「イチハ!マリカ!こっちに来て!!」
最初に事件に気づいたのは、レイナだった。レイナに案内されながらたどり着いたのは、昨日までにぎわっていた街が消滅し、巨大な穴となっていた姿だった・・・。
~~~~~7年前~~~~~~
「ねえ、イチハ。ここ、良いんじゃない?」
「そう・・・だな。見晴らしも良いし、近くに街もある」
「魔術研究の素材もたっぷりあるからね!」
そうして、俺―――イチハと、レイナ、マリカの三人で住むことにしたのは、港や街―――イザヴェルという名らしい―――が近くにある生活しやすく、きれいな場所だった。その頃まだ俺たちは10歳と8歳二人だったこともあって、やさしい街の人たちが食料や服などをそろえてくれたりしてくれた。ここに住み始めて2年ぐらい経った時、俺たちにも何かできることはないかと三人で相談した。結果、悩みや事件を解決する組織―――にしては小さい気もするが、―――を経営することにした。始めの頃はちょこちょこと来る程度だったが、何ヶ月かすれば、普通に頼られるようになっていた。いつも活気があり、大きな事件もなく、5年間楽しく暮らしていた・・・。
~~~~~~~~~~~~~
「ん・・・?あれは・・・?」
「どうした?マリカ」
「穴の向こうの隅のところに・・・人のような影が見えるわ。・・・・・・何か言ってる」
マリカの能力「遠視」は魔法でさえ見えない距離を「視る」ことができる。そして、マリカの言葉とほぼ同時に、呪文に使う文字―――ルーン文字―――が魔力として流れてきた。俺はすぐに解読していった・・・。
「・・・どうしたの?イチハ」
「今、術語を解読してるはずよ。この中ですばやく変換できるのはイチハしかいないもの」
「・・・・・・読めた」
「本当!?教えて!」
「言い表すには少し長いけどな。『ここにある街は異次元へと送った。もしこの街を取り返したいならば、明日の日没までに私・・・エルダーガーディアンのもとへ来ること』。つまりあいつが『エルダーガーディアン』ってわけだ」
「今が・・・昼くらいね。準備できたらすぐ行くの?」
「ああ。だが、その前にすべきことがある。」
「な、何?」
レイナその言葉とほぼ同時に、レイナの腹が鳴った。
「・・・・・・そうよね!ご飯がまだだった!は、早く食べましょ!!」
そういって、颯爽とキッチンへ駆け込んでいった。
「・・・・・・照れ隠しか?あれ?」
「・・・・・・そうなん・・・じゃないかな・・・」
その後、レイナの手料理で昼食をとった。
~~~~~昼食後~~~~~
俺たちはそれぞれの部屋で出撃準備をしていた。俺も当然準備をしていたのだが、途中で扉をノックする音が聞こえた。ノックの主はマリカだった。
「・・・どうぞ」
「イチハ。何か手伝えることはある?・・・ってこの剣・・・まさか!?」
そういってマリカが指した剣は、黒い刀身に紫の刃、柄には黒革が巻かれている剣と、水色で通常の剣よりやや薄めの刀身に黄色の刃、柄も刀身と同じ材質でできている二本の両刃の片手直剣だった。
「黒いほうが『
「そんなの・・・どこで・・・?」
「2ヶ月くらいいなかった時あっただろ?その時に。さて、雑談はこのくらいにして・・・準備はいいな?」
「いいわ」
「あとはレイ・・・」
「私が・・・何?まあ、聞いてたけど。」
「おわぁ!?・・・・・・あ、悪い。」
「いいわよ別に」
「あ・・・ありがとう。さて、今回の分担だが、レイナは中距離攻撃、及び取り巻きの排除。マリカは魔法による後方支援攻撃。いいな?」
「ええ、最初からそのつもりよ」
「それでいくしかないじゃない」
「ん~・・・まあ・・・な。それではこれより、『イザウェル奪還作戦』を開始する!」
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「来ましたか。」
相手―――エルダーガーディアンは落ち着いた口調で話しかけてきた。
「・・・一体何のつもりだ」
「まあまあ、話は我が主君からお願いします。私は命令を実行しているだけなので」
「そうか。じゃあ、その主君とやらの場所へ連れて行ってくれ」
「もちろんです。それが命令ですから」
そうしてついていった・・・・・・とはいえないかもしれないが、とにかく、ついた先は夜空のような空の場所だった。いつの間にかエルダーガーディアンは消えていたが、代わりに玉座があった。
「来ましたか、魔法剣士」
「知ってるみたいだな。まあいい。お前は?」
「私は『エレヴォス』、あなたたちの種族より神に近しい存在」
「神に近しい・・・でも神様じゃないんでしょ?勝てるんじゃない?」
「いや、「普通に」戦って勝てるような相手じゃない」
「そういうこと。さ、やりましょ。しっかり援護するから」
その言葉で、全員が武器を持った。もちろん相手も。だが・・・
「あれは・・・神器の一つ・・・『 アメノムラクモノツルギ』!?」
つづく
第二話<奪還>
神に近しい者との、激しい戦いが、今、始まる。