カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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自動人形の革命。それは、吉と出るか凶と出るか。


第18話<自動人形>

 ゴーレム。魔導用語で自動人形という風な意味だ。泥で作られるものが一般的だが、別に泥でしか作れないわけではない。泥で作るのが最も簡単なのだ。しかし、他の素材で作る魔導師はいる。別世界線の俺もミスリル製のゴーレムを作っていた。だが、どのゴーレムも命令を聞いて動くだけで、自ら考えることはしなかった。黒影剣士団の開発部隊長ミルキが、自ら考え行動するゴーレム――彼女曰く「真の自動人形」――を作り上げた。

 

「どう?分かった?」

「・・・まあ、半分くらいは」

「私はまったく」

 ミルキの部屋にて、自分の開発した「真の自動人形」の能力を解説されたが、多すぎて何がなんだか分からくなった。覚えている限りで纏めると、自分で考えて動いて、武器の換装ができて、体がなくなってもコアがあれば元通りになるということだ。本来なら命令を実行するだけだし、武器の換装はおろか、体の三分の二がなくなったらそこで動かなくなる。コアを取り外すなんてことをしたら確実に動かなくなる。

「実物見せてくれ。そのほうが早いんじゃないか?」

 あごに手を当ててうなったが、「まいっか」と手を叩く。

「じゃあついてきて」

 ミルキは立ち上がり、部屋を出る。3人で向かった先はミルキの研究施設といっても良い建物だった。遠くもなく近くもない微妙な位置にあるので行こうとは考えても距離を思い出すと行く気が失せる。綺麗に掃除された白い廊下を歩き、着いたのは管が壁沿いに多く設置されている部屋だ。そしてそこにいたのは――。

「・・・狼?」

 黒い体にところどころ赤い線と紫の金属板らしきものが付いている狼だった。待機姿勢なのだろう座って俯いている状態から、顔を上げ4本足で立つ状態に移った。だが、驚くべきは他にあった。

『帰ったか、ミルキ。そこにいるのは?』

「前に話した、私の上司。こっちがイチハで、こっちがマリカ」

『そうか。・・・こういうときは「初めまして」だったか』

「しゃべったね・・・」

「・・・ああ。だが一体どうやって・・・?」

 本来、ゴーレムは話さない。実物を見て思う。ここまで行ったらもはやゴーレムじゃない。少なくとも、ゴーレムに似た何かだ。ここまでくるのに相当な苦労をしたらしい。

「で、ミルキ。開発してたのはかまわないが、こいつを一体どうする気だったんだ?」

 瞬間、彼女の視線が泳ぎ「え、えっと・・・それは・・・」と明らかに動揺している。

「どうせ俺らに使わせる・・・というより俺らのところに就かせるつもりだったんだろ?断ったらどうするんだ」

『俺の性能が心配か?』

 ゴーレム、と呼ぶのもここまでくると変な気がするので彼とするが、とにかくとして、彼は俺を見て言う。尻尾のようなものをこちらに向け、

『心配なら、戦えばいい』

 と、随分と強気に出る。勝てる気なのかというとそうではなく、彼としても自分の上がどういう人間かを確かめたいらしい。納得した俺は頷き、外に行こうとするとそれを止められる。ミルキが言っていた装備換装をするかを問われる。俺は迷わずに頼み、先に出る。

 少し待つと彼が剣を背負うような形の装備で現れた。

『では、始めようか。ミルキ、合図を頼む』

 双方とも剣を抜き――彼は固定を外して尻尾で掴み――、構える。

「それでは・・・始め!」

 その声と同時に、どちらとも地面を蹴り、突進する。攻撃態勢に入ったのは向こうが先で、上段に構えられた。俺はそれを下段からの斬り上げで迎撃し、相手の剣を弾く。そこから手首を切り返して俺が上段から斬る。器用に体ごと後ろに回転、手足の爪と剣の合計5連続攻撃で防ぎながら距離を作られる。着地した瞬間に突っ込んでくる――のを予測し、上に回避する。刃を上に向けていればそこを斬られた、仮に防ぐことが出来たとしても飛ばされただろうが、そこまではまだ戦略が立てられていなかったらしい。着地し、今度は俺が低級魔法《ヴァードボム》を複数放つ。それを回避し接近してきたところを狙うが、そちらは予測済みだったらしく剣で防がれる。攻めて避けて、たまに防いでということを、二人に止められるまでずっと繰り返していた。

 

 

 

 会議で相談することにして、その日はミルキとそこで別れた。「採用されたら名前考えてね」と言われたので、お前が考えろよとは思いつつも、何かいいものを考えなくては、とも思ってしまう。

 そのときだった。不意に視線を感じた。普段の視線ではない。明らかに殺気が含まれていた。その方向を見ると、白髪で赤い瞳を持った12歳程度の少女が立っていた。その少女の口から出た言葉は、俺を戦慄させるのに十分だった。

「私は、お前を殺す。そして、あなた達を救う」

 瞬きした瞬間、その影は跡形もなく消えていた。だが、耳にこびりついたその言葉に何かとても重要なことが含まれていると、そう感じた。




次回<少女として>
イチハに、ある異変が起きる。
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