「う~ん・・・」
俺は悩んでいた。何を悩んでいるかと言えば、主に二つある。ひとつは愛剣について。しかしこちらはいくらか踏ん切りはついているので大したことはない。最も悩んでいるのは衛士長からの頼みだ。
《地獄の陽炎》での出来事をヴィルから聞いた衛士長のミンクが「代わりに衛士長をやってくれ!」と言ったことだ。別の組織として作ってもいいとは言っていたが、まず俺が統率できるものなのか。できるとして何をやればいいのか。
「そんなに悩まないでいいんじゃない?やりたいかやりたくないかでいいと思うわ」
「って言われてもなぁ・・・一人でやれる気しないし」
「別に一人でやれとは言われてないんでしょ?だったらいいじゃない。手伝うわよ」
向かいに座ってくるレイナ。一見前と変わらないが、雰囲気が違う。これも修行の成果だろうか。今までと違うその雰囲気、そしてあの《地獄の陽炎》での違和感から、俺は頷いた。
「んじゃあ引き受けてみようかな・・・」
「よし、じゃあさっさと返事をしに行く!」
・・・どうやら強引さも変わったようだ。
「そういえば最近、女の鍛冶屋さんが話題になってるんだって」
マリカと一緒に買い物をしていると、不意にそんな話題を出す。
「へえ・・・。具体的にはどんな?」
「まだ包丁とかハサミくらいしか聞いてないけど、すっごい切れ味がいいのを作るんだって。その人が作ったものを他の人がその人なりのやり方で砥いでも同じくらいの切れ味だっていう話よ」
「へぇ・・・使ってる素材とか関係してるのかな・・・」
だとしたら、あの魔剣達を新たな姿にできるかもしれない。そう思った俺は、帰った後すぐに剣をもち、マリカに案内してもらった。
「これをかい?できなくはないけど、普通のより時間かかるよ?」
「できるのか!?」
持っていった剣をじっくり見た鍛冶屋――ロハエという名前らしい――は、今確かに言った。できなくはないと。
「じゃあ、頼めるか?」
「あいよ、じゃあ工房に来て。代金はそこで受け取るから」
俺とマリカは、ロハエと共に奥の工房へ向かう。そこには金床と砥石、赤い炎の立つ鍛冶炉がいくつか置いてあった。ロハエはまず鍛冶炉に向かい、中に鞘からダーク・クロニクルは別々に、クラウ・ソラスは同じ炉に入れる。溶けた魔剣を鋳型に流し込み、冷えると艶のある黒と透き通った青の延べ棒になる。今度は同じ炉に入れ、赤く焼く。それを取り出して金床の上で叩く。
本来ならある程度叩いたところで少し整形し、炉に入れて熱し、また叩くということを繰り返すらしいのだが、魔剣だからなのか、そこで光り、形が自然と変わる。
光が消えたときには艶のある黒の刀身に透き通る青い刃、夜空を囲む星の光を持つかのような剣になっていた。
「・・・魔剣だとこうなるのね。知らなかった」
「知っててやったんじゃないのか?」
「んー・・・なんて言うのかな、操られるみたいな感じ?ま、そんなことはどうでもいいの」
「いいんだ・・・」
マリカが呟く。正直言って俺も同意見だ。差し出される剣を受け取り、眺める。
「・・・これからもよろしくな。相棒」
つい言ってしまった言葉を、ロハエは微笑んで受け取ったようだ。
「道具を大事にしてるのね。いいわ、その愛に免じて代金は無し!」
「いいのか?そんなことしたら・・・」
「大事にしてくれる人には贔屓にしないとね」
俺とマリカはお礼を言って、鍛冶店を後にした。背中に、鞘に入れた新たな愛剣を提げて。
その後俺は、衛士長に了承の意を話し、ヴィルを含め38人いた衛士達は、皆俺についてきてくれると言った。投票の結果、俺を団長――これはほとんど決まっていたことだが――マリカを副団長とした組織、《
第14話<命の洗濯>
黒影剣士団設立後、初めて湯船にゆっくりと浸かるのだが――。