のところで弾かれ、衝撃波を飛ばしてくる。それを後ろに跳んで避ける。このままでは外で戦ってくれている彼らが抑えきれなくなる、事によっては死んでしまうことが容易に想像できる。ならば早めに倒す、いや・・・・・・

 

消し去らなくては。

 

 その単語に反応したかのように左目に痛みが走る。これは斬られたときの痛みの何倍になるだろうか。

『主君!?』『イチハ!』『大丈夫?』

 三人がほぼ同時に心配するような声をかける。ヤサカだけやけに落ち着いているが、逆にそれがありがたく、正気を保っていられる。恐らくこれは8年前、あの村で身を任せてしまったあの能力。二度と使いたくないと思う。だが、それは本当の思いじゃないことを、俺はもう知っている。怖いのだ。使った後を想像できてしまうから。

『コワイノカ?コロスノガ』

 あの時の声。せめて支配されないように意思を振り絞りながら言う。

「ああ、怖いさ。だけど、殺すのがじゃない。大切な人を傷つけるのが、だ。」

『ナラバイイジャナイカ。サア、アレヲコロセ』

 確かに、大切な人を殺さないようにするのは俺だ。この力じゃない。もしかしたら、俺が弱かったからこそ支配されたのかもしれない。だとしても、今の俺一人じゃどうしようもできない。せめて、あと何か――。

――ある。その何かが、俺にはある。剣を構えなおし、今まさに戦っている衛士たち、その隊長のヴィル、そして8年間ずっと一緒にいるレイナとマリカを思う。もしここで奴を倒さなくては、彼女たちが死ぬかもしれない。戻って死んでいるのを見るのと、自分で殺すのではどちらが良いか――

『イチハ、私たちがいる。大丈夫よ』

『押さえ込むなら任せな!だからガンガン使っちゃえ!』

『仲間に向けてしまっても大丈夫です。斬れないようになりますから』

 彼女たちが言う。ならば、こう考えを変えなくてはいけないだろう。戻って死んでいるのをみるのはいやだ、と。ならば今まで忌み嫌い、遠ざけてきた力を使ってしまっていいのではないか?俺には仲間がいる。その仲間を守る為なら、たとえ。

「たとえ本当の死神になっても構わない!!」

 瞬間、いままであったあの強烈なまでの破壊衝動は完全に消え去り、代わりにこれまでにない力と魔力を感じる。それを感じ取ったのか、奴が後ずさる。恐らく生存本能というものだろう。多少の意思はあったのだ。破壊衝動と言う意思が。

 右足で地を蹴り、奴との間をほぼ一瞬で詰める。天叢雲剣をギリギリから跳ね上げる。存在が少し小さくなる。ならばと、先ほどと同じ15連撃技《ルクス・オブ・ヘクセゴン》を発動する。一撃入れるたびに小さくなっていく。だんだんと、塵のように。あと一撃のところで攻撃を受ける。しかし、俺は止めなかった。魔力を込め、最後の一撃を《バースト・レイン》と同じように放つ。

 世界の命運を左右する攻撃にしては、あまりにあっけなかった。剣の刺さった場所から、静かに、しかし確実に消えていった。

 

 

 

『この力、君はどうするんだい?』

 少年の声が問う。

「いらない。と言いたいところなんだけどな・・・」

 振り向き、彼のことを見ながら言う。

「正直なところ、この力に助けられたって言ってもいいだろうな。だから、いつかまた、借りるかもしれない」

『僕は、もういらない。だから、君に託すよ。僕よりも上手に使ってくれそうだから』

 その言葉と共に、少年は消えていった。正直なところ、彼が何者なのかを知らない。だけど、どこか懐かしく、そして、消えたときに少しだけ、悲しみを感じていた。

 

 

 

 アメムラ達の後に続いて狭間から出た。振り返ると、狭間が消えていくところだった。閉じるのを最後まで見届け、前を見るとマリカが飛びついてくるところだった。

「えっちょおまっ!」

 勢いが良いのか油断していたのか、マリカは軽いはずなのに後ろに押し倒されてしまった。しかしそこで俺は戦慄する。ここは石が多い。しかも時々鋭いものが転がっている。それに刺さったら出血どころじゃすまないだろう。

「ぐふぁ!?」

 俺はすこし柔らかく感じる場所に頭を打つ。同時に俺の下、右辺りからうめき声がする。そちらを見ると、ヴィルが下敷きになっていた。

「ぎ・・・ぎりぎり間に合ったか・・・」

「・・・・・・ありがとなヴィル」

 その会話を聞いてか、マリカは後ろに回していた手を離し、起き上がる。

「ご、ごめんね?つい・・・」

 起き上がった俺は、マリカの頭をなでる。

「心配だったとか、そんなところだろ?別に気にしないよ」

 笑顔になり、少しだけ俯くマリカ。「ありがとう」という彼女に笑顔となでることで返し、俺を助けてくれた皆へお礼を言いに向かうのだった。




第13話<新たな相棒達>
 あまりにあっけない終わりに違和感を持つ彼は、組織結成と愛剣の新調を決めるのだった。
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