深淵の暗殺者と呼ばれる、名をクロトという人物は殺人をした。だが、殺したのは犯罪者、しかも指名手配されている人物のみであり、殺し方も首を一太刀で統一している。つまりはもう片方のバラバラにしているほうとは関係がないということ。
「・・・と判断してはいるが、あってるか?」
「うん。僕は何もしてない人は殺してないし、殺さないよ。僕の定めた条件に当てはまる人、要は犯罪者だけを殺してる。正しいこととは言えないだろうけど、これが僕のできる精一杯だから」
その言葉を聞いて、少し引っかかる。この考え方、『僕のできる精一杯』というのは、自分がその方法しか知らないということではないだろうか。もしそうなら、と質問してみる。
「もしかして君、あの村・・・死神の化身がいた村の・・・」
「そう、僕はそこで生まれ育ち、生き延びた暗殺者だよ」
予想はしたが、鋭く息を呑んでしまう。その反応を見て、聞いてくる。
「もしかして、君が死神の化身・・・だった人?」
もし狙いが復讐だとしたら、ほぼ確実に殺される。短剣は別のところに保管しているが、技術は教えていると爺さんから聞いていたから、他の方法でも殺せるはず。マリカがいるし、さっきの確保作戦では勝ったとは言え、周りの環境が影響していたはずなので、俺が負けるかもしれない。そんな危険を承知した上でなお、嘘をつこうとは思えなかった俺は、正直に肯定する。
「・・・ああ、そうだ。俺があの村の皆を殺した」
何を言われるか分からない。けど、何を言われても否定することはできない。俺はそれだけの罪を犯してしまったのだから。しかし、その口から出たのは予想外の言葉だった。
「本当は言っちゃいけないんだろうけど、ありがとう。あの村を壊してくれて」
曰く、1年前から修行をしに――という体で逃げていた。そしてその2年後、つまりあれから1年後に戻ってみたら全員殺されていたらしい。特にそれを目的にはしていなかったが、もし会えたらお礼を言いたかったと話している間、嬉しいとは言ってはいるがそれでもどこか悲しそうだった。
「多分、今生き残ってる村の人たちは皆君に感謝している・・・と思うよ。今までずっと考えていたんだろうけど、そう悩むことはないんじゃないかな」
「・・・だと良いが。けど、目を背けようとは思わない。この組織だって無意識のうちに罪滅ぼしの代わりにしてるだろうし、そう簡単に消える事実じゃない。例え神様だって消せないさ」
冗談交じりに話し、笑う。それに釣られてクロトも、マリカも笑う。その後マリカが近づいてきて、「彼」と俺に話しかける。
「この後どうするの?絶対にとは言わないけども、相手が女の子ってことを考えて・・・」
「待てお前。クロトのこと、女に見えてるのか?」
「え、違うの?」
この表情、本気で言っているやつだ。そう感じた俺は、クロトに視線を投げかけつつ言う。
「クロト、お前の性別言ってやれ」
「・・・男」
「・・・・・・えええええええええええええええええええええええええ!?!?」
この絶叫は、拠点全体にはっきりと聞こえたらしく、一部の団員は様子を見に来るほどだった。近くで聞いた俺とクロトは、しばらく耳が痛かった。
その後、担当部署の代表が集まる会議――今後これを中央会議と呼ぶことにした――にて、クロトは偵察班に配属されることになった。当然反対する声はあった。理由は「殺人者だから」。その意見に反論したのは珍しくレイナで、「もし殺人者だからと入れないなら、イチハも出て行かなくてはいけない」と発言した。あの村での出来事は団員には伝えてあるので疑問の声はなく、またそれに対する反論も出なかった。
「ありがとう、居場所を作ってくれて」
「お前の戦力が結構強かったからな、利用価値はある」
「そんなこと考えて!?ひっでぇ」
その後、二人して笑う。
「それじゃあお前の装備と、部屋と・・・あと歓迎会だな」
「・・・やっていいの?それ」
歓迎会についてだろう。黒影剣士団では入団した人をよく歓迎している。今ではクロトを含め60人となっているから、今までのように屋内は難しいだろうが、まだ外が開いている。
「大丈夫、いつもやってる。今回はお前だけだからちと特別にしようかな。なんか食いたいものあったら食糧班に言っておけよ。歓迎会に関しては俺が言っておくからさ」
彼は笑顔で頷く。その後の歓迎会は今までよりも盛り上がったのだった。
次回<自動人形>
開発班は、黒影剣士団の戦力増強のために、あるものを創っていた。