今日、私はとても楽しみにしていることがある。恐らく、この事実を知っている人は皆同じだと思う。今、黒影剣士団のほぼ全員がこっそりと準備をしている。なぜほぼなのかというと、どうしても今の任務から離れられず、休憩もない人は準備ができないからだ。彼らはとても残念がっていると聞いた。
何を隠そう、今日9月18日黒影剣士団の団長の誕生日なのだ。ちなみに彼はクロトに頼んで外に連れて行ってもらっている。理由は適当に考えてもらったが、18時半までが予定だ。
この企画はヴィルの発案で、2ヶ月前、ほぼ設立直後に皆に言っていた。これからは誕生日会は毎月やるが、一回目は団長、つまりイチハを中心に祝いたいということで、皆も納得している。
「ヴィルから聞いたんだけどさ、団長って苦手な料理・・・というより食材あるらしいぞ」
「え、何それ?」
たまたま近くを通りかかった団員がそんな話をしていて、無意識のうちにそちらへ耳を傾けていた。
「知りたいか?・・・キノコだってさ」
「マジで?!意外と子どもっぽいんだな」
「そりゃ俺らより年下だもん。子どもっぽすぎるのもアレだけどさ、そんなところがなかったら逆に困るよ」
まあ確かに、年上の尊厳がなくなっちゃうもんね。と思いながら、それじゃあ食糧班に伝えにいかなくてはと思い、厨房へ走るのだった。
18時半。イチハが帰ってくる時間だ。この時間まで連れ出しておいてと頼んだので、正確には帰り始める時間だ。果たしてどこまで行ったのだろう。
これまでの彼の誕生日は私達2人が精一杯作って3品程度だったのだけど、今回は10品を超えるだろう。他の人も祝うけれど、何度も言うが今回ばかりは彼が主役だ。果たして彼は喜んでくれるだろうか。もし喜んでくれなかったらどうしようかと不安になる。そういえばこのソワソワする感覚はいつからだろうか。気付いたときにはふとしたことで感じるようになっていた。緊張することなら他にもあるし慣れているけど、この感覚はイチハに対してだけだし、一向に慣れる気配もない。
そんなことを思っていると、見張っていた団員から合図があり、私達は行動に移すのだった。
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9時ごろからクロトに呼び出され、恐らく今は18時くらいだろう。呼び出されたのは「実際の体で練習したい」との理由で、多少傷つけてもいい、というよりそもそも傷をつけられないだろうと思ったのが俺らしい。そう評価してくれるのは嬉しいのだが、期待というか、威圧というべきものが凄まじくなる。当然俺だって戦闘でも傷は出来るし、日常であらばなおさらだ。戦闘時に集中力を使っているのか、その辺に対してただ気が向かないだけなのか、よく躓いたり頭を打ったりする。しかもそういう時は決まって気を抜いてるときなので結構痛い。この過大評価を変えようとしたことが一時期あるのだが、どうも直らないので諦めた。
「ごめん、こんな時間までつき合わせちゃって」
「いや、別にいいさ。俺も参考になったし」
「イチハが参考に出来ることなんか僕に出来てないと思うけど」
これもそうだ。どうにかできないのだろうか。その後も話をしつつ拠点に帰り、敷地に入ったところでクロトに止められる。
「ちょっとそのまま止まって、目を閉じて」
「ん?・・・ああ」
言われた通りに目を閉じて待つと、目のところに何か当てられ、後ろに回される。
「それ取らないでね。じゃあ、言われたとおり動いて」
そうして出された指示は進む、止まって右、もしくは左に向く、また進むを繰り返すものだった。そうして止まる指示が出されたとき、足音は屋内の硬く響くものではなく、静かなものへとなっていた。
「外していいよ」
後ろに手を回し、解いてからゆっくり目を開ける。そして、前を向いた瞬間――
「「イチハ !誕生日おめでとう!!」」
と、全員がほとんどずれず、声を合わせて言った。しばらく止まってしまい、出た言葉は、「・・・うぇ?」
というなんとも情けない声だった。よく思い出してみると、今日は9月18日。その日は俺の誕生日だ。そこまでいって気がつく。つまりは皆この日のために準備しており、マリカがよくいなくなっていたのもそういうことだろう。思わずため息をついてしまう。
「この企画を考えたのは誰だ?」
「俺」
と手を上げたのはヴィルだ。彼の説明と意図を聞き、ある程度理解は出来たので、ちょっとだけ悪戯・・・といえるか分からないことを仕掛けてみる。
「これをやることは許可しよう。ただし、費用は全部お前のからな」
「え、えぇ!?そりゃないでしょ!」
「当たり前だ。毎月とかどんだけかかると思ってんだよ!」
うな垂れるヴィルにほぼ全員が笑う。実際のところは皆が楽しめるのだ。誕生日ではなく誕生月なので経費は出そうと思っている。ヴィルの肩を叩こうとしたところ、袖を引っ張られる。その手の主はマリカだ。
「これ、プレゼント」
といって渡されたのはブレスレットだ。大きさの調整ができるので、とりあえず左腕につけてみる。どの程度かは分からないが、結構な量の魔石が埋め込まれていた。
「ありがとう、大切にするよ」
「・・・うん」
嬉しそうに微笑むマリカや皆と共に、俺は早速食事へと移った。
翌日、食いすぎでの腹痛や二日酔いになった団員が結構な人数で、今後実際にこの企画を行うか悩むことになってしまったのだった。
番外編では次回予告はしません。また、番外編での内容は本編に関係しない方向で考えています。